未完

DB パラレル 未完 『螺旋』3-6

 ←『短文集』 8 →DB パラレル 未完 『螺旋』3-断章
――隊長室。
机の前に立たされた悟空とクリリンがいつになく緊張の面持ちを浮かべて、悟飯の顔色を伺う。
疚しいことなどないが、上司の纏う空気が二人を頑なにさせていた。
やがて悟飯が重い口を開く。
「悟空、クリリン。 スーベニアのことは悟天に任せて、お前達には別の仕事に就いてもらう」
「ちょっと待て! オラは牛魔王邸の」
「その事件はA級の賞金首が関わっているんだぞ。 悟空、お前には荷の重すぎる仕事だ」
悟空の言葉を途中で覆い被せる形で悟飯が続ける。
「そんなことはねぇ!!」
悟空が抗議の声を荒げて、悟飯を睨みつける。
怒りの込められた炎のような悟空の眼差し。冷ややかに相手を射抜く悟飯の眼差し。
一触触発の空気が流れる前に、クリリンが慌てて悟空を庇う形で、二人の間に割ってはいる。
「それで、新しい仕事ってのは何ですか?」
「念のために尋ねるが、この数ヶ月間惑星全土で誘拐事件が多発している事は知っているか?」
悟空が訝しげに首を傾げるが、クリリンは力強く頷く。
悟飯が呆れと軽蔑の眼差しで悟空を一瞥した後、無視する形で続ける。
「今までは他の都市との合同で捜査を続けていたが、政府要人殺人事件に次いで牛魔王邸の大量殺戮事件の捜査で誘拐事件にまわせる人員が少なくなったんだ」
憂鬱な気持ちを吐き出すように深々と溜息を吐く。
「俺としては龍球都市で起きた事件に専念したいところだが、捜査員を出さなければ他の地域との関係が危うくなる。 だからお前達を含めた十数人にはそちらの捜査にいってもらう」
「それって……ただの厄介払いじゃねぇか」
「厄介払いだって? これは他の地域から選出された者達と間近で接せられるいい機会なんだぞ。 お前にとっていい経験になればこそ、損にはならないさ」
完璧ともいえる笑顔を浮かべて、悟空の訴えを退けた。


拗ねた様子で歩く後姿に憐憫を覚えて、仏心が湧き上がってくる。
「悟空。誘拐事件について教えてやるよ」
「別にいい」
素っ気無く返されるが、クリリンは気にせずに早足で歩いて悟空の前まで来る。
「そういうわけにはいかないさ。 捜査員となるお前が事件の事を何にも知らないとはなしにならないからな」
悟空が渋々立ち止まりクリリンを見下ろすと、クリリンが足を止める。
「誘拐事件が起きたのは半年前。 正確には”事件性がある”と認定されてからであって、本当はそれ以前の失踪事件やら行方不明者の何割かは関わっているって話だ」


「大規模な組織による犯行だといわれているが、正確なところはわからない。 ただ個人犯とは考えられないってだけだ。
反抗の規模は惑星全土で、数日かけて10~50人単位の人間を誘拐し、一箇所に纏めてどこかに連れ去るのが犯行の手口だ。
何度か実行犯を捕らえたが、そいつらは全員末端で上に繋がる情報は全く持っていなかった。
捜査員が実行犯を追跡して受け渡し場所に向かった事もあるが、黒幕に繋がる奴が捜査員に勘付いたんだろう。 現場で原因不明の大爆発が起きて実行犯や浚われた人間、捜査員が全員死亡という大惨事になった事もある。
こんな手口から、この事件の別名は「蜥蜴の尻尾」と呼ばれているんだ」
「蜥蜴の尻尾?」
「ホラ、蜥蜴って自分の身に危険が迫れば尻尾を切り離して、本体は逃げるだろ。 そこからきているらしいぜ」
「フーン……」
悟空の薄い反応に不安を覚える。
だが事件の詳細は新しい班に組み込まれるまでに調べればいいのだし、最低限知っておかなければならないことは話したから問題ないと思い直した。


