未完

聖剣伝説2 未完 『妄執』1

 ←DB 小説 『悟天と二人のトランクス』 →三千ヒット記念
注意
オリジナル設定があります。
2は3(HOM)の遠い昔という設定です。
こちらの設定を使っています。
シーク、ファウナッハ、ゲシュタールは誰もが振り返るほどの美貌の持ち主です。
シーク・ファウナッハ前提です。









舞台設定
シーク…25。ファウナッハ…23。ゲシュタール…21。タナトス…不明。














四天王達の定例会議は月一の間隔で行われる。
政治軍事の方面を司る者同士で情報を共有交換し合い、今後の国の方針を決める。会議での結果を皇帝に奏上して、最終的な判断は皇帝に委ねるのが定例会議の原則であり、本来の姿だった。
しかし数十年前にタナトスが四天王に就任して以来、全員揃っての会議自体が稀となった。当初はそれを諌める者、タナトスの行動を制限しようとする者もいた。だが、長い帝国史の中でも例を見ないほど”欠員”と補充を繰り返すうちに、タナトスに干渉しようとするものは皆無となり、次第に三人のみで会議を行うようになった。
数十年前に前皇帝が暗殺されて今の皇帝に代替わりしてからは、数は揃わずとも方針を定めるだけだった定例会議の形が大きく変わり、国政の方針を決めるだけでなく、最終決定も全て三人のみで行い、皇帝には事後報告するという仕組みになった。
このような仕組みになったのは偏に皇帝のせいだ。
タナトスの傀儡と化した皇帝は民衆を省みずに放蕩の限りを尽くし、意味もなく他国を侵略し、人間狩りを行わせる。そのような者に政は行えない。
愚王と幹部や家臣たちからも蔑まれている皇帝に任せていては国が立ち行かないため、四天王達が独自に政治を行う仕組みにならざるをえなかったのだ。
政治に興味を示そうとしない皇帝を操り、我が利を得ようとする者達はその決定に反感を持ったが、そうした者達は忽然と姿を消していった。

豪勢な作りの会議室に、四天王のうち三人が揃っている。
シークが書類に目を通し、会議を始めようと口を開きかけた時に、堅く閉ざされていた扉が開いた。
了承も得ずに会議室に入った無礼者を追い出すべく、ゲシュタールが椅子から腰を上げようとして、そこにいた人物の姿に目を見張る。
血色の髪に仮面を貼り付けている呪術師タナトスが悠然と立っていた。
他の三人がタナトスに向けて疑惑と動揺と嫌悪の眼差しを送る。
”同僚”の遠慮のない視線を受けても、呪術師はクスクス笑い仮面に手をかけて、視線を受け流す。
「タナトス、何の用だ?」
「私も会議に参加させてもらうよ」
険しい顔で呪術師を睨みつけるゲシュタールの問いに、タナトスが彼に視線を向けた。
ゆるりと室内を見回した後に上座に座るシークに目を合わせる。
「これでも私は四天王の一員だよ。 だから定例会議に出席しても構わないだろう?」
「ハッ! 出席することが稀なくせに、よくそんな事が言えたものだな!」
ゲシュタールが露骨に顔を顰めて、吐き捨てる。
「これでも私は色々と忙しいのだ。 それに私などが会議に出なくても君達のようなプロが政治の殆どを決めるのだから、私の出る幕はなかろう?」
「ならば四天王の座をすぐに降りろ! 貴様の代わりに有能な奴を入れてやる」
「ホホホ、私以上に有能な人間がこの帝国の貴族の中にいるのかね? もしいるのなら、会いたいものだよ」
「白々しい」


