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試行錯誤

聖剣伝説をメインに、気の向くまま二次創作を綴っていくサイトです

聖剣伝説2 未完 『導きの明かり』

未完

注意
私的設定があります。













床から生えた手に足首を掴まれた。ダークリッチの手首から生じた禍々しいオーラが、ランディの身体を包む。
ランディの身体を乗り移りに適した心にすべく、これまでの人生の中でタナトスが乗り移ってきた歴代の闇の血族達の思念の一部を解き放った。
ダークリッチの手首を斬りつけようとする直前、ランディの精神を虚無へと押し流すべく怒濤の勢いで物心着く前からの孤独な日々が蘇る。
余所者と邪険にされ、疎外され、誰一人理解者も心を許せる友もいなくて、常に遠慮と緊張と屈辱と諦念を強いられてきた。幼い頃は理不尽だと夜な夜な泣いたこともあった。どんな目に遭っても僕には家族がおらず、余所者だから仕方ないと、これまで言い聞かせてきた。
恐慌し、錯乱の渦中にいるランディの精神にとどめを刺すべく、タナトスは更に悪意を注ぎ込む。

ランディを呑み込もうとする闇と間もなく同一化すると分かっていても、抗うこともせずそれを受け入れて……。

「ランディ!!」
「ニイちゃん!!」
闇に呑み込まれかけたランディの意識に、何よりも大切な二人の声が届いた。
プリムとポポイが、僕の名前を呼んでくれる。
それだけで自分が何の価値もなく虐げられる余所者でも、聖剣の勇者という偶像でもなく、ただランディという一人の人間として生きてもいいのだと確信できる。
彼らとの記憶が、温もりが、日常が明かりとなって、ランディを闇の中から導く灯台となった。
こんな所で負けてられない。僕にはまだ生きて、やりたいことが沢山ある。
必死に闇から這い出してランディを引き込もうとする亡者達に僅かばかりの憐れみを抱くが、彼らの望みを叶えてやるわけにはいかない。
生きる。僕のままで生き延びる。
ただそれだけを念じて、亡者達を押しのけ、突き飛ばし、蹴って踏みつけてでも光の元へひたすら邁進する。
ランディを闇の中に引きずり込む力は、凄まじい。けれど光明がある今、負けられない強さがランディにはあった。

「……僕は……」
タナトスが身体を失い、乗り移りに集中している今。不死のタナトスを倒せるのは、この瞬間しかない。
「負けるわけには、いかないんだ!!」
強制的に精神干渉が解かれ、ほんの数秒の隙を晒したダークリッチの心臓めがけて聖剣を深々と突き刺す。
いかにタナトスといえども肉体を失い、精神を消耗している時に聖剣で核を貫かれては一溜まりもない。
ダークリッチが霧散するように消えていき、数多の命を犠牲に悠久の時を生きた呪術師は、塵一つ残さずにこの世から消失した。
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聖剣伝説 『女神の騎士』 未完 番外編 【彼の名前】

未完

注意
二部の時系列です。












女神の騎士となり、一万年近く生きてきた彼は、本来の名前を大昔に忘れていた。
そもそも人間の脳は数千年生きる前提で作られておらず、妖魔に寄生されていなくとも古い記憶はどんどん失われていく。
かつて数千年以上生きた三柱のように一カ所に留まらず、客観的な視点を持たない彼が今まで生きてきた正確な時間や、名前が分からなくなるのを責めるのは酷といえよう。

「ドーラ」
名前を呼ばれたとき、極稀に違和感が脳裏をかすめるときがある。彼自身、今の名前が本名だとは微塵も考えていなかった。
悠久の年月を生きて、何度も頭部を破壊しながらも再生して生き続けているのだ。本名なんて、いつの間にか忘れていた。
遙か古の出来事である人間だった頃の記憶は生きていく過程で塗り潰されて、消えてしまっている。覚えているのは女神によって保護された最低限の記憶のみ。
為すべき事は分かっており、それを為すために生き続けるのが彼に与えられた責務だ。

「ドーラ」
傭兵仲間に呼びかけられると、剣の手入れを止めて顔を上げる。
太陽のような笑顔は誰かを連想させるが、如何せん生きてきた年数が年数だ。誰が誰だか心当たりが多すぎる。ましてや忘却の彼方に消え去った者達も含めると、もう……わからん。
それでも”不死者”と畏れられている俺に臆せず、また不死の正体を突き止めようと欲望を滲ませず、自然体で接してくる奴は本当に珍しい。
その度胸を買って、話を聞いてやることにした。
男が語るのは世間話から始まり、この戦争の勝敗にまで及んだ。必ず勝つと意気込む男に理由を尋ねれば、国に家族がいるのだと語った。たった一人に妹と婚約者を守るためになんとしても勝つと熱く語る男に、彼はその熱意を傾けられる存在がいる男のことを羨ましく思った。

