未完

DB パラレル 未完 『螺旋』3―1

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退院してから一ヶ月。何かしらの進展、もしくは薬の情報を得られるかもしれないという期待を抱き、悟飯に尋ねる。
「そういえば悟飯。記憶回復何とかってのは、どうしたんだ?」
「記憶回復促進薬…通称subvenire(スーベニア)だ。 ……残念だが、それはまだ入手できていない」
「えー!!まだ手に入れてないのか!?」
非難めいた口調で言う悟空に、悟飯が苛立ちを抑えながら
「…脳味噌が筋肉で戦う事しか取り柄のない悟空にはわからないけどね、色々と大変なんだよ。
スーベニアは試験的に作られたため、量産されていなかった。そして効果は抜群だが、遅効性であり、大量の薬が必要になる。…一つ二つ手に入ればいいという問題ではない。最低でも数十~数百単位は欲しいんだ。
作られたのがもう十年以上昔だから、様々な方面でも、もう品物自体ないんだ」


「ここまで探しても見つからないんだ、もう何処にもないよ」
悟飯の独自の情報網でいくら探しても、薬自体存在せずに書類に記録として残っているだけだった。
その答えに悟空が絶望と落胆の入り混じった顔になる。
記憶さえ戻ればチチは元通りの―自分を一途に慕ってくれていたあの頃のようになると思っていたため、薬がもう存在しないという答えは楽天的な悟空を突き落とすには十分だった。
「こうなったらC.C社長のアポをとるしかないな…。元々あそこで作ってたんだし、薬そのものが手に入らなくても、成分さえわかれば…」
勿論そんな事は違法であり、特許を侵害する事になるため裁判沙汰になれば確実に敗訴する。しかし、本格的に売り出していないところを見ると、用なしの薬らしいので、だったら成分表くらい…というのが悟空の考えだ。
悟空の言葉に悟飯が呆れ、馬鹿にするような眼差しを向けるが、社長にアポをとるという考えでは賛成であり、最早アポをとって本社に在庫の有無を調べてもらうしかない。


C.C製薬会社は政府の要求を全て跳ね除け、薬の情報を渡す事もなければ、社長自ら役人に会うことはなく、全て代理人が相手をしているという状態が続いていた。法的処置を行う矢先に制裁を受けてしまい、政府は今C.C製薬会社に対して慎重な体勢で望んでおり、膠着したまま事態は止まっていた。
悟飯やピッコロからC.C製薬会社の政府への対応を聞くたびに、悟空の中では苛立ちと憎しみが湧き上がっていた。
彼らが薬を渡すだけでいいのに、何故そこまで政府に対して敵対的な姿勢をとり、従う事をしないのか。悟空にはどうしても理解できない事だった。
「悟空。こればかりは焦っても何一つ解決しないよ」
「でも…!そんな悠長な事言ってる場合か!!」
悟空が非難に満ちた眼差しで悟飯を睨むが、悟飯は肩を竦めるだけだった。
「記憶喪失なんて、すぐに直ることもあれば一生治らない事もある、難しい心の病なんだ。
どうにもならない事を気に止んで身動き一つせずに、時間を無為に過ごす事よりも、今お前が出来る事をやれ。
思いが強ければね、自ずと物事を解決させる答えのヒントとか、次へ進むための鍵がやってくるよ」

パンが学校の宿題と向き合うが、心此処にあらずで勉強に身が入っていなかった。
勉強するよりも牛魔王達を殺した犯人を捕まえたいという思いが非常に強い。しかし警邏隊ですら何一つ情報の得られない犯人を前に、捕らえるどころか探す手段すら思いつかなかった。
パンが知っている事は犯人はターレスというサイヤ人の眷属で―ビーデルから悟飯に内緒で教えてもらった―長年政府が血眼になって探している存在である事。そして存在すら確認されていないため信憑性は非常に薄いのだが、行動を共にする共犯者がいるらしい。それだけだ。
自分の手で見つけ出して捕らえると息巻いても、結局の所は―非常に不本意極まりないが―警邏隊任せになっているのが実情だ。


