未完

DB パラレル 未完 『螺旋』3-断章

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悟天とトランクスとラディッツの話です。











俺とトランクスは無二の親友だったが、初対面の印象は最悪だった。
当時の俺にとって特定の人間以外は全て敵だったから、彼らの一家も警戒した。
警戒と言っても兄の後ろに隠れて、ただ睨んでいただけだから。今から思えば可愛いものだ。
そんな態度がトランクスの癪に障ったのだろう。
彼からすれば兄を亡くして間もない時期に、”兄”にべったりと甘える同族の少年ほど腹立たしいものはなかったに違いない。
トランクスは俺を兄から引き離すと、頬を勢いよく殴り飛ばした。
「弱虫!! いい年した奴が見苦しく兄の後ろに隠れるなんて、恥を知れ!!」
まだ6歳だったのに、凄まじい剣幕で怒鳴りつけた。
その後は当然の如く激しい意争いの末に、取っ組み合いの大喧嘩。
けれど初めて本気を出し合えた喧嘩で、すぐに本来の目的も忘れて夢中に楽しんだ。それはトランクスも同じで、暗く沈んでいた目が爛々と輝いていた。
戦うサイヤ人は常とは比べ物ならないほど魅力的になると言う言葉を、初めて実感した瞬間だった。
それ以来、俺達は蟠りもなく打ち解けて、お互いに唯一無二の親友になった。

出会い頭の喧嘩以降、俺達はよく喧嘩した。
どれも些細な理由によるものだったが、俺は嬉しかった。
だって喧嘩は相手がいて、意思疎通が出来て初めてできるものだから。
今まで俺には喧嘩できる相手も、意思を主張することも出来なかったから。
いつも喧嘩するけど、すぐに仲直りする。それが俺達にとっての”日常”だった。
そんな俺達だけど、一度だけ修復困難な亀裂が生じたことがある。
その切欠は本当に些細なもので、確か兄弟のことについてだった。

「お前に兄ちゃんを亡くした俺の気持ちなんか、わかるわけがない!!」
トランクスが悟天の頬を殴り飛ばし、目に涙を溜めて、勢いよく倒れこんだ悟天に悲痛な声を上げる。
突如態度を豹変させた親友に、悟天が言葉を失い呆けたように親友の顔を見上げた。
だがトランクスは既に悟天の姿は眼中になく、背を向けていた。
「トランクス君!!」
走り去るトランクスの後姿に、悟天が叫ぶ。
いつもなら振り返って、名前を呼んでくれる。
だがまるで悟天は存在しないのだといわんばかりに無視されて、悟天が言い知れない不安に駆られる。
自分の身体を抱え込むように肩を抱き、座り込む。

先程のトランクスの顔が脳裏にこびりついていた。
泣くのを必死に堪えるが、心の中では亡き輪巻いている顔。
その顔を悟天は知っていた。
時々鏡で見る自分の顔であり、悟飯が一人きりの時に見せる顔だった。

もし悟飯が病で亡くなった事を想像してみるが、出来なかった。
そんな事考えられない。
思い浮かべただけでも、自分を構成するすべてが一気に跡形もなく崩れ去る感覚が全身を襲う。
トランクスも相した気持ちを抱いているのだろうか?
でも……。
そこまで考えて、重く首を横に振る。
幾ら考えてもこればかりはわからない。
―僕はただ、疑問を口にしただけなのに……どうして、トランクス君はあそこまで怒るんだよ?
その答えは、見つからなかった。

幾ら考えてもどうしても答えが見つかなかったから、叔父さんの所に行ったんだ。
C.C一家と共に過ごし、一緒に引っ越してきた父の弟。
何かと優しく面倒を見てくれるから、叔父の所には行きやすかった。
トランクスと同じく兄を亡くした叔父なら、俺がどうしても分からない答えを教えてくれると期待して、尋ねに行った。

「ねぇ、叔父さん。 トランクス君のお兄ちゃんって……どんな人だったの?」
「…ターブル様は、それはとても強くて、弟思いの優しいお方だったぞ」
在りし日のC.C家の光景が脳裏に鮮明に蘇る。
ベジータが心の底から笑ったのは、あの時期だけだった。
それらはもう失われて、永遠に取り戻せないもの。
思い出は優しく、温かい。それが更に悲しみと辛さを煽っていく。
目頭が熱くなり、思わず顔を覆う。


「トランクス君と、そのお兄ちゃんって仲悪かったの?」
「まさか。 幼君はお兄ちゃん子で、雛のようにターブル様の後を追っていたぞ」
ラディッツの答えを聞いて、ますますわからなくなった。
―だったらどうしてだろう?
「悟天?」
釈然としない悟天の面持ちに、ラディッツが訝しげに声をかける。
叔父の声に、思案を途中で切り上げて彼の顔を見上げる。
「お前、こんな事を言い出すなんて……どうしたんだ? 幼君と何かあったのか?」
気遣い、心配する気持ちを色濃く宿した瞳に、悟天が僅かに戸惑う。
そんな目を向けてくれるのは、今までの彼の人生においては数えるほどしかいなかったから。


