未完

聖剣伝説2 未完 『妄執』2

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注意
オリジナル設定があります。
2は3(HOM)の遠い昔という設定です。
こちらの設定を使っています。
シーク、ファウナッハ、ゲシュタールは誰もが振り返るほどの美貌の持ち主です。
シーク・ファウナッハ前提です。











ヴァンドール帝国四天王の一人、ゲシュタール。
軍事や技術者として非凡な才を有す彼の工房(ラボ)には、帝国のみならず世界最先端の技術や知識が詰まっていた。それらは現代の科学力を凌駕するものばかりで、研究者や技術者にとって、喉から手が出るほど欲する品々だった。

様々な機械や部品、工具、設計図が整然と分類ごとに並べられており、書棚には世界各地から集めた本や論文、古代文明の文献が収められていた。
特にタスマニカ、マンダーラといった科学技術に特化した国や、古代文明の文献を編纂している国の本が多かった。
―また本が増えたな。
他人には認識できない僅かな違いをも瞬く間に読み取ったシークが部屋の主を見る。
「それで、新しい兵器とは何だ?」
「次元魔導砲だ」
得意げな答えにシークの目が見開かれた。
予想通りの反応にゲシュタールが愉快そうに笑う。
「まだ実用化は難しいが……それもすぐに解決してみせる」
純粋に目を輝かせて語る様子は子供のようで、”死神将軍”と敵味方からも恐れられる存在と同一人物とは思えない姿だった。
シークが少しの不信を宿した目を青年に向ける。
次元魔導方は古代文明時代に作られた大量殺戮兵器だが、神獣との戦いとその後の災厄により完全に失われた。今では僅かな文献に名を残すだけで、その製法や知識は伝えられていない。
ゲシュタールは様々な文献を読み漁り、独自に波動砲の再現を行った凄腕のメカニックだが、次元魔導砲では剃れも不可能だと思う。
次元魔導砲は波動砲とは異なり魔法を核として作られていた。それを作るには非常に高度な魔法の知識と技術を必要とする。
しかしゲシュタールは機械技術に関しては数百年に一人の超天才だが、魔法では素人よりマシ程度だ。
本当に彼が次元魔導砲を再現できるのかと、シークが疑問に思うのも無理からぬ事だった。
「本当に出来るのか?」
「私を誰だと思っている?」
不快そうに眉を顰めて、腹立たしげに同僚を見る。
自分の技量を疑われる事は何よりも屈辱であり侮辱だった。特にそれが自分の認める相手ならば、何故信用できないのかと余計に癪に障る。

「ゲシュタール。お前は世界一のメカニックだ。 けれど次元魔導砲の性質を考えれば…」
「確かに私には魔法の素質や知識はない。 だがその辺りは協力者がいれば済む話だ」
―協力者か。
人間嫌いで滅多に心を許さない彼が、自分の大事な作品を委ねる。
そんな相手で魔法の達人といえば……
シークの視線が隣にいるファウナッハに向けられる。
彼の視線に気づいて見返した彼女は何処か悪戯めいた色を宿した目をしていた。
その目に、最近彼女がゲシュタールのラボに出入りしていた事を思い出す。
「もうわかったようだな」
目敏く二人のアイコンタクトを見て取ったゲシュタールが誇らしげに、丸めた設計図を軽く掲げてみせる。
「ファウナッハが文献の中から次元魔導砲に纏わる情報を見つけて、今まで手伝ってくれていたのだ。」

ゲシュタールに聞こえぬようにファウナッハに小声で
「次元魔導砲の情報の出所は、タナトスか」
次元魔導砲の源である魔法は、古代文明と共に失われた。
文献には魔法を構成する上で必要不可欠な魔法式が書かれている。しかし今と昔とでは魔法の様式は異なるから、簡単な魔法でも式から解き明かすのは非常に困難だと、以前彼女は行っていた。だとすれば複雑極まりない魔法式では、現代の人間であるファウナッハに解き明かすのは無理だ。
それが出来るのは長命な時を生きた妖魔か竜族。そして…タナトスのみ。
ファウナッハがゲシュタールを一瞥し、彼が設計図とにらみ合っているのを確認してからシークに視線を戻す。
「ええ、でもゲシュタールには言わないでね」
「ああ、元より言うつもりもない」
昔からタナトスを毛嫌いしていたゲシュタールだが、半年前のあの日以来タナトスに対して強い嫌悪と怒りを抱くようになった。
その彼が苦心の末に作り出したものがタナトスの知識によるものだと知れば…。
その失望と落胆は計り知れない。

来客を知らせる無機質なベルの後に、タナトスが扉をすり抜けて室内に入ってきた。
いつも身に纏わりつかせる独特の冷気を漂わせ、呪術師は悠然と三人の元に歩み寄る。
タナトスが歩を進めるたびに、悪寒の走る冷気が室内に流れ込んだ。
外は例年にない猛暑だというのに、暑さが酷く遠くに感じられた。

