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試行錯誤

聖剣伝説をメインに、気の向くまま二次創作を綴っていくサイトです

火星物語 小説 『相似』

火星物語 小説

注意
フォボスの血縁捏造設定があります。












芸術の都ラブリー。
この華やかな都が、後のアショカへ、そしてハーネスに繋がっていくなどフォボスにはとても信じられなかった。
賑やかな町を興味深く観光しながらも、いつも通り人々の中に面影がないかを注意深く見る。

新しい町に着いたフォボスが必ずやることは、町行く人々を観察して、話しかけることだ。始めの頃は単なる趣味だとアンサーは考えていたが、どうやら違うらしい。
いつでも聞く機会があると後回しにしていた疑問。旅の終わりが近づいていると感じるようになってからは、今更聞くのも躊躇われて尋ねられなかった。
その葛藤も、今回で終わりだ。
「ねえ、フォボス」
すれ違う親子を見ているフォボスに声をかける。
「君、よく街の人を観察してるけど、なにか理由でもあるの?」
フォボスのそれは顔も知らない探し人を捜している風情があったからこそ、アンサーは今まで興味を持ちながらも聞くに聞けなかった。
「……大したことじゃないよ。ただ……」
「ただ?」
「過去の世界にいる僕や知り合い達の先祖を探していたんだ」
過去を旅する中で、自身や知人の先祖を捜す。
天涯孤独の身の上で、自分のルーツもわからないフォボスにとって、先祖探しはどうしても叶えたい願いだった。
知人達の先祖探しは……好奇心だ。
「ご先祖を? ……でも600年も離れてるんだよ。わかるの?」
アンサーの純粋な問いに、フォボスは顔を曇らせる。
リビドーの古代文明研究所の所長と、カンガリアンで見かけた下手なダジャレを言う男。
これまでの旅で、アービンと村長の先祖らしき人は見つけられたが、肝心のフォボスの先祖については分からない。
「……ううん。やっぱり見ただけじゃ分からなかったよ。
でも、知り合いの先祖らしい人は見つけられたから、それで十分かな」
見ただけで先祖が分かるなんて、都合のいい話はない。わかっていたとはいえ……残念だ。
落ち込むフォボスに、アンサーがなんと声をかけたらいいかと迷う。
いつか君のご先祖が見つかるよ。
……もうアンサーの時代に来られないフォボスに、そんなこと言えない。
堂々巡りに陥ったアンサーの思案を破ったのは、フォボスの言葉だ。
「こうして先祖探しをするのって、やっぱりおかしい?」
以前セイラに話したとき、彼女は言葉を濁しながらも無理だと言った。
実際その通りだったけど、それでも探さずにはいられない。
「そんなことない! 僕だって、もしフォボスの時代にいけたら、僕や、知り合いの子孫を探すよ!!」
アンサーだって、もし未来にいけたらフォボスと同じことをする。遊び人だったポチの子孫は案外簡単に見つかるかも知れないけど、それでも気になって会う人に面影がないかと探すだろう。
それこそ、行く先々で人を観察していたフォボスのように。

アンサーとフォボスのやりとりを少し離れて見ていたポチはやれやれと溜息を吐く。
「あいつら、なんで気付かないんだ?」
小柄で愛らしいアンサ-と、すらりと手足の長く凜々しいフォボス。
顔形や体格は異なれど、表情や仕草は酷似している。
何故気付かないのかとポチとしては首を傾げざるを得ない。
あの二人は互いの相似に気付いていないが、第三者としてポチは早い段階で気付いていた。以前にもそれとなく話したが、その時の二人の疑問と困惑の表情すらそっくりで、呆れてしまった。
赤の他人が、そこまで似るものか。
ポチから言わせれば、フォボスの先祖はアンサーだと確定している。
ただ、そうなると……。
「……やっぱ、これは言うべきじゃねえよな」
フォボスの話では、アンサーはアロマという国の建国王になるらしい。そうなるとフォボスは王子の筈だが、彼は天涯孤独の庶民だ。
……王国が滅びるのは、珍しくはない。フォボスは亡国の後に生まれた、それだけの話だろう。
いずれ起るであろう暗い未来を話して水を差すのは、ポチの柄じゃない。
今は精々、アンサーが曇らないようにする。それがアンサーの友人として、保護者としてのポチの役目だ。


