「聖剣伝説」
聖剣伝説3(HOM)

聖剣伝説HOM 小説 『出会い』2

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注意
オリジナル設定があります。
こちらの設定を使っているので、まず一読してください。
サンドアローの両親という、オリキャラのみの話になります。















「蛇王団の消息が不明になったのは10日前のことだ。前日まで暴れまわっていたのに、突如消息を絶った」
「そう……」
「言っておくが、俺は連中が今何処に潜んでいるかは知らねぇぞ」
「それはあまり期待していないから、大丈夫」
あっさり答えたシルフの言葉に、店主が落胆して大きく肩を落とす。
10日前。それは丁度ナバールが蛇王団を討伐する予定だった前日だ。
蛇王団の残虐と暴虐の限りを尽くした行いに、ナバールの上層部は漸く重い腰を上げた。しかしその前に蛇王団は突如失踪してしまった。
幾ら連中の痕跡を探っても、何一つ見つけることが出来ない。
国外に逃亡したと思われたが、各港町に忍ばせている密偵の話では、逃亡したと言う形跡はない。
だから蛇王団はまだこの砂漠のどこかにいる。
店主が立ち直り、彼女に身を乗り出す。
「じゃあ、何を知りたいんだ?」
「連中が失踪する前に、ナバールの関係者と接触していたかを知りたい」
討伐前に突如失踪した蛇王団。
情報が外部に漏れないように、秘密裏に準備されていた。そして討伐の事実を知りえるのは、内部の人間しかいない。
内通者がいるという事実に失望と落胆が入り乱れながらも、今後の事について考えを巡らせる。
店主の口が開かれるのを、食い入るように見つめる。
その時、来客を知らせる鈴の音が軽やかに店内に響く。
普段は気にも留めぬが、何故か心惹かれるものがあり、振り返った。
店内にはまばらだが客はいる。しかし彼女の視界に映っていたのは店に入ったばかりの一人の男だった。
ややくたびれたマントに身を包み、防砂布で顔を覆い隠した壮年の男。褐色の肌と鳶色の髪、淡い瞳を持ち、長身で筋骨隆々の屈強な戦士。
シルフがその男の姿に何故か違和感を覚えて、目を凝らして見つめる。すると一瞬だけだが、その姿と重なって別の姿が見えた。
それは今までに見た事がないほど、美しい青年だった。
彼女が言葉を失い、思わず身を乗り出した途端、”幻影”は波立つ水面のように歪み、消えた後には先程と同じ壮年の男の姿があった。
男が規則正しく、力強い足取りでカウンター席に向う。その歩き方は正規の訓練を受けた軍人のようだ。
彼が崩れ落ちるように、シルフの隣の席に座り込む。疲れ切った面持ちをしているが、彼女の予想とは裏腹に男は昂然と顔を上げていた。
男が耳慣れない発音の共通語で、店主に酒を注文する。
シルフが鋭い眼差しで男を観察する。
目の前にいる男が今まで見たことのない濃い血の持ち主だと、彼女の中の血が告げていた。
血統者の血を伝える組織は、最早ナバールのみ。
男が何処から来たのかを聞き出す。そうすればナバールの…血統者の血を再び濃くなれる。

店主が苦々しげにシルフと男を見つめる。
先程まで彼の姿を映していた目は今は別の男だけを映しており、店主の方を見ようとはしなかった。
まるで彼には何の関心もないと言わんばかりの横顔を見ているうちに、苛立ちが燻り始める。
「蛇王団のことだが…」
彼女の関心を掴み取るための餌を示す。
だが、それに反応したのは男一人。
目当ての彼女は餌に食いつかずに、その男への関心を逸らすことはなかった。
男が勢いよく酒を飲み干すと、つまみにも手をつけずに立ち上がろうとした時。
「待て!!」
シルフが反射的に声をかけて、男の腕に手を伸ばす。
男が訝しげに彼女を見る。
「…何か?」
先程の渋く、掠れ気味だった声とは異なり、低く耳に優しい声だった。あまりの変貌振りに彼女が疑問に思うが、それは一瞬のことだった。
彼の腕から手を放すと、魅力的な笑みを浮かべる。それは整った顔立ちも相俟って、誰もが見惚れる極上の笑顔だ。しかし男はその笑みを向けられても魅了されず、訝しげに彼女を見ていた。
「ねぇ、奢ってあげるから一緒に飲まない?」
「…生憎だが、急いでいる。 男を漁るなら他にしてくれ」
放たれた侮辱に、目の前が真っ赤になる。
感情の赴くまま男の腹を殴り飛ばし、思わずよろめいた男の顔面に手付かずのウィスキーを勢いよく浴びせる。一杯数万もする高値の酒は、今は男の髪から滴り落ちていた。
シルフが激昂し、男の胸倉を掴み、怒りに打ち震えた瞳で彼を睨む。
「私は戦士だ!! 卑しい売女などと一緒にするな!!」
シルフの手に更に力が加えられる。
彼女の言葉に男の瞳が陰りを帯びて伏せられる。一瞬だが、水色の瞳が深紅に変わった。