「……此処に君達が揃うなんて、珍しい。
道理で探しても見つからないわけだ」
「何しに来た?」
ゲシュタールが剣呑な眼差しでタナトスを睨む。
「少し前に話した事でね。
君達は体を捨てることに抵抗があるのだろう?ならば体を捨てずに不老不死になる方法があるのだが……やってみないかね?」
―少し前?
シークの眉が寄せられる。
タナトスが三人に”転生の秘法”を提案したのは、半年も前のことだ。
ゲシュタールが鼻で笑い、口角を歪めた。
「とうとう耄碌したか、タナトス?」
「ゲシュタール!!」
嫌味な笑み共に放たれた言葉に、ファウナッハが鋭く叱責する。
物怖じしないゲシュタールに、タナトスが愉快そうぬ喉を震わせて笑う。
「酷い言い草だね。 そんな事言われたら、とっても傷つくよ」
「嘘吐きめ」
ゲシュタールが冷ややかに言い放つが、タナトスは彼の言葉を無視する形で言葉を紡ぐ。
「これでも私は長い時を生きているから、半年なんて昨日と同じ…短すぎる時間なのだよ」

「魔界の住人…妖魔との”契約”はどうかね? これなら生身のまま強大な力を得られるし、永遠に老いる事もなくなる」
「契約だと…?」
「なぁに、大したことではない。 妖魔と体を共有させる……それだけだよ」
ゲシュタールの脳裏に、今まで見てきた妖魔の姿が浮かんでは消えた。
どれもこれも彼の美意識には耐え難いほど醜い生物ばかりで、それらの生物と体を共有するなど考えただけでも耐えられなかった。
黙ったままでいる面々に何を思ったのか、タナトスは更に続けた。
「ああ、そうそう……十数年前にも皇帝に妖魔を”寄生”させたよ」
「……おぞましい事を…」
シークの言葉にタナトスが目を眇める。
「あれは皇帝の意思だったのだよ。 共和国の暗殺者に殺されかけて、死にたくないと年甲斐もなく泣くものだから……あまりにも哀れになって実験ついでにね」
タナトスが発見した時、皇帝は既に虫の息だった。なのによく命乞いできたものだと、その生命力に感嘆したものだ。
凄まじい生への執着と、妖魔の生命力。
二つが重なれば面白いかも知れぬと寄生させたが、結果はタナトスにとっては残念の一言。
「言いたい事はそれだけか ならば私の意志を伝えてやる」
ゲシュタールが射抜き殺さんとばかりの鋭い眼光で嫌悪も露わに呪術師を睨む。
「私は妖魔を寄生させるつもりは毛頭ない。 貴様のモルモットになるくらいなら死んだほうがマシだ」
「誰が君達に”寄生”させると言ったのだね? 私は”契約”だと言ったのだよ。
契約だから、妖魔との関係は対等だし、交渉も出来る。自我を乗っ取られないから、皇帝のように人格も豹変しない。
ただ、妖魔と体を共有させる……それだけで妖魔の力と寿命を得られるのだよ」
言い終えると同時に一堂をゆったりと見回した。
「これならば君達も文句なかろう?」
「体を捨てろの次は人間を捨てろ……か」
言い終えた直後ゲシュタールが目にも留まらぬ速さでタナトスの胸倉を掴んだ。
「これ以上我々を侮辱するな!!」
憎悪に満ちた目で呪術師を恫喝すると、その顔面を殴り飛ばす。
ファウナッハの短い悲鳴とゲシュタールを責める声が放たれるが、彼の耳には入らなかった。
今のゲシュタールの眼中にあるものは、自分達を玩具としか考えない呪術師のみ。
「出て行け!!! これ以上貴様と同じ空気を吸いたくない!!」

「……やれやれ、君はすぐ感情的になる。 そんな事で四天王を名乗れるのかい?」
「貴様!!」
「君の声は不快ではないが…このままでは話が進まないので、少し黙っててもらおうか」
タナトスが指を鳴らした途端、ゲシュタールの目が虚ろなり、糸が切れた操り人形のように崩れ落ちた。
咄嗟にシークが抱き支えた事で床に体をぶつけることはなかったが。
「ゲシュタール!?」
「タナトス様、何をなさるのですか!?」
「いちいち騒がれたら話が進まないのでね。 大丈夫、少し眠っているだけで命に別状はないよ」

「妖魔と契約するには双方合意でなければならないのだよ。僅かな迷いや抵抗があれば、妖魔はそこに付け込み逆に食われるからね」
呪術師の視線が仮眠用の簡易パイプベッドに横たわるゲシュタールに向けられる。
「あの調子では何を言っても引き受けないから、彼は保留としておくよ」
タナトスが残された二人に視線を向ける。
「それで、君達はどうだ…?」
視線を向けられただけで、天敵に狙われた獲物のように圧倒的な恐怖が全身を襲い、背筋が凍えるほどの悪寒が駆け巡った。
ファウナッハが少し逡巡した後、恐る恐る呪術師を窺った。
「……タナトス様。 それはタナトス様が望まれていることなのですよね…?」
「そうだ。これは私の望みだよ。 素直な君なら誰かと違って反抗はしないだろう?」
ファウナッハの脳裏に以前の提案を拒絶したときのタナトスの失望と落胆の顔が鮮明に蘇った。
師であり、恩人であるタナトスを、これ以上失望させるのは耐えられなかった。
「…………それが、タナトス様のお望みならば。 私は人間を捨てます」
「ファウナッハ!?」
シークが驚きと非難の声を上げた。
その声を振り払うようにファウナッハが強く目を閉ざして、首を振るう。
毅然とタナトスを見返すファウナッハに、タナトスが屈託なく笑う。
「いい子だ」