チャイムの音が二回の彼女の部屋まで響く。
いつも無機質なあの音を聞くたびに、もう少し可愛い音に変えてもいいのだが、その提案は家族内で聞き入れられていない。
いい気分転換とばかりに、駆け下りて勢いよく扉を開く。
そこにいた人物にパンが嬉しさと驚きのあまり涙が溢れてきた。
「悟天!!」
勢いよく、ぶつかるように彼に飛びつき、抱きしめ、頬にキスをする。
数年前に龍球都市を出て行ってから音沙汰のなかった大好きな叔父を前に、再会したら言おうと思っていた言葉が出ずに、ただ泣きじゃくって悟天の胸にしがみ付く事しか出来なかった。そんなパンの背中を悟天が優しく、幼子をあやすように撫でる。
「パン、久し振りだね。元気にしてた?」
その気軽な口調にパンが頬を膨らませる。
悟天が誰も自分の知らない所で、実力だけでフリーライターになると言って、引き止める悟飯を振り切るように家で同然で家を飛び出してから、家族は皆悟天の事を心配していた。悟天が出て行ってから数ヶ月は悟飯は酷く落ち込み、気性が荒くなっていたし、ビーデルも酷く寂しがっていた。そしてパンも夜中に枕を濡らす生活をしていたというのに、まるで昨日出て行って、帰ってきたかのような悟天の口振りに憤りすら生まれる。
そんなパンの怒りの気配を感じたのか、悟天が笑いながらパンの頭を撫でる
「ごめんね。ここはそれらしいムードと台詞を言うべきなんだろうけど、俺さ、どうしても湿っぽいのは苦手なんだよ」
湿り気のある関係は別だけど、などとセクハラ発現を完全黙殺したパンに悟天が
「…付き合い悪くなったね、パン」
「もう下ネタの意味を聞いたり、いちいち反応するような子供じゃないもん。悟天、あたしの事をまだ子供だと思っているようだけど、あたし15の立派なレディよ」
胸を張り大人ぶった態度をとるパンに悟天が笑いを堪える。
それが子供だというのが、このお子様にはまだわらかないらしい。後数年もすればこんなやりとりも恥ずかしい記憶となっているだろう。
「はいはい、パンはもう立派なレディだもんね」
からかうように言われた言葉に、パンが拳を振り上げる。
「悟天!!子供扱いしないでって言ってるでしょう!!」
勢いよく振り下ろされたこぶしは、悟天に容易く受け止められてしまう。悟天がパンの手を離し、悪戯小僧めいた笑みを浮かべる。
「残念。俺は悟空と違って弱くないからね。でもだいぶ力がついてきたじゃないか、パン」
悟天に認められた事で嬉しそうに目を輝かせるパンを、悟天が優しい眼差しで見る。
彼や悟飯がこの年頃の時にはもう自立した大人であり、子供のように振舞う事はなかった。悟飯など5歳の頃からピッコロに引き取られたものの、ピッコロに甘えるのを堪えて、自分の気持ちを押し殺して、悟天の親になり、過酷過ぎる幼少期を過ごした。それはベジータ達と生活するようになってからも同じで、基本的に誰かに甘える事だけはしなかった。悟飯は幼子の時から”大人”にならざるを得なかった。
そんな悟飯の姿をずっと間近で見てきた悟天にとって、パンは非常に子供じみていると思うが、それも過酷な迫害などないため、伸び伸びと子供としていられるためだ。その事に嫉妬を覚えるも、姪の生き生きとした姿を見ると酷く安心する。彼女が怒り、悲しみ、恨み、憎悪、絶望に染まる姿など見たくもないし、自分達の分まで幸せになって欲しいと強く願う。
それは同じ混血であるチチにも言えることだが…あの時代、混血の女の子は男よりももっと悲惨な目に遭わされたから。可愛らしい彼女がそんな目に遭わなくて本当によかった…悟空だけは、どうしてもわだかまるがある。
何よりも大事な兄の夢を、両親に誓い、あの地獄の日々の中で希望だった夢を奪った悟空に対しては、家族として暮らそうが何だろうが、大嫌いだ。あの過酷な日々を経験せずに能天気でいられることに対して無性に腹が立つ。そのため、悟空を邪険にするような言動をとり続けているのだが…それは彼自身も大人気ないと思っているものの、止められなかった。
悟天から見て悟飯が悟空への悪意を―必ず持っているに違いない―覗かせる所など、あまりなかった。しかし悟飯は自分の感情を押し殺すのに慣れ過ぎているから…
「ちょっと!悟天!!」
パンの声に悟天の思案が打ちとめられる。
「ん?何?」
「何、じゃないでしょう!!さっきからボーっとして、ちゃんとあたしの話聞いてたの?」
「ごめーん、何も聞いてなかった。で、何を話してたの?」
悟天の悪気の一切感じさせない笑みで返された言葉に、怒りを通り越して呆れてしまう。

