未完

DB パラレル 未完 『螺旋』2―6

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注意
少しグロテスクな表現があります。













パンが病院内を探すものの、チチが入院しているという302号室はどれだけ探しても見つからなかった。
―もう、何処にあるって言うのよ!?


「え…?面会できないんですか?」
「大変申し訳ありませんが、彼女と面会するには警邏隊の許可が必要なのです。…許可はとっていますか?」
不審そうに、探るような目を向けられてパンが一瞬たじろぐも、気を取り直す。
「あたしは警邏隊隊長、悟飯の娘のパンです。…怪しい人間じゃありません」
「ではお父様から許可証を貰ってから、またいらしてください」
それだけ告げると、その場から立ち去った看護士にパンが声をかけようとするが、やめる。
「…それが出来れば苦労しないわよ」
これは彼女の独断で行っている行動だ。悟飯に知られれば叱られるどころではない。


パンが意気消沈しながら廊下を歩く。
厳重に護衛されているとは聞いていたが、チチの面会をするにも警邏隊員であること、もしくは政府高官、総督、隊長のいずれかの許可証が必要である事など、知らなかった。
悟飯かピッコロに許可証を出してもらおうという考えはすぐに却下される。そもそもこれは彼女の独断で行われている行動であり、悟飯には知られるわけにはいかない。ピッコロに頼んだとしてもそれは悟飯に頼むようなものだ。そもそも悟飯は許可証を発行すらしてくれないだろう。彼は公私の区別はハッキリつける人間だから、娘の頼みという理由だけでは私生活はともかく仕事関係では動かない。


チチが記憶喪失だという事は分かっているが、それ以外のことは何も聞かされていない。ここまで厳重に彼女の身辺警護が行われている理由は、犯人と接触したからと言われているが、隊員の幼馴染みはその話をあまりしてはくれない。
彼女がこの事件において持っている知識は、一般人より少し知っている程度だった。それが無性に悔しく、やるせない。
父親の権力を使って行動するなんて浅ましい事はしたくないけれど、
―あたし…本当に部外者なんだ。
物心つく前から警邏隊と身近に過ごしていたため、疎外感を感じるような事は今までなかった。けれども


パンの足取りが次第に重くなり、とうとう歩みをとめる。彼女が廊下の窓を見遣る。外は今の彼女の気分と同じでどんよりと曇っており、何時雨が降り出してもおかしくない天気だった。
「あたしは警邏隊じゃない」
どれ程なりたいと切望しても、なれない。まだ諦めるつもりは毛頭ないけれど。それでも悟飯の頑固さを知っているから、望み薄だと思う。
窓に映っているのは明るくて、元気一杯の猪突猛進のイノシシ娘とよく言われる少女ではなかった。

赤い水溜りの中に一人、ポツンと立っている。
ペンキかと思うが少し粘りがあり、鉄臭い。
これは血だ。辺りには大量の肉片やはらわたが散らばっており、それを雑巾のように踏んでいた。
こんな光景を見ても、何も感じなかった。
何処かで見たような光景だが、一切思い出せない。
笑い声がする。本当に楽しそうな声だ。
その声に心引かれて、そちらに向かう。そこには人が居た。褐色の肌の男で、顔は黒く塗り潰されており全くわからない。
「カカロット。お前もこっちに来て一緒に楽しもうぜ」
男が楽しそうに言い、顎でしゃくり示した先には…

悲鳴をあげて飛び起きる。
夢の中では何も感じなかった恐怖がこみ上げて、産毛が逆立っている。
悪夢が飛び出して、また目の前に表れそうな気がして、周囲に鋭い視線をめぐらせる。
そうだ。あれは牛魔王邸で起きた事であり、現実にあった事だ。あの前後に何があったのか、その記憶は曖昧だったものの、忘れようとしても忘れられない光景だ。
退院した当日、事情を聴きに来たピッコロに、あの事件の日、彼が牛魔王低に居たという事を話したものの、彼が発見された状況からそれはないといわれた。
そもそも悟空が発見されたのは2時。犯行時刻は死亡時刻の判別が可能だった遺体から、死亡時刻は1時頃であり、悟空が犯行現場に居合わせることは不可能だといわれた。
悟空の曖昧な記憶では彼が牛魔王邸に着いたのは1:45近くで、その時にはまだ遺体…血は生暖かく、牛魔王も殺された直後のようだった。