言い訳
ステータス画面のフォボスとアンサーのポーズ絵は、同じ表情や動作です。(ちなみにセイラ、タローボー、クエス、サスケ、ポチはそれぞれ個別のポーズ絵があります)

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聖剣伝説3 未完 『子供と孫の違い』

未完

注意
私的設定があります。
エリオット・ジェシカ(ホークリ前提)です。
彼女の選択』のフレイムカーンの話です。












ジェシカとエリオットが付き合っている。
その報告を聞いたときの、フレイムカーンの心に真っ先に宿ったのは、恥辱と憤怒だった。

「……駄目だ。そんな汚点はあってはならん」

フレイムカーンはエリオットを好んではいるが、所詮は一個人としての感情にすぎない。
娘との結婚相手?他国人である時点で論外だ。
なんとしても、別れさせなければ。
例えジェシカが泣き叫ぼうとも、フレイムカーンを罵ろうとも関係ない。絶対にあってはならないことだ。
――ホークアイには許したのに、ジェシカは許さないのか?――
どこからか、亡きイーグルの声が聞こえた気がした。
「…………イーグル。お前ときたら……」
年の離れた妹に甘かったイーグル。ジェシカの悲嘆を避けるべく黄泉国より声を届けてきたか。
「いいか、イーグルよ。我らは片鱗とは言え、雲上様の血を受け継ぐ貴い存在だ。
我らは血の同胞との婚姻が大原則。もしジェシカが中流層の男を選べば……儂とて鬼ではない、無理矢理引き裂かず説得する。それでもジェシカが貫き通すのなら、祝福しよう。
だが、他国人の血が直接入るのは絶対に駄目だ」

――ホークアイは?――
「…………あいつは……。 いずれ飛び立っていただろう。それが、予想よりも早かっただけだ……。
なによりも、儂にはホークアイを幸せにする義務がある。 あいつが今不幸だというのなら、ローラントを滅ぼしてでも奪い返すぞ」
――本気でやるつもりか?――
「……馬鹿言え。そんなことすれば、儂が恨まれるではないか」
――ジェシカには恨まれてもいいのに、ホークアイには恨まれたくないのか?――
「…………儂とて、ジェシカに嫌われたくはない。だが、こればかりは仕方がない。
イーグル。お前が死んでしまった以上、儂の子供はジェシカだけなのだ」

ホークアイも同じように他国人と結婚したが忌避や嫌悪よりも、ホークアイが幸せでいてくれたら彼がナバールから離れても良かった。
ローラント王女との結婚も、フレイムカーンが強硬に反対したらホークアイも引き下がったに違いない。しかし、フレイムカーンは止めなかった。
ホークアイを外に出さないために阻止すべきだと分かっていても。例え会えなくなっても、ホークアイには幸せでいてほしかった。
自分の選択によって陰りの顔を側で見続けるよりは、離れていても同じ空の下を幸せに生きていると思えば、フレイムカーンにとって己の悲哀に目を閉ざし、本望だと胸を張って答えられる。

幼いホークアイを引き取ったあの日。フレイムカーンは、彼の両親や祖父母に必ず幸せにすると誓った。
何よりも尊いその誓いだけは、破ってはならない。ましてや己の一存でホークアイを不幸にすれば、それこそ彼らに合わす顔もない。

ホークアイがどんなにナバールを愛していても、いずれ外へ飛び出してしまうとフレイムカーンはいつしか覚悟するようになっていた。
外への憧憬を抱く姿を見た時からか、それとも彼の祖父母が風に由来する名前を持っていたからか。
風が吹いているのだ。いつまでも鷹が岩屋の中に留まっているわけがなかろう。去るのを惜しんで、飛び立たずにいられない鷹の風切り羽を切るなど惨いことはナバール首領である前に一人の祖父として出来なかった。
しかし、ジェシカは駄目だ。
他国人と結婚することがジェシカの幸せだと説かれても、到底許容できない。
それどころか血を汚す娘に、理不尽な憤りをぶつけて殺してしまう恐れすらあることをフレイムカーンは自覚していた。
「……何故、こんなことに……」
ジェシカ。お前はナバールから出てよい存在ではない。
その血は、ナバールの次代のために。その身の還るべき場所、死ぬ場所はナバールだけだ。

ギミカルハート 小説 『傷心の妖精』

その他


――Q。ルミエッタさん。あなたの黒歴史はなんですか?

