未完

DB パラレル 未完 『螺旋』2―4

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注意
悟飯×ビーデルが好きな方にとって、不快になる内容が若干あります。


















ビーデルが悟空の退院の手続きを済ませた後、悟空とビーデルが並びながら、病院から出てくる。悟空の表情にいつもの明るさはなく、どこか虚ろな目だった。そんな彼の様子にビーデルが何と言葉をかけていいか思案していると悟空がポツリと
「…ビーデル。おっちゃん達の葬儀、どうなってるんだ?」
「……昨日のうちに終わったわ」
「そっか…オラ、最後の挨拶も出来なかったんだな…」
二人の間に沈黙が流れる。
ビーデルは悟空の後見人であり、親子のように過ごしていたけれど、こうして成長した彼を前にしていると不思議と言葉が出なくなってしまう。ビーデルにとって悟空は養子以外の何者でもないのに。
加えて悟空も無口な性格であり、積極的に話そうとしないため、こうして一緒に歩いていて言葉も交わさずに、ただ悟空を寮に送り届けその足で自宅に帰るために―忙しいとはいえ、状況が状況のために休みをとっていたのだ―理由のわからない焦りがビーデルの中に僅かに芽生えていたものの、悟空の歩みにあわせて、双方が重い足取りで歩いていた。
何も話す事もなく、黙々と歩く中でビーデルの心は何故こんな事になったのか、その答えを捜し求めていた。
4日前までは、悟空とチチは結婚を間近に控えた幸せな二人だったのに、たった一日でこんな事になるのでは運命の非常さを呪いたくもなる。


牛魔王邸の被害者達の合同葬の折に悟飯の本音…彼が今でも人間を嫌っている事を知ったから、此処まで憂鬱な気分になっているのだ。幼少期に非情なまでに負わされた深すぎる心の傷が、そう簡単に癒えるとは思っていなかった。それでも十数年も人間である彼女と一緒に暮らしていても、悟飯の中では何一つ変わっていなかった。初めて会った時と何も変わらずに、ただ地球人への恨みと憎悪は奥へとしまわれていただけに過ぎない。その事実に悲しみと失望と絶望がこみ上げ、彼女を包み込む。
悟飯が何を考えているのか分からない。夫婦とはいえ、所詮は他人なのだからそれも無理はない。そもそも人間は自分の事すら満足に分からないのだから、他人の事など幾ら分かり合おうと努力しても完璧に分かり合える事はなく、分かり合えたと思ってもそれはただの錯覚に過ぎない。だから夫である悟飯のことがわからなくても無理はないのだ。しかし…あの人にとって私は何だというのかという疑問が折に触れて彼女の心の中で少しずつだが確実に膨れ上がっていた。
ビーデルが思考を巡らせている時に、悟空が声を張り上げて
「ビーデル!!」
その声に彼女が我に返り、驚きを露わに悟空を見る。悟空がいつもと様子の異なるビーデルを訝しげに見て
「どうしたんだ?ボーっとしておめぇらしくないぞ。オラが何度呼びかけても全く反応しなかったし…。そんなんじゃ副隊長としてやっていけねぇんじゃないか?」
「失礼ね!!」
頬を膨らませて反論するビーデルに悟空が邪気のない笑みを浮かべながら
「やっぱビーデルには元気で怒ってるのが似合ってんぞ」
その言葉に彼女が目を丸くするも、悟空の意図に気づくと頬に血が上っていく。その顔を見られまいと悟空に背を向ける。
「いつも私を怒らせているのは悟空でしょ!パンはもっと聞き分けのいい、”いい子”よ!!
さっ!!こんなチンタラ歩いてないで、早く帰りましょう!!」
高らかに声を上げると、悟空の顔すら見ずに彼の手首を掴んで、早歩きでぐいぐいと引っ張ってく。
警邏隊の寮の外観が漸く見え始めていた。

時は遡り、話は牛魔王邸大量虐殺の起きた当日に移る。
偶然にも悟飯が血塗れで倒れている悟空を大急ぎで警邏隊に運んだ後、メディカルマシンで回復させていた。悟空がどのような状況で瀕死の重体に陥ったかは、本人の意識が戻らないため何一つ分からなかったものの、彼があの場に運ばれたという形跡は何もなかったため教会前が犯行現場であると、ほぼ断定されていた。何故彼が連続殺人犯捜査の担当区域外にいたのかも、一命を取り留めた悟空が意識を取り戻した後に聞く事になった。
警邏隊総出で町中を探すものの殺人犯の影も形も見つからずに、今回の作戦は住民に反抗心を増やすだけの大失敗に終わり、隊員達が意気消沈と仮眠をとっている明朝、事件の発覚に繋がる電話のベルが鳴り響いた。
牛魔王邸に連絡しても誰も出ない。いつもは日の出と共に起きて活動する住民達が、誰も出ないとはおかしいと言う内容だった。初めは隊員達も相手にしなかったが、次第に同様の内容を伝える電話が鳴り響き、その中には住み込みで働いている身内と何時まで経ても連絡がつかないので、何かあったのか見て来いという警邏隊を小間使いにする内容もあった。
ここまでくれば先程の捜査で信用を落としているという手前、起きていた者達が牛魔王邸に行く事となった。そこで犯罪史上にも残るであろう、牛魔王邸大量虐殺事件が明らかになった。

