未完

DB パラレル 未完 『螺旋』1―2

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悟空が書類と向き合い、少しずつ処理していくが、その早さは遅々としており殆ど進んでいなかった。
悟空には書類仕事は向いていないというのは警邏隊員全員の共通の認識のため、普段は絶対に悟空に内勤を任せることはない。しかし今回はあまりにも悟空の遅刻や会議中の居眠りが酷すぎるということで、悟飯が罰として悟空に書類仕事を押し付けたのだ。
あくまでも処罰目的なので書類も大して重要ではないが便宜上提出しなければならない書類―最近立て続けに起きている政府要人の連続殺人事件の捜査故に、優先順位を落とされため、やむなく放置されている書類の山を、悟空一人で処理する事になった。
―多少時間はかかってもいいから、必ず全て仕上げること。いいね? もし逃げ出そうとしたら…どうなるかわかるよね、悟空?
悟飯が菩薩のような慈悲深い笑みを浮かべつつも、背後には悪魔のようなオーラを漂わせながら言った言葉が悟空の頭に焼き付いている。
もし逃げ出せば…世にも恐ろしい制裁が待っている。その事を考えれば、かなり面倒であっても逃げ出すわけには行かなかった。
しかし書類の量は一向に減らず、どんどん嫌気も差してくる。


悟空がいる部屋が資料室なため、何人か入ってくることもある。今室内で資料を探している隊員もその一人だ。
「おい、悟空。資料探すの手伝ってくれよ」
「オラ、これを早く終わらせねぇと悟飯に怒られちまうよ」
「どうせ隊長もお前が今日中にこれを終わらせる事なんて期待してないって。それに資料を探すだけなんだから、そう時間はかからねぇだろ?」
悟空が露骨に嫌な顔をする。
時間がかからないというのなら、自分でやって欲しいというのが本音だ。


散々資料探しに振り回した隊員が部屋を出る前に。
「そういや、悟空。お前のお姫様が待ってたぞ」
「え?チチが?」
「あぁ、さっき見た時には何人か口説いていたみたいだから、早く行かねぇと、いなくなっちまうかもなぁ」
今は五時過ぎ。そして悟飯から居眠りのペナルティとして出された仕事は、悟空にとっては軽く数時間を超えるほどの量だった。
同僚が笑いながら、悟空の肩を叩く。
「まぁ、せいぜい頑張ってくれ」


悟空が周囲に誰も居ないのを念入りに確認する。
天井も床も壁も扉も全てサイヤ人規格で作られており、悟空の実力では傷つけられても壊す事は出来ない。誰にも見つからずに外に出られる窓も、サイヤ人規格の強化ガラスで出来ており、突破は不可能。
扉は警邏隊のIDがなければ、内側から開かない仕組みになっている。そして悟空のIDでは解除できない。
「…どっすかなぁ…?」
手詰まり、という状況だ。本来なら少しでも早く仕事を終わらせるという選択肢もあるのだが、書類の山を前に消えている。
今彼の思考を巡っているのは一刻も早くここから脱出し、婚約者の元に向かう事だけだった。
逃亡後の悟飯の制裁は、悟空の中から消えていた―消さなければ、何一つ行動できないからだ。
悟空専用のお仕置き部屋…もといい資料室は今、完全に悟空を捕らえる牢獄と化している。


悟空が逃亡の手段を色々と考えて、頭の中でシミュレートしてみるも、どれもこれもが失敗していた。
せめて悟飯並みの実力があれば窓をぶち壊す事も可能だが、それも今の実力では到底不可能だ。何たって彼と悟飯とは比較にならない程の実力差だ。彼自身悟飯のように、いやそれ以上に強くなりたいと思うが、修行してもどうしても埋められない実力差というものがある。
悟飯よりも強い人間を、悟空は知らない。それくらい、悟飯は強い。
龍球都市から出た事がないため、視野が狭いといわれるが、それでも悟飯が強いのは確かだ。
物語のように瞬間移動で別の空間に行く事が出来れば…と非現実的な方法にまで思考が回っている時に、扉が叩かれた。
その音を聞いた瞬間、ある作戦が浮かび、決行する事にした。
「おい、悟空。ちょっと資料を探すのを手伝って…」
クリリンがそう言いながら部屋に入ろうとするのと、悟空が勢いよく飛び出し、クリリンに体当たりするのとは同時だった。
悟空に体当たりされ、クリリンが廊下の壁に激突する。
扉が開いてもご丁寧に悟空の気を感知してシールドが張られるために、誰かが出入りする瞬間でしかシールドを無効化できる手段がなかった。
数時間ぶりに密閉された空間から脱出できた開放感から、大きく伸びをする。
「よっしゃあ!!早くチチの所に…」
「悟空!!その前に謝れ!!」
悟空が全速力で走り去ろうとした時に、クリリンが彼の胴体に掴みかかり、足を踏ん張りながら怒鳴る。
いきなり体当たりをされ、何も謝らずにそのままどこかにいこうとする悟空の言動は許しがたかった。第一ここで悟空を逃せば、共犯として後で悟飯の制裁を一緒に食らう羽目になる。
怒りと強迫観念で悟空の妨害を図るが、悟空はクリリンの抵抗を諸共せずに風の如く疾走し、フロアの螺旋階段に着くと、十階から一階まで一気に飛び降りた。
周囲にクリリンの恐怖に染まった悲鳴が響き渡る。
悟空が着地する時には、周囲に居た人間は避難しており怪我人はいなかったが、悟空の腰にしがみついていたクリリンはあまりの高さから落ちた事により目を回していた。


