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ゾイド お題 小説 『サラ』1

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注意
オリキャラが出ます。
流血シーンがあります。
暗い話です。














噎せ返るほどの血の匂いが辺りに漂っていた。
聞こえるのは絶え間なく響く銃声とゾイドが地面と屍を踏みしめる嫌な音と、殺戮者の怒声と虐殺される者の恨みと憎しみに満ちた断末魔の悲鳴だった。
「殺せ!!一人残らず探し出して、殺すのだ!! 悪魔の血筋を一人たりとも残すな!!」
拡散された声が辺りに響き渡る。
家々に放たれた炎が全てを焼き尽くそうと、勢いよく舞い上がった。

村から少し離れた森の中。凄惨な光景から少しでも逃れるために必死に走っている年の離れた兄妹がいた。
兄は十代前半の黒髪に類稀な翡翠の瞳をした、切れ長の美男子ともいえる少年。妹は五歳前後の濃い青の髪の少女だった。
日が暮れるまでは平凡な日常だった。失ってから、それが何よりもの幸せだったと分かるほどの。
なのに日が暮れた今では、全てを理不尽に奪われて、彼らの心は新月の闇よりも暗い色に染まっていた。
恐怖と憎悪で震えが止まらず、崩れ落ちそうになる足を叱咤しながら、妹の手を強く握り締めて、一刻も早く少しでも遠く此処から逃げるために走る。
―許さない……!! こんなこと絶対に認めない!!許してなるものか!!
夜空を睨むように見上げ、いつもと変わらずに煌々と地上を照らす双子の月に一族の復讐を誓った。
彼らの村はずっと政府から追われ続けていた。悪魔の一族と呼ばれ真っ当な世界では生きてゆけない。
だから彼らの一族は人里離れた僻地で息を潜めて隠れ住んでいた。
誰にも害を加えずに、ひっそりと生きていただけなのに、政府は彼らの存在自体が度し難い”悪”として、執拗に彼らを探し出して、今虐殺を行っている。
―こんな世界、絶対に許しはしない!!
顔が熱くなって涙がこみあげてくるが、それを荒々しく拭って妹を気遣うように見る。
妹は悲しみが許容範囲を超えたのか涙を流さなかったが、怯えた目を周囲の闇に向けていた。
「サラ」
兄の呼びかけに妹が反応の鈍い動きを返した。
そのことに危惧を覚える。
彼には妹の精神が壊れかけていることが手に取るように分かってしまった。
「サラ、ここは危ないから早く行こう」
「……行く……?」
ただ声に反応しただけの焦点の合わない目だった。
「遠く……遠くに行くんだ。 そして……」
――政府そのものを壊滅させ、一族の仇を討つ。
そのためにはどのような手段も辞さないが、煉獄に幼い妹を連れて行くのは流石に気が咎めた。
「……何処へ行けと言うの?」
「サラ?」
様子の変わった妹に、兄は目を丸くした。
先程までの生気の宿らない目が嘘のように、目に復讐の炎を滾らせて力強い瞳で兄を睨み据えた。
「何処へ行くというの!? 私達にはどこにも行く場所なんて、存在していないのに!!」
「しっ!! 静かにしろ、サラ!!」
突如金切り声を上げた妹の口を慌てて強く押さえ込んだ。
サラの感情の昂ぶりの波が収まるのを暫し待ってから、肩を握り締めた。
痛みを訴える程の力強さに、サラが苦痛のあまり顔を顰めたものの声は出さなかった。
二人の視線が交わり、兄の瞳が妹の瞳を鋭く射抜く。
「大丈夫だ! 兄ちゃんが必ず守ってみせる!!」
周囲に聞こえぬように押し殺しているものの、それは聞く者を信じさせる力の秘められた声だった。
兄のその声と強い意志に満ちた瞳を見ていると、絶望的な状況でも兄の言葉を根拠もなく信じられた。
しかし……。
「……でも、もうお父様も、お母様も………皆死んでしまった!! もう、いないの……!!」
「だから、俺達が生きなければならないんだ!!」
感情を爆発させた声に、サラが反射的に兄の顔を見上げた。
常日頃冷静沈着で、滅多に声を荒げた事のない兄のその姿に、いつの間にか涙が止まっていた。
