「聖剣伝説」
聖剣伝説 お題

聖剣伝説2 お題 小説 『Raven』 2

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注意
オリジナル設定があります。
こちらの設定を使っているので、まず一読してください。
2は3の遠い過去の世界という大前提があります。

2より9年前の舞台です。
オリキャラが出ます。
















湖の中にある白銀の神殿。
数百年も昔から聳え立つ建物は、ウンディーネを奉る水の神殿。

湖の前に一人の中年の男が佇み、水の神殿を真っ直ぐ見据えていた。
共和国の騎士の鎧に身を包んだ、筋骨隆々の鍛え抜かれた戦士の肉体を持つ屈強な男。
灰色の髪をオールバックに纏めており、鋭い眼光が印象的だった。
常とは異なり、男の全身からは近寄りがたい空気が醸し出ていた。
男の名はジェマ。
タスマニカ騎士団長であり、マナ研究の第一人者だ。

「ルサ・ルカに会いにいたんだろう?」
何処からか明るい声が響いてくる。
周囲には人の気配はなく、ジェマしかいない。
彼は得体の知れぬ声に驚きを見せることなく、平然と自らの影を見下ろす。
「クロウ。ここには誰もいないぞ」
クスクスと軽やかに笑う声が、ジェマの影から響く。
「気を使ってやってるんじゃないか。 タスマニカ騎士団長ともあろう者が、俺のような奴と付き合いがあると知られたら、お前の評判は地の底に落ちるからな」
少年特有の高く透明感のある声に、ジェマが苦笑する。
「ここにいるのはタスマニカ気師団長でなく、ジェマという一人の人間だ。 一人の人間として、共と直に話がしたい」
「……わかったよ」
ジェマの陰が揺らぐと、影の中から一人の少年が姿を表す。
十代半ばの中肉中背の、人懐っこい明るい雰囲気を持つ平凡な顔立ちの少年。彼の容貌で特筆すべきは黒髪と黒目。それはある民族の最も知られた特徴。
一年前のある事件以来、民族との繋がりを全て絶ち、ジェマの側に影の如く控えている忍者。
少年がジェマの顔を下から除きこむように見上げる。
「会いに行かないのか?」
「……そのつもりだったが……やはり、このようなことにルカ様のお手を煩わせるわけには……」
「呆れた!大袈裟に考えすぎなんだよ。 ただ、ランプ花の森で摘んだ花をあげに来たんだろう」
やれやれと大仰に溜息を落とす。
ジェマはマナの研究のために世界各地を緒飛び回る生活を過ごしている。その道中にランプ花の森というマナが多く集まる所に立ち寄った。
ランプ花の森にはエルフと獣人達が数多く住んでおり、人間であるジェマは針の筵にいるような敵意と殺意を常に向けられていた。
クロウがジェマの持つ花束に視線を送る。
それはランプ花の森にしか生息しない希少種で、芳しい香りは多くの者を虜にする。
花を前に陶然と嗅ぎ惚れたジェマに、その花を神官にあげることを提案したのはクロウだ。
師であり恩人の尊敬する神官。
ジェマは常日頃からルサ・ルカへの思いをそう口にしていたが、気である程度相手の心を感じ取れるクロウには本当の気持ちが分っていた。
クロウの呆れと非難の入り混じった顔に、ジェマが僅かに顔を顰めるが、頭を振るう。
「……しかし……」
煮え切らないジェマの態度に、クロウの額に青筋が立つ。
中年のウジウジした姿など、見ていて腹立たしい。
「余計な事を考えるから、何も出来ないんだろ! 仕事先で綺麗な花を見つけたから、国に帰るついでに恩師に渡しに来た。 そう考えればすむ話だ!」
声を張り上げて一気に捲くし立てる。
クロウの剣幕に唖然としていたジェマが呆気にとられていたが、ゆっくりと髭を撫で付ける。
「……そうだな。 よし、それでいこう」
ジェマが力強く頷き、確認の為に花束に視線を向ける。
数日も経ているのに、花は未だ生気を保ったまま枯れる気配はなかった。
クロウが得意げに胸を張り、哂う。
「大丈夫だ。気を大量に蓄えさせたから、数ヶ月は枯れないぞ」
「何から何まですまんな」
頭を下げたジェマに、クロウが朗らかに笑って彼の背中を叩く。
「これぐらい礼を言われるほどじゃないさ。 ほら、さっさと意中の姫さんに花束を献上して来いよ!」
「クロウ!!」
少年が悪戯めいた笑みを浮かべて言い放つと同時に、彼の姿が一瞬で掻き消えた。
ジェマが年甲斐もなく顔を紅潮させて大声を上げた時には、既に誰もおらず、怒声が虚しく辺りに響いていた。