悟天達がリビングに入り、彼が勝手知ったる我が家―生まれてから数年前まで此処で暮らしていたのだから―という様子で、ソファに勢いよく座り込んで寛ぐ。
「ねぇ、パン。兄ちゃんとビーデルさんは?もう警邏隊の仕事は終わってるはずだよね」
弟が帰ってきたというのに一行に姿を見せない兄の姿に疑問を持ち、すぐ側に座り込んだパンに尋ねる。
隊長である悟飯の勤務時間はAM6:00~PM8:00だ。現在PM8:50であり、悟飯達が帰ってきて、夕飯の準備をしている時間帯だというのに、二人の気はまだ本部にいた。
悟飯が残業で遅くなることもあるものの、ビーデルは確実に帰っている時間帯だ。だというのに、何故二人とも本部にいるのか?
「この最近……色々事件があったから。だからパパ達が帰ってくるのは11時過ぎよ。帰ってきてからもずっと仕事をしているの」
「そんなんじゃ体を壊すよ」
ただでさえ長時間の労働なのに、


「政府の要人が立て続けに…ねぇ。そんな事があったんだ」
驚きに目を丸くする悟天を見て、パンが聞こえがしに大きな溜息を漏らす。
「………これってかなり有名な事件よ。なのに何で知らないの?」
「俺にだって色々と事情があるんだよ」
―流石に餓死しかけていたとは言えないけどね。
「それより、牛魔王のおじさんの家、気が一切感じられないけど、どうしたの?」
その問いかけにパンの表情が一変する。

悟飯が書類を片付け、ささやかな休息のコーヒーを飲んでいる時に、ノック音と同時にピッコロが部屋の中に入る。


ピッコロが悟飯の飲んでいるコーヒーを見て
「悟天はミルクと砂糖を半分以上入れるのに、お前はそうしないんだな」
「悟天の味覚が子供なだけですよ」
ピッコロが苦笑する。
悟天は外見はともかく、内面は彼の母親と似通ったものが多々あるが、悟飯にはない。外見だけでなく中身も父親譲りなのだろう。


「この最近、悟天の話題を持ち出さなかったのに、一体どういう風の吹き回しですか?」
その言葉にピッコロがおかしそうに笑う。ますます分からないという様子の悟飯に
「悟飯。お前にとっておきの客が来ている。今、クリリンと悟空がその客の相手をしているが、客はお前に会えなくてすっかり臍を曲げている。 …気を感じれば、誰だかすぐにわかるぞ」
その言葉に悟飯が目を見開き、次第に喜びに満ちた顔になる。
「ピッコロさん!後、よろしくお願いします!!」
そう言い残すと勢いよく部屋を出て、廊下を駆け抜けて、階段を降りるのももどかしいのか10階から1階まで吹き抜けを飛び降り、一気に地上に到着する。
そこにいたのはこの数年、音沙汰の一切なかった弟の姿だった。
「…悟天!!」
「兄ちゃん!!」
悟飯が感極まった声を上げ、悟天が喜びの声を上げ、目を輝かせ、悟飯に飛びつくのはほぼ同時だった。

