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試行錯誤

聖剣伝説をメインに、気の向くまま二次創作を綴っていくサイトです

火星物語 未完 『二週目』5

未完

注意
逆行物です。













「私は、アービ…ン。下水溝……掃…除士のアー…ビン……」
フォボス達に背を向けて淡々と下水溝を掃除するアービンの姿に、フォボスが痛ましく思う。
親友がAチップによって人格を破壊された様は、トラウマの一つだ。前回はアービンが元に戻っても、暫くは夢に見た。今回も……やはり見ていて辛い。
「フォボス、今回もお願いします」
「任せて」
ガッツポーズで気合いを入れて、アービンの後頭部を勢いよくスパナで殴った。

アービンは胸中で溜息を押し殺して、少年Aと少女Yの後ろ姿を見る。
少年A達によって正気に戻されてから色々あったが、今はアービンの頭の中にあるAチップを外すために治安の悪い下カンガリアンの中でも危険な第八地区に行くことになった。
そんな危険な場所に行くなんて、とても恐ろしいが……大丈夫だと思いたい。
異様に戦い慣れているような気がする少年Aと一緒なら安全だろうけど……やっぱり心配だ。
……それにしても、なんでこいつら下カンガリアンの地理を詳しく知ってるんだ?この前のカンガリアン観光の時に聞こうと思っていたが、結局聞きそびれたんだよなあ。
今はそんなことを聞ける空気じゃないから、どうしたもんか。こうした空気の読めない発言をするのは俺じゃなくて、少年Aの役目だろ。

フォボスとセイラの時間軸では死んだランディを前にして、フォボスは複雑な気持ちになる。

アービンとランディ。大切な親友と、お世話になった人。彼らを死なせたくはない。でも、歴史を変えられるのか?
歴史は変えられないし、変えてはならない。それはフォボスが前回の旅で実感したことだ。
アービン達を助けたい。でも、彼らの死を受け入れるしかないという矛盾した気持ちが鬩ぎ合う。
葛藤を振り払い、アービンのAチップを外してもらえるように頼む。
「いいでしょう」
ランディの指示を受けたシェイルがアービンの後頭部を弄っていく。
「ずさんな差され方をされているわね。脚の調子が悪いでしょ?」
「なんでわかるんだ?」
シェイルの言葉を引き金に、フォボスの脳裏にある記憶が蘇る。
ラディスに会う前から、アービンの体調不良は続いていた。村人達は働き過ぎの疲労だと言っていたし、フォボスもそうだと思っていた。でも、Aチップの後遺症で長くない命だったと……。
例えラディスが風の谷に来たときに彼を倒し、ブラパン党にアスラの打ち上げ基地がラッキーにあると伝えたとしても、アービンはいずれ死ぬ。……その後はどうなる?
現代を含めての決められた歴史なら、都合良く変えることは不可能じゃないか。
本当に歴史を変えたかったら、アロマで命名の儀を受けて、生涯アロマから出なければよかった。そうしたらアンサーの時代からの歴史は大きく変わっただろう。
サイレンが鳴り、辺りに赤い光が点滅する。それにフォボスの意識が引き戻された。
「ポリスが来たようだな…。
行こうか、シェイル」
「はい、ランディ様」
「ランディさん。待って!
風使いのことを、ハーネスに売りましたか?」
立ち去ろうとするランディに、フォボスが今までの疑問をぶつけた。
今から思い返せば、フォボス達がアロマに着く前から彼が風使いだとハーネスに知られていた。だから、藍色の風がポリスロボ部隊を破壊したことで正体を知られたわけではない。
それ以前でハーネスがフォボスが風使いだと知る機会は一つ。藍色の風がエマークを撃退した後だ。
エマークからフォボスの情報がシルビーの部隊に流れたとしか思えない。彼が単独でそんなことをするはずがないから、ランディの指示だろう。……本当は疑いたくないからスパイの可能性も信じたい。
どちらにせよ、ランディに聞くのが一番だ。
ランディの表情はサングラスに隠れていて分からないが、シェイルは目を伏せていた。
「…………さて、何のことかな。
君達も捕まらないうちに早く逃げるといい」
足早に立ち去っていくランディ達の後ろ姿に、フォボスが沈痛な面持ちになる。
「フォ……少年A……」
セイラがフォボスの肩に手を置く。
「……早く行きましょう」
「……うん」

俺達をテロリスト呼ばわりして襲ってくるポリスロボは少年Aと少女Yの二人で簡単に撃退していた。
体力お化けで俺達の荒事担当の少年Aならまだしも、少女Yまでこんなに強いなんて一体どうなってんだ?
それにしても、あのテロリスト達と別れてから少年Aと少女Yはなんか辛気くさい空気だ。
風使いをハーネスに売った?それが少年Aと何の関係があるんだ?
そもそも風使いといえば、アロマの建国王のアンサー様も風使いって記録があるよな。風使いはアショカとの戦争で400年前にいなくなったみたいだけど……。

テロリスト呼ばわりされて追いかけ回されて、もうカンガリアンには俺達の居場所はない。アロマに帰ろうぜ。
落ち込む少女Yを元気づけるために一緒にアロマに行こうぜと誘おうと思っていたが、少女Yは俺が言う前に自分からアロマに行くと言い出した。
……おかしくないか?こんな極限状態の中、行ったこともない場所に自分から行こうと言い出すなんて、変だろ。しかも少年Aはさも当たり前に頷いた。俺が言うのも何だけど、止めろよ。

うーん……なんかこの二人、俺に大事なことを隠してるな?
無性に聞きたいが、今はそれどころじゃねえ。アロマに着いてからたっぷり問い詰めてやるから覚悟してろよ、少年A!

