その他

リグロードサーガ2 小説 『竜の運命(さだめ)』

 ←火星物語 未完 『強さの定義』1 →BOF3 未完 『竜と兎の虎争奪戦』2
注意
ミュウ×アスカです。
竜族について捏造があります。
救われない話です。














――ねぇ、知ってる? 竜って人間のとは比べ物にならない寿命があったそうだよ。
――そりゃあ、スゲェな。
――僕達の先祖は人間の連れ合いが亡くなった時に、悲しみのあまり死んでしまったそうだよ
――………
――大丈夫。今の僕達にその長寿は無いよ。
――……そうか
それは旅の中で交わされたやり取り

―――――そう、生粋の竜族の寿命を持つ者なんて、もうこの世にいなかったのに……

小高い丘の上にあり、周囲を一望できる景観のよい墓地に一人の女性がいた。
腰まで伸ばした癖のない艶やかな真紅の髪に、藍色の瞳。細身ながら鍛えられた体躯の美しい女が、一つの墓石を前に手を合わせ、静かに祈りを捧げていた。
二十代半ばくの若々しい外見とは裏腹に、長い年月を生きてきた者のみが持ちうる老練した空気を漂わせる不思議な女性。
美しき女性の前には、綺麗に飾られてこまめに世話されていた古い墓石があった。
祈りを捧げた後、女性が顔を上げる。
彼女の視線の先にあるのは墓石ではなく、そこに埋まっている人物。
―――ヤマタイの英雄 イガの里の頭領アスカ 此処に眠る―――
そう刻まれた墓石と、白髪混じりの小豆色の髪の貫禄ある老人の姿が重なるがもそれは一瞬の出来事。
――ミュウ……。昔話のように、お前は自らの命を絶つな。
男は愛する女が後を追わぬように最期の力を振り絞り、女をこの世に繋ぐための呪縛を残した。それは断ち切れぬ鎖となって、今でも女の生を繋ぎ止めていた。
「……本当に、残酷な遺言だね…。……アスカ……」
長い年月、雨と風に削られて角をなくした墓石を、優しく労わるように丁寧に撫でる。
墓石には風化して薄れた生没年が刻まれている。それは今から数百年も昔の年号。
ミュウが亡き人に語りかけるように、墓を見つめる。
「……もう、あれから500年も経ているのね」
―みんな、死んでしまった……
涙を堪えながら、精一杯の笑みを浮かべるもそれは酷くぎこちなかった。
「ねぇ、信じられる?私、漸く二十代半ばに見られるようになったのよ。
あなたが生きている間は、全く変わらなかったのにね……」
明るく話すも、その声音は沈痛に満ちている。
――今では、生粋の竜族と同じ寿命を持つ者なんて、存在しないはずなのに…
一筋の涙が頬謳って、地面へと流れ落ちる。それを皮切りに女性が肩を震わせ、地面に大粒のしずくが幾つも零れ落ちた。
――恐らく、カカルクランに行った事が関係しているのでしょう。
――元々竜族というのは、リグロード大陸の各地にある水晶から来たという伝承がありますわ。
――あの水晶は現世とカカルクランを繋ぐ扉の役割を担うもの。 竜族の故郷がカカルクランなのですわ。
――カカルクランに行った事により、あなたの中の竜族の血が覚醒したのでしょう。 ……人とは比較にならぬ寿命だと覚悟しておいたほうがよろしいですわ。
記憶の奥底に眠っていた声の主は、嘗ての仲間だった武闘史書。
…彼女の顔も声も殆ど覚えていないが、このやり取りだけは今でも鮮明に覚えている。
その言葉の通り、数百年以上の時間が与えられた。
大切な人々が年老いてなくなっていくのを見続け、統治すべき国を失った今も尚生き続けている。

「一緒に年を経って、年寄りになって、同じように死んでいく。 ………とても実はとても贅沢な事だったんだね」
「……ミュウ……」
アスカがミュウの肩に手を伸ばして、抱きしめる。
いつもなら恥ずかしがる彼女は素直に身を預けて、顔を胸に埋める。
今はそれがとても辛かった。
人としての寿命しか持たない彼には、長寿故の苦痛と不幸を真の意味で理解することは不可能だ。
短命のものがどれほど言葉を尽くしたところでミュウには届かない。
出来る事は限られており、彼女に”思い出”を作ることだけだった。
”愛された記憶が彼女の長い人生の支えになればいい。いつかは悲しみを与えるだけの記憶になるかもしれないが、それでも何もないよりはいいと考えていた。
―……いや、違うな
愛しい女の頭に手をあて、艶やかな真紅の髪を優しく撫でながら、彼女に悟られぬように冷ややかに自嘲を漏らす。
これから長い時を生きるミュウの”忘れ去られた過去”になりたくないという醜いエゴだ。
本当に彼女を思うのなら、遠くない未来に訪れる別れの時に嘆き悲しまないように一線を引くべきだとわかっていてもそれが出来ない。
だから、相手を思いやる”愛”ではない。