「さて、シーク。君はどうする? 妖魔との契約を考えてくれるかい?」
「断る」
僅かな迷いも感じさせずに即答したシークに、タナトスが溜息を漏らす。
「妖魔と契約すれば君は更なる力を得られるのだよ? もう、無力だった頃の記憶に苛まれなくなる。
君が修練の末に手に入れた力とて……人間の体はあっという間に朽ちるのだから、永遠ではない。時と共に失われる、儚いものだ。
しかし、妖魔と…それも上級妖魔と契約すれば、数千年は生きられる」
「……数千年……?」
「それ程長い時を生きられるのだよ。 強大な力と類まれな美貌を衰えさせる事もなく」
シークが目を伏せ、思案する。
長い寿命や仮初の力も人間を捨ててまで欲しいとは思わない。だから妖魔と契約する理由などない。
以前ならタナトスの”提案”など突っぱねていた。
しかし今は……。
タナトスの言葉が何よりも魅力的に聞こえた。
―私も、もう26か。
彼の母方の家系は代々死に至る重大な遺伝病を発症し続けており、皆若くして亡くなっていた。
発病は十代後半から十代後半まで。シークが虱潰しに調べた限り、30歳を越した者は皆無だった。
今の彼の年齢は、いつ死の病が猛威を振るって、食らい尽くされてもおかしくない時期。
国の中枢である四天王ならば最高の医療を受けられるが、延命すらも難しいだろう。
世界で最も医療分野に突出した故郷でさえも、母の病を治せなかったのだから。
いつ死んでもおかしくないと覚悟は決めていたが、命のタイムリミットが刻々と迫る中、”生きたい”と強く願うようになった。
まだ死ぬに死ねない。現世にはあまりにも心残りが多すぎる、と。
―妖魔と契約をすれば、生きられるのか?

死ぬのも恐ろしいが、何よりも耐え難いのは恋人が長い時の果てに自らの事を忘れ行く事実。
――死と忘却から逃れる術は、たった一つ。
何かを振り払うように強く目を閉ざした後、昂然と顔を上げてタナトスを見据える。
「……いいだろう」
「ほぅ」
常の力強さに欠けた声での了承に、タナトスは目を丸くした後、瞳に喜悦の色が宿した。
その反応にシークが意外な気持ちを抱く。
恐らくタナトス自身シークがあっさりと了承するなど、予想外だったのだろう。
その事実にシークが心の中でほの暗い嗤いを浮かべた。
「但し、私は体内の気を乱されたら、力を失ってしまう。それに別の思念が体の中に渦巻くのも耐えられない。
植物系の…強い意思を持たない妖魔なら契約できる」
「他に要望はあるかね?」
「高い防御能力を持つ妖魔がいい」
「それ以外には?」
「植物系ならば、生命力や再生能力が優れているのだろう?」
「勿論」
「ならば、十分だ」
「姿はどうする?」
「変身するつもりはないから、能力重視にしてくれ」
淡々としたやり取りは、とても”人間”であることを捨てる、という内容にそぐわないものだった。

夜も更けた頃。
タナトスが街の中、悠然と歩を進める。
彼の纏う空気に影響されたのか、賑わいを見せる深夜の繁華街は一転して暗く淀んでいた。

シークが妖魔との契約に了承したのはとても意外だった。
彼の性格から言えば、ゲシュタールと同じく死んでも”契約”を拒んだだろうに。
何か思うところあっての行動だろうが、それが何かがタナトスにも掴めなかった。
ファウナッハのことも理由の一つに上げられるが、それだけで彼が契約に了承するとは思えない。
―まぁ、よい。

仮面の下から覗かせるその感情は、歪み狂った所有欲。
「フフフ……本当は満月の夜に”調整”をしなければ、妖魔に食われるのだけれどね…」
一度契約をすれば、死ぬまでタナトスから離れる事はできない。生きるためには彼の側に居続けなければならない体になる。
「まぁ、そのことは契約後に話すとしよう」
漸く捕らえる事の出来た最高の獲物を、逃すつもりは毛頭ない。

「私はね…君達三人を手放すつもりなんて、ないんだよ」
―強く美しい彼らを……絶対に逃さない。死ぬまで私の側に。
そこまで考えた後に、歪んだ笑みを浮かべる。
「”死”である、私が死ぬ事なんてないのだけれどね」



言い訳
共和国の暗殺者はセリンです。
このサイトでは美獣と邪眼の伯爵と死を食らう男は上級妖魔という設定です。

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