未完

DB パラレル 未完 『螺旋』1―3

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彼の日常において、滅多に来る事のない教会を前に悟空が緊張した面持ちで建物を見上げる。
街一番の高さを誇る建物で、数千年前に作られたというのに老朽化とは無縁なのか傷一つなく、最近作られたようでありながらも、年月の重さを感じさせる不思議な空気を醸し出していた。
後から壁を壊して作られた扉が、この教会を著しく無骨なものにしていた―サイヤ人は唯一空を飛べる民族であったため、空中が彼らの活動圏内であり、彼らの建物の出入り口は天井付近に作られるのが一般的だったのだ。この教会の扉は人間が出入りできるように多大な労力を引き換えに壁に穴を開け、作られたものだ。


教会に入った時に、物珍しげに建物内を見回す悟空にチチがどこか満足そうな笑みを浮かべると
「えぇか、悟空さ。ここは数千年前に祭司のために築かれた建物で」


「サイヤ人狩りの時に取り壊されかけたんだけど、芸術的価値が高いってことで、残されたんだ」
「フーン…」
チチが話す講義を、殆ど聞き流していたが、


レリーフが削られ、後からまた別のを描かれた痕を見て悟空が


「そこには元々月の女神…サイヤ人が信仰する神々の、全ての母神が刻まれていたんだけんども。……今じゃ地球の天使や神様が刻まれてるだ。
本当に、勿体ねぇだな……」
彼女自身、そこに刻まれていたものがどのようなものだったのかは知らない。ただ、信心深かった母から聞いたという父、牛魔王の話からだと、民族一番の匠によって刻まれた、サイヤ人の芸術史でも最高傑作と呼ぶに相応しい巨大なレリーフが刻まれていたのだという。
何処か寂しげに言うチチに悟空が


「悟空さん、チチさん」
ナメック民族の―緑の肌に触覚のある、特殊な能力を持つという―テンデが彼らの元に歩み寄る。
彼はこの教会の神父を勤めており、教会の管理を一任している。
彼の持つサイヤ人の神話や神々についての知識は、昔この街に住んでいたサイヤ人の王子から教わったものらしく、その王子は血縁者に祭司がいたため、神話や儀式の類の知識を豊富に持っていたそうだ。
テンデ自身サイヤ人の歴史や神話や儀式の話をよく知るために、彼の住んでいた家に足繁く通った事もあったらしい。
「式場の見学ですか?」
あと半月後に迫った二人の結婚式に
チチがサイヤ人の婚礼衣装を身に纏っている事も、誤解される要因だろう。
チチが頬を紅くするも、首を横に振る。
「違うだ」


二人だけで教会の中を散策している時に、建物の中心に位置する礼拝堂に着く。
巨大なステンドグラス…サイヤ人の神話で最も有名な一説を描いた…まるで今にも動き出しそうな、その場にあるようなリアルで緻密なそれに、チチが見とれながら
「何時見ても感激するだ」
「ステンドグラスって、色ガラスを枠にはめ込むようなもんだろう?なのにどうやったらこんなリアルなもんが作れるんだ?」
「さぁ、そったらこと、オラにはわからねぇ。
でもそれだけサイヤ人の技術が進んでたんだろう」
「フーン……」
対して興味なさそうに呟きながらも、自分を見ることなくステンドグラスに熱心に視線を注ぎ続けるチチを面白くなさそうに見ていた。
しかし一向に此方に視線を向けない彼女に諦め、周囲に視線を巡らせる。
ふとステンドグラスの下におかれている像…全ての母神を象ったそれに熱心に祈りを捧げている少年を見つけて、なぜか目を離せなくなった。
後姿しかわからないが、あの体つきは少年のものだ。
華奢ながらも、無駄な贅肉が一切ない引き締まった戦士の肉体だ。細身だけど、鍛え抜かれているのがよく分かる。
―誰だ、あれ?
普段は見知らぬ人間に興味を示さない悟空であったが、何故か少年に強い興味を持った。
悟空の視線を感じたのか、少年がゆっくりと立ち上がり、振り返る。
年齢はパンと同じぐらいだろうか、十代半ばの息を呑むほどの美少年だった。
色素を一切感じさせない程透き通った美しい白い肌、華奢ですらりと伸びたしなやかな肢体…少女というより少年と言った方が差し支えのない体つきに、男物の有名なブランド服に身を包んでいる
女のような顔立ちをしているにも関わらず、女特有の柔らかみを感じさせない。
吸い込まれるように深く、気高さと誇り高さの滲み出る青い瞳、青い髪―髪の毛は帽子の中に入れているようなので、眉の色から判断するしかない―の少年を見て、悟空が思わず見惚れる。
あの瞳を見ていると、まるで彼の目の中に閉じ込められるような、そんな感覚がする。
―あんな美男子もいるんだなぁ…
人間の美醜については特に興味のない悟空でも、彼のことは美男子だとわかる。
悟空が目を逸らそうとしても、目が離せずに、ただ少年を凝視するだけだった。漸く悟空の異変に気づいたチチが何処か不安そうに悟空と少年を見比べる。
少年が悟空を見て、何故か目を丸くし、耳慣れない言葉を話す。
悟空とチチがキョトンとした様子で少年を見ると、少年が彼らの元に歩み寄った。
その歩き方も、乱れや隙が一切なく、長年訓練を受けたと察せられるものだった。
少年が近づいた時に、悟空の全身の寒気が襲った。
理由の分からぬ感覚に混乱するも、すぐに少年に対する警戒に一変し身構えた時に、少年が立ち止まる。
少年がチチを見て、同性ですら見惚れ照れるような笑みを浮かべた。
「可愛らしい花嫁さんだ」
少年の…男にしては高めの声で、チチを褒める。
チチが頬を染めるのにも、少年がチチを見る視線も気に入らない。
気に入らなくて顔を顰め、少年を睨むように見ていた。
「悟空さ!失礼だべ!」
チチがあいつを庇う言動も気に入らない。
少年が悟空とチチを交互に見て笑いながら
「気に入らないんだろう?私が彼女を褒めたから」
楽しそうに悟空を見るその視線が、無性に癪に障る。