愛する者の記憶も、不死者になる前の幸せな記憶も、俺には何もない。
あるのは、肉体と魂に刻まれて彼を生かし続ける、女神の絶対なる命令だけだ。

不死者である生を終わらせる方法は、ただ一つ。女神の望みを達成することのみだ。
いつ訪れるか分からない遠い未来に訪れる暴走したマナの女神を、永遠の命を与えた存在を殺す。
女神の命令を叶えれば、彼は女神の騎士から人間に戻れる。
そして、その時は彼が人間を辞めてから一万年以上の月日を越えてやってきた。
世界各地で起きる様々な異常現象と、新たなるマナの種子の存在。
間もなく、その時は近い……。

「ドーラ」
『――――』
 夢うつつにマナの声が聞こえる。
その名前と重なるように、何かの音が聞こえたような錯覚を抱いた。

聖剣伝説FF外伝 未完 『最期の姿』

未完

注意
私的設定があります。
千年前の、ヒロイン母の話です。












女は生命の気配が乏しい森の中を進み、枯れた大樹の前に立つ。
大樹に絡みつく夥しいパイプとコードや機械類の数々は、人間がマナの樹を汚した証。
「……なんて、ひどい……」
想像していたよりも酷い惨状に、女の感情が荒ぶる。
千年の寿命が尽きて近いうちに死ぬ大樹であったが、このような終わりなどあってはならなかった。
生み出すマナよりも多くを搾取され続け、それでも尚命ある限り世界を支えた偉大なる大樹。
このマナの樹にもかつて人間だった頃があった。
「……姉さんは、とても強いわ……」
女が俯くと、涙が地に落ちる。
悲しい。
世界を救うために、人としての生を捨てた姉に対しての惨すぎる報いが。
今でも、瞼の裏には優しかった姉の笑顔が。耳には穏やかな声が。手には柔らかい温もりが残っている。
決して、こんな死を迎えていい人ではなかった。

「姉さん、姉さん。よく今まで耐えてくれたわね。でも、もういいの。後は私が引き継ぐわ。
私が、いつまでもここにいるから。だから、姉さんはもう安らかに逝ってもいいのよ」
女には、後の世のために残した娘が一人いる。
千年の眠りにつかせた娘が目覚めて、マナの樹になるまで私はここにいる。

大樹の幹がひび割れて、崩れ落ちる姿を。
姉の最期の姿として。そして千年後に訪れる自身の末路として。
女はただ、ただじっと見つめていた。

聖剣伝説3 小説 『切欠の出来事』

聖剣伝説3(HOM)

注意
私的設定のある話です。
2→3の時系列です。
「夢夜1 『魂の記憶』」に繋がる話です。













私は敵の魔法に為す術もなく倒れていた。
負けた。その事実が私の胸に重くのしかかる。
これまで勝ち続けていたのは、私自身の才覚と、努力あってこそだ。
もう二度と負けたくない。その一念が魂の記憶に今も尚深く刻まれていた。

更なる魔法を食らい、意識が遠のくが、無様に倒れていられるか。戦ってやる。
ろくに動かぬ身体に鞭を打ち、起き上がって、敵の顔を睨む。
「……とどめだ…」
死ぬ?ここで?あんな奴に敗れて?
冗談ではない、と思った。
これから騎士になって、いずれは将軍を目指す。大軍を指揮するあの快感と充実をまた味わいたい。
尊敬する主君に相応しい存在になりたい。大恩ある伯母に孝行したい。可愛くも生意気な妹の将来を見守りたい。
やりたいことは沢山ある。
なにより、私はまだ死ねない。
再び惨い死に方などしたくない。今ここで、死にたくない。
私の声が天に届いたのか、援軍の声が聞こえる。

余裕綽々で立ち去り、消える魔導師の後ろ姿にこれまで忘れていた記憶が蘇った。
炎と崩れゆく城壁、飛び去っていく神獣もどきと、私を見下ろす憎い仇。
呻くように呪詛を吐く。
紅い魔導師。
私の忌々しい記憶を引きずり出した怨敵。
輪廻転生の浄化によって薄れていた憎悪と怨念の片鱗が再燃する。
もう、この想いを忘れてなるものか。

