未完

DB パラレル 未完 『螺旋』3―3

 ←DB 小説 『An ancient song』 ~Trunks side~ 1 →改装
注意
悟天・チチ要素があります。



















悟天達が特別監視房に入った時、悟天が何かを確認するように周囲に目配せする。
人や物の観察が趣味の一つというべき兄によれば、病院の施設は過度の塩水を混ぜ込んだコンクリートと些細ともいえる鉄筋で作られただけの惨めな箱で、少し大きな地震がきただけでいとも容易く倒壊するほどのお粗末なものだという。
病院内の至る所に補修した跡の残るひび割れがあり、天井や人目につかない所、そして支柱にさえ致命的なヒビが幾つも見つかった事から、それは事実だろう。兄はそれらの事柄からこの病院の事を調べたに違いない。
早晩崩れてもおかしくない建物の中で平然と生活出来るなど正気の沙汰ではないと思うのだが、知らなければ問題ないのだろう。事実政府高官の関係者は絶対此処での診察は受けないそうだ。
公表しないのかと問いかけた悟天に悟飯は鼻で笑っただけだった。
恐らく母親を殺した病院を許せない、壊れるものなら壊れろと思っているのだろうと悟天は推察している。それに巻き込まれる無関係な人間は溜まったものではないが、兄も俺も人間が嫌いなのでさほど気にしないようにしている。


典型的すぎるほどの手抜き工事の産物である病院とは同じ敷地内にある建物とは思えぬ程、強固で丈夫な作りのそれに感嘆の息を漏らす。
これならば、特大地震が龍球都市を襲ったとしても、サイヤ人の教会とこの建物だけは無傷で残るに決まっている。なるほど、サイヤ人用に作られているのも十分に頷ける。
―どうせならこれの十分の一くらいの強度が病院内にあればいいのにね。
完全に他人事のように思いながら歩を進める。
外界から完全に遮断されているためか、足音しか聞こえなかった。音が響くにつれ悟天の眉間の皺が深くなっていく。
この重苦しい静けさだけは嫌いだ。これではまるで牢獄のようだが、この施設の本当の意味を考えればそれは仕方のない。


漸くチチの部屋の前に着くとハチが振り返り、鋭い眼差しで悟天を見る。
「あんたはあいつそっくりだから、そのまま会ったんじゃチチを怯えさせてしまう。 どうしても入りたいってなら、顔を変えな」
「…それって普通無理だよね? そんなに俺を入れたくないのか?」
悟天が半眼でハチを見るが、ハチは冷たい態度を崩す事はなかった。その様子に悟天が大きく溜息をつく。
「………クリリン、悪い事言わない。これだけはヤメときなよ。 もっといい子紹介してあげるからさ」
「悟天さん!!」 「帰れ!!」
二人同時に顔を赤くして怒鳴る。その息もピッタリ合った姿に悟天が内心舌を出す。
「わかったよ。顔、変えればいいんだろ? で、顔を変えたら本当にチチちゃんに会わせてくれるんだよね?」
「あぁ、構わないよ。もし、変えられるってなら、今ここでやってみな!」
悟天の挑発的な声音に、思わずハチが同意した。
「よし!その言葉。よーく覚えといてよ!!」
悟天がにんまりと笑って自信たっぷりに言うと、カプセルから幾つものケースを取り出す。その中には様々な特殊メイク用の道具が会った。悟天が無造作にそれらに手を伸ばし、鏡を見ながら顔を変えていく。十分もしないうちに出来上がったその姿は遠目から見て全体的に違和感がなく、まるで別人のようだった。
クリリンが思わず悟天の顔を食い入るように見る。
「…凄い。たったあれだけの短時間でここまで出来るなんて…」
「ちょと!やめてよ!!近くで見たら結構粗があるんだから!!」
普段ならこんな手抜きはしないのだが、今回は時間がなかったのと、どうせハチがチチに近づけさせてくれないだろうから、手を抜いたのだ。スピードを優先させるため自分で手を抜いておきながら、マジマジと見られるのは気分のいいものではないので拒絶する。
しかしクリリンの素人目から見れば、悟天が言うような粗は感じない出来栄えだった。
「それでもたったあれだけの時間で此処まで出来るんだから凄いですよ!!」
憧れに満ちたクリリンの眼差しと感嘆したように見るハチの視線はお世辞などではなく心の底からの賛辞であったため、結構嬉しくて、自尊心をくすぐった。それと同時に脳裏に兄の姿が浮かび、少し落胆してしまう。
「ん。ありがと。 ……でも兄ちゃんはもっと短時間で、もっと精巧に出来るからさ。 俺のは所詮兄ちゃんの見様見真似だもん」
「……悟飯さんと比べたら駄目ですよ。 それにいくら悟飯さんの方が優れていたって、世間一般から見れば悟天さんは十分プロなんですから!だから自信持ってください!!」
悟飯の特殊メイクの技術はそれだけで一財産を築ける程優れているが、それは隊内の仮装大会や忘年会、ハロウィンなどの出し物でしか披露される事はなかった。隊員の中には悟飯の技術のお披露目の機会が少ない事をとても残念がっている者達が多くいる程だ。
「………そーだね……」
気を取り直して悟天がハチを見る。本来の姿とはまるで別人のようだが、目は同じだった。
「これだったら、文句ないよね?」
疑問形で言っているが確認。絶対に拒まないという確信の元、了承という形を得るために聞いているだけだ。
「…構わないよ」
本来なら引き返させるつもりで言った言葉なのに、こんな形でやり返された事は非常に不愉快だったが、一度言った手前、それを取り下げる事などハチのプライドが許さなかった。
せめてもの反抗の気持ちを込めて、そっぽ向いて許可する事しか出来なかった。