「え……?黒歴史、ですか?」
困惑深げに首を傾げる妖精だったが、暫し黙った後に笑顔を貼り付けた。
「今まで素晴らしい出来事が多かったですから、私に黒歴史なんてありませんよ。 ええ、一つも!」
「……ルミエッタ」
背後から聞こえた懐かしい声に、妖精が勢いよく振り返る。
そこにいたのは、今ではもう会えないはずの、恋しい賢者の石像だった。
「け、賢者様!? どうしてここに?」
「それはまあ……なんだ。こちらの都合というヤツだ。
ところで、君の黒歴史はダンガンゾーンでの「がおー」ではないのか?
あれは素晴らしい演技だったが、女性の君には些か……」
「きゃー!!何を仰られるんですか!?」
怒りと照れのあまり、顔を林檎と見紛うほど紅潮させ、賢者の頬を思いっきり叩く。
しかし、石像はヒビ一つはいらず、多少グラつくだけに終わった。
「む……前より強度が増してますね」
「それもこの空間ならではの特徴だな」
「賢者様。そもそも」

――では、ルミエッタさんの黒歴史はダンガンゾーンでの「がおー」でよろしいですね?

「違います!!」
謎の声の問いかけにルミエッタはすかさず反論した。
「ルミエッタの黒歴史か……。邪妖精女王ルミエッタという線も……」

――ああ、それもありましたね。

「ダンガンゾーンでのルミエッタは、今から思い返せば……ああ、これ以上はやめておこうか」
「いや……。もうやめてください……」
賢者の石像と謎の声が繰り広げる、心の傷口に塩を塗り込む非道に。ルミエッタは怒るよりも、なにやら悲しくなって、普段は元気一杯の触覚は垂れ下がり、頭を抱えて蹲っていた。
「ルミエッタ。そんなに落ち込むなんて、君らしくないぞ。
多少黒歴史が暴露された程度で悲観するなんて、大人げない。私なんか」
「私の黒歴史を掘り下げたくせに何を言ってるんですか!? もう、乙女のことが何も分かってない賢者様なんて、デリカシーがない以前の問題です!!」
……今のルミエッタは一言で言うなら、阿修羅の如き形相で賢者の石像に掴みかかる邪妖精女王だ。

――A。では、ルミエッタさんの黒歴史はダンガンゾーン全般ということでよろしいですね。
  私はそろそろ立ち去りますので、後はお二人で語らってください。

「こんな状況でどうしろと!? ああ、ルミエッタ。何も言わずに帰らないでくれ!!」

聖剣伝説3 未完 『使い道』

未完

注意
私的設定が強い話です。
2→3という時系列です。










美獣が淡々とした眼差しで、横たわる少年を見下ろす。
魔法による深い眠りの中にある少年は、魔法を解除しない限り目覚めない。今、致命傷を与えたらそのまま永遠の眠りに落ちるだけだ。

「これが、黒の貴公子様の新しい身体か……」
魔王の腹心であり、魔王の新たなる身体になることを定められた美獣の主。
黒の貴公子の起死回生の一手が、ローラント王子エリオットの身体にある。

闇の血族の力を損なうことなく全て引き継げるのは、同族とマナの血族だけだ。
それ以外の種族では、膨大な魔力に身体が耐えきれずに塵も残さず消えるか、互いの力が相殺して自滅するかのどちらかでしかない。
しかし、たった一つの例外がある。
それまでエリオットを見る目に感情を乗せていなかった美獣に、熱が篭もる。
「この子供が、かの巨大なる空の器とは僥倖だった」
闇の血族は最早黒の貴公子以外存在しておらず、妖魔の力も乗せられた彼の魔力に耐えられる器など存在しないはずだった。
只人であるにも関わらず、無限に等しい闇の血族の力を全て引き継げられる希有な存在。”巨大なる空の器”。
魔界の中枢を支える永遠をゆく者候補になり損なった存在。ただ力を受け入れられるだけの器が造られ、肝心の中身が注がれなかった不良品。
呪術師タナトスすら見向きもしなかった廃品だが、黒の貴公子にとっては唯一無二の希望だ。