「悟空さ!もう仕事はえぇのか?」
「おう、もう終わらせた」
仕事は十分の一も終わっていないにも関わらず、自慢気に胸を張りながら言う悟空だったが、その背後に気配も音もなく降り立った人物を見て、クリリンの全身から血の気が引く。
「ご…悟空…!う、後ろ!!」
悟空が振り返った時、そこに居た人物を見て全身から血の気が引き、顔が強張った。
背後の人間…悟飯がニコニコと悟空達にとっては悪魔の微笑にしか見えない笑顔で
「ヘェー、あれだけの量だったら悟空なら軽く数時間はかかると思ってたんだけどなぁ」
「ご、悟飯!!おめぇ会議があったんじゃねぇのか?」
「ついさっき終わったところだよ。そしたら騒ぎが起きていて、来てみれば悟空が脱走しているんだから驚いたよ。
悟空。仕事もせずに逃げ出すような君には、きついお仕置きをしなくちゃ、わからないみたいだね」
どす黒いオーラを漂わせながら言う悟飯に、その場に居た者達の動きが止まる。


悟空が咄嗟にチチとクリリンの手首を掴み、一気に外めがけて走り出す。
逃げ出した悟空達を悟飯が呆れたように見送る。
悟空達の動きなど、彼からすれば止まったようにしか見えない。あれでは自分から逃げ切る事など不可能だ。
最近の悟空の態度には目が余る。少しは悟空を強く躾けた方がいいだろう。
クリリンは巻き込まれただけだろうとも、本人の意思に関係なく悟空の逃亡に一役買ったのは事実だ。
クリリンを先に捕らえて、悟空はじわじわと捕らえるために、全身に気を漲らせた時
「悟飯」
大事な人の声を聞き、漲らせた気を封じ込める。
「ピッコロさん」
「悟飯、あの馬鹿はもう放っておけ。それよりも連続殺人犯の情報だが…ここでは話せん。俺の部屋に来い」
「はい、わかりました」



警邏隊本部が見えなくなった程遠くまで来た時に、全力疾走で街中を走り、跳び回っていた悟空が漸く立ち止まる。


「おい!!バカァ!!何で俺まで巻き込むんだよ!?」
「わりぃ、わりぃ。近くに居たからつい…」
「ついじゃねぇよ!!脱走の共犯だと思われたらどうすんだよ!!俺まで”制裁”を受けるじゃねぇか!!いっつもお前はそうだ!!自分の事ばかりで人のことも考えない、自己中の塊みたいな奴なんか、チチには相応しくねぇよ!!」
悟空の胸倉を掴み、怒鳴っていたクリリンに、チチが
「ちょっと待つだ!悟空さには、ちゃんといいところがあるだに、そんな言い方は許さねぇだよ!!」
チチがクリリンを押しのけ、悟空の両手をしっかりと握り締め
「悟空さ、例え他の人達がなんと言おうと、オラだけは悟空さの味方だ!」
「おう」
「……勝手にしろよ!」


「ところでチチ。おめぇが警邏隊本部に来るなんて珍しいじゃねぇか」
チチは本部に近づく事はない。
悟空の仕事場だという事で、一度見学してみたいという憧れもあるのだが、彼女が本部に近づく事は殆どない。
子供の頃、本部周辺で混血を狙った人買いに浚われかけたこともあり、近づくのを自粛しているのだ。
悟空の問いかけにチチが顔を紅くして
「……悟空さに、見てもらいてぇものがあるだよ……」
「オラに?」