室内に入るとそこは白一色で構成されており、清潔に保たれているが、花束を入れた花瓶が幾つかなければ無機質どころか生活感を一歳感じさせない部屋だった。
―やっぱりここ、牢屋じゃないか。
花を生けたのは恐らくハチの気遣いだろう。チチが息苦しくならないように、と。ツンデレどころかツンしかない言動の持ち主だが、案外細やかな心遣いをする人だ。
悟天がそんな評価を下しているとは気づかずに、ハチは部屋に入るなり早々とクリリンとチチの現状について話している。
二人の会話に聞き耳を立てながら悟天の視線はチチを探していた。そして部屋の奥の隅にあるベッドの膨らみを見て、少し落胆する。
少しくらい話したいと思っていたのに、これではそれも無理だ。
そう思いながらも足はチチの寝台の元に向かう。そして膝に床をつけベッドに手をかける。
ベッドはとても固く、布団がなければ分厚い鉄板の上で寝ているようなものだ。ベッド脇にある幾つもの拘束具を見つけて、このベッドの本来の目的を察する。
―特別監視房なんて名ばかりの、ただの牢屋じゃないか。何でこんな所にチチちゃんを閉じ込めるんだ。
犯人と接触したからと言うのは聞いていたが、それだけでは此処まで厳重にすることはない。
理不尽な思いと憤りが胸の中を渦巻くが、チチの安らかな寝顔を見ているだけで怒りは静まっていった。
こうして寝顔を見るなんて、彼女が子供の時以来だ。その頃は悟天は彼女に対して”年の離れた妹”という認識だったため、よくよく寝顔を見つめる事はしなかった。
少し見ない間にますます可愛らしくなってきた、目下恋している女性。なのに自分より弱いマダオである悟空が彼女を手に入れるというのだから、世の中は理不尽だ。
―だから、あいつは嫌いなんだよ。
兄から夢を、自分から好きな人を奪う。幾ら同じサイヤ人の眷属だからといって、我慢出来る者と出来ないものがある。
艶やかな黒髪、色白の肌、閉ざされた可愛らしい目、そして可憐な唇。全てが、今目の前にある。
キスしたいと思ったときには、既に体は動いており、チチに口付けていた。
最初は反応を探りながらだったが、彼女が一向に起きる気配がなかったので、もう少し深く…と思った矢先に、背後にとてつもない殺気を感じ、思わず動きを止め、振り返った彼の視界に移ったものは臭い立ちしたハチが凄い形相で悟天を睨んでいる姿だった。
「とうとう本性を現したか、この変態野郎」
―あのね!好きな女の子の寝顔を見たらキスしたくなるのは、男として当然のことなんだよ!!
冷酷な声音で言われた言葉に反論しようとするが、流石に後ろめたさもあり、それを口にすることはなかった。
ハチの出す怒りに満ちたオーラはどこか悟飯のそれと似通っており、条件反射ゆえか、気づいた時には悟天は土下座していた。
「………ごめんなさい。あまりにも可愛らしい寝顔なので、ついキスしてしまいました」
「金輪際、チチに近づくんじゃないよ。 もし近づいたら、殺すからよく覚えておきな!」
キスの一つにそれでは行き過ぎだという思いと、地球人で、ただのチチ専属の看護師であるハチにそんな事言われる筋合いはないと思ったが、ここで了承しないとただではすまない気がするので、大人しく従った。
「……はい、わかりました」
ゆっくりと顔を上げハチを見ると、真っ先に既視感が走り、記憶を辿っていくと親友が怒った時に見せた顔と重なった。
―あぁ、俺の王子様。今何処にいるのですか?
幼い頃に分かれることになった、誰よりも互いを理解しあっていた無二の親友。いつかは支配してみたいと思っていたが、彼は最初から最後まで悟天の支配者だった。
兄と親友。悟天の支配者達と、今目の前にいる女性とこんな形で共通点を見出したくはなかった。これではもう、この人に逆らえない。
心の中でチチへの別れの涙を、滝のように流した。