「悟天!!お前…こんな大変な時に、何処ほっつき歩いていたんだ!?しかも今まで連絡の一つも遣さないで、どれだけ心配したと思っているんだ!?」
自室に入るなり、開口一番に怒鳴られ、悟天がむくれる。
先程までの丁寧で、再会を喜ぶ対応はどうした。何だ、この態度の落差は!
「仕事がなくて、飢え死にしかけていたんだよ!!」
大真面目な顔で言い放つと、この数年間の出来事、差別、その他諸々一気に捲くし立てる。ある程度話し終え、落ち着きを取り戻した悟天が、怒りに顔を歪ませる
「本当、人間なんて碌でもないね!俺が混血だと分かった途端、掌を返して差別するんだから!!」
幼少期の事やこの数年の経験から、例外はあるものの、人間―正確には地球人―程、どうしようもない害獣はいないというのが悟天の持論だ。
悟飯が何かを言おうと口を開きかけるが、周囲を一瞥した後にやめて、別のこと…先程から疑問に思っていた事を尋ねる。
「餓死寸前だった割には、元気そうじゃないか」
「そうだったんだけどね、恩人に助けてもらって、ギリギリのところで助かったんだよ」
「恩人?」
訝しげに尋ねた悟飯に悟天が何度も頷いて
「スッゴイ気前がよくてさ、一週間ずーっと満足いくまで奢ってくれたんだ」
その言葉にクリリンが絶句する。
サイヤ人の混血である悟天は地球人とは比較にならない程よく食べる。悟空や悟飯、パンとチチも普段は自制して”腹三分”を心がけているが、それでも軽く十人前はある。餓死寸前だったという悟天がここまで血色がよくなり、元気に動き回れるほどの食事を一週間奢るとすれば、隊長、総督クラスならともかく、隊員のような公務員の下っ端の給料では破産してしまうほどの金額だ。そんな事が出来るのは金持ちの道楽者くらいだろう。
「お前の命の恩人とは、どんな人なんだ?」
たった一人の弟を助けてくれたお礼とお詫びを―悟天が一週間、食い散らかした食事の代金についてだ―しなければならないという思いから尋ねる。
悟飯の問いに悟天が待ってました!とばかりに
「スッゴイ金持ちの女顔の美男子!
あの時は俺ももう駄目だ…と思ってたんだけど、そん時に助けてもらったんだ」
何故か、不思議と顔は思い出せなかったものの、どっかで見たような覚えがある顔だった…ような気がする。
男にしては高い声で、情けない奴だと言われた時には泣きそうになったが、そこまで言う必要はない。
「全身ユーノづくしだなんて、かなりのお坊ちゃんじゃないと出来ないよ」
その言葉に悟飯とピッコロが目を見開く。悟飯が怖いほど真剣な眼差しで悟天を見据える。
「悟天。その男について詳しく話せ」
悟飯の剣幕とピッコロの無言の圧力にたじろぎながらも
「男って言うほど、年取ってなかったよ。十代半ばの…丁度パンと同じ年頃の少年だった」
顔は覚えていないものの、印象は覚えていた。
そこまで言ったところで疑心を帯びた眼差しで悟飯とピッコロを見た後に、悟飯をまっすぐ見つめる
「……兄ちゃん。何でそんな事聞くのさ? 俺、その人に腹一杯奢ってもらったおかげで餓死を免れたんだよ。言ってみれば、俺の恩人なわけ。
なのにどうしてそんな事を…」
そこまで言うとピッコロの目から何かを探り当てたらしく、口を噤み、悟飯達を軽蔑するように見る
「俺、これ以上は何も言わないから!!幾ら兄ちゃんやピッコロさんとはいえ、恩人を売るような真似は絶対にしないよ!!俺は地球人と違って、そこまで心根は卑しくないんだからね!!」
「悟飯。そいつが政府要人の連続殺人犯と関わりのある人間である可能性が非常に高いんだ」
ピッコロが説得するが、悟天は鼻で笑う。
「フン!奴らが死んで誰が困るって?もしそうなら尚のこと、俺だけでなく、サイヤ人の仇を売ってくれる恩人じゃん。そんな人を売るなんて事、ますます出来ないね!」







言い訳
subvenire(スーベニア)はラテン語で思い出、心の中によみがえる、という意味がります。
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