「それにしても……数年前まではよく死体がなくなっていたらしいけど、今度は生きた人間か。 全く嫌になるぜ」
「死体? そんな事件聞いたことねぇぞ」
「え?あ、あー………。悟空、お前の知らない事件だよ」
クリリンが一瞬動揺するが、すぐにとぼける。
あからさまな態度に悟空が疑惑の視線を向ける。
―怪しい。
事件の事を聞かれて動揺したことなど一回もなく、普段なら文句を言いながらも事件について何かしら教えてくれた。
―何か隠してんな。
「クリリン。おめぇ、何を隠してんだ?」
「べ、別に何も隠しちゃいないぜ」
宙に目を泳がせて悟空の追求を逃れる。
――言えるわけなかった。
昔、全国の病院で遺体が相次いで紛失する事件が多発し、病院は騒動を恐れて隠蔽のために人形や棺の中に詰め物を入れて誤魔化していた。
クリリンとて遺族の気持ちを踏みにじる犯人と、病院が許せなかった。
いつもなら真っ先に悟飯に報告するところだが、今回は事情が違った。
それを教えてくれたのが、彼がほのかな好意を寄せるハチだった。
病院の不祥事を告発したとなれば、彼女の病院内での立場がなくなる。例え別の病院に移ろうにも雇ってもらえない可能性が高い。
自分の行動のせいで彼女が不幸になれば、警邏隊員としてやっていけなくなる。
だからこそ、何も言えなかった。
一向に解れぬクリリンの頑なな様子に、悟空が追求を止める。

海沿いの、人の気配の無い寂れた倉庫外の一角。
一人の人間が埠頭に立ち海を眺めていた。
年の頃は十代後半の細身の少年。目深の帽子を被り、艶やかな黒髪を肩上で綺麗に切り揃えている。
僅かに見える顔立ちから、少年の容貌が整っていることが分かる。

少年の後ろに一台の大型トラックが止まる。
けたたましいクラクションの音に少年が振り返り、運転手を見上げる。
荒んだ目つきをした中年の運転手がライトを何回か点灯させて”合図”を行う。
待っていた人物の到着に少年が口角をわずかに上げて帽子を外す。
隠されていた素顔は美少年と呼ぶに相応しかった。その端整な顔立ちは、町を歩けば人々の視線を釘付けにするだろう。
どこか冷ややかな、切れ長のアイスブルーの目が印象的な少年。


「積荷は?」
「契約どおりの数を運んできたぜ」
「ヘェー、よくこんな短期間にそれだけの数を持ってこられたな」
軽い調子で話しながら、トラックの扉を開けて積荷を確認する。
中にある”荷物”に口角を歪める。
「………よし、十分だ」
少年が小切手に手早く数字を書き込み、無造作に手渡す。
「約束の報酬だ」
小切手に書き込まれた数字に、男が色めき立つ。
「では、今後も長いお付き合いを」
厭らしい笑みを浮かべて、頭を下げた運転手が、予め用意されていた別の車に向かっていく。
蟹股で歩いていく運転手の後姿を、少年が見送る。
「…………」

足元に転がる無惨な死体を無機質に一瞥して、積荷を載せたトラックへと向かう。
流しっぱなしにしている携帯ラジオの音楽に合わせて、軽やかに口笛を吹き始める。
音楽が流れ終わり、別の番組がラジオから流れ始めた頃に、少年が懐から掌よりも小さい長方形の鉄箱を手に取る。
「鼠につけられるような奴は必要ないな」
何の躊躇いもない動きで、スイッチを押す。

その日のニュースでは、ある繁華街で起きた爆発事件が放送された。

スポンサーサイト


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ
総もくじ  3kaku_s_L.png ドラゴンボール
総もくじ  3kaku_s_L.png 火星物語
総もくじ  3kaku_s_L.png 聖剣伝説
もくじ  3kaku_s_L.png その他
もくじ  3kaku_s_L.png 未完
もくじ  3kaku_s_L.png 考察もどき
もくじ  3kaku_s_L.png 短文
もくじ  3kaku_s_L.png 裏部屋
  • 【『短文集』 8】へ
  • 【DB パラレル 未完 『螺旋』3-断章】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【『短文集』 8】へ
  • 【DB パラレル 未完 『螺旋』3-断章】へ