「…………トランクス君。お兄ちゃんを亡くして、どう思ったんだろう?」
暗く小さく呟かれた甥の言葉。
ラディッツの脳裏に、ターブルを亡くした前後の記憶が蘇る。
涙が枯れ果ててもずっと泣き続けたトランクス。今でも隠れて泣いているのを知っている。
本人は気づかれていないと思っているようだが、家族みんなはその事を知っていた。


「………自分の立場に置き換えて考えてみたらどうだ?」
「わからないよ」
即答で返す悟天に呆れるが、次に続いた言葉に息を呑む。
「だって、兄ちゃんが死んだら僕生きてられないもん。 すぐ後を追うよ」
平然と答えた悟天に言葉を失い、彼を凝視する。
―此処まで依存しているとは……
物心着く前から過酷な迫害に遭い続けていたゆえか、悟天は悟飯とピッコロに強く依存と執着を抱いている。
C.C一家が引っ越してきてからは、依存度合いは少しずつ下がっているものの、同年代の子供に比べたら異常ともいえるくらい執着しているのは変わらない。
「でも、トランクス君と叔父さんはお兄ちゃんを亡くしても生きていえるじゃないか。 だから僕とは違うと思って聞いているんだよ」
「……違わねぇよ。 同じ兄を思う気持ちには変わりねぇ」
「じゃあ、どうして?」
無邪気に問いかける甥に、上手く答えられる自信がなかった。
今までの経緯と悟天の言動から察するに、悟天にとって悟飯は「世界そのもの」だ。悟飯こそが世界のすべてであり、中心。だから悟飯のいない世界が想像できないし、自分の存在する理由を見出せなくなる。
だからこそ、悟飯の後を追って死ぬという事を平然といえるし、もしものときは躊躇いなく実行に移すだろう。
トランクスにとってターブルは”大事な兄”だ。尊敬し、親愛の情を強すぎるくらい抱いていても、悟天のように兄の存在に執着し、依存しているわけではなかった。そして、それはラディッツも同じだ。
だが、悟天にそのあたりのことが上手く通じるとは思えなかった。
「……後を追えば、残された者が悲しむだけだろうが」


「お前らにも、もう一人兄貴がいたんだぜ」
「嘘だ。 もしそうなら、ピッコロさんがとっくに話してくれているもん」
「そりゃ無理だ。 なんたって母親の違う兄なんだからよ」
悟天が目を丸くしてラディッツを見上げる。
牛魔王は、悟天達の父親のバーダックと母親は仲睦まじかったと教えてくれた。
度重なる迫害に死を選びたくなったときにも、お前たちは愛されて生まれたのだから、その事を決して忘れるんじゃないぞと優しく諭してくれた。
なのに……
「……お父さん、浮気していたの?」
「浮気じゃねぇよ。 その頃はまだお前らの母親と出会っちゃいなかったんだぞ」
「どういうこと?」
「昔、サイヤ人狩りが行われる前には、兄貴には妻がいたんだが、その前妻との間に子供がいたんだよ。
サイヤ人狩りが始まる前に亡くなったそうだが……今生きていたら23歳の子供がな」

亡くなった子供の年齢を今も数えている叔父さんは、その子のことが忘れられなかったのだろう。
兄だというけれど、正直そんな思いを抱いたことは一度だってない。
俺にとっての兄は、悟飯ただ一人。幾ら血が繋がっているとはいえ、一緒に暮らしたこともない者を兄弟だとは、思えなかった。
俺と兄ちゃん。過酷な生活を一緒に乗り越えたお互いだけが”兄弟”だという思いは共通して持っていた。

「フーン……。そうなんだ。
さほど関心の宿らない声で呟く。
「名前、知りたいか?」
身を乗り出して尋ねてきた叔父に、大雑把に頭を横に振るう。
「まぁ、そういうな。 たった三人の兄弟じゃないか」
「父親が同じだけで、会った事のない人なんかを”兄弟とは思えないから別にいいよ。
それに死んでいるんだから、知ったって意味ないじゃない」
「それでも、兄弟は兄弟だぞ」
冷ややかに答えた悟天の目をしっかりと見つめて力強く言うと、彼の頭を優しく撫でて慈愛の篭った笑みを浮かべる。
その眼差しの先にあるのは悟天と、失われた兄。
「その子供の名前は、アスラと言ったんだ」

聞いてもいないのに、知らない”兄”の名前まで教える叔父さんは律儀だと思った。
後日談として、トランクス君との喧嘩だけど、この後誠意を込めて必死に謝って何とか許してもらえた。



言い訳
アスパラガス→アスラです。
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