クロウが丘の上の一際高い太い木の枝に跨いで、水の神殿を一望していた。
久し振りに一人になった解放感に深々と息を吸い、大きく伸びをして、木の幹に背中を預ける。
数ヶ月いたランプ花の森では、やむを得ない事情により四六時中気を張り巡らせた状態でジェマの側にいたのだ。幾ら訓練を受けているとはいえ、不特定多数の獣人やエルフの深い憎悪や敵意を浴び続けていたのだから、気分も悪くなる。
鈍い混血なら、強烈な負の思念でない限り体調に影響を与えないだろうが、純血はデリケートで繊細な存在なんだと大きく息を吐く。
人間に迫害されて、未開の土地に逃げた彼らには同情した。だが、それだけだ。
彼らを見たクロウの印象は、ただ追い立てられ傷ついた者達が集まるだけの烏合の衆だ。一族を纏めず、人間を凌駕する能力を最大限い発揮して、確固たる地を築こうとしない。
少なくとも”同族”は国として纏まり、異能を最大限用いて、各国の中核深くまで潜り込んでいる。

――何もせずにただ逃げて隠れているだけか?
人間どもを見返そうとは思わないのか?
ただ怨み辛みに凝り固まっているだけか?――

ランプ花の森にいる間、軽蔑を抱くと共にそう考えていた。
エルフはともかく獣人達は数が多く、戦闘能力も高い。建国し、技術を得れば十分強国になれるというのがクロウの考えだ。
獣人達は国を作るという行為に嫌悪を抱いているのが、とても勿体無い。
―連中の気は僻みや負の思念で凝り固まって、見ているだけでも情けなくなったよな…。
獣人やエルフ達が人間にされた非道の数々は知っている。だが、いつまでも過去に縛り付けられていても意味がないではないか。二度と同じ事を繰り返さぬようにするのが大事じゃないのか、と思う。

うとうとと心地よい眠気に意識を委ねかけながら、色々な事を考えていると。
―何でジェマは俺と一緒にいるんだろう?
最近は考えなかった疑問が、ふと脳裏に過った。
血統者は気を操る異能と、黒目黒髪という異様な容貌から”悪魔”と呼ばれている。
タスマニカへの血統者の風潮と迫害を考えれば、共和国にジェマとクロウが共に過ごしている事を知られれば、二人が待ち受けるものは火炙り。
クロウの存在は、ジェマからすれば”悪魔”と通じた者として社会的に抹殺され、拷問の末に処刑される危険性を孕んでいる。いくら血統者の異能を得るためとはいえ、危険極まりない行為だ。
共に過ごすようになって間もない頃はその危険性を説いたが、逆にジェマに一喝された。
全く手応えのないやりとりを繰り返すのに、次第に嫌気がさして今では何も言わない。
自分の存在が友を死に追いやらぬように、誰にも知られなければそれでいい。
―…ジェマの事は気に入っているからな。
自分達を”化け物”扱いする他民族は大嫌いだ。
だが、ジェマは違った。同族以外で彼を一人の人間として扱ってくれる。
タスマニカで生まれ育ったジェマにとって、血統者は”悪魔”以外の何者でもないのに。
――変わった、面白い奴だ――
フフと、楽しげな笑みを零す。
ジェマの印象は、第一印象から何も変わらない。

