未完

聖剣伝説3 パラレル 未完 『砂漠の王国』プロローグ

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大変長らくお待たせしました。
パラレルシリーズ『砂漠の王国』のプロローグを公開します。
ナバールが王国でホークアイが王子という設定に対して、拒否反応を起こす方は引き返す事をお勧めします。


表現方法で色々と悩んでいて(それは他の作品でも同じですけど…)色々な小説を参考にしてみたんですけど…後半辺りには力尽きて素の表現になりました。
慣れない事はするもんじゃないですね…。


注意
ホークアイ→リース要素が強いです。
フレイムカーンが嫌な人間になってます。















砂漠の中、重々しい行進が進んでいく。
列に中心に質素な輿があり、それを守るように武装した兵士たちが取り囲む。
物々しい護衛は砂漠に住む魔物や盗賊を警戒してのものであり、輿の中の者が自害せぬように監視する役割を担っていた。
輿の
金の髪を背に流した美しい娘が、輿に乗る人間を隠す幾重にも垂らされた薄布に手をかけ、僅かに開けられる。
中にいたのは豪奢な金の髪を背に流した美しい娘。
娘が眼前に広がる光景を目に映す。
―ここがナバール。
一面砂だらけの世界。故郷とは異なる風景。
国土の殆どが砂漠に覆われながらも、巨大オアシス、ディーンとそこから流れる幾つもの川によって、砂漠の中にありながらもその国は潤い、繁栄を築いていた。
彼女の生まれ育った故郷とは、数百年もの長きに渡っての敵国。

これからどうなるかわからないが、だが、何があっても泣くことはない。
涙は故郷を出る時に…国の守護神の住むといわれる天の頂で全て流してきた。
この乾いた国で涙を流すことは、ない。

王都の活気に満ちた喧騒が風に乗って輿まで聞こえてくる。
その声はナバールの繁栄と富を物語っていた。

王都があるであろう方向を睨むように鋭く見据える。
目的地は間近に迫っていた。

ナバールとローラントの全面戦争が終結したのは一ヶ月前。
隣国同士でもある両国は数百年も昔は友好関係を築いていたが、ヴァンドール帝国の謀略により敵対関係となり、根強い憎悪が両国を深く隔てていた。
殺し殺され、奪い奪われる。血で血を洗う惨事を数百年も繰り返してきた。
長い年月にわたって築き上げられた憎悪の連鎖を断ち切ることは最早不可能で、幾度戦争を繰り広げているのかわからなくなるほど、争いを繰り広げていた。

ナバール忍軍によってアマゾネス軍が壊滅寸前に追い込まれ、最早首都陥落、ひいてはローラント滅亡は免れないと誰の目にも明らかになった頃、宗教国家ウェンデルの強制介入により辛うじて滅亡は免れた。だがその後の条件は限りなくナバールの有利なものばかりだった。
ローラントの領土の三分の二…最も豊かな地域をナバールの領土とすることを承諾させた上で、人質として王女を差し出せ、と。
それらの条件にローラントの国民は激しく憤るも、今回はナバール側の勝利であったことは間違いない。
このまま国が滅びるよりは一時的に領土を明け渡し、国力を蓄えてから再び奪還すればよいとなった。
数百年もの間、奪い、奪われを繰り返してきたからこその考えだった。

輿の中で物思いに沈んでいると、やがて揺れが止まり、静かに地面に下ろされる気配がした。
ここまで護衛してきた兵士長が、傲慢な声音で告げる。
「王女。城門に着いたぞ」
「…はい、わかりました」
意を決して薄布を開くと、故郷とは比べ物にならない程の強い光が肌と目を射抜いた。
強すぎる光に目を細める。
太陽の光さえも故郷と違う。それを実感して足が竦みかける。
だが自らの誇りにかけて、凛とした態度を崩さずに背筋を伸ばして、昂然と顔を上げ、王族に相応しく堂々と兵士長の後に続いていく。
強い意思の籠もった鋭い眼差しで王宮を見上げる。
―これから、あそこが私の戦場になる。

玉座の間。
ナバール建国から歴代の王達を見守り、身を預けた椅子にリースが敵愾心を宿した眼差しで一瞥した後、それを隠すように目を伏せた。
玉座の台座より数段階下で跪き、頭を垂れて暫し待っていると、数人の男のものだとわかる足音が近づいてくる。
ローラントの誰もが間近に対峙する事すら出来ずに敗れるしかなかった仇を目前にして、指先に力が入る。
ナバール王。
ローラントの土地を踏み荒らし、蹂躙し、多くの民を傷つけ殺したナバール軍を統べる王。
ここに愛用の槍があれば、仇を倒すのに。
一矢報いたいと強い思いに駆られるが、此処で彼女がナバールに反抗的な態度をとれば、ローラントは長い歴史に幕を下ろす。
仇を目前としながらも何も出来ず、それどころか跪くことしか出来ない自分の無力さに、胸の中で暑いものがこみ上げ、暴れ出してくる。
食い縛る歯に力をこめなければ声高々と非難の声をあげそうだった。指先に力を込めなければ後先考えず暴れ出しそうだった。
理性を総動員して、暴れる感情を抑える。
その甲斐あって、彼女は端から見れば平静そのものだった。
「面を上げよ」
やがて威厳のこもった壮年の男の低い声が、彼女の耳に届く。