私達を思想犯、テロリストと見なして襲ってくるポリスロボを撃退しながら西ターミナルに着きました。
戦力的には余裕だったんですけど、当時のことを思い出して精神的にしんどかったですね。それにまさかブラパン党がフォボスの情報をハーネスに流したなんて、とても信じられません!
タイミング的に疑わしいのは確かなんですけど……でも、なにか事情があったはずです。今度ランディさん達に会ったら問いただしましょう。
ハーネスときたら映画でクエス様の名誉を貶し、カンガリアンを裏から占領して、私の故郷のソドムまで毒牙にかけるなんて、もう許せません!
そんなことを考えていると、ホバーパトに乗ったポリスロボがやって来ました。前回同様の答えを返して、残されたホバーパトを見ていると、ある考えが浮かびました。
「少年A、少年B!私、ホバーカーを運転したことがあるので、運転は私に任せてください!!」
「本当か!?じゃあ少女Y、運転は任せた!!」
「待って」
笑顔で申告するセイラにアービンは乗り気を見せるが、フォボスがセイラの肩に手を置いて待ったをかける。
「少女Y。君、前にホバーカーを二秒でぶつけたって言ったことを忘れたのか?」
「……忘れてはいませんよ。ただ……今回は大丈夫です!!」
「駄目。ここは実績のある僕が運転する。それに……」
フォボスがセイラの耳元に顔を近づけ、囁く。
「極力歴史通りに、という方針だよセイラ」
「でも……」
耳元から顔を話したフォボスを上目遣いで見る。
「今回だけは駄目ですか?」
ホバーカーを事故って以来、ソドムでは乗り物関係は操縦させてもらえなくなった。それは前回の旅も同様だ。
この機会を逃せば、今回もまた操縦の機会をなくすだろう。
「絶対に駄目!!」
フォボスは頑固な面もある。これ以上引きずっても無駄だから、諦めるしかない。
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聖剣伝説2 未完 『それは真か、偽りか?』4

未完

『それは真か、偽りか?』
~case ランディとポポイ~幕間










ランディがちらりとタナトスを見て、目が合う前に慌てて顔を逸らす。
「ニイちゃん、何やってんだよ。見るからに不審者だぞ」
「…………ポポイ」
ランディが言葉を紡ごうとするが、ポポイがそれを制する。
「ニイちゃん、これは夢みたいなものだ。だから、もう死んでいる人間が出てきてもおかしくないぞ」
四天王、皇帝、そしてディラック。
亡くなっている人が平然と目の前にいるというあり得ない現象に、皆見て見ぬ振りしているのか、もしくは何も気付いていないのか。
それはわからないが、投票を終えてからランディはこの会場の異常さに気付いてしまった。
「夢、だって?」
「そう。夢だと考えれば、何でも許容できるだろ?」
それは世界から消えてしまったポポイとこうして話していることも含まれるのだろう。
「夢……いやいや、夢だとしても何でこんな荒唐無稽な夢を見るんだ!?
おかしいだろ! そしてワッツとモリエールの本音なんて知りたくなかったよ!!」
「だから、時空や世界を超越して夢でみんなの意識が繋がってる……的な?」
「なんだよ、それ……」

「……なあ、ポポイ」
「なんだ?」
深刻な顔をしているランディに対して、ポポイは茶菓子を食べながら呑気に訪ねる。
「……百歩譲って、これが夢だと認めよう。
だったら、なんで四天王達は僕たちを前にして何も行動を起こさないんだ?」
皆ランディ達が倒した。
ゲシュタールはその雪辱を晴らすために、自分の半身を機械にしたほどだ。
なのに、怨敵を前にしてもタナトスたちは何ら反応を示さない。精々何ジロジロ見てるんだ?と不審者を見るような視線を返すだけだ。
「そりゃあ、オイラ達を知らない頃と繋がってるからじゃないか?」
紅茶をずずっと啜る。
そうじゃなかったら、会場に着いた途端、敵味方入り乱れての乱闘がそこら中で巻き起こる。その辺りも配慮されているらしい。
最初ポポイは過去と繋がっていると考えていたが、今では四天王達はランディ達の記憶を完全抹消されているのでは?とも考えるようになった。
まあ、どちらも憶測に過ぎないが。
「……大変だ。それじゃまずいぞ!!」
「なにが?」
「この夢が過去に繋がっているとして、彼らに僕たちが聖剣の勇者だと知られたら、歴史が変わるじゃないか」
「…………はぁ?」
「そうだよ。古代遺跡あたりで四人がかりで襲いかかられたら、あの頃の僕たちじゃ太刀打ちできない!」
なんてことだと、頭を抱えるランディに、ポポイは理解できないと言わんばかりに眉根を寄せた。
どこをどう考えれば、そうなるのか。
短くも深く濃い付き合いをしたポポイを以てしてもランディの思考回路は分からない。
「ニイちゃん、そんな空が落ちるような心配をしなくても大丈夫!」
「どうして?」
「起きた後もここでの出来事を覚えているとは限らないだろ」
「それはそうだけど……」
ランディとしてはワッツやモリエールの問題発言などさっさと忘れてしまいたい。……いや、待てよ。危険回避できたと考えるべきか?
それに、ここでポポイとこうして話できたことを忘れたくない。
「そもそも今聖剣を持ってないじゃないか。だったら、聖剣の勇者だって気付かれるわけないって」
「うーん、それはそうだけど……」
「あいつらが警戒しそうなのって、この中じゃジェマだけだぜ。 村人Aにしか見えないニイちゃんは眼中にないんじゃないかな?」
「……村人A……」
不服そうなランディに、ポポイが言葉を選びながらさらに続ける。
「だって、ニイちゃん。あれから畑仕事だけで暮らしてるんだろ。
体つきが戦士じゃなくて、農夫の身体になってるんだぞ」
「……なにを、根拠に……」
声が震える。
だが、ランディにとって、ポポイの言葉はなんとしても否定したかった。
「頻繁に顔を合わせるネエちゃんと違って、オイラは長らく会ってなかったからな」
自分の記憶のランディと、今のランディを比べたら、一目瞭然だと言われて、ランディが打ちのめされたように自分の身体を見下ろす。
「…………………………」
「ニイちゃん?」
「………………帰ったら、パンドーラに仕官するよ」
騎士の国タスマニカではないのかと思ったが、先程の一件を考えれば当然とも言える判断だった。