魔王が黒の貴公子に転生の儀を施す前に、黒の貴公子はエリオットに乗り移る。
これは美獣と黒の貴公子の二人だけの秘密だ。
何よりも闇の血族の血を欲する魔王がそのことを知れば、即座に転生の儀を執り行い、黒の貴公子の魂魄を抹消して乗り移るだろう。
元来魔王に仕えていた美獣にとって、魔王に黒の貴公子の陰謀を伝えるのが正しい忠義の在り方だ。だが、彼が妖魔となる前、まだ人間の幼子だった頃から知る美獣は、黒の貴公子を死なせるには忍びなかった。何より……。
今ではもう思い出せない、妖魔になる前の記憶。ただの猫であった私にも守りたい誰かがいた。主を守れなかった未練と無念は、今でも胸にこびりついて剥がれない。
ここで黒の貴公子を裏切れば、また同じ思いをするかもしれない。そして……今度は裏切るのだから、もっと酷い。

新たなる身体を得たい黒の貴公子にとっては、巨大なる空の器を手に入れた今が最初で最後の機会だ。

聖剣伝説2 未完 『導きの明かり』

未完

注意
私的設定があります。













床から生えた手に足首を掴まれた。ダークリッチの手首から生じた禍々しいオーラが、ランディの身体を包む。
ランディの身体を乗り移りに適した心にすべく、これまでの人生の中でタナトスが乗り移ってきた歴代の闇の血族達の思念の一部を解き放った。
ダークリッチの手首を斬りつけようとする直前、ランディの精神を虚無へと押し流すべく怒濤の勢いで物心着く前からの孤独な日々が蘇る。
余所者と邪険にされ、疎外され、誰一人理解者も心を許せる友もいなくて、常に遠慮と緊張と屈辱と諦念を強いられてきた。幼い頃は理不尽だと夜な夜な泣いたこともあった。どんな目に遭っても僕には家族がおらず、余所者だから仕方ないと、これまで言い聞かせてきた。
恐慌し、錯乱の渦中にいるランディの精神にとどめを刺すべく、タナトスは更に悪意を注ぎ込む。

ランディを呑み込もうとする闇と間もなく同一化すると分かっていても、抗うこともせずそれを受け入れて……。

「ランディ!!」
「ニイちゃん!!」
闇に呑み込まれかけたランディの意識に、何よりも大切な二人の声が届いた。
プリムとポポイが、僕の名前を呼んでくれる。
それだけで自分が何の価値もなく虐げられる余所者でも、聖剣の勇者という偶像でもなく、ただランディという一人の人間として生きてもいいのだと確信できる。
彼らとの記憶が、温もりが、日常が明かりとなって、ランディを闇の中から導く灯台となった。
こんな所で負けてられない。僕にはまだ生きて、やりたいことが沢山ある。
必死に闇から這い出してランディを引き込もうとする亡者達に僅かばかりの憐れみを抱くが、彼らの望みを叶えてやるわけにはいかない。
生きる。僕のままで生き延びる。
ただそれだけを念じて、亡者達を押しのけ、突き飛ばし、蹴って踏みつけてでも光の元へひたすら邁進する。
ランディを闇の中に引きずり込む力は、凄まじい。けれど光明がある今、負けられない強さがランディにはあった。

「……僕は……」
タナトスが身体を失い、乗り移りに集中している今。不死のタナトスを倒せるのは、この瞬間しかない。
「負けるわけには、いかないんだ!!」
強制的に精神干渉が解かれ、ほんの数秒の隙を晒したダークリッチの心臓めがけて聖剣を深々と突き刺す。
いかにタナトスといえども肉体を失い、精神を消耗している時に聖剣で核を貫かれては一溜まりもない。
ダークリッチが霧散するように消えていき、数多の命を犠牲に悠久の時を生きた呪術師は、塵一つ残さずにこの世から消失した。

聖剣伝説 『女神の騎士』 未完 番外編 【彼の名前】

未完

注意
二部の時系列です。












女神の騎士となり、一万年近く生きてきた彼は、本来の名前を大昔に忘れていた。
そもそも人間の脳は数千年生きる前提で作られておらず、妖魔に寄生されていなくとも古い記憶はどんどん失われていく。
かつて数千年以上生きた三柱のように一カ所に留まらず、客観的な視点を持たない彼が今まで生きてきた正確な時間や、名前が分からなくなるのを責めるのは酷といえよう。

「ドーラ」
名前を呼ばれたとき、極稀に違和感が脳裏をかすめるときがある。彼自身、今の名前が本名だとは微塵も考えていなかった。
悠久の年月を生きて、何度も頭部を破壊しながらも再生して生き続けているのだ。本名なんて、いつの間にか忘れていた。
遙か古の出来事である人間だった頃の記憶は生きていく過程で塗り潰されて、消えてしまっている。覚えているのは女神によって保護された最低限の記憶のみ。
為すべき事は分かっており、それを為すために生き続けるのが彼に与えられた責務だ。