「…………今は、生き延びる事だけを考えろ! それ以外のことは、考えるな」
言い聞かせるような言葉に、彼女が静かに頷く。
「皆殺された今、一族の仇を討てるのはもう俺達しかいないんだ! だからこそ、死ぬわけにはいかない。
いつの日か、政府の糞共を始末して一族の仇を討つまで生きるのが、俺達の義務だ!!」
妹を連れての玉砕は出来ない。だからこそ今は生きなければならないのだ。
その時周囲にゾイドの唸り声が響いた。その音に彼らが身体を強張らせる。
恐怖で体の動かない妹の手を、剣だこのある兄の手が強く握り締めて、引っ張る。
力任せに引っ張られたためにバランスを崩して転びそうになったが、必死に足を動かした。
しかしその時、彼らの眼前に横手から真っ赤な聖バータイガーが姿を現した。
ゾイドの銃の照準が無慈悲に兄と妹に向けられる。
サラが恐怖に顔を歪ませて、声にならぬ悲鳴を上げた。
引き金を引かれようとした直前、兄の瞳が人ならざる輝きを放つと、ゾイドの動きが止まった。
人とゾイドの心を読み取り、洗脳し、操作する異能。
代を重ねる語とに力は弱まり、覚醒する人数も減っていたが、兄は今の一族の誰よりもその力を強く引き継いでいた。
そのため集落を守る戦士として、幼い頃から様々な訓練を受けていた。但し集落付近の地形上、ゾイドでの襲撃は予想されていなかったので主な戦い方と、精神感応を特化させる訓練が基本だった。
そしてこの異能こそ、彼らの一族が”悪魔の末裔”と呼ばれ、数千年に渡って迫害を受け続ける理由の一つでもあった。
兄が精神を乗っ取ったゾイドにコクピットを開かせると、そこまで跳躍した。
突然のことに混乱する憎い仇を睨みつけ、腰に提げていたナイフを振り上げる。
男が恐怖に顔を引き攣らせ、無様に命乞いする様を見て、燃え盛る怒りと憎悪の炎に油が注がれた。
―そうやって命乞いをした皆に、何をした!?
先程まで無抵抗に近い集落の人間を楽しみながら虐殺していたくせに、いざ自分が殺される立場になると、虐殺した側の人間に命乞いするなど…厚顔無恥にも程がある。
無駄がなく、ためらいを感じさせぬ流れるような動作で、男の眉間にナイフを突き立てた。
何度も何度も頭や胸を突き刺す。ナイフを振り下ろすたびに返り血が腕や顔に飛び散り浴びるが、気にする事もなく何度も何度も…。
やがておとこだった肉塊を前にして、自分がただ屍を痛めつけているだけだと気づくと、それを投げ捨てて、放心している妹に呼びかける。
「サラ!! 何をしているんだ、早くしろ!!」
兄の呼びかけにサラが弾かれたように正気に戻ったが、それでも帰り血塗れの兄の姿を見て思わず後ずさり、首を横に振るった。
兄が小さく舌打ちを零すと、彼女が乗りやすい高度までコクピットを下げる。
「何をボサッとしているんだ、サラ!!」
思わず怒声を上げた。
弾かれたように顔を上げた妹に、コクピットに乗りやすいように手を差し伸べた。
追っ手に気づかれぬように伸張に、周囲を探りながらゾイドを進める。
コクピットの中に充満する血の匂いが堪らなく不愉快だったものの、ゾイドに揺られていくうちに嫌悪感は薄れていった。
高速を出しても安全な地帯まで出ると、兄の瞳が煌く。
ゾイドに暗示をかけ、ゾイドコアを刺激させて限界ぎりぎりまでスピードを出させる。
スクリーンに映し出される光景は目まぐるしく変化して、高速で移動している事を示していた。
夜が明けても走り続け、生まれ育った場所から話でしか聞いたことのない荒野と砂漠を目にした途端、サラのそれまで堪えていた涙が一気に溢れ出して、涙で兄の服を濡らす。
サラが大声で泣き喚く中、兄は涙をぐっと堪えて、更にスピードを上げるために操縦桿を強く握り締めた。






言い訳
兄は生き延びて根源である政府を絶つ事と、後の世に血を繋げる事を優先させたんです。
玉砕覚悟で乗り出しても弾は殆どないですし、ゾイドの訓練をまともに受けていない少年では政府御用達のスペシャリストには敵いませんから。

2012/3/25 小説へ移行
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