火星物語 未完 『二週目』4

未完

注意
逆行物です。












古代文明の兵器を弄っているフォボスがふぅと小さな息を吐き、額にじわりと浮かんだ脂汗を手袋で軽く拭った。
知っている人物相手に、知らない振りをするのもなかなか大変だなぁ。
不慣れなことに挙動不審になっていたのか、クエス達からは怪しまれているようだ。……解せぬ。
そもそも彼らも人のことが言える立場ではないだろう。前回の初対面の時、クエス達はやけに馴れ馴れしくて強引だった。
今だから言えるけど、君達の第一印象怪しかったよ。

こんなことになったのも、やはり起きてすぐにクエス達の名前を呼んでしまったからだろう。誤魔化したけど、やはり不審がられている。
セイラが前回の記憶を持っていたことで、安心していた。それも理由の一つだが、もしかしたらクエスには前回の記憶があると、フォボスは推測していた。
風使いのフォボスと、チェーンウォッチの持ち主のセイラ。
この二人が前回の記憶を引き継いでいるのだから、同じく風使いでありチェーンウォッチの持ち主のクエスも記憶を引き継いでいる可能性が高い。そう考えていたのだ。けれど彼女たちには前回の記憶はなかった。
この条件が関係ないのなら、記憶の引き継ぎが行われるのは、堕天使を倒した僕とセイラとタローボーの三人だけかもしれない。

手元が狂い、あっと声を上げた時にはもう手遅れだった。古代兵器は激しく揺れて、爆発してしまう。
あーあ……。
胸中で落胆の声を出す。
前回は緊張して内部構造を全く見られずに爆発させてしまったから、今回こそはと期待していたのに。
これも歴史の修正力か。忌々しい。先の展開に影響がないのだから、これくらい許してくれてもいいだろう。
煤まみれになった顔を手袋で拭うフォボスに、サスケが笑顔で
「おおっ!凄いじゃないか、少年A!!魔法の機会を爆発させるなんて」
サスケの賛辞?とクエスの顔を見て、フォボスが首を傾げる。
でも……。これはこれでよかったのか……?
釈然としなかったが、クエス達の心証がよくなったことを考えると、まぁよかったと納得することが出来た。

名前のない街の酒場で、水代わりに頼んだ一番安い飲み物をちびちび飲む。
食用のサボテンの絞り汁から作られたその飲み物の味は……値段相応だった。僕の時代では結構高級品の珍味だけど、精製が足りないのかな?
前回と違ってこの時代では水が貴重で高価なものか知っているから奢ってもらうのは悪いから遠慮したけど……別のを頼めばよかった。
控えめに言って、癖が強くて、口の中を洗い流したくなる味だ。
サスケを見ると、ほら言わんこっちゃないと、既に別の飲み物を用意してくれていた。
甘く清涼感のある味で口直しをして、ふうと息を吐く。
さてと、このまま見え見えの罠に直進するレジスタンスを止めるべきか。考えるが、それは止めた方がいいと判断する。
そもそもデーモン議長の助けを求めたのはミハエルが捕まったからだ。そしてクエス達の誠心に議長が動かされた。
ここでそれがなくなれば、これからこの街はどうなる?自由を尊ぶソドムになるのか?

もし、クエス達に罠だと報せて、ミハエル達レジスタンスが捕まらなかったとする。そしてフォボスが前回の議長に教えてもらった秘密の通路の場所を教えたとする。
それでうまくいくのか?
考えれば考えるほど、どこかで失敗するか、周囲に疑念を与えるだけに終わりそうだ。
それよりも歴史に沿っていれば必ず成功することはこれまでの経験から分かっているのだから、無理に歴史を変える必要はない。
そうセイラと話し合って決めたのに、こうして歴史の改竄が脳裏によぎっているのは、今生きているクエス達を前にしているからだ。

アービンとランディを助けるために、ラディスが風の谷に来たときに良くて再起不能にする。それ以外は歴史の流れに沿う。
そう、決めているのに……。……うーん……。

ゲヘナ総督を倒して、炎の刻印を制御していた神像を破壊し終えて、議長やレジスタンス達と一緒に民衆の前に立つ。
名前のない町、いや自由の町ソドムを、セイラの故郷をアショカから解放できた。

フォボスがちらりと両隣に立つクエスとサスケの顔を見る。
前回のクエスとサスケは戦い慣れていないフォボスを気遣って戦っていたが、今回はそんなことは一切なかった。
……仕方ない。前回とは実力も違うし、戦い慣れているのだから。むしろ気遣われたら、困る。

「私は宣言する!!人を記号で管理し、個人を尊重し得ないアショカの政策には、今後一切従わないだろう」
議長の力強い不屈の宣言に、これまでアショカに虐げられていた民衆の歓声は、歓喜のどよめきへと沸騰する。
「紹介しよう!!みんなのためにアショカと戦い、自由を勝ち取った若者達だ!!」
民衆の熱気に、フォボスが圧倒される。
前回は落ち着かずにただ周囲をキョロキョロとみることしか出来なかったが、今回は感慨深く民衆を見て、手を振る余裕もあった。
「そして、今から再びこの町は自由なるソドムと呼ばれることになる!さあ!!自由に感謝しよう!!喜びを、分かち合おう!!」
どよめきは絶叫へと膨らんだ。興奮のあまり涙ぐむ者もいる。
人々が叫ぶ嵐のような祝福が、議長をフォボス達やミハエル達レジスタンスに降り注ぎ、町全体へと広がっていく。
興奮が絶頂になった頃に、花火が打ち上げられた。

