未完

聖剣伝説3 パラレル 未完 『祭り』1

 ←聖剣伝説HOM 小説 『黒心』1 →聖剣伝説2 小説 『短文集』
砂漠の王国』のシリーズです。












燦然と輝く王都は、年に一度の大祭を楽しむ民衆で溢れていた。
***
ナバールの捕虜となり、世襲王子に身柄を与えられてから二ヶ月。
妾という立場にある彼女の部屋は一見すると、嘗て戦王女と謳われた彼女に相応しく、質素なものだ。しかし装飾品や内装など全てが最高級の品々で超一流の仕事によるものだとわかる。
それらは自らを飾り立てる事無く、高貴な空気を醸し出すリースとよく似ていた。


リースが物欝げに溜息を吐くと、寝室に隣接したバルコニーに出た。
そこから広がる広大な砂漠を眺める。
見慣れた風景とは似ても似つかないナバールの景色を見つめながら、故郷ローラントを思う。
もう二度と故郷の地に足を踏み入れることはできないと覚悟している。けれど望郷の念は彼女の心から一向に離れずに、時折激しく渦巻いた。
一陣の強い風が吹き、砂が舞い上がってゆく。
飛ばされぬようにベールを押さえながら、風が吹き上げた空を見上げる。
砂漠の空は青く透き通っている。
雲がなく乾燥しているためか、高山地帯である故郷の空の色に近かった。
胸に何かが熱くこみ上げてくる。
慌てて俯き、空から視線を逸らす。
―泣いては駄目よ、リース。 ナバールでは絶対に泣かないと誓ったでしょう!?
バストゥーク山で最後の涙を流した。
涙はもう既に故郷で流し終えた。もう彼女の涙は砂漠に覆われたこの国同様に枯れ果てている。
―…なのに…
敵国の中で、弱みは絶対に見せないという彼女の矜持が泣くことを許さなかった。

王都というだけあって、元から活気ある町だが、今日はいつになく賑やかで宮殿にまで王都の喧騒が聞こえてきた。
人々の歓声や音楽が風に乗って彼女の耳まで届く。
王宮内もいつもより華やかで楽しそうな空気に満ちて、見ているだけでも楽しくさせた。


独特のリズムのノック音にリースが振り返り、部屋に入るように言う。
いつもなら礼を言いながら部屋に入るのに、少し時間が経ても入らない事に怪訝な気持ちを抱くと、訪問者が困ったような声を上げる。
「リースさん、オイラ今両手が塞がってるニャ! 悪いけど開けてくれニャいか?」
「はい、今開けます」
足早に扉まで向かい、扉を開ける。
真っ先に目に入ったのは猫族の少年の顔でなく、彩り鮮やかな花々だった。
両手一杯に抱えられた花束で足元がよく見えないのか、おたおたした足取りだった。
リースが幾つか花束を抱えてあげると、ニキータが明るく礼を言って、ベッド脇に置かれている大きい花瓶に花々を生けていく。
南国の花は日差しが強烈な環境にあるためか、原色に近い華やかで彩りの鮮やかな色が多かった。
一緒に花を生けてから、リースが先程の疑問をニキータに尋ねる。
「今日はいつもより賑やかですけど、何かあるんですか?」
「水の神に捧げる祭りがあるんですニャ。
この日は首都サルタンだけでなく、色々な街でも夜通し華やかな祭りが続くけど、一番壮麗なのはやっぱりサルタンでの祭りだニャ」
リースの問いかけにニキータが目を輝かせて答えた
「水の神…?」
「ナバールには水の神と、炎の神への信仰があるんですニャ。
母神と戦神は二つで一つ。これがナバールの民の考え方ですニャ。だからナバールではマナの女神様はマイナーな宗教ですニャ」
元々ナバールでは水の神が母神として崇め、炎の神は母神を守り、外的を排除する戦神という意味合いだった。しかし最近では変化して、二柱の神となっている。
それでも母神と戦神は二つで一つと考える風潮が強く、両方を信仰している。だが、最近では極端に偏った信仰を持つ者も現れ始めていた。


「今日はホークアイ様は何処にも行けニャいですからね。だから、先に贈ったんですニャ」
「何処にも行けない…?」
その事に安堵するが、疑問が浮かび上がる。
ホークアイは忙しい中でも時間は作るものだという考えを持っている。共同統治者として多忙な日々を過ごしていても、必ずリースの元に訪れる時間を作ってくる。
「忙しいから」などホークアイにとっては理由にならない。
彼女の疑問に気付いたのか、ニキータが大きく頷く。
「はいですニャ。 毎年毎年毎年…この日になるといっつも逃げ出すから、今年こそは夜まで牢屋に閉じ込めておけと王様の命令ですニャ。
だから今回はいくらホークアイ様といえど、逃げ出す事は不可能ですニャ」
信じがたい言葉にリースが瞠目する。
「…王は、王子を牢に閉じ込めるのですか?」
「……本当は誰もそんなことはしたくないですニャ。でも、そうでもしないと…逃亡したホークアイ様を探して、祭りの準備どころではなくなりますから、仕方ない事ですニャ」
困り果てた面持ちでニキータが呟く。
スポンサーサイト


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ
総もくじ  3kaku_s_L.png ドラゴンボール
総もくじ  3kaku_s_L.png 火星物語
総もくじ  3kaku_s_L.png 聖剣伝説
もくじ  3kaku_s_L.png その他
もくじ  3kaku_s_L.png 未完
もくじ  3kaku_s_L.png 考察もどき
もくじ  3kaku_s_L.png 短文
もくじ  3kaku_s_L.png 裏部屋
  • 【聖剣伝説HOM 小説 『黒心』1】へ
  • 【聖剣伝説2 小説 『短文集』】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【聖剣伝説HOM 小説 『黒心』1】へ
  • 【聖剣伝説2 小説 『短文集』】へ