「ドーラ」
傭兵仲間に呼びかけられると、剣の手入れを止めて顔を上げる。
太陽のような笑顔は誰かを連想させるが、如何せん生きてきた年数が年数だ。誰が誰だか心当たりが多すぎる。ましてや忘却の彼方に消え去った者達も含めると、もう……わからん。
それでも”不死者”と畏れられている俺に臆せず、また不死の正体を突き止めようと欲望を滲ませず、自然体で接してくる奴は本当に珍しい。
その度胸を買って、話を聞いてやることにした。
男が語るのは世間話から始まり、この戦争の勝敗にまで及んだ。必ず勝つと意気込む男に理由を尋ねれば、国に家族がいるのだと語った。たった一人に妹と婚約者を守るためになんとしても勝つと熱く語る男に、彼はその熱意を傾けられる存在がいる男のことを羨ましく思った。

愛する者の記憶も、不死者になる前の幸せな記憶も、俺には何もない。
あるのは、肉体と魂に刻まれて彼を生かし続ける、女神の絶対なる命令だけだ。

不死者である生を終わらせる方法は、ただ一つ。女神の望みを達成することのみだ。
いつ訪れるか分からない遠い未来に訪れる暴走したマナの女神を、永遠の命を与えた存在を殺す。
女神の命令を叶えれば、彼は女神の騎士から人間に戻れる。
そして、その時は彼が人間を辞めてから一万年以上の月日を越えてやってきた。
世界各地で起きる様々な異常現象と、新たなるマナの種子の存在。
間もなく、その時は近い……。

「ドーラ」
『――――』
 夢うつつにマナの声が聞こえる。
その名前と重なるように、何かの音が聞こえたような錯覚を抱いた。

聖剣伝説FF外伝 未完 『最期の姿』

未完

注意
私的設定があります。
千年前の、ヒロイン母の話です。












女は生命の気配が乏しい森の中を進み、枯れた大樹の前に立つ。
大樹に絡みつく夥しいパイプとコードや機械類の数々は、人間がマナの樹を汚した証。
「……なんて、ひどい……」
想像していたよりも酷い惨状に、女の感情が荒ぶる。
千年の寿命が尽きて近いうちに死ぬ大樹であったが、このような終わりなどあってはならなかった。
生み出すマナよりも多くを搾取され続け、それでも尚命ある限り世界を支えた偉大なる大樹。
このマナの樹にもかつて人間だった頃があった。
「……姉さんは、とても強いわ……」
女が俯くと、涙が地に落ちる。
悲しい。
世界を救うために、人としての生を捨てた姉に対しての惨すぎる報いが。
今でも、瞼の裏には優しかった姉の笑顔が。耳には穏やかな声が。手には柔らかい温もりが残っている。
決して、こんな死を迎えていい人ではなかった。

「姉さん、姉さん。よく今まで耐えてくれたわね。でも、もういいの。後は私が引き継ぐわ。
私が、いつまでもここにいるから。だから、姉さんはもう安らかに逝ってもいいのよ」
女には、後の世のために残した娘が一人いる。
千年の眠りにつかせた娘が目覚めて、マナの樹になるまで私はここにいる。

大樹の幹がひび割れて、崩れ落ちる姿を。
姉の最期の姿として。そして千年後に訪れる自身の末路として。
女はただ、ただじっと見つめていた。

聖剣伝説3 小説 『切欠の出来事』

聖剣伝説3(HOM)

注意
私的設定のある話です。
2→3の時系列です。
「夢夜1 『魂の記憶』」に繋がる話です。













私は敵の魔法に為す術もなく倒れていた。
負けた。その事実が私の胸に重くのしかかる。
これまで勝ち続けていたのは、私自身の才覚と、努力あってこそだ。
もう二度と負けたくない。その一念が魂の記憶に今も尚深く刻まれていた。

