未完

DB パラレル 未完 『螺旋』2―3

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先程まで異様なまでに興奮していたチチを漸く寝かしつけたハチが、額の汗を拭いながら部屋を出た時、足を止める。
そこには警邏隊…チチとあの男の幼馴染みだという男―確かクリリンと言った―がいた。
「何だい?そんな顔で見られたら気持ち悪いよ」
「あ…すまない……。そんなつもりはなかったんだ…
あのさ…チチはどうだった?」
その質問にハチの眉が寄せられたのを見て、クリリンが慌てて
「いや、ホラ!さっきまでチチの悲鳴が凄かったから…。それで気になったというか…何というか…。
その答えを聞き、ハチが内心鼻で笑う。
此処は完全防音になっており、扉の前にいても室内の音が一切聞こえない作りになっているのだ。あの時クリリンはその場にいなかったので、特別監視房の外にいたに違いない。悲鳴など聞こえるはずがない。
悟飯達の話を聞かない限り、チチが悲鳴を上げていた事など知っているわけがない。
しどろもどろに最後は言葉を濁すクリリンに対して、先程の悟空に対する苛立ちをぶつけたくなる。
「酷いもんだったさ。姿見ただけで怯えて…漸く今寝付いたところなんだよ」
今まで睡眠薬や精神安定剤を投与しなくても、抱きしめてやれば落ち着いていた。なのにあの男が出て行ってからも、何をしても落ち着かずに薬を投与する羽目になったのだ。


「あの悟空って、本当にチチの恋人なのかい?」
とてもそうは見えなかった。あれでは悟空が一方的に強い思いを寄せているとしか彼女の目には映らなかった。
「あぁ、チチの奴。いつも悟空さと結婚するって羨ましくなるくらい言っていたからな。 それに俺は二人をガキの頃からずっと見てきたんだから、間違いない!!」
「フーン…」
断言し、力説クリリンに対して、自分で聞いたにも関わらず、ハチは大して興味もないようだった。
―この男の言う事なら、嘘でもないだろう。
根拠も何もないのに、何故か信用できた。
「…で、何でそんな事を?」
そこまで先程の質問はクリリンに対しては問う必要性の感じられない程、当たり前なことだったのだろう。怪訝そうに問う彼にハチが
「チチの怯えようが酷かったから。…私が見てきた中でも一番怯えてたよ、あの子」


「…ハチさんは、悟空とチチの仲を疑っているようだけど、でも本当にあの二人は恋人で、半月後には結婚を控えていたんだ。
チチだって母親の形見のウエディングドレスを幸せそうに着ていたし、それに……」
底まで言うと、ハチの両腕を掴み、真剣な表情で
「とにかく、信じてくれ!!本当にあの二人は恋人同士だったんだ!!」
「…わかったよ。わかったから、手を放しな」
その言葉にクリリンが顔を真っ赤にして手を放した。その様子を見ていると、この数年笑う事のなかった顔に僅かな笑み―傍目には気づかれないほど―が戻り、この純情青年をもう少しからかってやりたくなる。
「もうわかったよ。チビタコスケ」
「なっ!!チビは仕方ないとしても、頭は剃ってるだけだ!!」


ハチが彼の頬にキスをして全身茹蛸よりも真っ赤になり、固まるクリリンに嫣然と微笑む。
「私は、ハゲは嫌いだよ」
去っていくハチの後姿を見て、クリリンが物心ついてから毎日、念入りに剃っている頭を撫でる。
「………髪、生やそうかな…」

ビーデルが悟空の退院の手続きを済ませるまで、フロアで待つ事になったが


悟空が珍しく新聞を手に取り、何気なく捲っていく。
原子炉爆発や謎の病原菌流出で南の諸島全域と、西の山岳地帯が特別危険地域に指定されたとか、大々的に行った連続殺人犯の捕獲作戦に失敗した警邏隊の無能を執拗なまでに叩き、罵る記事などがあったが、さほど悟空の興味をひくものはなかった。しかし、ある記事を見て手を止めて、それを凝視する。
その記事は牛魔王邸の大量虐殺事件についてかかれているものだった。


悟空の隣に、中年の女性が座る。
「あんたの彼女、記憶喪失なんだって?羨ましいよ…。私の人生なんて忘れたい事ばかりだもんね…」
その言葉に悟空が苛立つも、黙って聞いていた。


「忘れたいから忘れるものを、無理に思い出させようとするなんて、随分手前勝手な考えだね。そんなのただのエゴにしか過ぎないんじゃないかい?」
不愉快さを隠し切れずに、悟空が女性を睨む。
―何も知らねぇくせに、勝手な事を言うなっ!!
腹の中では怒りが渦巻くが、先程のチチの姿が悟空の怒りに陰りを落としていた。



ハチが休憩室に入ると、そこには悟飯がおり、お茶を飲んでいた。その姿を認めると、先程まで彼女を包んでいた楽しい気持ちが霧散していく。
悟飯がハチを見て
「あまりうちの隊員をからかわないでくれませんか?特にクリリンは純情ですから、一度天高く上げられて落とされたら、立て直すのが大変なんですよ」
「……私が何をしようと、私の勝手だろ。
隊長っていうのは、隊員全てを盗聴しているのかい?」
皮肉交じりに言葉を返すと、悟飯は
「いえ…ここからさほど距離も離れていないので、全て聞こえてましたよ」
その言葉に彼女が目を剥く。
防音加工が施されているのは病室のみで、休憩室や廊下には何も施されていない。それどころか、外界から完全に遮断されているため、音が響くくらいだ。しかし、ここからあそこまで数十メートルは離れている。それなのに聞こえるというのか?
ハチが疑うように悟飯を見ていると、彼が
「俺は混血なので、地球人よりは耳がいいんですよ」
「……混血にしては耳がよすぎじゃないかい?」
「それくらい個人差があるでしょう。 幸いなことに俺はサイヤ人の血を色濃く引いていますから」


「で、隊長様とあろうお方が、一看護師に何の用だい?」
「チチのことでね…。悟空が近づいたら酷く怯えていたというけれど、それは本当なのかと思って」
「あぁ、今までにない程にね。けどわざわざそんな事を聞きに来たのかい?」
彼女が言葉を発し終えると悟飯が溜息をつく。何やら呟いていたが、嘆息交じりの小声だったのでハチには聞き取れなかった。


「チチが目を覚ましてから今に至るまで、何かおかしな言動をしていましたか?」
有無言わさず、丁寧に言っているが、その実命令しているような態度に、ハチが鼻白む。
「患者にも守秘義務ってのがあるってことすら、あんたは知らないのか?」
「なら、警邏隊として問います」
警邏隊は政府の次という多大な権力を持っている。最近では政府の小間使いという印象が拭えないが、それでも他の組織やどんな大企業であっても、例外はあるものの基本的には警邏隊には逆らえないようになっている。
そもそもチチについては政府や警邏隊に詳細に報告するようにと、政府の上層から命令を受けていた。
警邏隊として、ならば、ハチには話す事を拒む権限を持っていなかった。
しかし…
「それならば今朝方報告したばかりだよ。気になるんだったらその報告書を読むべきじゃないのかい?」
どうしてもこの男に話す事を、彼女の中の何かが拒んでいた。


「…意識を取り戻してから十分おきにずっと体を洗い続けており、男に対してはやたらと怯えるようになった。
……………もういいだろう」
そう言い残すと、ハチがその場を立ち去る。



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