休日のため家におり、TV番組を眺めながら退屈していたパンが、臨時ニュースで牛魔王邸に起きた惨劇を知ったのは、昼近い時間帯だった。


「嘘よ!!おじちゃんが…
何でおじちゃんが殺されなければならないの!!」
泣き叫び、そのまま崩れ落ちても泣き続けていた。
両親が忙しいためあまり家におらず学校の行事でさえ滅多に出てくれないパンにとって、物心ついたときから一緒に遊んでくれて、何かにつけ親身になってくれた牛魔王は”もう一人の父親”どころか、誰よりも甘えられる。この世で一番大切な…両親よりも大切な人だった。
そのあまりにも早く、理不尽すぎる死に


泣き疲れ自分でも気づかぬ内に意識を失っていたパンが目を覚ました時にはもう時刻も深夜に回ろうかという時間帯だった。リビングに居たはずなのに、彼女の寝室のベッドで寝かされていた事から、牛魔王邸での悲劇を悪い夢だと思おうにも、事件を知った時に癇癪を起こし暴れたために傷ついた手には包帯が巻かれていたことから、全てが現実である事が突きつけられる。
もう出し尽してしまい、出ないと思っていた涙がまた溢れ出す。枕に顔を突っ伏して、枕が重くなるまで涙が止め処もなく溢れ出した。
ひとしきり泣いた後に、涙を拭う。
自分がやるべきことはこうして泣き続ける事ではなく、犯人を捕らえ仇を討つこと。
今まで警邏隊という夢は親と一緒にいたいという、幼少期に満たされない愛情に飢えた思いと、別の道を強引に生かせようとする悟飯への反抗心という、我が儘の延長線上にあったがこれからは違う。警邏隊に入り、犯人を捕らえる。もう悟飯の反対などに屈しはしない。
その事を伝えに悟飯の部屋に向かう。もう日付はとっくに越していたが、それでも悟飯がまだ起きているという確信があった。
何もしなければ例えようもない悲しみと喪失感が襲ってくる。だから今出来るのはそれらに目を向けないように、次々とやるべき事を目の前に吊るしていきそれを実行していく事だけだった。
―あたしが泣いたって、何の解決にもならない。あたしは現実から目を背けて泣き暮らすような弱い人間じゃない。どんな困難にも立ち向かい、乗り越えていく!!あたしは…パパの子供なんだから!!
本人達から直接聞いた事はないが、悟飯と彼女の叔父に当たる悟天は混血という理由だけで、今とは比べ物にならないほどの差別を受けてきたのだという。それでも乗り越えてきた悟飯や悟天の血が自分には流れているのだから、絶対に挫けるわけにはいかなかった。挫ける事は父と叔父を貶める行為であり、最もしてはならないとパンは考えていた。
どう悟飯を説得するか、考えを巡らせながら悟飯の部屋の前に行き、ノックをしようとしたが、部屋の中から悟飯の声がしたので、反射的に手をとめた。
何故か電話での会話の内容が気になり、扉に耳を当て身体を壁に密接させる形にするが、防音機能が整っているのか、サイヤ人の優れた聴覚を―純血種よりは劣るが、人間よりは遥かに優れている―集中させても、聞こえてくる声は極僅かで、そこから意味を掴み取る事は非常に困難だった。ただ、悟飯の声に静かな怒りが宿っている事だけは分かった。
「俺はそんな事を了承したつもりはない!!」
滅多に感情を昂ぶらせる事のない悟飯の荒げた声に、パンの体が震え上がる。
何を誰と話しているのか、無性に気になり、耳を扉に強くくっつけ、身体をもっと密接させようとした時に、誤ってドアノブを回してしまう。いつもならそれだけで終わるが、この時悟飯は非常に珍しく鍵をかけていなかったので、凭れ掛かっていた力で扉が開き、パンが驚きで受身をとる事もできずに顔面を床に強打する。
防御なしの不意打ちによるもののため、痛みがいつもよりも強く感じる。顔に手を当て、痛みを堪えている間に悟飯は電話を終わらせたのか
「パン」
その声に彼女が恐る恐る顔を挙げた時、そこにあったのは驚きの中に怒りを宿した悟飯の顔だった。
何とか悟飯の気を別に逸らせようとする。
「…パパ、こんな時間にまだおきてたの…?」
「パン、お前こそ明日は学校だろう?…その顔のまま、学校に行くのか?」
パンが自分の顔に触れる。何時間も泣き続けていたために瞼は晴れ上がり、目の周りは酷い状況になっているだろう。鏡がこの場になくて本当に助かったと思っていた。
「それで、こんな夜更けにこそこそ盗み聞きをするなんて…一体どういうつもりなんだ?」
「……パパが私の話を聞いてくれたら、すぐに寝るわ」
「警邏隊の入隊なら認めるつもりはないから、時間と体力の無駄だ。だから早く寝なさい」
先手を打たれ、しかもこれ以上の攻めは一切受け付けぬどころか、いつものように受け流さずに手酷い反撃をという悟飯の空気にパンが黙り込む。
悟飯の反対に屈しないと先程決めたものの、今の彼では何を話しても無理であるし、上手い事話を打ち切られて底でお仕舞いになる。何事も時と場というものがあり、今は我を通すべきではない。
碌に戦わずに此処で引き下がる事に対し、自らにそう言い訳をして、今は大人しくこの件から引き下がる。
悟飯が此処まで機嫌を悪くするのは本当に珍しい。先程の電話が原因だとすればその相手と内容にパンが苛立ちの舌打ちを心中の中で行い、相手を罵倒したい衝動が湧き上がる。そこまで考えると先程の電話の事が気になった。
パンが立ち上がり、真剣な顔で悟飯を見る。
「ねぇ、パパ。さっきの電話って誰からだったの?」
「どうしようもない馬鹿からだ」
「馬鹿ぁ?」
苛立ちを隠さない悟飯から放たれた予想外の言葉に、パンがすっとんきょな声を上げる。
―パパを此処まで苛立たせる人物が”馬鹿”だって?