そこには一人の少女が跪いている。
強い光に反射して水面のようにきらきらと輝く金の髪が、まず彼の目を釘付けにした。
叔父も―祖父の後妻の孫だから年もさほど変わらず、兄と慕っている親友のような存在―見事な金髪だが、それよりも少女の髪のほうが彼には美しく感じられた。
透き通るような白皙の肌は、幼い頃に亡くなった強く優しい父親と同じで親近感を抱かせた。
一見華奢な体つきに見えたが、よく見れば細身でありながら戦士同様鍛え抜かれた体をしている。
ローラントには”アマゾネス”という女戦士の軍隊がある。かの国の王女ならば軍隊長としての訓練を受けていて当然だろう。
ナバール王と共に臨席した世襲王子ホークアイが少女を観察する。
諸国に美貌を絶賛されているローラントの王女には昔から興味があった。だからこそ賠償請求の一つとして王女を差し出す条件を、渋るナバール王に無理を言って頼んだ。
王は賠償請求に今回の戦争で戦死した王妃の記録の完全抹消と、王女と王子の処刑を要求するつもりだったが、諸外国の関係上そんな事は不可能だと家臣達に再三説得され、漸くローラントの三分の二の領土と王女の身柄引き渡しという条件をローラントに請求した。
祖父であり現王フレイムカーンのこの少女への処遇は知っている。だからこそこの場に出席したのだし、是非とも彼女の顔を見たいのだが、少女は一向に面を上げようとはしなかった。
―顔、見せてくれないかなぁ…?
少女を覗き込むように見ていたのを気づかれたのか、王が咳払いをする。
咄嗟に背筋を正したホークアイを呆れるように一瞥した後、言葉を紡ぐ。
「面を上げよ」
その声には僅かばかりの苛立ちが込められていた。

命じられても一向に頭を垂れたままで顔を見せようとしないリースに、ナバール王が腹立ち紛れに舌打ちする。
「面を上げよと申したのに聞こえなかったのか。 それとも国の仇に礼はとれぬとでも言いたいか?」
声音に滲むナバール王の苛立ちに、側に控えた兵士達が僅かに空気を乱す。
歴代の王に比べればフレイムカーンの気性は荒くない。しかし一度怒れば灼熱の砂漠のように熱く、激しい気性になる事は身近にいる者ならば誰もが知っている。
特に今回の戦争では王が幼少期から共に過ごし、生涯の友と慕った将軍がローラント王妃もありアマゾネス軍団長のミネルバと相打ちになったのだ。
その憤りと憎悪は激しく、底を知れない。
ローラントを完全に滅亡させなければ、彼の溜飲は決して下がらない。
「聞こえております」
周囲の危惧を押し流すように、間髪いれず応じる声が無音の中に響く。
深く頭を垂れていたリースがゆっくりとその面を上げた。
艶のある美しい金髪と曇りのない碧眼が、砂漠の民ではありえないきめ細やかな白い肌を際立たせている。
その顔を見た瞬間、ホークアイは言葉を発する事も己の周囲を警戒する事も忘れるほど、リースに見惚れた。
彼は今までの人生においてこれほど美しい女性を見たことがなかった。
世襲王子という立場上、美女達を嫌というほどみてきたが、誰にも心を奪われなかった。
だがリースを見た途端、今までにない感情が全身を走りぬけた。
ここまで誰かに、何かに心を奪われたのは初めてだ。
食い入るようにリースを見つめるホークアイの横顔を、フレイムカーンが苦虫を潰したような顔で見る。
王から立ち上る空気には明らかに苛立ちが滲み出ていた。