「おめぇ…何者だ?
チチはオラの女だぞ!!手を出そうってなら、容赦しねぇぞ」
苛立ちをぶつけるように、少年を睨みつけ恫喝する。
しかし少年は飄々とした態度を崩す事はなく、それどころか悟空の脅しを全く気にしていなかった。その態度に更に悟空の苛立ちが増す。
チチがどこからか取り出したフライパンで悟空を殴り、頭を抑え、うずくまる悟空に
「まさか悟空さがここまで礼儀知らずな馬鹿で見る目がねぇとは思いもしなかっただ!!」
悟空が理不尽な思いを感じて、チチを見上げる。
彼からすれば当然の行動だというのに、何故こんな扱いになるのか。
「初対面な人に、なんて口の利き方だ!!
この子は、男の子じゃねぇ!女の子だよ!!」
悟空が驚きの声を上げる。
少年…もといい少女の頭上から爪先まで見て、指を差し
「…おめぇ、本当に女か?」
少女が頷いたのを見て、先程まで彼の中で渦巻いていた嫉妬が、呆気ないほどに消えていく。
安堵と共に余裕が出てくる。
少女の体型…胸の辺りを見て
「…その割にはあるもんがねぇな」
「何考えてるだ!!悟空さは!!」
チチが気を込めた拳で悟空を吹き飛ばした。壁に激突する寸前に、一瞬で先回りした少女が、軽々と悟空の体を受け止めた後、チチを責めるように見て
「ここは神聖な場所だ。どんな事情があれ、それを壊そうとしたら許さないよ」
正論を言われ、チチが申し訳なさそうに頭を下げる。
「…すまねぇだ…」
ただでさえ歴史的、文化的価値のあるサイヤ人の教会だ。


チチが少女を見る。
「おめぇさ、見たことねぇ顔だけんども、ここに何しに来ただ?」
少女の言動から観光客とは考えにくい。ここを”教会”として使っているのは、サイヤ人と縁のあった者か、混血だけだ。
青い髪と瞳という、サイヤ人からかけ離れた特徴から彼女が混血だというのは考えにくい。
少女はステンドグラスの真下の台座の上…破壊された痕の残る場所を、切ない色を宿した瞳で見つめながら
「全ての母神、月の女神に祈りを捧げに」
その言葉にチチの全身から血の気が引く。
サイヤ人狩りにより、サイヤ人が絶滅してから、彼らの文化の痕跡は殆ど抹消された。
この教会だけは奇跡的に残されることになったが、それ以外は破壊された。
まぁ、彼らの都市全てが、一夜にして跡形もなく消え去った―その原因は今だ不明だという―といわれているので、地球人に破壊されたのは、消失を免れたごく一部の建造物に過ぎない。


何処で誰かが聞いているかも分からないのに、少女の命知らずとも言える発言にチチの全身から血の気が引く。
血の気の引いたチチの顔を見て、少女が安心させるように笑みを浮かべる。
「…というのは、冗談。本当はここで人と待ち合わせしているだけだ」
「タチの悪い冗談だ」
そう笑うも、チチの中では先程の少女の顔が頭の中をちらついていた。


悟空達がその場から立ち去った後に少女がステンドグラスを見つめ
「…本当に皮肉なものだ……」
物陰…先程、悟空達が居た所から完全に死角になっていた所から、人影が出てくる。
「ブラ、時間だ」
その声を聞き、先程とは別人のような冷徹な笑みを浮かべた。
「わかった」
ブラと呼ばれた少女がその人影の元に向かうと、彼女達の姿が掻き消えた。

悟空達が出口に向かう間に二人の間に沈黙が流れる。
悟空は少女が女だと知った後も、彼女がチチに送っていた意味深な視線が気に入らなかった。そしてチチは先程の少女が、少年だと思っていた時の悟空が彼女を凝視していた事がなぜか許せなかった。


「チチ、おめぇアイツが女だっていつ気づいたんだ?」
「声聞いた時にわかっただよ。男にしては高い声してただ」
声を聞くまではわからなかったけんど…と呟いた。
外見は少年だったが、声だけは女だったと、少女の事を思い出しながら


―そういや、アイツ…なんでこれが花嫁衣裳だってわかったんだ?こんなエッチな服、花嫁衣裳だとは思わねぇだろう。
幾ら考えてみるが、一向に答えらしきものは見つからない。
サイヤ人の混血かと考えてみるが、少女の外見は地球人そのものだった。
悟空が考えを巡らせている時にチチが、顔を赤らめて
「…なぁ、悟空さ」
その言葉に彼の意識はチチに向かい、先程の考えは有耶無耶になる。


「それにしても、あいつ…なんかおっかねぇ感じがしたな…」
なぜかは分からない。けれど目が合った時に背筋の凍るような…今まで感じた事のない程の威圧感を感じた。
「あんな綺麗な子に、おっかねぇとは何事だべ?」
「んなこと言ったって、おっかねぇもんはおっかねぇんだ。
悟飯も時々おっかねぇが、あいつはそれ以上な気がすんぞ」
強い実力を持つ者に会うたびに、彼らと似たような感覚を覚えるが、それでも彼らに感じるものとは決定的に異なる。
何が異なるのかは分からない。
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