常に身に纏わりついた墓場特有の冷気を引き連れて、悠然と椅子に向かって歩いてゆく。
タナトスが歩を進めると共に、暖房で暖められた室内が雪降る外よりも凍える。その冷気は、タナトスが昂然と椅子に腰掛けるまで、三人を苛んでいた。
タナトスが数十年の間、数えるほどしか使われていない椅子にゆるりと腰掛けると、机の上で手を組み、上座に座るシークを見る。
「”リーダー”。私から君達に話があるのだが、よろしいかな?」
「…話、だと?」
シークが疑り深くタナトスを見る。
仮面の隙間から覗かせる瞳から意図を読み取ろうとする。だが全てが仮面に覆われているかのように遮られていて何も読み取れなかった。
いつ顔を合わせても不気味なタナトスに、シークの眉間に皺が寄る。
彼の思いを知ってか知らずか、タナトスは愉快そうに喉を震わせて笑うと、シーク、ファウナッハ、ゲシュタールの順に見回す。
視線が合わさっただけで、天敵に狙われた獲物のように圧倒的な恐怖が全身を襲い、背筋が凍えるほどの悪寒がこみ上げる。
それはタナトスを崇拝しているファウナッハも同様で、他の二人と同じく顔を逸らす。だが伺うように呪術師に視線を向ける所は、他の二人と異なっていた。
「何の話だ?」
「耳を貸すな、シーク」
ゲシュタールが眦を吊り上げて呪術師を見据える。
「これから”大事な会議”を行うのだ。 貴様の話などに耳を貸している時間はない」


「とっても大事な話だよ。……今後の君たちに多大な影響を与えるくらい、重要なものだ」
タナトスが宙に文様を描くと、何もない空中の空間が歪み、三冊の本が忽然と姿を現す。それらはかなり分厚い本だった。
「話の前に、まずそれを読んでもらおうかね」
タナトスが手を振るうと、三冊の本が夕に浮き、シーク達の元に向かう。彼らの眼前で宙に浮かび続ける本を前にゲシュタールは明らかに警戒し、シークは警戒と困惑が入り乱れた面持ちで交互にタナトスと本に視線を向ける。
最初にファウナッハが恐る恐る本を手にとる。
シークが何処かうんざりした面持ちで本を手に取る。
二人が本を手に取ったのを見て、ゲシュタールがひったくるように本を手に取る。
本の題は『転生の秘法』。作者として目の前に呪術師の名前が記載されている。
様々な闇の呪法や禁断の魔法について事細かに記載されており、本来なら専門知識がなければ絶対読み解けない代物だ。
しかしその本は魔術や呪術の専門知識が皆無に近いシークやゲシュタールに配慮してタナトスが新たに書き直したものであったらしく、知識のない者が読んでも分かるように丁寧な注釈が書かれていた。
シークは一定のペースを保ったまま黙々と読み解いていく。専門用語については注釈が書かれているため、わざわざタナトスやファウナッハに聞かずとも内容を理解するのは容易だった。
ゲシュタールは最初は胡乱に目を通すだけだったが、タナトスに何度か内容を質問され、正確に答えられなかったら最初から読む事を強制されていた。タナトスの質問はゲシュタールのみに行われ、それが更に彼を苛立たせていた。そんなやり取りを繰り返すうちに渋々ながら内容を理解した上で読み進めていく。
本の内容の意味を他の二人よりも正確に理解しているファウナッハの顔色が、読み勧めていくうちにどんどん悪くなっていく。
最初にファウナッハが読み終わり、次にシークが。最期にゲシュタールが読み終えた頃には太陽が沈み、星が燦然と空に輝く時刻になっていた。
ゲシュタールが読み終えるまで、ファウナッハはその本を繰り返し読み直し、シークは今回の会議の議題であった事柄に着いての書類に目を通し、幾つか書き留めていた。
苦行をなし終えたときにはゲシュタールは精根尽き果て、最早抗議も苦情も言う元気をなくして、力のない瞳で天井をボンヤリと見上げていた。
機械工学の本ならば一日中ぶっ通しで読んでも平気だが、自分の専門分野とは大きく異なる畑違いの魔術や呪術の本を強制的に読まされたので、精神的疲労が酷かった。


「…タナトス。貴様は……」
――何故この外法を行った?
その言葉はシークの口から発せられることなく、心の中に留められる。
タナトスの考えている事など理解できるはずもなく、また呪術師は自分の都合の悪い事は絶対に口にしない。