「今すぐ、この部屋を出て行け」
「……わかった」
先程の反抗的な態度からは信じられないほど素直に従った事により、何か企んでいるのではないかと警戒するハチを尻目に、悟天がすっかり元気をなくした様子で出口まで歩いていき、名残惜しそうにチチの姿を見つめた後に、泣きながら部屋を出て行った。
その様子を呆然と見送っていた二人だったが、ハチがポツリと呟く。
「……急にどうしたんだっていうんだい、あれ?」
「…さぁ?」
クリリンにとって悟天の言動は不可解で理解の範疇を超えていた。悟天なりに様々考えての言動なのだが、結論に至るまでのプロセスが、クリリンにはどうしても理解できないため話についていけない事が多々ある。
まぁ、チチにキスしたあたりのことは分かる気がするのは、同じように意中の女性がいる男同士だからだろう。


「ところで、チチのことだけれど…」
「前回報告した通りだよ。相変わらず男が近づけば怯えるし、一日に何十回も肌が真っ赤になるほど体を洗っている。
まぁ、一時のように睡眠薬を常用させなければ寝られない…というのはないね」
前回悟空がチチを怯えさせた時の事だ。あの後がとても大変だったため、ハチとしては誰かに苛立ちをぶつけなければやってられなかった。
「そう、ですか……」


「で、牛魔王邸虐殺事件の犯人についての手がかりは?」
クリリンが静かに首を横に振る。それに眉を顰めたハチを見て、彼が慌てて
「ターレスについては、元から謎な奴ですから!ただ今回わかったのは奴が人造人間と組んでいたって事くらい…」
「人造人間だって!! どういうことだい!?」
ハチの驚きように、これが操作上の重要な秘密である事を漸く思い出して、クリリンの全身から血の気が引いていくが、それでも言ってしまったものは仕方ないから開き直るしかないと、腹を括る。
「……これは重要な秘密ですから、絶対に口外しないでくださいよ!!
現場に争った痕跡と人造人間のパーツの残骸とターレスの血液が残っていたんですよ。その人造人間の製造番号も政府所有のものとは一致しなかったので、はぐれの人造人間を取り扱う組織がバックについているんじゃないかって。
連中が何者と争ったのかは分かりませんけど、人造人間を粉々にしたんだ。よっぽど強いやつに違いないってのが総督の意見です」
「…人造人間は番号を重ねるごとに弱くなっているんだよ。
…………本当に強いのは、初期タイプだけさ」

もしこの場に悟天がいたらわかっていただろう。ハチの目に動揺だけでなく、様々な感情が入り乱れていた事を。



スポンサーサイト


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ
総もくじ  3kaku_s_L.png ドラゴンボール
総もくじ  3kaku_s_L.png 火星物語
総もくじ  3kaku_s_L.png 聖剣伝説
もくじ  3kaku_s_L.png その他
もくじ  3kaku_s_L.png 未完
もくじ  3kaku_s_L.png 考察もどき
もくじ  3kaku_s_L.png 短文
もくじ  3kaku_s_L.png 裏部屋
  • 【DB 小説 『An ancient song』 ~Trunks side~ 1】へ
  • 【改装】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【DB 小説 『An ancient song』 ~Trunks side~ 1】へ
  • 【改装】へ