二人組みの犯人を見たと言い張る悟空にも厳重な護衛をつけるのかと思われた。しかし予想に反して悟空には誰一人として護衛のものはつかなかった。
悟飯の言葉を要約するならば一般人ならともかく、仮にも警邏隊員なのだから、襲撃があっても自分で何とかできるだろう、と。


時刻はまだ夜明け前。
先程の悪夢を振り払うように、熱いシャワーを浴びる。
風呂場に備え付けられた鏡に映し出されたのは彼の鍛え抜かれた体だったが、それはあの時には何の役にも立たなかった。
純粋のサイヤ人だというのに、混血の悟飯や悟天に勝てたことはない。悟天には弱虫、マダオと蔑まれていた。何故あそこまで嫌われているのか全くわからないが、それでも自分が平均的なサイヤ人よりも遥かに弱いという事はわかっている。
―強くなりてぇ…
強さへの執着はサイヤ人の血だ。血の命じるままに強くなる。
しかし何かが強くなるのを抑えるように、全身を縛り付けているようで、強くなれずにいた。


早朝の警邏隊本部に前代未聞の出来事がおきていた。
悟空がいつもと異なり、遅刻せずに定時よりも早く来た姿を見た者が、驚きに目を瞠っていた。無理もない。悟空といえば、本部近くの寮に澄んでいるにもかかわらず、毎日寝坊して遅刻する事で有名だ。誰もが定時きっかりに来た所を見た事がないという有様だった。大して仕事が出来る訳でもないのに、そんな状況でもクビにならないのは、悟空が純粋サイヤ人で政府の意向で入隊したという理由のみだろう。
悟空が隊長室に入り、書類を認めていた悟飯の元に行き、一切の通常勤務の免除と牛魔王邸大量虐殺事件…政府高官連続殺人事件の犯人追跡の任務に就く事を申請する書類を渡す。
あんな事があった以上、通常勤務に戻るつもりなどなかった。これはクビを覚悟しての行動だ。
悟飯が訝しげに書類を見ていたが、手に取り、パラパラと捲っていく。一見すると読んでないようだが、悟飯にはその内容がわかったのか、眉を顰めていく。そして読み終えた後に呆れと哀れみの入り混じった目で悟空を見る。
「馬鹿だと常日頃思っていたが、まさかここまで馬鹿だとは思いもしなかったよ。
…悟空、もう一度入院したほうがいいんじゃないのか?」
どれ程の決意を胸にしての行動か、わかっている筈なのにそれを完全に無視した悟飯の物言いに悟空が憤り、机を勢いよく叩き―サイヤ人規格のため、ビクともしなかった―悟飯に詰め寄る。
「何でだよ!?オラは…」
「こちらでちゃんと捜査しているから、お前がわざわざ動く必要はないと言っているんだ。それにお前はあまり動き回っていい立場ではない」
「…どういうことだ?」
訝しげに問うた質問に悟飯は悟空の鼻筋に指を突き立て、真剣な眼差しで彼を見る。
「悟空。お前は犯人を目撃して接触したんだろう。お前が動けばそれだけ犯人を刺激しやすい。…軽はずみな行動は慎め」
誰も信じなかった事を悟飯が信じている事に対して、少し意外な気持ちを抱いたが、それでも憤りは消えるものではなかった。
「悟空。俺にはお前を守る義務がある。だから勝手な真似は許さない」
悟空の目を鋭く見据えて、そう言うと、気で書類を一瞬で燃やす。
それに怒った悟空が悟飯に掴みかかろうと腕を伸ばすが、悟飯は一瞬で悟空の手首を掴み、捻り上げ、もう片手で悟空の顔面を机に強打させ、取り押さえる。それらは全て一秒にも満たない、悟空には反応できない速さで行われた。
悟空が悟飯の手から逃れようともがくものの、僅かたりとも頭を動かす事は出来なかった。
悟飯が冷酷な眼差しで悟空を見下ろす。
「図に乗るな、カカロット。お前は弱い。哀れな位に弱すぎる。そんなやつが連続殺人犯を追い詰めるだって?…甘いな、戯言が過ぎるぞ
犯人を追いたければ、もっと強くなれ」
悔しさのあまり、悟飯を睨むように見上げるが、悟飯はその目を見ても眉一つ動かさなかった。
悟飯の手が頭から離され、悟空が後ろに跳び間合いをとるが、佇んでいるものの、戦闘体勢に入った気を感じ取り、自分が戦おうとしている者のあまりの強さに身震いする。