途絶えゆく意識の中、私はたった一つのことを思っていた。
今度こそ、勝つ。その決意を。
どんな手段を使ってでも奴を殺し、敗北の汚辱を雪ぐ。
そのためならば、私は……オレは――。

火星物語 未完 『二週目』5

未完

注意
逆行物です。













「私は、アービ…ン。下水溝……掃…除士のアー…ビン……」
フォボス達に背を向けて淡々と下水溝を掃除するアービンの姿に、フォボスが痛ましく思う。
親友がAチップによって人格を破壊された様は、トラウマの一つだ。前回はアービンが元に戻っても、暫くは夢に見た。今回も……やはり見ていて辛い。
「フォボス、今回もお願いします」
「任せて」
ガッツポーズで気合いを入れて、アービンの後頭部を勢いよくスパナで殴った。

アービンは胸中で溜息を押し殺して、少年Aと少女Yの後ろ姿を見る。
少年A達によって正気に戻されてから色々あったが、今はアービンの頭の中にあるAチップを外すために治安の悪い下カンガリアンの中でも危険な第八地区に行くことになった。
そんな危険な場所に行くなんて、とても恐ろしいが……大丈夫だと思いたい。
異様に戦い慣れているような気がする少年Aと一緒なら安全だろうけど……やっぱり心配だ。
……それにしても、なんでこいつら下カンガリアンの地理を詳しく知ってるんだ?この前のカンガリアン観光の時に聞こうと思っていたが、結局聞きそびれたんだよなあ。
今はそんなことを聞ける空気じゃないから、どうしたもんか。こうした空気の読めない発言をするのは俺じゃなくて、少年Aの役目だろ。

フォボスとセイラの時間軸では死んだランディを前にして、フォボスは複雑な気持ちになる。

アービンとランディ。大切な親友と、お世話になった人。彼らを死なせたくはない。でも、歴史を変えられるのか?
歴史は変えられないし、変えてはならない。それはフォボスが前回の旅で実感したことだ。
アービン達を助けたい。でも、彼らの死を受け入れるしかないという矛盾した気持ちが鬩ぎ合う。
葛藤を振り払い、アービンのAチップを外してもらえるように頼む。
「いいでしょう」
ランディの指示を受けたシェイルがアービンの後頭部を弄っていく。
「ずさんな差され方をされているわね。脚の調子が悪いでしょ?」
「なんでわかるんだ?」
シェイルの言葉を引き金に、フォボスの脳裏にある記憶が蘇る。
ラディスに会う前から、アービンの体調不良は続いていた。村人達は働き過ぎの疲労だと言っていたし、フォボスもそうだと思っていた。でも、Aチップの後遺症で長くない命だったと……。
例えラディスが風の谷に来たときに彼を倒し、ブラパン党にアスラの打ち上げ基地がラッキーにあると伝えたとしても、アービンはいずれ死ぬ。……その後はどうなる?
現代を含めての決められた歴史なら、都合良く変えることは不可能じゃないか。
本当に歴史を変えたかったら、アロマで命名の儀を受けて、生涯アロマから出なければよかった。そうしたらアンサーの時代からの歴史は大きく変わっただろう。
サイレンが鳴り、辺りに赤い光が点滅する。それにフォボスの意識が引き戻された。
「ポリスが来たようだな…。
行こうか、シェイル」
「はい、ランディ様」
「ランディさん。待って!
風使いのことを、ハーネスに売りましたか?」
立ち去ろうとするランディに、フォボスが今までの疑問をぶつけた。
今から思い返せば、フォボス達がアロマに着く前から彼が風使いだとハーネスに知られていた。だから、藍色の風がポリスロボ部隊を破壊したことで正体を知られたわけではない。
それ以前でハーネスがフォボスが風使いだと知る機会は一つ。藍色の風がエマークを撃退した後だ。
エマークからフォボスの情報がシルビーの部隊に流れたとしか思えない。彼が単独でそんなことをするはずがないから、ランディの指示だろう。……本当は疑いたくないからスパイの可能性も信じたい。
どちらにせよ、ランディに聞くのが一番だ。
ランディの表情はサングラスに隠れていて分からないが、シェイルは目を伏せていた。
「…………さて、何のことかな。
君達も捕まらないうちに早く逃げるといい」
足早に立ち去っていくランディ達の後ろ姿に、フォボスが沈痛な面持ちになる。
「フォ……少年A……」
セイラがフォボスの肩に手を置く。
「……早く行きましょう」
「……うん」