更なる魔法を食らい、意識が遠のくが、無様に倒れていられるか。戦ってやる。
ろくに動かぬ身体に鞭を打ち、起き上がって、敵の顔を睨む。
「……とどめだ…」
死ぬ?ここで?あんな奴に敗れて?
冗談ではない、と思った。
これから騎士になって、いずれは将軍を目指す。大軍を指揮するあの快感と充実をまた味わいたい。
尊敬する主君に相応しい存在になりたい。大恩ある伯母に孝行したい。可愛くも生意気な妹の将来を見守りたい。
やりたいことは沢山ある。
なにより、私はまだ死ねない。
再び惨い死に方などしたくない。今ここで、死にたくない。
私の声が天に届いたのか、援軍の声が聞こえる。

余裕綽々で立ち去り、消える魔導師の後ろ姿にこれまで忘れていた記憶が蘇った。
炎と崩れゆく城壁、飛び去っていく神獣もどきと、私を見下ろす憎い仇。
呻くように呪詛を吐く。
紅い魔導師。
私の忌々しい記憶を引きずり出した怨敵。
輪廻転生の浄化によって薄れていた憎悪と怨念の片鱗が再燃する。
もう、この想いを忘れてなるものか。

途絶えゆく意識の中、私はたった一つのことを思っていた。
今度こそ、勝つ。その決意を。
どんな手段を使ってでも奴を殺し、敗北の汚辱を雪ぐ。
そのためならば、私は……オレは――。

火星物語 未完 『二週目』5

未完

注意
逆行物です。













「私は、アービ…ン。下水溝……掃…除士のアー…ビン……」
フォボス達に背を向けて淡々と下水溝を掃除するアービンの姿に、フォボスが痛ましく思う。
親友がAチップによって人格を破壊された様は、トラウマの一つだ。前回はアービンが元に戻っても、暫くは夢に見た。今回も……やはり見ていて辛い。
「フォボス、今回もお願いします」
「任せて」
ガッツポーズで気合いを入れて、アービンの後頭部を勢いよくスパナで殴った。

アービンは胸中で溜息を押し殺して、少年Aと少女Yの後ろ姿を見る。
少年A達によって正気に戻されてから色々あったが、今はアービンの頭の中にあるAチップを外すために治安の悪い下カンガリアンの中でも危険な第八地区に行くことになった。
そんな危険な場所に行くなんて、とても恐ろしいが……大丈夫だと思いたい。
異様に戦い慣れているような気がする少年Aと一緒なら安全だろうけど……やっぱり心配だ。
……それにしても、なんでこいつら下カンガリアンの地理を詳しく知ってるんだ?この前のカンガリアン観光の時に聞こうと思っていたが、結局聞きそびれたんだよなあ。
今はそんなことを聞ける空気じゃないから、どうしたもんか。こうした空気の読めない発言をするのは俺じゃなくて、少年Aの役目だろ。

フォボスとセイラの時間軸では死んだランディを前にして、フォボスは複雑な気持ちになる。

アービンとランディ。大切な親友と、お世話になった人。彼らを死なせたくはない。でも、歴史を変えられるのか?
歴史は変えられないし、変えてはならない。それはフォボスが前回の旅で実感したことだ。
アービン達を助けたい。でも、彼らの死を受け入れるしかないという矛盾した気持ちが鬩ぎ合う。
葛藤を振り払い、アービンのAチップを外してもらえるように頼む。
「いいでしょう」
ランディの指示を受けたシェイルがアービンの後頭部を弄っていく。
「ずさんな差され方をされているわね。脚の調子が悪いでしょ?」
「なんでわかるんだ?」
シェイルの言葉を引き金に、フォボスの脳裏にある記憶が蘇る。
ラディスに会う前から、アービンの体調不良は続いていた。村人達は働き過ぎの疲労だと言っていたし、フォボスもそうだと思っていた。でも、Aチップの後遺症で長くない命だったと……。
例えラディスが風の谷に来たときに彼を倒し、ブラパン党にアスラの打ち上げ基地がラッキーにあると伝えたとしても、アービンはいずれ死ぬ。……その後はどうなる?
現代を含めての決められた歴史なら、都合良く変えることは不可能じゃないか。
本当に歴史を変えたかったら、アロマで命名の儀を受けて、生涯アロマから出なければよかった。そうしたらアンサーの時代からの歴史は大きく変わっただろう。
サイレンが鳴り、辺りに赤い光が点滅する。それにフォボスの意識が引き戻された。
「ポリスが来たようだな…。
行こうか、シェイル」
「はい、ランディ様」
「ランディさん。待って!
風使いのことを、ハーネスに売りましたか?」
立ち去ろうとするランディに、フォボスが今までの疑問をぶつけた。
今から思い返せば、フォボス達がアロマに着く前から彼が風使いだとハーネスに知られていた。だから、藍色の風がポリスロボ部隊を破壊したことで正体を知られたわけではない。
それ以前でハーネスがフォボスが風使いだと知る機会は一つ。藍色の風がエマークを撃退した後だ。
エマークからフォボスの情報がシルビーの部隊に流れたとしか思えない。彼が単独でそんなことをするはずがないから、ランディの指示だろう。……本当は疑いたくないからスパイの可能性も信じたい。
どちらにせよ、ランディに聞くのが一番だ。
ランディの表情はサングラスに隠れていて分からないが、シェイルは目を伏せていた。
「…………さて、何のことかな。
君達も捕まらないうちに早く逃げるといい」
足早に立ち去っていくランディ達の後ろ姿に、フォボスが沈痛な面持ちになる。
「フォ……少年A……」
セイラがフォボスの肩に手を置く。
「……早く行きましょう」
「……うん」

