「火星物語」
火星物語 小説

火星物語 小説 『フォボスの料理特訓』1

 ←DB パラレル 未完 『螺旋』1―断章 →DB パラレル 未完 『螺旋』 VBスピンオフ 
EDから数年後が舞台です。














目の前にあるのは、見るからに食欲をそそる美味しそうな料理。
だが、その実態は…。

セイラが机の上に並べられた料理から、膝の上に視線を落とす。
そこにいたのは一匹のあろまん獣。
毒見をさせられ、泡を吹いてぐったりしているアロマ村のシンボルをその目に映す。
「……フォボス。これは、何ですか?」
無表情で放たれるのは、淡々とした言葉。
セイラから漂うのは、凍えるほどに激しく恐ろしい空気。
すっかり威圧され、フォボスが小さく身を縮めこませる。
「……………料理、です」
「料理を食べても毒物が入っていない限り、瀕死の重体になりません」
セイラが鋭くピシャリと言い放つ。
フォボスが顔を伏せて、更に身体を萎縮させる。
彼女の脳裏に、数え切れぬほど作られたフォボスの殺人料理の数々が現れて、消えていく。
最初は見た目も中身に伴うものだったが、フォボスの努力の甲斐あって見た目だけは改善された。
しかし、よくなったのは”見た目だけ”だった。
おいしそうな料理という精巧な仮面を被っているが、その実態は食べたものの命を削りかねない殺人料理。
外見だけでの判断が非常に困難となったせいで、新たな犠牲者を幾人も生み出していた。
「…………はい、わかってます」
フォボスが小さく頷く。
その場に居るのだけでも苦痛を与える空気が。部屋を満たしていく。
幾つもの死線を潜り抜けてきたフォボスだが、今だけは一刻も早くこの場から逃げ去りたかった。
「フォボス。 もう料理の練習をして何年になりますか?」
「……5年になります」
「それだけあれば、どんな下手な人でもある程度は上達しますよね?」
「…………色々と言い返したいけど、返す言葉がありません」
フォボスが悔しそうに拳を強く握り締める。

フォボスの料理は最早下手の範疇に収まるほど生易しいものではない。
一口食べただけで、相手を死に誘いかねない代物。まさしく殺人料理と呼ぶに相応しいものだった。
彼にとってレシピ通りに作っても殺人料理が出来るのは、最早生涯の悩みと言っても過言ではない。
昔は”作れないのなら買えばいい”と楽観していたが、親しい人達に料理を作る度に駄目出しされ続けていた。
初めはショックで料理を作る気になれなかったが、あそこまで罵倒されれば負けん気の強いフォボスのこと。絶対見返してやると固く心に誓い、より一層料理の練習に励むようになった。
今の彼が料理に打ち込む原動力は、殺人料理以外を作ってやるという強固な意地だ。

セイラが背後に炎を滾らせ、フォボスに勢いよくお玉を突きつける。
咄嗟に声が出るのをグッと堪えたフォボスが、恐る恐るセイラを見上げた。
そこにあるのは鬼気迫る気迫を放つセイラの姿。
「フォボス!!私が料理を徹底的に教えてあげます!!」
あまりの剣幕に身を強張らせていたフォボスが唖然とセイラを見る
「え?」
「このままでは何の進展がないのは目に見えています」
現に5年間も練習しているにも関らず、フォボスの料理の腕は上達することなく、未だに殺人シェフのまま。
「だから、私が最初から最後まで監視して、間違っているところを教えますよ」
本当にレシピ通りに作っているのなら、殺人料理が出来るはずない。
本人でも気づかないうちに、何処か致命的なミスを犯しているのだと考えるのが妥当だった。
「……セイラ。まだ諦めてなかったのか?」
それまで部屋の隅で黙って成り行きを見守っていたタローボーが呆れたような声を出す。
二人の視線がタローボーに注がれる。
「フォボスに殺人料理以外の料理を作らせるなんて、魚が鳥になるようなもんだぞ」
不可能だと一言で切り捨てる。
フォボスが頬を膨らませて、抗議の声を挙げるがタローボーは華麗に無視した。
セイラがお玉をしまい、フォボスを真っ直ぐ見つめる。
「今時、男の人でも料理が出来て当然だというのに……食べられる以前の問題ですからね。 せめて、生物の許容範囲までの料理を作れるまで特訓しましょう」
にこやかな笑顔で宣言すると、フォボスを再び調理場に立たせた。

フォボスが手馴れた手つきで、料理を作っていく。
その手際はレシピ通りで、何一つ問題といえるものはなかった。
セイラがしっかりと監視するも、”殺人料理”が出来る原因らしきものは何一つとして見当たらない。
―……ただの料理下手なら、とっくの昔に上達している筈ですけど……
ここまで見てきたが、技術的なものが原因だとは思えない。
その事実にセイラが深い溜息を漏らす。
フォボスの殺人料理を払拭させるのに、原因が分からなければ手の打ちようがなかった。

出来上がった料理を前にしても、誰一人として箸に手を伸ばすものはいなかった。
完璧にレシピ通りに作られた”美味しそう”な見た目の料理。しかし、その実態は……おそらく……
目の前にある料理がレシピ上”安全”だと実際に見て確かめたセイラですらも一切手をつけずに、再び毒見味見役のあろまん獣を連れてきた。
それを食べたあろまん獣が一口で失神したことは、わざわざ書くまでもない。






2011/9/23 小説に移行
スポンサーサイト


総もくじ 3kaku_s_L.png ドラゴンボール
総もくじ 3kaku_s_L.png 火星物語
総もくじ 3kaku_s_L.png 聖剣伝説
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ
総もくじ  3kaku_s_L.png ドラゴンボール
総もくじ  3kaku_s_L.png 火星物語
総もくじ  3kaku_s_L.png 聖剣伝説
もくじ  3kaku_s_L.png その他
もくじ  3kaku_s_L.png 未完
もくじ  3kaku_s_L.png 考察もどき
もくじ  3kaku_s_L.png 短文
もくじ  3kaku_s_L.png 裏部屋
  • 【DB パラレル 未完 『螺旋』1―断章】へ
  • 【DB パラレル 未完 『螺旋』 VBスピンオフ 】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【DB パラレル 未完 『螺旋』1―断章】へ
  • 【DB パラレル 未完 『螺旋』 VBスピンオフ 】へ