俺達をテロリスト呼ばわりして襲ってくるポリスロボは少年Aと少女Yの二人で簡単に撃退していた。
体力お化けで俺達の荒事担当の少年Aならまだしも、少女Yまでこんなに強いなんて一体どうなってんだ?
それにしても、あのテロリスト達と別れてから少年Aと少女Yはなんか辛気くさい空気だ。
風使いをハーネスに売った?それが少年Aと何の関係があるんだ?
そもそも風使いといえば、アロマの建国王のアンサー様も風使いって記録があるよな。風使いはアショカとの戦争で400年前にいなくなったみたいだけど……。

テロリスト呼ばわりされて追いかけ回されて、もうカンガリアンには俺達の居場所はない。アロマに帰ろうぜ。
落ち込む少女Yを元気づけるために一緒にアロマに行こうぜと誘おうと思っていたが、少女Yは俺が言う前に自分からアロマに行くと言い出した。
……おかしくないか?こんな極限状態の中、行ったこともない場所に自分から行こうと言い出すなんて、変だろ。しかも少年Aはさも当たり前に頷いた。俺が言うのも何だけど、止めろよ。

うーん……なんかこの二人、俺に大事なことを隠してるな?
無性に聞きたいが、今はそれどころじゃねえ。アロマに着いてからたっぷり問い詰めてやるから覚悟してろよ、少年A!

私達を思想犯、テロリストと見なして襲ってくるポリスロボを撃退しながら西ターミナルに着きました。
戦力的には余裕だったんですけど、当時のことを思い出して精神的にしんどかったですね。それにまさかブラパン党がフォボスの情報をハーネスに流したなんて、とても信じられません!
タイミング的に疑わしいのは確かなんですけど……でも、なにか事情があったはずです。今度ランディさん達に会ったら問いただしましょう。
ハーネスときたら映画でクエス様の名誉を貶し、カンガリアンを裏から占領して、私の故郷のソドムまで毒牙にかけるなんて、もう許せません!
そんなことを考えていると、ホバーパトに乗ったポリスロボがやって来ました。前回同様の答えを返して、残されたホバーパトを見ていると、ある考えが浮かびました。
「少年A、少年B!私、ホバーカーを運転したことがあるので、運転は私に任せてください!!」
「本当か!?じゃあ少女Y、運転は任せた!!」
「待って」
笑顔で申告するセイラにアービンは乗り気を見せるが、フォボスがセイラの肩に手を置いて待ったをかける。
「少女Y。君、前にホバーカーを二秒でぶつけたって言ったことを忘れたのか?」
「……忘れてはいませんよ。ただ……今回は大丈夫です!!」
「駄目。ここは実績のある僕が運転する。それに……」
フォボスがセイラの耳元に顔を近づけ、囁く。
「極力歴史通りに、という方針だよセイラ」
「でも……」
耳元から顔を話したフォボスを上目遣いで見る。
「今回だけは駄目ですか?」
ホバーカーを事故って以来、ソドムでは乗り物関係は操縦させてもらえなくなった。それは前回の旅も同様だ。
この機会を逃せば、今回もまた操縦の機会をなくすだろう。
「絶対に駄目!!」
フォボスは頑固な面もある。これ以上引きずっても無駄だから、諦めるしかない。

聖剣伝説2 未完 『それは真か、偽りか?』4

未完

『それは真か、偽りか?』
~case ランディとポポイ~幕間










ランディがちらりとタナトスを見て、目が合う前に慌てて顔を逸らす。
「ニイちゃん、何やってんだよ。見るからに不審者だぞ」
「…………ポポイ」
ランディが言葉を紡ごうとするが、ポポイがそれを制する。
「ニイちゃん、これは夢みたいなものだ。だから、もう死んでいる人間が出てきてもおかしくないぞ」
四天王、皇帝、そしてディラック。
亡くなっている人が平然と目の前にいるというあり得ない現象に、皆見て見ぬ振りしているのか、もしくは何も気付いていないのか。
それはわからないが、投票を終えてからランディはこの会場の異常さに気付いてしまった。
「夢、だって?」
「そう。夢だと考えれば、何でも許容できるだろ?」
それは世界から消えてしまったポポイとこうして話していることも含まれるのだろう。
「夢……いやいや、夢だとしても何でこんな荒唐無稽な夢を見るんだ!?
おかしいだろ! そしてワッツとモリエールの本音なんて知りたくなかったよ!!」
「だから、時空や世界を超越して夢でみんなの意識が繋がってる……的な?」
「なんだよ、それ……」