火星物語 未完 『伝承』

未完

注意
私的設定があります。











フォボスが知る風使いはクエスとサスケとアンサーだけだ。
そして彼にとって風使いとは、人々の自由と正義のために戦う勇者だった。これはクエス達の影響が強いといえる。
フォボスにとってアンサーは支え合った友だが、クエス達はフォボスを導く師でもあった。

彼らのような立派な風使いになりたいという純粋な願いを持つフォボスが、もっと”風使い”のことを知りたいと思うのは当然だ。
最後の風使いとして、風使いのことを学ぶ。それが生き残りとしての義務だとすらも思っていた。
世界中から風使いに纏わる本を集めて、胸をときめかせながら紐解いていく。
そこには、風使いへの差別と偏見があった。

読み終えた夜は頭の芯が火照るようで眠れなかった。しまいには自室から抜け出して、風のクリスタルの前で一夜を過ごしたほどだ。
怒りと憎しみはフォボスの中に黒の風を蔓延らせる肥料となる。だから決して捕らえられてはならない。
それをわかっていても、黒い感情は胸の内で狂ったように暴れ続けた。
延々と泣いて、言葉として吐き出して。漸く静まった頃に、フォボスは風のクリスタルに誓う。
正しい風使いの姿を後世に伝える、と。決して絶やすことなく、尊敬する懐かしい友達のことを語り続ける。
それが、今現在に生きるフォボスの出来ることだ。

聖剣伝説3 未完 『虜囚』

未完

注意
『Insane empress』シリーズの話です。
オリキャラメインです。
少年=ホークアイ・ジェシカの子供です。











忌々しいローラントの牢獄に囚われてから、随分経つ。その間少年の心を満たすのは国を痛めつけられた仇討ちよりも、同胞のことばかり。
彼が虜囚である限り、ローラントはナバールに手出しをしないという女王の言葉に信憑性はなく、約束は当てにならないとわかっているが、それだけは信じたかった。

「ナバールの捕虜の骸はどう葬った?」
「女神の御許に行けないように焼き、骨は海に捨ててやった」
少年をいたぶるようにせせら笑う看守を前に、彼は顔色一つ変えなかった。
看守が少年を嬲る言葉をさらに投げかけようとしたとき、その体が崩れ落ちる。

看守の言葉を聞いて、少年は心から安堵した。
仲間達の亡骸が、土に埋められ、腐食して虫に食われるなどという悍ましい辱めを受けずに済んだことを。
それだけで少年の心に重くのしかかっていた懸念の一つは消えた。

看守の魂を吸い、捕食する妖魔を睨む。
憎しみを露わにする少年を気にせずに、美しい妖魔が指先を鳴らすと少年の前にナバール料理が忽然と現れた。
「さあ、食べなさい」
人に命じ慣れた傲慢な声に、少年の眉が寄せられる。
本当はこの料理を妖魔に投げつけてやりたい。だが、それをやった後この妖魔は捕虜の一人を連れてきて、少年の眼前で板刑に処した。辞めるように懇願しても聞き入れず、少年が食事を終えるまで捕虜を打ち続けたのだ。
自分の命がナバールの命綱と悟った少年は自死も出来ず、ささやかな反抗すらも諦めざるを得なかった。

少年が食事を終えた後、妖魔は少年の健康状態についていくつか質問をする。それに少年は淡々と答える。
そのやりとりを終えたら妖魔は姿を消すはずだったが、今日は違った。
いつまで経っても消えない妖魔に少年が訝しく思い、妖魔の顔を見る。どうやら少年の顔を見ていたらしい妖魔と目が合い、吐き気がこみ上げた。
上級妖魔であるこの女はこの上なく美しかった。しかしその正体を知る少年は美に見惚れるよりも嫌悪を催す。
この顔と体で女王の閨に侍り、ナバールを徹底的に痛めつけた怨敵ともなればなおさらだ。
「それは違うわよ」
妖魔の美し声が空気を震わす。
「随分失礼なことを考えているようだから、訂正しておくわ。
わたくしと女王はいかがわしい関係ではなく、同じ目的を持った同志。 そのためにわたくし達は協力しているの。
……まあ、もっともあなたがわたくしの言うことを聞き入れるとは思っていないけどね」

聖剣伝説SOM 未完 『文盲』

未完

注意
私的設定があります。
一部不適切な内容があるかもしれません。












古代遺跡に生気を抜き取られていた人々が元に戻り、ヴァンドール軍が撤退したことによるお祭り騒ぎの中。
パンドーラを救った英雄達は宿の一室に籠もっていた。

「字が読めないなんて、信じられない!!」

「文字が読めなくても、生きていくのに何ら困らないよ」
「そうそう、都会暮らしじゃなきゃ、文字なんていらないからな。なあ、ニイちゃん!」
恥じることなく開き直るランディとポポイに、プリムの頭が痛くなる。
「いやいや、学がないと困るでしょ。
文字を読むなんて、知性ある人間として当たり前の事よ。
読めない事を胸を張って言うなんて、どうかしてるんじゃないの!?」
「そこまで言わなくてもいいじゃないか!!
文字が読める事が当たり前!?それはプリムがそういう環境で教育を受けてきたからじゃないか!!」
「な、なによ……そこまで怒らなくてもいいじゃない……」
「怒るよ!!」

「学校にも行かず、百姓として生きていたら文字を学ぶ機会なんてないよ。
村の誰も文字が読めないんだよ。なのに余所者の僕が学べるわけないじゃないか」
医者も一子相伝の口伝で知識を伝え、村長の家に本はない。
文字とは無縁の生活を送ってきたのだから、文盲は当然だ。
「でも、田舎でしょう?娯楽はどうしてたのよ?」
「それは……まあ……その……。
でも、余所者の僕には関係のない事柄だったから!!」
「なーに、顔を真っ赤にして、言い訳してるんだよ。ニイちゃん」
「してない!! 顔も赤くなってないし、言い訳なんて、なんでしなきゃならないんだ!?」
「そこまでムキにならなくてもいいじゃないか……」