目の前に佇む呪術師がこれを実践していることなどあまりにもわかりきっていることだ。
タナトスが意味ありげに笑った後に立ち上がり、シークの元に向かい、呪術師を睨み上げる彼の頬に触れる。
途端にタナトスの纏う負の思念に中てられて、シークの意識が暗闇に沈みかけるが、気力だけで辛うじて意識を保っていた。
タナトスが心底楽しくて溜まらぬという笑みを浮かべると、シークの顎を掴む。
呪術師が触れているところから、彼の纏う怨念や負の思念が気を通して、忍者の体の中に入り込んでゆく。
シークの全身から多量の汗が流れ、血の気をなくし、体温が急速に冷えていく。
朦朧とする意識の中でも毅然とタナトスを睨むシークに、タナトスが感嘆と嘲笑を含んだ面持ちを浮かべる。
「君は他の二人よりも、私がどういう人間かを知っているだろう?」
――ねぇ、シーク?
勝ち誇ったような笑みを浮かべ、甚振るように言葉を続けた後にシークから手を放す。そうして昂然とした足取りで窓際に向かう。
タナトスに纏わり着いた負の思念が離れた事でシークが大きく息をつくと、ぐったりと背もたれに凭れ掛かり目を閉じる。
今の彼からは生気が感じられず、美しい容貌も相俟って、まるで人形のようだった。
タナトスが窓に映し出されている自分の姿と、背後にいるほかの三人の姿に目を向ける。
夜も更けているため窓に反射して映し出された虚像によって、室内の様子を詳細に知ることが出来た。
ゲシュタールがシークに視線を向けた後、殺意と敵意に満ちた眼差しでタナトスを睨んでいた。ファウナッハが心配そうにシークの元に行き、彼を気遣うが、シークが力なく頭を振るうと、ファウナッハが目を伏せてもとの席に戻った。そして椅子に腰掛ける前に”女”としてタナトスを責める眼差しになるが、それは一瞬だけだった。
彼らの会話が終わったのを見計らうと振り返り、窓に映し出された虚像でなく実物に目を向ける。
「本の内容について、何か質問はあるかね?」
「……タナトス様。何故シークやゲシュタールにもこの本を?」
魔法や呪法とは無関係である二人に、その道を極めたプロ中のプロにしか読み解けない本を何故読ませたのか?
形は異なれど、三人の共通した疑問。
「聞くまでもない愚問だな。
将来的には君達にこれを行ってもらう。そのためには多少の知識を得てもらう必要があるのだ」
その言葉に場の空気が一変する。
「……タナトス。貴様、何を言っているのか分かっているのか?」
「勿論。 ああ、言っておくがこれは冗談ではないよ」
ゲシュタールの恫喝を受けても、タナトスは飄々とした態度を崩すことなかった。
「貴様の話とはそんなことか! そんな下らぬ事のために我々の時間を無駄にしおって!!」
「おや。これを使えば精神や記憶を保ったまま、永遠に生きられるのだよ?
永遠の命は人類の命題だ。古今東西ありとあらゆる権力者が永遠の命を求める。
私は、その永遠の命を君達にあげようとしているのに、もう少し丁寧な対応は出来ないのか?」
芝居じみた仕草で大げさに嘆いて見せるタナトスを鼻で笑う。
ゲシュタールが腕を組み、横柄な態度で呪術師を見る。
その顔には苛立ちと侮蔑がありありと浮かんでいた。
「永遠の命を手に入れるといっても、この本に書かれていたのは他人の肉体を乗っ取るものだ。 そんな汚らわしい事を我々にさせるつもりか?」
「つくづく物分りの悪い子供だね、君も。 この呪術を使えば”ゲシュタール”という人間は永遠に存在できるのだよ」
「タナトス。貴様は何か思い違いをしているようだな。
この心身を含めて、”私”という人間なのだ。 一つでも欠ければ、それは私ではない!!」
「やれやれ…」
呆れた声音で呟き、肩をすくめる。
その一つ一つの動作がゲシュタールの癪に障る。


タナトスはゲシュタールに関心をなくしたかのように彼の言葉を全て無視して、シークと向き合う。
「では、シーク。君はどうだ?」
「……悪いが私も断る。 他人の身体を乗っ取る”外法”を行うくらいなら、私は潔く死を選ぶ」
具合の悪い中、一字一句力を込めて呪術師の言葉を完全に拒絶する。
「フフフ…幼少の頃から社会の暗部に身を浸してきたのだろう? 君達の中では最も外法が身近になっているではないか。
なのに禁忌だの外法だのと言葉をつけて断るのか?」