敗国の王女を嘲笑うようにフレイムカーンが彼女を絶望に陥れる言葉を紡ぐ。
「ローラント王女リース。 貴殿を我が孫で世襲王子たるホークアイの妾にさせよう」
その言葉が耳に届いた瞬間、彼女の全身が凍りつく。
奈落の底に落とされたとは、今のような事を指すのだと理解した。
―わかっていたことじゃない。
自分の身一つでローラントを救える。それならばこの身を売り渡すしかない。
例えどのような辱めを受けようとも、王家の人間としての誇りは誰にも穢せない。
だが抵抗もせずにその運命を甘んじて受けるなど、出来ない。
握り締めた手が震える。
――どうしても、納得できなかった。
炎のように激しい眼差しで目の前にいる男達を睨み据える。
玉座の間を満たした殺気に兵士達が身を強張らせた僅か一瞬。
リースが目にも留まらぬ早業で兵士から剣を奪った。
怒号が走る中、リースは玉座めがけて全速で駆ける。
狙うはナバール王でなく、世襲王子。
この命と引き換えに、ナバールの未来を奪う。
常日頃愛用していた武器が槍ゆえか、喉元を突き刺す以外の考えしか湧かなかった。
鋭く煌く刃をホークアイの首めがけて走り、喉元に剣先を押し当てる。
それと同時に周りの空気が一変し、空間を張り詰めた緊張が満たす。
ホークアイとリース。二人の視線が始めて交錯する。
「私はローラントの王女です! そのような屈辱を受けに、この国に来たのではありません!!」
虜囚だというのに媚びない。彼女は生まれながらの女王。
苛烈ともいえる眼差しでホークアイを睨む。
後に彼はこの時に本当の意味で一目惚れしたのだと回想する。
着飾った王女としてのリースでなく、誇り高い女戦士であるリースに。
護衛の兵士達が極力王女を刺激せぬように、包囲の輪を縮めてゆく。
今にも彼女の隙を突き、殺せる体勢に入っている兵士達に、ホークアイは心配いらないとばかりに手で制する。
その動作にリースが切っ先をホークアイの喉元に僅かに突きつける。
彼の細い首に、血が一筋流れる。
今にも殺されかねない状況に動揺を見せず、それどころか彼女を挑発するように勝気な笑みを浮かべる。
「それで?俺を殺して君はどうするんだ? 俺は世襲王子だけど、代わりにイーグルやジェシカがいるから、ここで死んでも王家の地が途絶えることはない」
こんな発言をしているが、今まで自分の存在を安く見積もった事もなければ、自分の命を軽んじたこともない。
彼の命は王国の命だと物心着く前から叩き込まれていた。それなのに、この言動はどういうことだろう。
敢えて身を危険に晒す言動を取るホークアイに周囲の人間が困惑するが、ホークアイ自身にも今の心境は理解できなかった。
ただ、今この状況を逃すのはとても惜しい。
「でも世襲王子が殺されたとなればナバールは黙ってないよ。 今度こそローラントは完全に滅び、数百年に及ぶ因縁はナバールの完全勝利で終わる」
リースの瞳に動揺が走り、殺気が薄れていく。
―今までその事に考えを巡らせなかったのかな?
気が強く、誇り高い激情家。だが頭に血が上りやすく、後先を考えない。
遥か先を見通し、常に冷静な判断を下さなければならない王族として失格だ。だが、一人の人間の個性と見れば魅力の一つになる。それに気の強い女は彼の好みだった。
「それでもいいなら、俺を殺すといい」
ホークアイが静かに目を閉じる。
無抵抗の青年の姿にリースの瞳が揺れて、指先が震える。
生じた隙を空気のみで読み取り、台座に隠されていたダガーで彼女の剣を弾き飛ばす。
剣はいとも容易く宙を舞い、遥か後方の床に突き刺さる。
その数秒間。僅かな時間だけでホークアイが立ち上がり、リースの首筋にダガーを当てる。
ホークアイが勝気な笑みを浮かべて、口角を歪める。
反応すら出来なかったその早さに、殺そうとした青年の強さにリースが愕然とする。
兵士たちが瞬く間にリースを取り囲む。

白いシルクの簡素なドレスを纏わされている。
それはシンプルな作りでありながらも、一流の仕立てによって作られた代物。
しかし彼女の憂いに満ちた表情と、抵抗を防ぐための手枷と足枷と、自殺を防ぐための猿轡は、その装いから大きくかけ離れていた。
逃れられないように、寝台の柱に拘束されていた。


扉が重々しく開き、部屋の主が入る。
毅然と顔を挙げ、これから自分を蹂躙するであろう男を鋭い眼差しで睨む。
艶やかな青紫の髪、淡い金色の瞳。砂漠の民特有の褐色の肌。そして芸術品のように端整な顔立ちと身体。低く耳に優しい声。
それらはとても美しく、こんな状況でなければ類稀な美貌に感嘆し、見惚れていただろう。
だが、今彼に向ける感情は、怒りと嫌悪だけだ。

男が何事か言いながら、彼女の動きを制限する拘束を丁寧に外していく。


ホークアイが暴れるリースの細い腰を片手で引き寄せ、頭を抑えて深く口付ける。
瞬間、リースの瞳に激しい光が灯り、片手を振り上げてホークアイの頬を殴ろうとするも、それはいとも容易く褐色の肌によって遮られた。
「リース。おまえの身柄はこのホークアイが手に入れた」
―――完全に捕らわれた瞬間だった。
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