「娯楽と言っても、基本暇なしで働き尽くめの生活だったから暇になることが珍しかったよ。
ああ、そういえば森に行っていたかな」
「探検でしょう。 あれって子供心にワクワクドキドキするけど、大人になったら息抜きと健康目的だけになるのよね」
「………僕は薪を拾いつつ、食べ物探しが基本だったよ」
森には山菜や食材がたくさんある。ひもじくなったら森に薪を拾いに行くと言って、よく森に行っていた。
村の近くには山の幸は少なかったが、少なくともランディには何故か幸豊かな場所がわかった。言葉ではうまく説明できないけど……そういうものとして認識していたのだ。
薪と一緒に山の幸も持って帰れば、村長からは褒められた。
薪を拾いつつ食い扶持を稼ぐ。しかしそれよりも、森にいる間は覚えていない母の香りに抱かれているような安心感に包まれて、心安らぐ貴重な時間だった。

「二人とも文字が読めないんだったら、私が教えてあげるわよ!!」
「えー、オイラは人間の文字なんて読めなくてもいいよぉ」
「駄目よ!!」

「宿屋だから客の子供用の絵本が置いてあるでしょう。それを借りてくるわ」
意気揚々と部屋から出て行ったプリムを見送った後に、ランディがはぁと大きな溜息を吐く。
「なぁ、ニイちゃん」
「何?」
「ネエちゃんはあれでも一応貴族だから、要求するレベルが非常に高いだけだぞ。
だから、気にする事はないって!」
「………………それはわかってるけど……。
プリムとの常識の違いに、ちょっとね……」
「あー、そりゃあ庶民と貴族じゃあ違って当たり前じゃないか」
「そうだね。でも出会ってから今までの間で、そんな身分差を忘れていた気がするよ」
出会った当初は貴族として人に命じ慣れていたプリムと、余所者として小作人扱いで人に命じられ慣れていたランディでは、早くも主従関係が出来てしまっていた。
ルカに託された聖剣の勇者としての使命でガイアのへそに行く事を押し切れずに、プリムと一緒に妖魔の森に行ったのもそのためだ。
それでもポポイが仲間になってからは、その関係性も変わっていったが……。

「本来ならプリムは手の届かない雲の上の存在なんだなって思ってさ……」
「ニイちゃん……」

「文字を覚えたら、代書屋になろうかな」
聖剣に纏わる事柄が終わったら。今はその先の事は考えられないが、その一端を掴めた気がする。
百姓といっても、どの村でも余所者には冷たく厳しい。悪くて乞食、良くて小作人として一生を終えるだろうと漠然と思っていた。
代書屋になればそれだけで珍重されるし、どの村でも暮らしていける。
「あら、代書屋は誰にでも出来る仕事じゃないわよ」
今はいはずの人物の声に、ランディが勢いよく扉の方を見る。
そこには、数冊の絵本を抱えたプリムが立っていた。
「え?」
「当然でしょ。代書屋に字の綺麗さと教養は必須よ。
言葉選びのセンスを磨くためにたくさんの語彙を増やさなきゃいけないし、手紙に使う紙とインクの知識も必要だし、流行情報もね。それに役所に届ける書類や陳状だって、ちゃんとした学識がなければ門前払いされるだけよ」
話しながら机の上に絵本を並べていく。その内容にランディは気が遠くなっていく思いがした。
絵本を並び終えた後にプリムは、ランディにノートを渡す。
「代書屋ってのは、ただ字が書けるだけでなれるような仕事じゃないの」
それは純粋にランディの将来を案じての言葉だろう。
しかし、やはり……。
「……田舎じゃ、読み書き出来るだけで尊敬されるからいいんだよ」

聖剣伝説2 未完 『悪筆』

未完

注意
私的設定があります。
一部不適切な内容があるかもしれません。











古代遺跡に生気を抜き取られていた人々が元に戻り、ヴァンドール軍が撤退したことによるお祭り騒ぎの中。
パンドーラを救った英雄達は宿の一室に籠もっていた。

「下手くそねぇ……」
呆れ返ったプリムの言葉が、ランディの胸に容赦なく突き刺さる。
しかし、プリムはさらに容赦なく続けた。
「悪筆すぎて、なんて書いているかわからないわ。
これはもう一種の芸術じゃないの?」
「そこまで言わなくてもいいじゃないか!!」
「この文字を見たら、誰だってそう言うわよ!!
目の前に紙を突きつけられて、ランディはうっと反論の言葉を失う。
二人のやりとりに、それまでベッドに座って事の成り行きを見ていたポポイがうわぁと声を出した。
「……ニイちゃん、きったない文字だなぁ。これはヒドイなんてもんじゃないぞ」
「ポポイ!!」
「チビちゃん。そもそもあんた文字が読めないでしょ」
ポポイは首を横に振り、プリムから紙を受け取ると、それを眺める。
紙の上に落とされたポポイの視線は確かに文字を追っていなかった。ただ絵を見るように茫洋とその全体を見ているだけだった。
ポポイが文字を読めないのは間違いない。
「文字が読めなくたって、ニイちゃんの字がいかにヒドイか。そのくらいオイラにだってわかる!!」
「あんまりだ!!」
ドヤ顔で胸を張るポポイに、ランディは半ば涙目で抗議する。