サイヤ人の花嫁衣裳を身に纏ったチチが、頬を紅く染めながら上目遣いで
「…悟空さ…どうだか?……オラ、似合ってるだか?」
恐る恐る聞くと、悟空が頭上から爪先まで見た後に顔を紅くして悟空の答えを待つチチの顔を見つめる。
その視線にチチの鼓動が速く強くなる。悟空の口が開くのをじっと見つめる。
―いくら悟空さでも、こんな時ぐらいはきっとオラの事を綺麗だと言ってくれるだ。
早く答えてくれとばかりのチチに、悟空が
「…チチ。その服、エッチィじゃねぇか?」
その言葉に…彼女の予想とは大きくかけ離れた言葉に、先程とは違った意味でチチの動きが完全に止まる。
二人が見つめあう形―悟空はキョトンとした顔で、チチは唖然と落胆の入り混じった顔―になる。
見詰め合っているにもかかわらず、全く甘さの欠片もなくそれどころか一歩間違えば険悪な空気が流れそうな中、クリリンが
―あっちゃあ……言っちゃったよ…こいつ。
クリリンの目から見てもその衣装は扇情的で、チチの顔とスタイルの良さも相まって十分目の保養になるほどだが…。それでもこの場で言う言葉ではないだろう……。
だんだんと悪くなってくる空気の中、クリリンが
「おい、悟空!そんな事今言う事じゃないだろう!!」
そう言うと唖然と固まっているチチに
「こいつの言う事は気にする事ないって!ホラ、悟空って空気読めないからさ!」
彼なりに必死にフォローするが、悟空は心外とばかりに
「だって肩出し、袖なし、臍出しだぞ。スリットもかなり深いし…ウエディングドレスにしては露出高すぎじゃねぇか?
サイヤ人ってのはエッチな民族だったんだな」
サイヤ人の民族衣装は露出が殆どないというくらいの低さだが、女の婚礼衣装だけは露出が高い。
彼らが滅びた今となっては分からないが、普段露出のない服を着ているから一生に一度の晴れ着くらいは…という考えだろう。
とはいえ、もう推察するしか出来ないのだが。
チチが怒りで全身赤くなり、肩を震わせ
「悟空さの方がよっぽどスケベだ!!
似合っているかどうか聞いてんのに、変なところばっか見て!!このエロロット!!!」
怒鳴りながら、悟空の胸倉を掴み、詰め寄るチチに悟空が
「んなこといったって、本当の事だろう?」


「あ、あのさ…俺、もう帰るよ」
このままこの場に居ても、馬に蹴られるだけだから…と小声で続ける。
「何だ、クリリン。おめぇもう帰るんか?」
「あぁ、例の連続殺人事件の捜査もあるからさ」
「そうだったな。じゃ、頑張ってくれ」
「………」
多忙な仕事があるのに、他人事のように言う悟空に対して殺意が一瞬芽生えたのは、決して悪い事ではない筈だ。


「チチ、おめぇその服どうしたんだ?」
サイヤ人が滅びてから数十年も経た今、彼らの婚礼衣装など手に入らないものだ。
「オラのおっかあの形見だ」
悟空は詳しく知らないが、チチの母親は純血サイヤ人で牛魔王に匿われていたそうだ。
どんな成り行きで牛魔王に匿われていたのかは分からないけれど、聞く所によると大恋愛の末、周囲の反対を押し切っての結婚だったらしい。
そんな恋女房も、確かチチが生まれて間もない頃に亡くなった筈だ。


チチが夢心地という様子で、うっとりとした目で遠くを見つめ
「おっかあはおっとうとの結婚の時に、周囲の反対を押し切ってこれを着たんだべ。
”私はサイヤ人として生き、サイヤ人として死ぬ。あなたが愛し、私が愛されたのは、サイヤ人としての私だからその誇りを持ったまま嫁ぐ”
……そういって、そこの教会で結婚式を挙げたんだべ」
夢見る少女という言葉が似合うような空気を醸し出すチチに、悟空はついていけないとばかりに


「悟空さ、オラ教会に行きたいだ」
「えぇー!そのエッチな服で行くんか?」
正直なところ、それは勘弁して欲しい。
「…悟空さ、本気でぶんなぐらねぇと、わからねぇみたいだな」
そう言うと同時に腕に気を込めて、全力で殴る準備が整った時に
「そんな格好のチチ、オラ誰にも見せたくねぇよ」
不意打ちのような言葉に、チチの怒りが収まり、気を打ち消す。その代わり、顔どころか全身が紅くなっていく。
悟空がチチに上着を着せて、露出していた肩や胸の辺りを隠すと
「これでよし!」
チチが顔を紅くして、その服に手を振れ、顔を悟空から背けて
「……こんなので、オラの怒りが収まると思ったら、甘いだよ」
顔を紅く染めながら、ぶつぶつと呟く。
悟空に対してとことんと甘い事に嫌気がさすことがあるが、それでも彼が好きだから


チチが花嫁衣裳に身を纏ったまま、牛魔王の前に行ったときに
彼の脳裏に、チチと亡くなった妻の姿が重なる。


「…チチ…か?
あまりにもそっくりだったから、見分けづかながっただ」
まるで在りし日の妻が目の前に現れたようだった。
一番幸せだった頃の、記憶が鮮明に甦ってくる。


「悟空さ。チチは亡くなっだ奥そっくりの、天下一の別嬪だ。こんなえぇ女は他にはいねぇ。
だから、何があってもチチを守ってやってぐれ。お願えだ」
そのあまりにも真摯な目に悟空が照れくさくなり
「おう!オラに任せとけ!」
胸を張り、自信たっぷりに言う。
どんなことがあっても、チチを守れるという自信が、彼にはあった。
―――――…この時、それがどんなに大変な事か、誰も知らない…―――――





言い訳
チチと牛魔王の言葉遣いがよくわかりませんけど…これであってますか?
訛りのある言葉遣いって難しいです。
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