「……なあ、ポポイ」
「なんだ?」
深刻な顔をしているランディに対して、ポポイは茶菓子を食べながら呑気に訪ねる。
「……百歩譲って、これが夢だと認めよう。
だったら、なんで四天王達は僕たちを前にして何も行動を起こさないんだ?」
皆ランディ達が倒した。
ゲシュタールはその雪辱を晴らすために、自分の半身を機械にしたほどだ。
なのに、怨敵を前にしてもタナトスたちは何ら反応を示さない。精々何ジロジロ見てるんだ?と不審者を見るような視線を返すだけだ。
「そりゃあ、オイラ達を知らない頃と繋がってるからじゃないか?」
紅茶をずずっと啜る。
そうじゃなかったら、会場に着いた途端、敵味方入り乱れての乱闘がそこら中で巻き起こる。その辺りも配慮されているらしい。
最初ポポイは過去と繋がっていると考えていたが、今では四天王達はランディ達の記憶を完全抹消されているのでは?とも考えるようになった。
まあ、どちらも憶測に過ぎないが。
「……大変だ。それじゃまずいぞ!!」
「なにが?」
「この夢が過去に繋がっているとして、彼らに僕たちが聖剣の勇者だと知られたら、歴史が変わるじゃないか」
「…………はぁ?」
「そうだよ。古代遺跡あたりで四人がかりで襲いかかられたら、あの頃の僕たちじゃ太刀打ちできない!」
なんてことだと、頭を抱えるランディに、ポポイは理解できないと言わんばかりに眉根を寄せた。
どこをどう考えれば、そうなるのか。
短くも深く濃い付き合いをしたポポイを以てしてもランディの思考回路は分からない。
「ニイちゃん、そんな空が落ちるような心配をしなくても大丈夫!」
「どうして?」
「起きた後もここでの出来事を覚えているとは限らないだろ」
「それはそうだけど……」
ランディとしてはワッツやモリエールの問題発言などさっさと忘れてしまいたい。……いや、待てよ。危険回避できたと考えるべきか?
それに、ここでポポイとこうして話できたことを忘れたくない。
「そもそも今聖剣を持ってないじゃないか。だったら、聖剣の勇者だって気付かれるわけないって」
「うーん、それはそうだけど……」
「あいつらが警戒しそうなのって、この中じゃジェマだけだぜ。 村人Aにしか見えないニイちゃんは眼中にないんじゃないかな?」
「……村人A……」
不服そうなランディに、ポポイが言葉を選びながらさらに続ける。
「だって、ニイちゃん。あれから畑仕事だけで暮らしてるんだろ。
体つきが戦士じゃなくて、農夫の身体になってるんだぞ」
「……なにを、根拠に……」
声が震える。
だが、ランディにとって、ポポイの言葉はなんとしても否定したかった。
「頻繁に顔を合わせるネエちゃんと違って、オイラは長らく会ってなかったからな」
自分の記憶のランディと、今のランディを比べたら、一目瞭然だと言われて、ランディが打ちのめされたように自分の身体を見下ろす。
「…………………………」
「ニイちゃん?」
「………………帰ったら、パンドーラに仕官するよ」
騎士の国タスマニカではないのかと思ったが、先程の一件を考えれば当然とも言える判断だった。

火星物語 未完 『二週目』4

未完

注意
逆行物です。












古代文明の兵器を弄っているフォボスがふぅと小さな息を吐き、額にじわりと浮かんだ脂汗を手袋で軽く拭った。
知っている人物相手に、知らない振りをするのもなかなか大変だなぁ。
不慣れなことに挙動不審になっていたのか、クエス達からは怪しまれているようだ。……解せぬ。
そもそも彼らも人のことが言える立場ではないだろう。前回の初対面の時、クエス達はやけに馴れ馴れしくて強引だった。
今だから言えるけど、君達の第一印象怪しかったよ。

こんなことになったのも、やはり起きてすぐにクエス達の名前を呼んでしまったからだろう。誤魔化したけど、やはり不審がられている。
セイラが前回の記憶を持っていたことで、安心していた。それも理由の一つだが、もしかしたらクエスには前回の記憶があると、フォボスは推測していた。
風使いのフォボスと、チェーンウォッチの持ち主のセイラ。
この二人が前回の記憶を引き継いでいるのだから、同じく風使いでありチェーンウォッチの持ち主のクエスも記憶を引き継いでいる可能性が高い。そう考えていたのだ。けれど彼女たちには前回の記憶はなかった。
この条件が関係ないのなら、記憶の引き継ぎが行われるのは、堕天使を倒した僕とセイラとタローボーの三人だけかもしれない。