「学校にも行かず、百姓として生きていたら文字を学ぶ機会なんてないよ」
「そのわりには文字が読めるのね」
「そりゃあ、田舎だから娯楽といったら本を読む事くらいだよ。
幸い村長は僕に学を教えてくれたし、家には沢山の本があったからね」
「なーんだ、ニイちゃんの字が汚いのって、これまで書く習慣がなかったからか。
オイラはてっきり天性の物かと思ったよ」
カッカッカッと笑うポポイの両肩をランディが掴んだ。
「ポ・ポ・イー?」
ランディから立ち上る怒気に、またまたぁと言おうとしたが、それは憚られた。
なんというか……背後からゴゴゴゴならぬドドドドと効果音を立てていそうな空気に、これは素直に謝ったほうが良さそうだと、ポポイは頭を下げる。
「……ごめん、なさい……」
「わかればよろしい」
ポポイから手を放したランディに、プリムがランディを呼んで彼の注意を引く。
「……とにかく、これから勉強する時間もあるんだし、この悪筆を人並み以上まで矯正していきましょう」
「そこまでする必要はないよ。
代書屋をするわけじゃないんだから字が汚くても困らないし、わざわざプリムの手を煩わせることはないよ」
プリムが立ち上がって、勢いよく机を叩く。
「よくないわよ!!
ランディ、あんたは一応聖剣の勇者でしょう!それがこんな悪筆だなんて、恥ずかしくないの!?」
「え、いや……ただ字が汚いだけだから……」
「あたしは恥ずかしいわ!! だからなんとしても上達させたいの!!」
「文字が読めないわけじゃないのに、そこまで言わなくてもいいじゃないか」
「でも、字が下手なのは気にしてるんでしょう?」
「そりゃあ、まあ……」
「だったら、いい機会だから文字を書きまくって練習しましょう。
さあ、まずは簡単な単語からよ」
「えー、読めるんだから、もっと……」
「あれじゃあ、書けないも同じよ。とにかく上達のためには練習あるのみよ!!」
「シシシシ!ニイちゃん、頑張れよな!!」
「チビちゃん。あんたもよ」
「え、オイラ?」
これまで対岸の火事とばかりに二人のやりとりを楽しんでみていたポポイが、突然話の中に引っ張り込まれて困惑する。
「ランディは悪筆だけど、まだ文字が読める。でもチビちゃんはそれ以前に、文字すら読めないでしょ。だから二人揃って勉強よ」
「えー、オイラはいいよぉ。文字の読める子分が二人もいるんだから。 大体文字と言ってもオイラには」
「駄目よ。 文盲なんて知性ある人間としてあってはならないことよ。
どんな理由をつけても、読めない事を胸張って言う理由にはならないわ。
「……そこまで言う事ないだろ」
「そうだそうだ!!人間なんかの文字が読めなくたってオイラ達は困らないし、文字が読めないだけで知性を疑うなんてどうかしてるんじゃないのか!?
大体、文字が読めて当たり前なんて、それはネエちゃんがそういう環境で暮らしてきたからだろう!
それをオイラに押しつけるんじゃない!!」
「押しつけるも何も、私は当然のことを言ってるだけよ!!」
「当然だって!?
人間の文字なんか覚えるもんか!もし教わるにしても恩着せがましく押しつけるプリムからは教わるもんか!!
文字なんて親分特権を活かしてランディに読ませるから、いいんだ!!」
「ああ、そう!ならもういいわ!! 私もチビちゃんに文字を教えてあげない!!
宿屋だから客の子供用の絵本くらい置いてあるでしょう。それを借りてくるわ」
顔を強張らせて、扉を強く叩きつけて部屋から出て行ったプリムを見送ったランディが、はぁと大きな溜息をつく。
「お前なぁ……」
これから仲違いしたプリムとポポイに挟まれることになるランディには、色々と言いたい事があった。
確かにプリムの物言いには引っかかるものはあった。けど、あそこまで言わなくてもいいだろうと。プリム本人は質の悪い事に自覚していないようだから、言っても無駄だろうけど……。
「なんだよ?」
しかし、強く出られるとこれまでの習慣からランディはついつい引き下がってしまう。それは今回も同じで、ポポイに言おうとした言葉も呑み込んでしまい、そっぽ向くことしか出来なかった。
「妖精のオイラに、人間の常識を押しつけるネエちゃんが悪いんだろ。大体、オイラには……」
はぁと珍しく溜息を吐いた後に、ランディを見る。
「あのさぁ……兄ちゃん。
オイラがこんなこと言える立場じゃないけどさぁ。これからの事を考えたら、字は矯正した方がいいんじゃないか?」
そんなことはないと言いかけたが、それは喉元で留められた。
ランディの脳裏に蘇ったのは、先程のプリムの剣幕。
このまま悪筆だとランディの事を見下げ果てるとまで言い切られた。
「………………そうだね」

火星物語 未完 『お題5-3』

未完

『ランディ登場』
注意
私的設定があります。












忽然と寄宿舎から姿を消して二日間行方不明だった風使いが、また忽然と寄宿舎に現れたという報告を受けて、ランディは安堵の息を漏らした。
風使いが無事だったことは大変喜ばしい。
時期尚早だからブラパン党に連れてくるべきではない。
風使いが一度行方不明になった後でも、ランディの意見は変わらなかった。