「政府の人間に怒鳴りつけてよかったの?」
「俺だって人間なんだから、あまりにも理不尽な事には怒鳴りたくなるよ」
「パンの危惧に悟飯は肩を竦めて、大して問題視していない口ぶりで言う。
一体どういうつもりなのかと悟飯を見るが、パンでは何も読み取る事は出来なかった。


「…おじちゃん達を殺した犯人について、何か分かっているの?もしわかっていたら…」
「パン。それ以上はお前のためにいわないほうがいい」
真剣な悟飯の顔と目に、パンの中で様々な言葉が浮かび上がるが、声にはならなかった。
「でも…!!私だって、犯人の事を少しでもいいから知りたいの!!どうしておじちゃん達を殺したのか。何で…!!」
そこまで言うと涙が溢れ出して、後は嗚咽ばかりで言葉にならなかった。
悟飯がパンの背中に手を回し、子供をあやすように頭を撫でる。その行為で次第にパンが落ち着きを取り戻すものの、丸っきり子供扱いしている悟飯に対して反発も芽生える。
―いつもパパはそう。あたしを無力な子供扱いしている。あたしはもう15で、クォーターなんだから…強いのに…。


「パン。犯人はサイヤ人の血を引く人間だ」
目を見開くパンを尻目に悟飯が更に言葉を紡いでいく。
地球人では悲鳴さえもなくあそこまでの人間を殺す事は不可能に近い。鍵は何処もかかっておらず、時間がかかれば逃げ出そうとする人間もいる。それすらもない事は逃げ出す暇もない短時間のうちに数十名を虐殺したと推察される。その犯行の手口とて非力な地球人では不可能な殺し方であり、辛うじてまともな形として残っていた異体の数々はどれも一撃で殺されているものだった。
これらの現場状況から、この犯行は混血の仕業であると確定しており、遺体の損傷から政府要人を立て続けに殺している殺人犯と同一人物である可能性が高い。
パンに分かりやすいようにそれらの事柄を簡潔に話す悟飯にパンが


「パン。明後日には合同葬が行われるから、準備しておきなさい」
「…随分早いのね」
「遺体の損傷が酷すぎるんだ。………感情の問題よりも、諸事情が色々とありそちらが優先されてしまったんだよ」


「…私たち、葬儀に出てもいいの?」
サイヤ人の眷属によって身内を殺された人間にとって、パンも悟飯も同じ眷属として憤りをぶつけたくなる。彼らが葬儀に行く事は遺族の心を刺激するだけだという気持ちもあるが、それでも誰よりも大好きな牛魔王にせめて最後の別れをしたかった。



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