手元が狂い、あっと声を上げた時にはもう手遅れだった。古代兵器は激しく揺れて、爆発してしまう。
あーあ……。
胸中で落胆の声を出す。
前回は緊張して内部構造を全く見られずに爆発させてしまったから、今回こそはと期待していたのに。
これも歴史の修正力か。忌々しい。先の展開に影響がないのだから、これくらい許してくれてもいいだろう。
煤まみれになった顔を手袋で拭うフォボスに、サスケが笑顔で
「おおっ!凄いじゃないか、少年A!!魔法の機会を爆発させるなんて」
サスケの賛辞?とクエスの顔を見て、フォボスが首を傾げる。
でも……。これはこれでよかったのか……?
釈然としなかったが、クエス達の心証がよくなったことを考えると、まぁよかったと納得することが出来た。

名前のない街の酒場で、水代わりに頼んだ一番安い飲み物をちびちび飲む。
食用のサボテンの絞り汁から作られたその飲み物の味は……値段相応だった。僕の時代では結構高級品の珍味だけど、精製が足りないのかな?
前回と違ってこの時代では水が貴重で高価なものか知っているから奢ってもらうのは悪いから遠慮したけど……別のを頼めばよかった。
控えめに言って、癖が強くて、口の中を洗い流したくなる味だ。
サスケを見ると、ほら言わんこっちゃないと、既に別の飲み物を用意してくれていた。
甘く清涼感のある味で口直しをして、ふうと息を吐く。
さてと、このまま見え見えの罠に直進するレジスタンスを止めるべきか。考えるが、それは止めた方がいいと判断する。
そもそもデーモン議長の助けを求めたのはミハエルが捕まったからだ。そしてクエス達の誠心に議長が動かされた。
ここでそれがなくなれば、これからこの街はどうなる?自由を尊ぶソドムになるのか?

もし、クエス達に罠だと報せて、ミハエル達レジスタンスが捕まらなかったとする。そしてフォボスが前回の議長に教えてもらった秘密の通路の場所を教えたとする。
それでうまくいくのか?
考えれば考えるほど、どこかで失敗するか、周囲に疑念を与えるだけに終わりそうだ。
それよりも歴史に沿っていれば必ず成功することはこれまでの経験から分かっているのだから、無理に歴史を変える必要はない。
そうセイラと話し合って決めたのに、こうして歴史の改竄が脳裏によぎっているのは、今生きているクエス達を前にしているからだ。

アービンとランディを助けるために、ラディスが風の谷に来たときに良くて再起不能にする。それ以外は歴史の流れに沿う。
そう、決めているのに……。……うーん……。

ゲヘナ総督を倒して、炎の刻印を制御していた神像を破壊し終えて、議長やレジスタンス達と一緒に民衆の前に立つ。
名前のない町、いや自由の町ソドムを、セイラの故郷をアショカから解放できた。

フォボスがちらりと両隣に立つクエスとサスケの顔を見る。
前回のクエスとサスケは戦い慣れていないフォボスを気遣って戦っていたが、今回はそんなことは一切なかった。
……仕方ない。前回とは実力も違うし、戦い慣れているのだから。むしろ気遣われたら、困る。

「私は宣言する!!人を記号で管理し、個人を尊重し得ないアショカの政策には、今後一切従わないだろう」
議長の力強い不屈の宣言に、これまでアショカに虐げられていた民衆の歓声は、歓喜のどよめきへと沸騰する。
「紹介しよう!!みんなのためにアショカと戦い、自由を勝ち取った若者達だ!!」
民衆の熱気に、フォボスが圧倒される。
前回は落ち着かずにただ周囲をキョロキョロとみることしか出来なかったが、今回は感慨深く民衆を見て、手を振る余裕もあった。
「そして、今から再びこの町は自由なるソドムと呼ばれることになる!さあ!!自由に感謝しよう!!喜びを、分かち合おう!!」
どよめきは絶叫へと膨らんだ。興奮のあまり涙ぐむ者もいる。
人々が叫ぶ嵐のような祝福が、議長をフォボス達やミハエル達レジスタンスに降り注ぎ、町全体へと広がっていく。
興奮が絶頂になった頃に、花火が打ち上げられた。

火星物語 未完 『伝承』

未完

注意
私的設定があります。











フォボスが知る風使いはクエスとサスケとアンサーだけだ。
そして彼にとって風使いとは、人々の自由と正義のために戦う勇者だった。これはクエス達の影響が強いといえる。
フォボスにとってアンサーは支え合った友だが、クエス達はフォボスを導く師でもあった。

彼らのような立派な風使いになりたいという純粋な願いを持つフォボスが、もっと”風使い”のことを知りたいと思うのは当然だ。
最後の風使いとして、風使いのことを学ぶ。それが生き残りとしての義務だとすらも思っていた。
世界中から風使いに纏わる本を集めて、胸をときめかせながら紐解いていく。
そこには、風使いへの差別と偏見があった。