「これは可愛いお客様だ。貴様の知り合いか?」
「まさか」
レノールの探るような目に、ランディは顔を背ける。
Aチップを抜いたとはいえレノールはまだ信用できない。なにより、風使いがこの場にいる以上ここで風使いの情報を漏らすのは得策ではない。
優秀なシェイルは、ランディの意を察して無関心を装っている。
何故風使いがここにいるのか?その疑問はすぐに解決した。
「お願いがあります」
「僕の友達のAチップを外して欲しいんです!」
願ってもない申し出に、ランディは顔を綻ばせるのを抑える。
風使いに恩を売る絶好の機会だ。これを逃す手はない。
「いいでしょう」
ランディが頷くのを見て、少年Aと少女Yがぱぁと顔を明るくさせて、お礼を言う。
「やった!よかったですね、少年B」
キャッキャッと喜ぶ少女Yに、アービンが首を傾げる。
「あの……僕たちまだ子供なので、お金はありませんけど……。大人になったら働いて、必ず返します!」
「いや、その必要はない。
未来ある子供を助けるのに、金銭など不要です」
Aチップを外すだけで風使いの我々への心証がよくなる。逆にこの機会を与えてくれた鳥族の少年に礼が言いたいくらいだ。
「そりゃあ、取り除いてもらえるのは嬉しいけど……。でも、こんな所で?」
モヒカン男達がいつ襲撃してくるかわからない治安の悪い下町で、頭の中を弄る手術など、それこそ冗談じゃない。
シェイルがすました顔でアービンのそばに行き、後頭部に触れる。
「必ずうまくいくから、安心しなさい」
「ちょっと待て!抜き取るんじゃなくて、無効化ってのは出来ないのか?」
「出来ないことはないけど、いつAチップに意識を乗っ取られるかわからない生活は送りたくないでしょう?
ここで抜き取った方が、後々のあなたのためよ」
「でもなぁ……」
脳内に埋め込まれたAチップを取り外すという行程に不安がある。
それよりも彼ら……特にサングラスの男が怪しい。彼の少年Aを見る目には並々ならぬものを感じる。
まるで獲物を狙う狩人の目で、少年Aを見ているのだ。
ここでAチップを取り外してもらう、とう借りを作っては、彼らが後々少年Aに何を要求してくるかわかったもんじゃない。
これ以上彼らと関わらないためにも、Aチップを取り外すことは避けなければ。一時無効化ならその間に病院に行ってAチップを取り外せる。
カンガリアンはAチップを政策として行っているから無理だが、カンガリアンから離れた病院ならまだ希望がある。
ただ、少年Aと少女Yが今すぐAチップを取り外す事に乗り気なのが気になるが……
理由をつけてここから離れた方が良さそうだ。
「大体、こんな暗闇じゃ成功するものもしないぜ。
だから、さっさと行くぞ、少年A!!」
アービンが少年Aの手首を掴んで引っ張る。
ずんずんと先を行くアービンの後を少女Yが追いかける……とはならなかった。
少年Aが足を踏ん張り、バランスを崩したアービンが顔面から地面に激突する形でこける。
少女Yはすかさず助け起こしてくれたが、アービンは起き上がるときに見ていた。
呆れたと言わんばかりにアービンを見下ろす少年Aの顔を。
このやりとりの間に魔法の呪文を唱えていたのだろう。ランディの掌から作り出された光玉は眩い光を放って、アービンの頭上に飛んできた。
「さて、これで問題ないでしょう」
「でも、ほら……衛生状態が……」
にじり寄るシェイルから距離をとろうとするアービンの肩を、少年Aが取り押さえる。
馬鹿力で抑えられて動けない以上に、痛い。
おい、それ以上力を篭めるな!この馬鹿野郎!!
「少年A!!こら、放せよ!!」
「少年B!ここでAチップを抜き取ってもらうんだよ!
ボランティアで、ただでやってくれるんだよ!これを逃したらいつやるの!?今でしょう!!」
「タダより高いものはないんだぞ!!この大馬鹿野郎!!!」
暴れるアービンの延髄に一撃を加えて、気絶した彼をシェイルに渡す。
「よろしくお願いします」
「…………ええ、わかったわ」

「……ランディ、貴様本当にあの子供達と知り合いではないのか?」
ポリスロボを撒いて、アジトのホテルに着いた途端口を開いたレノールの言葉にランディが苦笑する。
「ええ」
少なくとも先程まで知り合いではなかった。こちらが一方的に風使いのことを知っているだけだった。
「ふん、テロリストの貴様達が純粋な好意でAチップを抜き取る時点で怪しいわ」
「それは心外ですね。我々ブラパン党は自由と平和を愛するのです。
あのような人間の尊厳を奪うAチップから人々を解放して当然でしょう」
「それはどうだか。 聞いた話では、貴様らがAチップから解放したのは元々重要な役職に就いていた人物ばかりだ。
庶民のAチップを抜き取ったのは、あの少年だけではないか!」

「そしてなにより……お前の目だ」
「…………」
「例えサングラスで隠していても、わかるものにはわかるのだ。
黒髪の少年を見る、お前の目にはただならぬものを感じたぞ。
鳥族の少年は気づいていたのだろう。お前達から逃げようとしていたが、それも空しく利用されてしまったようだ」

「これから協力していくというのなら、教えろ」
レノールが鋭くランディを見据える。
「あの子供はなんだ?何故お前はあの子供に恩を売ることに執心した?
そこまでしておきながら、何故知らぬふりをして立ち去った?」
「………………今はまだお話しすることではない、とだけ言っておきましょう。
なに、近いうちにわかることですよ。
もう、あの子に帰る場所はありませんからね」


「さあ、風使い。 私は君の友人を助けたのだ。今度は君が我々を助ける番だよ」

火星物語 未完 『お題5-2』

未完

『ランディ登場』
注意
私的設定があります。










『ランディ登場』
「……本物の風使いを発見したのに、手ぶらで帰ってきたんですか」
エマークが任務を終えてアジトに戻ってから皆に事情を話し終えた頃には、ブラパン党員達の批難の眼差しやシェイルの白眼視を晒されてエマークは身が縮こまる気持ちだった。
何より辛かったのはランディが終始無言だったことだ。
「エマーク。何故風使いを連れて来なかったのか理由を話してくれないか」
「それは勿論……」
理由は複数ある。
ハーネスの罠である以上長居は無用であったこと、カンガリアンの警察に通報されてポリスロボがバスに向かっていたことなどが挙げられるが、エマーク自身それが理由にならないことはわかっていた。
何故、風使いを連れて来なかったのか。その最たる理由は……。
「あの風使いが、風の使い方もわからない子供だったからです」
風を駆使して戦うのではなく、命の危険に晒されて風に助けられる。そんな子供を最前線に送り込めば、死なせるだけだ。
ただでさえあの子供は現存する唯一の風使いで、あの子供が死ねば代わりとなる存在はいない。
「俺としてはあの風使いを監視体制において、時期を見て回収するのが一番だと思いますよ」

