未完

DB パラレル 未完 『螺旋』2―断章

 ←BOF3 小説 『竜と兎の虎争奪戦』1 →DB パラレル 未完 『螺旋』3―1
悟飯と悟天がピッコロに引き取られる切欠となった話です。


俺と悟飯との付き合いは非常に長い。あいつが生まれる前…母親が子供の頃からの付き合いだ。
あの少女はとても明るくて、よく笑って、元気で近くにいるだけで心を暖める春の太陽のような存在だった。
悟天は育った環境のせいであまり表には出ていないが、しっかりと受け継いでいるのに対し、悟飯はその性質を全くという程受け継いでない事はとても残念だ。


誰からも好かれた彼女が惚れたのは、妻と友を亡くし、国も滅ぼされ、絶滅のレールをブレーキなしに急加速で進まされているサイヤ人だった。
今の世の中、サイヤ人と接触を持ち、匿う事がどんなに世間から冷たい目で見られ、人間として扱われなくなるかを必死で説いたが、それも効果はなかった。彼女は素直だが、自分の決めた事に対してはとても頑固なところもあった。自分の確固たる意思でそう選んだのならば、誰にもそれを変える事は出来なかった。
手負いの獣は少女を拒み、少女の放つ光を嫌悪していたが、暗く、冷たい中、一人でいるのは…孤独は復讐心をも折る力を持つ。憎しみに委ね、復讐と孤独の中を突き進むよりも、生きる事を、誰かと共にある事を選んだとしてもおかしくはなかった。出会った時でさえ、彼は憎み続ける事に疲弊していたのだから。


彼らは二人の子を設けたが、幸せも長続きせず、父親は人造人間に殺され、母親も風邪をこじらせて入院した挙句、院内感染により亡くなった。
父親の葬儀は母親とまだ幼い長男の二人だけで挙げたようだが、しかし母親の葬儀を子供一人で行う事はとても出来なかった。だから、ピッコロがその役を引き受けた。

誰一人として母方の身内がきていない状況にピッコロが苦々しい面持ちになる。この葬儀に出席しているのはピッコロ、亀市長、牛魔王。そして彼女の大親友だった女性だけで、他には誰一人としてきていなかった。
―サイヤ人と結婚した人間など、身内ですらないということか…。
その考えに反吐がでる。


本来なら喪主は唯一の身内ともいうべき悟飯か悟天が行うべきだが、悟飯はまだ幼く、悟天に至っては赤子のため、ピッコロが喪主を勤める事になった。
最初は辞退したものの、悟飯の言葉により引き受けた。
――僕はまだ子供で、何も出来ません。…だからピッコロさんが喪主を勤めて下さい。数少ない味方だったピッコロさんがお母さんを送り出してくれたら、僕も母も嬉しいです――
とても五歳の子供とは思えない言葉だった。


葬儀が始まる前、悟飯の姿が何処にも見当たらずに探し回る。
今は一人にさせてやらねばならないと思っていたが、それでも今、悟飯を一人にさせたら取り返しのつかない事が起きるような嫌な予感を覚えた。
人気のない所を探し回ると、悟飯はいた。
森の木々の中、人から隠れるように赤ん坊の悟天を背負って、ぐずる悟天をあやしていた。


「…悟飯。俺がお前達の親になる。……だからそんな顔をするな!」
その言葉に悟飯は目を丸くしていたが、すぐにピッコロを安心させるように微笑する。その笑みはピッコロには痛みを我慢しているものとしか思えなかった。
「……………大丈夫です。……だからピッコロさんが気に病む事ではありません」
ピッコロの申し出はとても嬉しく、両親が立て続けに死んでから、無防備に晒される事になった極寒の悪意に満ちた世間よりもずっと暖かく、縋り付きたい衝動に駆られる。しかし、それを必死に堪えて身を離す。
心配してくれるピッコロをこの極寒に晒すわけにはいかない。混血を育てるという事はピッコロも世間から非人扱いさせ、地獄に引きずり込むことなのだ。物心つく前から…それどころか生まれる前から、自分達や両親の理解者で、数少ない味方であったピッコロをそんな目に合わせるなどとても出来なかった。
自分の感情だけで、大切な人の人生を棒に降らせるわけには行かない。
自分の背中に感じる重みと温かみが、彼をもう守られるばかりの子供ではないと告げていた。
まだ赤ん坊の弟もいるのだから、強くあらねば。母が亡くなった時に約束したのだ。悟天を、何があっても守ると。だからピッコロを巻き込むわけには行かないというのはわかっていても、悟天だけは幸せにしてやりたかった。自分が身を引く事で悟天が幸せになるのなら、そのためなら暖かい庇護下から離れる事も出来る。
どこかに混血だけが住むという町があるから、葬儀が終わったらそこにいこうと思っていた。そこにいけば誰にも迷惑をかけることはないと。
しかし思案の途中で頬に強い衝撃を感じて、意識が現実に引き戻される。
ピッコロが悟飯の頬を両手で挟み、慈愛と強い意志の宿った厳しい眼差しで悟飯だけを見つめていた。
「赤子連れの幼子二人で生きられるほど、世の中は甘くないぞ。
俺の事など心配するな。……お前はどんなに大人びても、まだ子供なのだから、自分の感情のままに行動してもいいんだ」
「……でもピッコロさんを地獄に引きずり込む事は出来ません。ピッコロさんだけはそんな目に遭わせたくない」


「僕達の勝手な都合でピッコロさんの人生を狂わせるわけにはいかないんだ!!」
感情のままに拒絶の言葉を勢いよく吐き出す。
悟飯は気づいていない。拒絶すればする程、本当はピッコロに縋り付きたい事を。



葬儀の最中、泣くのを必死に堪えていた悟飯にピッコロが
「…泣け、悟飯。本当に悲しい時や辛い時には、我慢せずに泣け」
「………できません。僕はもう誰にも甘えられない。だから……」
それ以上は言わせまいとピッコロが悟飯の頭に手を置き、優しくなでる。撫でられるたびに悟飯の目に涙が溢れてくるが、それは零れ落ちる事はなかった。
ピッコロが悟飯を受け止め、彼の顔を覆うように抱きしめる
「今は俺が受け止めてやる。だから甘えろ。……お前はまだ子供なんだ」
悟飯がピッコロの腕の中で嗚咽を漏らし、肩を震わせて涙を流す。しかし最後まで大声で泣く事はなく、ずっと押し殺すようにすすり泣いていた。



言い訳
悟飯の考えがとても五歳児のものとは思えない…。

スポンサーサイト


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ
総もくじ  3kaku_s_L.png ドラゴンボール
総もくじ  3kaku_s_L.png 火星物語
総もくじ  3kaku_s_L.png 聖剣伝説
もくじ  3kaku_s_L.png その他
もくじ  3kaku_s_L.png 未完
もくじ  3kaku_s_L.png 考察もどき
もくじ  3kaku_s_L.png 短文
もくじ  3kaku_s_L.png 裏部屋
  • 【BOF3 小説 『竜と兎の虎争奪戦』1】へ
  • 【DB パラレル 未完 『螺旋』3―1】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【BOF3 小説 『竜と兎の虎争奪戦』1】へ
  • 【DB パラレル 未完 『螺旋』3―1】へ