―…まずいな……
忍者としての修行の賜物が目の前の男に対して警鐘を鳴らす。
今まで”違和感”にばかり気を取られて、男の観察を怠ったことを後悔した。
だが、先に彼女を侮辱したのは男の方。
今更引っ込みもつかなかった。
シルフの予想とは裏腹に、男は静かに頭を下げる。
「申し訳ない」
神妙に謝られ、先程まで彼女の中を駆け巡った怒りが急速に萎んでいった。
ここまでされても男は怒る素振りを見せない。
血の気の多い砂漠の民ならば、この態度は弱虫や臆病者という謗りを受ける。だが男からは卑屈さは微塵も感じられない。
彼を前にしていると、その秘められた力が独りよがりのものでない事はわかる。
男の骨の髄まで染み込んだ血の臭いまでも嗅ぎ取れるのだから。
力があるのに、何故反撃しないのか?
「……怒らないのか?」
力なく呟く。
男が真摯な眼差しで彼女を見る。
「どのような理由であれ、貴女を侮辱したのは事実だ。 誇り高い戦士なら怒って当然だろう」
「あ…あぁ…。そう、だ……」
予想だにしなかった返答に、困惑しながらも言葉を返す。
怒りが完全に収まった今では後悔と罪悪感に苛まれ、腰を下げている鞄からタオルを取り出す。
シルフが男の顔を拭こうとするが、彼はその手を遮る。
「自分でやるから結構だ」
彼の答えを予測していたシルフが言葉を紡ぐ。それは名誉や誇りを重んじる相手には有効な言葉だった。
男が観念して、シルフがその顔を丁寧に拭いていく。
―……やはり、間違いない。
気を込められた手で彼の顔を触れて、男の姿が本来のものでないと確信した。
彼は遥か遠い昔に失われた変化の術を使っている。
湧き上がる好奇心と嫉妬を押さえ込み、丁寧に作りこまれた幻の骨格でなく、本来の骨格から男の顔を思い描く。それは先程一瞬見えた”幻影”と重なった。
―…ヘェー、凄い美人。
平静を装いながら、男の顔を拭き終える。
直後、空腹を知らせる腹の音がシルフの耳に入ってくる。
至近距離から聞こえていたそれは、男の体躯には似合わぬ控えめの音だった。
シルフの視線に耐え切れず、男が顔を逸らす。
外見に似合わぬ可愛らしい反応に、彼女が朗らかに笑う。
「ほら、お腹すいたでしょ? 奢ってあげるから、ここにいなさいよ」
何処か手負いの獣のような空気を醸し出す男を安心させるように、人好きのする笑顔を浮かべる。
「別に取って食おうなんて考えてないから、警戒しなくても大丈夫だよ」
「…結構だ」
素っ気なく返す。
取り付く島のない男の態度に、シルフが柳眉を寄せる。
「人の善意を撥ね退けるなんて、失礼だと思わないのか?」
その言葉に男が逡巡して少し間を置いて頷いた後に、満足げな面持ちのシルフを見る。
「何故、見ず知らずの人間にそこまで出来るんだ?」
心底理解できないという思いを露わにした眼差しに、シルフが朗らかに笑う。
「砂漠の民は助け合って生きるのが常識だからさ」
彼女の言葉に、男が微笑む。

男が隣に座ったのを確認して、シルフが大量の料理を注文する。店主は不服そうに彼女と男を見ていたが、商売に私情を挟むことはなかった。
渋々と持ってこられた料理が眼前に並べられると、男が遠慮がちにシルフを見る。了承の意を込めて、彼女が微笑み返す。
「好きなだけ食べてもいいよ」
「では、遠慮なく頂こう」
男が料理に手を伸ばす。
その食べ方はとても綺麗で、彼が厳格な教育を受けて育ったことが容易に推察できる。
よほど空腹だったのか、何処に入るんだと疑問に思うほど食べていく。
途中から唖然としてその様子を眺めていたが、流石に十人前を越したところで慌てて止めた。
男は満足したのか、心地よさげに目を閉じて大きく息を吐いた後に、シルフに深々と頭を下げる。
「本当にかたじけない」
顔を上げ、真摯な目で彼女を見つめる。
「礼を言う」
「…どういたしまして」
男からの礼は嬉しかったが、今の彼女の関心は残り少ない財布の中身だった。




言い訳
オリジナル設定についての補足
シルフは血が薄くとも血統者だから、初対面時に彼の本当の姿が見えたんです。
変化の術に所々ボロが出ているのは、彼が気の制御や術の訓練をあまり受けておらず、理論よりも感覚重視で術を使っているからです。

2011/7/30 小説へ移行
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