「忍術は血によって気を操り行使するものだ。 他人の肉体を乗っ取れば忍術は使えなくなる」
「ならば血統者を乗っ取ればいいではないか! 混血という肉体を捨て、純血になる…。混血というだけで蔑まれ続けてきた君にとって、これは肉体を捨て去れる絶好の機会あろう?」
その言葉にシークが動揺したように目を伏せる。
混血である事で”人間”と見なされずに差別され、不遇な扱いを受け続けてきた様相の日々が鮮明に蘇る。
――純血になる――
だが、母と同じ色だと優しく愛おしげに頭を撫でてくれた父の姿が、優しく暖かな手の感触が蘇る。
尊敬する父親生き写しのこの身体を、捨てられるのか?
…いかなる事情が会っても、体を捨て別の人間の肉体を乗っ取る事など……。
――両親や今までの自分を全て否定することは、出来ない。
「………私は、絶対この体を捨てない」
力強い意思の籠もった眼差しで毅然と答える。
「そうか………。実に残念だよ。君なら了承してくれると思ったのだが」


タナトスが微笑を浮かべて顔を伏せていたファウナッハに視線を向ける。それと同時に彼女の肩が大きく上下に揺れて、戸惑ったようにタナトスを見る。
「ファウナッハ。君はどうするのだね?」
「私……ですか?」
目を伏せて、逡巡する。
幾ら肉体が使い物にならなくなった時に、他者に乗っ取るといっても体を捨て去る事への潜在的な恐怖はある。
―この体を、捨てるの?
いくら尊敬する人間の命令とはいえ、この身体を捨て、別の存在になる事には抵抗があった。

シークに目を向けた後にタナトスを見る。
その瞳には誰が見ても明らかな迷いがあった。
「私は………」
自分でも気づかぬ内に視線を彷徨わせる。
その様子にタナトスが大きく溜息をつく。
彼の失望の意を感じ取り、ファウナッハが言葉を紡ごうとするが、タナトスは片手でそれを制する。
「心が定まらぬのなら、この話はなしだ」
「タナトス様…!」
「…黙りなさい、ファウナッハ」
タナトスの冷酷な声音に、ファウナッハが続ける言葉をなくして顔を伏せる。


「…君達は身体を捨てることには抵抗があるようだね」
実に残念だと小さく漏らす。


タナトスが部屋を出たと同時に、今まで室内を満たしていた緊張感が一気に解ける。
部屋の中に重苦しい沈黙が流れた。

煌々と明るく照明の施された廊下を、一人の男…タナトスが歩いてゆく。
昂然と歩を進めるが、その姿はさしずめ勇気に用におぞましさを感じさせる。
呪術師の周囲だけが冥界に繋がっているかのように、明らかに空気が異なっていた。

彼の考えることは一つ。”同僚”達の姿。
帝国の宝石と呼ぶに相応しい、生まれながらに美しい姿を持つ三人。そして呪術師が嫉妬と羨望を抱く人形達。
「……フフフ……本当に愚かだね。 この私が永遠の命を授けてやるというのに、それを拒むなんて。
そこまで、美しさを手放すのが嫌か……。これだから美しい人間は嫌いさ」
―…でも、それにもまして美しいものは好きだよ。
――永遠に自分の側に存在する、美しい玩具として。





言い訳
全8話をイメージしており、2の時代は3話まで、それ以後は未来~3の時代の話の予定です。
次回は四天王がどのような経緯で魔物と契約したかについての話です。
スポンサーサイト


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ
総もくじ  3kaku_s_L.png ドラゴンボール
総もくじ  3kaku_s_L.png 火星物語
総もくじ  3kaku_s_L.png 聖剣伝説
もくじ  3kaku_s_L.png その他
もくじ  3kaku_s_L.png 未完
もくじ  3kaku_s_L.png 考察もどき
もくじ  3kaku_s_L.png 短文
もくじ  3kaku_s_L.png 裏部屋
  • 【DB 小説 『悟天と二人のトランクス』】へ
  • 【三千ヒット記念】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【DB 小説 『悟天と二人のトランクス』】へ
  • 【三千ヒット記念】へ