ミュウが泣き腫らした目で夫を見つめる。
目の前にいる夫は十代半ばの姿を保ち続ける彼女とは不釣合いな程高齢で、小豆色の髪には白髪が混じり、精悍な髪にも深い皺がいくつも刻まれていた。
今の彼はお世辞にも若いと呼べる年齢ではない。
大きく年齢の離れてしまった夫の頬に震える手を伸ばした。
恐る恐る確かめるように頬を優しく撫でる。
夫は黙ってその行為を受け止めていた。
一つ嘆息を漏らして、手を止めて夫の頬を包み込む。
「……老けたね。……すっかりおじさんだよ……」
静かに儚い笑みを湛えながら紡がれた言葉は、痛々しかった。
置いて逝くことへの悲しみと苦しみが膨れ上がり、心を通して全身に響く痛みへと変わる。
だが、それを悟られまいと笑顔を貼り付けた。
「もう、七十代だからな」
「………もう、そんなに年を経ているのね。
――さほど年が離れていなかったのに、何故私は何も変わらないの?――
心に渦巻く悲痛な思いは口に出されること泣く封じ込めた。
6歳。それだけの差しかなかったのに、今の彼らの外見は祖父と孫ほどに大きく開いていた。
「……ミュウ……」
「ねぇ、アスカ」
老人の言葉の続きを遮るように、唇に笑みを浮かべて彼の胸に身を委ねる。
「昔、竜族が人間の何十倍も生きるって事を話したよね?」
「……ああ」
それは遠い昔、まだ二人が恋人同士だった頃のこと。
「多くの竜族が悲しみのあまり自分で命を絶った……。今なら、その気持ち…痛いほど良くわかよ……」
「ミュウ……」
「だって、大切な人が年老いていくのに、若いまま見ているだけなんて……。………辛すぎるもの………」
眼に溜まった涙は頬に流れ落ちることなくギリギリのところで堪えていた。
アスカがミュウの頭を撫で、自らの胸に埋める。
年老いても尚力強い腕にミュウは抵抗する素振りを見せるが、それは一瞬だけ。
どこか安心したように穏やかに眼を閉ざして、伴侶の力強い鼓動に耳を澄ます。
自分にとってそう遠くない未来に消えてしまう愛しい音。
「ミュウ、俺はまだ生きている。 だから今は堪える必要はない」
老人の言葉に女性が大きく眼を見張る。それと同時に瞳が滲んで愛しい人の姿が歪む。
肩を震わせて涙を流す女性を老人は愛しそうに力強く抱きしめた。

ふと、顔を上げると墓石の向こうに最愛の夫の面影が浮かぶ。
――たとえ魂になっても、お前の側にいてやる――
死の間際の夫の言葉が、心の裡に蘇った。
それを皮切りに思い出は鮮明な色を宿して、心を当時に引き戻していく。
――本当?ずっと側にいてくれる?――
――ああ。見ることや感じることが出来なくても、俺はお前の側にいる。 これだけは、絶対に忘れるな――
なら、数百年経た今でも側にいてくれているのだろうか?
―……大丈夫。アスカは律儀だったもの。
約束を違えることはしなかった月組頭領。
彼が誓ったのだから、その約束は今でも果たされていると信じられる。

それでも、時々昏い考えが脳裏を過ぎる。
アスカは約束を違えずに側にいてくれる。だから自らの命を絶ってはならぬというのに。

――――― 一体、僕はいつまで生き続けるの? ―――――

長すぎる生を、終わらせたいと考えてしまうなんて。
それが最大の裏切りだった。



言い訳
スランプのリハビリ第一弾。
表現方法について試行錯誤しながら、自分に合う書き方を模索中です。

ちなみにミュウは50年に1歳のずつ年を経ています。

2011/11/30 小説へ移行
スポンサーサイト


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ
総もくじ  3kaku_s_L.png ドラゴンボール
総もくじ  3kaku_s_L.png 火星物語
総もくじ  3kaku_s_L.png 聖剣伝説
もくじ  3kaku_s_L.png その他
もくじ  3kaku_s_L.png 未完
もくじ  3kaku_s_L.png 考察もどき
もくじ  3kaku_s_L.png 短文
もくじ  3kaku_s_L.png 裏部屋
  • 【火星物語 未完 『強さの定義』1】へ
  • 【BOF3 未完 『竜と兎の虎争奪戦』2】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【火星物語 未完 『強さの定義』1】へ
  • 【BOF3 未完 『竜と兎の虎争奪戦』2】へ