「ランディ様。恐れながら風使いの少年をなるべく早く確保するべきです。
幸い寄宿舎ならセキュリティも甘く、今夜にでもここに連れて来られます」
厳しい口調でシェイルがランディに提案する。
見つけたのなら監視など放置に等しい扱いをするのではなく、すぐさまブラパン党に連れてくるべきだ。
悠長に成長を待っていたら風使いの存在が他の組織やハーネスに知られて激しい争奪戦になる。そんな無用な危険は冒せない。
覚悟が足りない、実力がない。そんなもの、ブラパン党に入れてから身につけさせればいい。幸い件の風使いはまだ子供だから、幾らでも融通は効く。

「二人の意見はよくわかった。
風使いの子供に戦う覚悟と、その特異な血に相応しい実力を身につけさせるために、監視しつつ適宜試練を与えていく必要がある。
風使いを回収するのは、それからだ。
……最終的には風使いが自主的にブラパン党に協力してくれるように仕向けていきたい」
そのために過程や手段など問わない。風使いがブラパン党に着いて戦力になってくれさえすれば、それでいい。
「しかし、ランディ様……」
「シェイル。風を満足に使いこなせない子供を保護しても、今後使い物にならなければ意味がないのだよ
眠っている力というのは、危険な状況に置かれたほうが覚醒しやすくなる。
たった一人しかいない風使いを、安全な檻の中にいれて腐らせるわけにはいかないのだ」
「……ランディ様。お言葉ですが、そのような無茶は了承しかねます。
我々やハーネス、他の組織がこの数百年間探しても発見できなかった風使いですよ。
あと一人や二人いれば多少の危険は冒せますし、少年の成長も待てます。
ですが、たった一人の風使いを失うわけにはいきません」

「それで死ぬようでは、それまでの存在だったというだけだ。とてもハーネスとの戦力に数えることはできない。
まあ、彼は風の力は未だ使えずとも、伝説の風使いだから生き延びる。……そうあってほしいものだ」

負傷したらしいエミュウ元大臣の様子を確認して、その場を立ち去るとき三人組の子供とすれ違った。
すれ違った時、今まで感じたことのない強い風の気配を感じて振り返った先にいる少年の後ろ姿を見て、目を見張った。
彼が隔世遺伝のもどきではなく、真の風使いだと悟る。それほどまでに強い風が、少年の体に纏わり付いていたからだ。
ランディが風の気配を感じ取れるのは、遠い先祖に風の民の血が流れている隔世遺伝のもどきだからだ。だが風の力を見られるだけで、風を操る力はない。
今はまだ風という服を着せられているだけだが、もしあの少年を風使いとして鍛えることが出来たのならばそれは鉄壁の鎧となるだろう。
そこまで考えて頭を振るう。
風の知識も技術も失われた現在では、それは叶わぬ夢物語だからだ。
風を纏うのではなく、風が纏わり付いている。それだけでもうあの風使いが雛以前の卵だとわかってしまった。
件の風使いがどれだけ使えそうか、実は期待していたのだが……。
「どうしましたか、ランディ様」
落胆と失望を隠しきれずに溜息を漏らすと、シェイルに気遣われてしまった。
「なんでもない、何でもないが……。
シェイル。君に頼みたいことがあるのだが、聞いてくれるか」
「はい、勿論」
「では……」
ランディの頼みを聞いて、シェイルはやや驚いた様子だったが、頷いた。
「…………何故かは、聞かないのか?」
「ええ、あなたは無意味なことはしませんし、わざわざ今言うのです。こんな往来で話せるような内容ではないでしょう」
「フフフ、それもそうだ。
君のこの信頼も、普段の人徳のなせることかな」
「……まあ、そのようなところです」
先程の命令をブラパン党のためと信じられるのは、ランディへの信頼が強く大きい故に。
彼は必要とあれば理由を話す。それまでは聞くまでもなく、遂行するまでだ。

聖剣伝説3 未完 『歌声』

未完

注意
私的設定があります。












どうしても忘れられない歌がある。
物心ついた頃には既にその歌を知る者はおらず、鼻歌だけでも首領やイーグルに尋ねた。しかし彼らは歌は知っていたが、使われている言語は知らないと再現できなかった。
今では歌の記憶も霞んで朧になって、どんな歌詞だったのか覚えていないけど。
その歌が、オレの最古の記憶

鼻歌混じりに調理の準備をするホークアイが歌うそれには歌詞はない。だけど哀愁を誘うメロディにリースが聴き入る。

「ホークアイさん」
隣でジャガイモの皮と格闘していたリースの声に顔を上げる。
「何?」
「さっきの歌、よく口ずさんでいますけど……なにか思い入れでも?」
「まあね」
オレはよく覚えてないんだけどさ、と前置きしてから
「父が子守歌として聞かせてくれていたらしいんだ」
「らしい?」
「そう、フレイムカーン様から聞いた話だから、間違いないよ」
両親といた頃の記憶は殆どない。ただ両親に深く愛されていた、というのは漠然としていながら確固たる記憶として残っている。

「その、お父様とお母様のことは……覚えていることとかありますか?」
「いや、ないね。 幼い頃に死別したから無理もないけど」
さほど気に病んでいない声だった。
幼い頃は親恋しさに泣いていたが、年を重ねるにつれて記憶は薄れて消えていった。
忘れたくない大切な思い出も、大したことのない記憶も、月日は平等に消し去る。思い出だけをいつまでも残しておけない。子供の場合は特にそうだ。

父親や、父方の祖父母については育ての親であるフレイムカーンが丁寧に話してくれたので、知っている。だが母親についてはどんなに頼んでも強請っても、頑なに口を閉ざして何一つ語らなかった。首領が話さないなら他の者に聞いても無駄だと、母の情報は諦めるしかなかった。
ホークアイが知る母の情報は、フレイムカーンの親類という程度だ。それ以上のことは……母がどのような人物だったかなど、知りようがなかった。

言い訳
ファルコンのことを教えない→フレイムカーンとの関係を明言しない→”自分と関係のない孤児”ということです。

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