全身ボロボロになった悟空を、悟飯が見下ろして溜息をつく。
「悟空。そんなに犯人の手掛かりが知りたいのなら、教えてやる。犯人はターレスという人物だ」
「ターレス…?」
何処かで聞いたことのあるような名だったが、何処で聞いたかはわからなかった。
「政府治安部のデータバンクにアクセスし、膨大な過去の犯罪記録の中から今回の手口、状況などで少しでも共通点のある事件を徹底的に洗った結果、その人物の犯行である可能性が非常に高い。
裏社会では有名な殺し屋という名の異常者だ。ターレスの正体は不明。奴がサイヤ人の眷属であることは間違いないが、個人で動いているのか、何らかの組織に属しているのかそこまでは一切分からない」
「…そいつの容姿について何かわかってんのか?」
「顔は不明だが、珍しい褐色の肌をしている。
―なら、奴に間違いねぇ。
悟空の目から何を考えているかわかったのか、悟飯が釘を指すように
「悟空。分かっていると思うが、お前ではターレスと対峙しても、一秒で負ける。それだけは言っておく」
「…止めねぇのか?」
「お前はパンと違って、言って聞かせても聞くだけの頭はないからそんな無駄な事はしない。
俺はお前を守るが、死にたければ勝手に死ねばいい。……それが理由だ」



深夜という時刻なのに街中をネオンが照らし出し、街は昼間と変わらない明るさだった。コンクリートだけで構成されたドブネズミのようなビル街を、極彩色の光の明滅という厚化粧で隠しているようだった。
形はどうあれ、見える所では繁栄しているように見えるが、路地裏に視線を向けると、そこには顔は衰弱し、げっそりとやつれた人間が数多くいた。ビルの壁に凭れ掛かる者、まともに舗装されていない路面に倒れこむ者などがいる。
表通りにいれば容赦なく始末されるため、彼らは誰の眼にもつかぬように、こうしてここにいる。
その中を髪形は違うものの、悟空とよく似た顔の人物…悟天がすっかりやつれた顔で、表通りに近い路地裏の壁に凭れ掛かっていた。
悟天が虚ろな目で地面を見つめる。
空腹で何も考えられない。この空腹をどうにかしたいという思いで一杯だった。
龍球都市を出てフリーライターとして働いたものの、サイヤ人の混血である事が分かると、どんなにいい記事を書いたとしても全く相手にされなかった。バイトをしようにも混血である事が知られた途端、給料未払いで仕事はクビになった。
この二年、そうした差別の中で戦ってきたが、最早限界だった。今までの境遇を思い出すにつれ、地球人への恨みや憎しみ、怒りが湧き上がってくる。
どんなに空腹でも、考える事は止められない自分自身に呆れている時、悟天の顔に当たっていた光が何かに遮られた。
悟天が顔を挙げると、逆行で顔は分からなかったが、こんな所にいるには不釣合いな空気を纏った十代半ばの少年がいた。男物の有名なブランド品を身につけているが、気品に満ちており、存在自体がこの街とはあまりにも浮きすぎているため印象的だった。
その少年の瞳…誇り高さと気高さに満ちた、どこか見覚えのある青い瞳が特に印象的だった。



言い訳
この時の悟空の戦闘力はラディッツ襲来時をイメージしています。
悟飯はブウ戦時のアルティメットくらいです。
戦闘力においては悟空はまだパンよりも弱いです。
だから悟空の警邏隊入隊が認められて、何故自分が認められないのかとパンが憤るのですが…。


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