待ち人の気を近くに感じ取り、木の枝から軽々と飛び降りる。
それなりの高さから飛び降りたにも拘らず、クロウは何事もなかったかのように軽やかな足取りでジェマの元に向う。
ジェマの姿を見つけて、声をかけようとするが寸前で止める。
張り詰めた緊張と落胆を帯びた気に、思惑深気にクロウが目を眇める。
何か、重大な事が起きたのは一目で分った。
―おまけに顔に出ているんじゃ、只人でもわかるよな。
酷く顔を曇らせたジェマに、クロウが怪訝そうに近付く。
「どうした?」
「先程緊急通信が入った。 ヴァンドール帝国の四天王の一人が行方不明になったそうだ」
「誰? まさか…」
血の気をなくしたクロウに、ジェマが首を横に振る。
「…ダンテだ。 状況から見て、帝国側は死亡したと見なしている。 但し、死体はまだ見つかっていない」
淡々とした声音でジェマが告げた。
その答えを聞いて、”彼”が死んだわけでないと知り、僅かに安堵する。
どうせなら呪術師が死んでくれればよかったものをと心の中で忌々しく呟いた。

ダンテ。
中々の人格者で、優れた指導力と四天王として帝国を守れる実力を持った将軍。そしてジェマが敵ながら一人の軍人として敬意を払っていた男でもある。
威風堂々とした体躯。力強い明朗な声。
――戦士は常に敵を敬え――
唐突に男の言葉と姿が、脳裏に過る。
―あぁ。 あいつ、死んだのか。
”仕事”で何度か会った事のある人物。
心の中の一部が爪立てられた痛みが走るが、それは一瞬だけ。
帝国のある東の方角に向き直り、黙祷を下げた後にすぐに意識を切り替えて、ジェマに視線を向ける。
「それで落ち込んでいるんだろう?」
「まさか。帝国の柱の一つが消えたのだぞ。 共和国にとってこれ以上の朗報はあるまい」
「国としてはね。 でもジェマ個人としてはどうなんだよ?」
クロウが射抜くようにジェマの目を見つめる。
心の奥底に隠された本位をあぶりだそうとする視線に、ジェマが言葉に詰まった。
「………やれやれ。お前達には隠し事は出来ないな」
「あんたが分り安すぎるんだよ。 表情にも落胆の色が出ていたし、とても政には向かないね」
皮肉めいた笑みだが、その声音は優しい。
ジェマが苦笑して、同意するようにクロウの肩を軽く叩く。
「そうだな。 なるべく気をつけよう」

「クロウ。 一度、共和国に戻る」
ジェマが真っ直ぐクロウを見つめて、重々しく口を開く。
「今のうちに覚悟しておけ」
クロウが瞠目した後、口角を上げる。
「覚悟するのは、ジェマの方だろ」
にやりと、意味ありげにクロウの瞳が光る。
「…フッ、そうだな」
ジェマが静かに目を閉じる。



言い訳
ジェマ→ルカ前提です。
クロウ(crow)=烏です。
最初にクロウが使っていた術は影潜りです。

タスマニカでは血統者の事は完全に”悪魔”であって、”人間”とすら考えていません。ヴァンドールだと、”異能を持つ民族”という程度です。
2のタスマニカではシークは、捕まったら火炙りという危険極まりない敵地で、全力で戦う事を避けて、力を温存して逃げた。

色々とキツイ事を考えているクロウですが、年相応の大人の恋愛をしろよとか、迫害されないために色々やる事あるのに、逃げてばかりでどうするんだ?という思いからです。


2011/8/31 小説へ移行
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