俺達をテロリスト呼ばわりして襲ってくるポリスロボは少年Aと少女Yの二人で簡単に撃退していた。
体力お化けで俺達の荒事担当の少年Aならまだしも、少女Yまでこんなに強いなんて一体どうなってんだ?
それにしても、あのテロリスト達と別れてから少年Aと少女Yはなんか辛気くさい空気だ。
風使いをハーネスに売った?それが少年Aと何の関係があるんだ?
そもそも風使いといえば、アロマの建国王のアンサー様も風使いって記録があるよな。風使いはアショカとの戦争で400年前にいなくなったみたいだけど……。

テロリスト呼ばわりされて追いかけ回されて、もうカンガリアンには俺達の居場所はない。アロマに帰ろうぜ。
落ち込む少女Yを元気づけるために一緒にアロマに行こうぜと誘おうと思っていたが、少女Yは俺が言う前に自分からアロマに行くと言い出した。
……おかしくないか?こんな極限状態の中、行ったこともない場所に自分から行こうと言い出すなんて、変だろ。しかも少年Aはさも当たり前に頷いた。俺が言うのも何だけど、止めろよ。

うーん……なんかこの二人、俺に大事なことを隠してるな?
無性に聞きたいが、今はそれどころじゃねえ。アロマに着いてからたっぷり問い詰めてやるから覚悟してろよ、少年A!

私達を思想犯、テロリストと見なして襲ってくるポリスロボを撃退しながら西ターミナルに着きました。
戦力的には余裕だったんですけど、当時のことを思い出して精神的にしんどかったですね。それにまさかブラパン党がフォボスの情報をハーネスに流したなんて、とても信じられません!
タイミング的に疑わしいのは確かなんですけど……でも、なにか事情があったはずです。今度ランディさん達に会ったら問いただしましょう。
ハーネスときたら映画でクエス様の名誉を貶し、カンガリアンを裏から占領して、私の故郷のソドムまで毒牙にかけるなんて、もう許せません!
そんなことを考えていると、ホバーパトに乗ったポリスロボがやって来ました。前回同様の答えを返して、残されたホバーパトを見ていると、ある考えが浮かびました。
「少年A、少年B!私、ホバーカーを運転したことがあるので、運転は私に任せてください!!」
「本当か!?じゃあ少女Y、運転は任せた!!」
「待って」
笑顔で申告するセイラにアービンは乗り気を見せるが、フォボスがセイラの肩に手を置いて待ったをかける。
「少女Y。君、前にホバーカーを二秒でぶつけたって言ったことを忘れたのか?」
「……忘れてはいませんよ。ただ……今回は大丈夫です!!」
「駄目。ここは実績のある僕が運転する。それに……」
フォボスがセイラの耳元に顔を近づけ、囁く。
「極力歴史通りに、という方針だよセイラ」
「でも……」
耳元から顔を話したフォボスを上目遣いで見る。
「今回だけは駄目ですか?」
ホバーカーを事故って以来、ソドムでは乗り物関係は操縦させてもらえなくなった。それは前回の旅も同様だ。
この機会を逃せば、今回もまた操縦の機会をなくすだろう。
「絶対に駄目!!」
フォボスは頑固な面もある。これ以上引きずっても無駄だから、諦めるしかない。