読み終えた夜は頭の芯が火照るようで眠れなかった。しまいには自室から抜け出して、風のクリスタルの前で一夜を過ごしたほどだ。
怒りと憎しみはフォボスの中に黒の風を蔓延らせる肥料となる。だから決して捕らえられてはならない。
それをわかっていても、黒い感情は胸の内で狂ったように暴れ続けた。
延々と泣いて、言葉として吐き出して。漸く静まった頃に、フォボスは風のクリスタルに誓う。
正しい風使いの姿を後世に伝える、と。決して絶やすことなく、尊敬する懐かしい友達のことを語り続ける。
それが、今現在に生きるフォボスの出来ることだ。

聖剣伝説3 未完 『虜囚』

未完

注意
『Insane empress』シリーズの話です。
オリキャラメインです。
少年=ホークアイ・ジェシカの子供です。











忌々しいローラントの牢獄に囚われてから、随分経つ。その間少年の心を満たすのは国を痛めつけられた仇討ちよりも、同胞のことばかり。
彼が虜囚である限り、ローラントはナバールに手出しをしないという女王の言葉に信憑性はなく、約束は当てにならないとわかっているが、それだけは信じたかった。

「ナバールの捕虜の骸はどう葬った?」
「女神の御許に行けないように焼き、骨は海に捨ててやった」
少年をいたぶるようにせせら笑う看守を前に、彼は顔色一つ変えなかった。
看守が少年を嬲る言葉をさらに投げかけようとしたとき、その体が崩れ落ちる。

看守の言葉を聞いて、少年は心から安堵した。
仲間達の亡骸が、土に埋められ、腐食して虫に食われるなどという悍ましい辱めを受けずに済んだことを。
それだけで少年の心に重くのしかかっていた懸念の一つは消えた。

看守の魂を吸い、捕食する妖魔を睨む。
憎しみを露わにする少年を気にせずに、美しい妖魔が指先を鳴らすと少年の前にナバール料理が忽然と現れた。
「さあ、食べなさい」
人に命じ慣れた傲慢な声に、少年の眉が寄せられる。
本当はこの料理を妖魔に投げつけてやりたい。だが、それをやった後この妖魔は捕虜の一人を連れてきて、少年の眼前で板刑に処した。辞めるように懇願しても聞き入れず、少年が食事を終えるまで捕虜を打ち続けたのだ。
自分の命がナバールの命綱と悟った少年は自死も出来ず、ささやかな反抗すらも諦めざるを得なかった。

少年が食事を終えた後、妖魔は少年の健康状態についていくつか質問をする。それに少年は淡々と答える。
そのやりとりを終えたら妖魔は姿を消すはずだったが、今日は違った。
いつまで経っても消えない妖魔に少年が訝しく思い、妖魔の顔を見る。どうやら少年の顔を見ていたらしい妖魔と目が合い、吐き気がこみ上げた。
上級妖魔であるこの女はこの上なく美しかった。しかしその正体を知る少年は美に見惚れるよりも嫌悪を催す。
この顔と体で女王の閨に侍り、ナバールを徹底的に痛めつけた怨敵ともなればなおさらだ。
「それは違うわよ」
妖魔の美し声が空気を震わす。
「随分失礼なことを考えているようだから、訂正しておくわ。
わたくしと女王はいかがわしい関係ではなく、同じ目的を持った同志。 そのためにわたくし達は協力しているの。
……まあ、もっともあなたがわたくしの言うことを聞き入れるとは思っていないけどね」

聖剣伝説SOM 未完 『文盲』

未完

注意
私的設定があります。
一部不適切な内容があるかもしれません。












古代遺跡に生気を抜き取られていた人々が元に戻り、ヴァンドール軍が撤退したことによるお祭り騒ぎの中。
パンドーラを救った英雄達は宿の一室に籠もっていた。

「字が読めないなんて、信じられない!!」

「文字が読めなくても、生きていくのに何ら困らないよ」
「そうそう、都会暮らしじゃなきゃ、文字なんていらないからな。なあ、ニイちゃん!」
恥じることなく開き直るランディとポポイに、プリムの頭が痛くなる。
「いやいや、学がないと困るでしょ。
文字を読むなんて、知性ある人間として当たり前の事よ。
読めない事を胸を張って言うなんて、どうかしてるんじゃないの!?」
「そこまで言わなくてもいいじゃないか!!
文字が読める事が当たり前!?それはプリムがそういう環境で教育を受けてきたからじゃないか!!」
「な、なによ……そこまで怒らなくてもいいじゃない……」
「怒るよ!!」