聖剣伝説2 未完 『それは真か、偽りか?』4

未完

『それは真か、偽りか?』
~case ランディとポポイ~幕間










ランディがちらりとタナトスを見て、目が合う前に慌てて顔を逸らす。
「ニイちゃん、何やってんだよ。見るからに不審者だぞ」
「…………ポポイ」
ランディが言葉を紡ごうとするが、ポポイがそれを制する。
「ニイちゃん、これは夢みたいなものだ。だから、もう死んでいる人間が出てきてもおかしくないぞ」
四天王、皇帝、そしてディラック。
亡くなっている人が平然と目の前にいるというあり得ない現象に、皆見て見ぬ振りしているのか、もしくは何も気付いていないのか。
それはわからないが、投票を終えてからランディはこの会場の異常さに気付いてしまった。
「夢、だって?」
「そう。夢だと考えれば、何でも許容できるだろ?」
それは世界から消えてしまったポポイとこうして話していることも含まれるのだろう。
「夢……いやいや、夢だとしても何でこんな荒唐無稽な夢を見るんだ!?
おかしいだろ! そしてワッツとモリエールの本音なんて知りたくなかったよ!!」
「だから、時空や世界を超越して夢でみんなの意識が繋がってる……的な?」
「なんだよ、それ……」

「……なあ、ポポイ」
「なんだ?」
深刻な顔をしているランディに対して、ポポイは茶菓子を食べながら呑気に訪ねる。
「……百歩譲って、これが夢だと認めよう。
だったら、なんで四天王達は僕たちを前にして何も行動を起こさないんだ?」
皆ランディ達が倒した。
ゲシュタールはその雪辱を晴らすために、自分の半身を機械にしたほどだ。
なのに、怨敵を前にしてもタナトスたちは何ら反応を示さない。精々何ジロジロ見てるんだ?と不審者を見るような視線を返すだけだ。
「そりゃあ、オイラ達を知らない頃と繋がってるからじゃないか?」
紅茶をずずっと啜る。
そうじゃなかったら、会場に着いた途端、敵味方入り乱れての乱闘がそこら中で巻き起こる。その辺りも配慮されているらしい。
最初ポポイは過去と繋がっていると考えていたが、今では四天王達はランディ達の記憶を完全抹消されているのでは?とも考えるようになった。
まあ、どちらも憶測に過ぎないが。
「……大変だ。それじゃまずいぞ!!」
「なにが?」
「この夢が過去に繋がっているとして、彼らに僕たちが聖剣の勇者だと知られたら、歴史が変わるじゃないか」
「…………はぁ?」
「そうだよ。古代遺跡あたりで四人がかりで襲いかかられたら、あの頃の僕たちじゃ太刀打ちできない!」
なんてことだと、頭を抱えるランディに、ポポイは理解できないと言わんばかりに眉根を寄せた。
どこをどう考えれば、そうなるのか。
短くも深く濃い付き合いをしたポポイを以てしてもランディの思考回路は分からない。
「ニイちゃん、そんな空が落ちるような心配をしなくても大丈夫!」
「どうして?」
「起きた後もここでの出来事を覚えているとは限らないだろ」
「それはそうだけど……」
ランディとしてはワッツやモリエールの問題発言などさっさと忘れてしまいたい。……いや、待てよ。危険回避できたと考えるべきか?
それに、ここでポポイとこうして話できたことを忘れたくない。
「そもそも今聖剣を持ってないじゃないか。だったら、聖剣の勇者だって気付かれるわけないって」
「うーん、それはそうだけど……」
「あいつらが警戒しそうなのって、この中じゃジェマだけだぜ。 村人Aにしか見えないニイちゃんは眼中にないんじゃないかな?」
「……村人A……」
不服そうなランディに、ポポイが言葉を選びながらさらに続ける。
「だって、ニイちゃん。あれから畑仕事だけで暮らしてるんだろ。
体つきが戦士じゃなくて、農夫の身体になってるんだぞ」
「……なにを、根拠に……」
声が震える。
だが、ランディにとって、ポポイの言葉はなんとしても否定したかった。
「頻繁に顔を合わせるネエちゃんと違って、オイラは長らく会ってなかったからな」
自分の記憶のランディと、今のランディを比べたら、一目瞭然だと言われて、ランディが打ちのめされたように自分の身体を見下ろす。
「…………………………」
「ニイちゃん?」
「………………帰ったら、パンドーラに仕官するよ」
騎士の国タスマニカではないのかと思ったが、先程の一件を考えれば当然とも言える判断だった。

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