「学校にも行かず、百姓として生きていたら文字を学ぶ機会なんてないよ。
村の誰も文字が読めないんだよ。なのに余所者の僕が学べるわけないじゃないか」
医者も一子相伝の口伝で知識を伝え、村長の家に本はない。
文字とは無縁の生活を送ってきたのだから、文盲は当然だ。
「でも、田舎でしょう?娯楽はどうしてたのよ?」
「それは……まあ……その……。
でも、余所者の僕には関係のない事柄だったから!!」
「なーに、顔を真っ赤にして、言い訳してるんだよ。ニイちゃん」
「してない!! 顔も赤くなってないし、言い訳なんて、なんでしなきゃならないんだ!?」
「そこまでムキにならなくてもいいじゃないか……」

「娯楽と言っても、基本暇なしで働き尽くめの生活だったから暇になることが珍しかったよ。
ああ、そういえば森に行っていたかな」
「探検でしょう。 あれって子供心にワクワクドキドキするけど、大人になったら息抜きと健康目的だけになるのよね」
「………僕は薪を拾いつつ、食べ物探しが基本だったよ」
森には山菜や食材がたくさんある。ひもじくなったら森に薪を拾いに行くと言って、よく森に行っていた。
村の近くには山の幸は少なかったが、少なくともランディには何故か幸豊かな場所がわかった。言葉ではうまく説明できないけど……そういうものとして認識していたのだ。
薪と一緒に山の幸も持って帰れば、村長からは褒められた。
薪を拾いつつ食い扶持を稼ぐ。しかしそれよりも、森にいる間は覚えていない母の香りに抱かれているような安心感に包まれて、心安らぐ貴重な時間だった。

「二人とも文字が読めないんだったら、私が教えてあげるわよ!!」
「えー、オイラは人間の文字なんて読めなくてもいいよぉ」
「駄目よ!!」

「宿屋だから客の子供用の絵本が置いてあるでしょう。それを借りてくるわ」
意気揚々と部屋から出て行ったプリムを見送った後に、ランディがはぁと大きな溜息を吐く。
「なぁ、ニイちゃん」
「何?」
「ネエちゃんはあれでも一応貴族だから、要求するレベルが非常に高いだけだぞ。
だから、気にする事はないって!」
「………………それはわかってるけど……。
プリムとの常識の違いに、ちょっとね……」
「あー、そりゃあ庶民と貴族じゃあ違って当たり前じゃないか」
「そうだね。でも出会ってから今までの間で、そんな身分差を忘れていた気がするよ」
出会った当初は貴族として人に命じ慣れていたプリムと、余所者として小作人扱いで人に命じられ慣れていたランディでは、早くも主従関係が出来てしまっていた。
ルカに託された聖剣の勇者としての使命でガイアのへそに行く事を押し切れずに、プリムと一緒に妖魔の森に行ったのもそのためだ。
それでもポポイが仲間になってからは、その関係性も変わっていったが……。

「本来ならプリムは手の届かない雲の上の存在なんだなって思ってさ……」
「ニイちゃん……」

「文字を覚えたら、代書屋になろうかな」
聖剣に纏わる事柄が終わったら。今はその先の事は考えられないが、その一端を掴めた気がする。
百姓といっても、どの村でも余所者には冷たく厳しい。悪くて乞食、良くて小作人として一生を終えるだろうと漠然と思っていた。
代書屋になればそれだけで珍重されるし、どの村でも暮らしていける。
「あら、代書屋は誰にでも出来る仕事じゃないわよ」
今はいはずの人物の声に、ランディが勢いよく扉の方を見る。
そこには、数冊の絵本を抱えたプリムが立っていた。
「え?」
「当然でしょ。代書屋に字の綺麗さと教養は必須よ。
言葉選びのセンスを磨くためにたくさんの語彙を増やさなきゃいけないし、手紙に使う紙とインクの知識も必要だし、流行情報もね。それに役所に届ける書類や陳状だって、ちゃんとした学識がなければ門前払いされるだけよ」
話しながら机の上に絵本を並べていく。その内容にランディは気が遠くなっていく思いがした。
絵本を並び終えた後にプリムは、ランディにノートを渡す。
「代書屋ってのは、ただ字が書けるだけでなれるような仕事じゃないの」
それは純粋にランディの将来を案じての言葉だろう。
しかし、やはり……。
「……田舎じゃ、読み書き出来るだけで尊敬されるからいいんだよ」

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