「聖剣伝説」
聖剣伝説3(HOM)

聖剣伝説3 小説 『邂逅』 デュランside2

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注意
書き溜めている長編の一部を使った話です。
ジャドでの仲間達の出会いを、デュランの視点のみで進めます。(長編は5人分の視点で繰り広げられます)
序盤だけですので、ケヴィンとホークアイとの出会いだけになります。











意識を取り戻し、緩慢な動きで目を瞬かせる。
暗闇に満たされた視界が次第に明るくなり、色と形を成していく。
彼の目に映るのは人型に近い不気味な木目のある古い天井。
思わず身体を起こそうとするが、腹に痛みが走り、顔を歪ませて呻き声を上げる。
まだ動ける状態ないと判断して、デュランが不本意ながら再びベッドに横たわる。
少しずつ痛みの波が退いていく中、先程までの混乱も静まって、考える余裕が生まれた。
―俺、何でこんな所にいるんだ…?
先程、町人に対して理不尽な因縁を引っ掛けていた獣人兵相手に喧嘩を売った。
例えどんな相手であれ、フォルセナ一の剣士である自分なら存分に戦えると思っていたし、戦闘能力に秀でた獣人といえど一対一ならこちらに分があると、今考えれば無謀な考えを持っていた。
しかし結果は彼の予想を大きく裏切り、呆気なく負けてしまった。
プライドを傷つけ、自らの無力さを突きつける結果に終わった。
―クソッ!
脳裏に浮かんだのは忌々しき記憶。魔法で彼を翻弄し、赤いマントを翻して悠然と消えた魔導師の姿。
憎らしい相手にデュランが苛立たしげに舌打ちを零す。
紅蓮の魔導師だけでなく、獣人兵にも惨敗してしまった。
―俺は、フォルセナ一の剣士じゃなかったのか!?
耐え難い屈辱が身を焦がす。
若手の中では抜きん出た強さを誇っていた。自分ならばフォルセナ一の剣士になれるのだと、強い信念があった。なのに魔法の前に手も足も出ず、獣人兵にも赤子の手を捻るかのように負けてしまった。
デュランが額に手を当てて、目を見据える。
指の隙間から天井を眺める。
その視線の先にあるのは、己の強さを純粋に過信していた頃の姿。
―……所詮、俺は井の中の蛙だったってことか……。
今まで視野に入れていたのは、フォルセナ一国のみ。
世界は途方もなく広い。その中には自分とは比較にならぬ猛者が数え切れぬほどいるに違いない。
そんな単純なことにも気付かない程、今までの自分は驕りきっていた。
―マジかよ……。
深々と息を吐く。

軽いノック音と共に、扉の向こうから声がかけられる。
―誰だ?
デュランが顔を上げて扉に視線を向けるのと同時に、部屋の主の了解なしに扉が開く。
侵入者の姿を認めた瞬間、思わず息を呑んだ。
そこにいたのは見る者を釘付けにする端正な顔立ちの青年。
砂漠の民特有の褐色の肌。腰まで届く艶やかな青紫の髪。透き通る鋭い金の瞳。
同じ男とは信じられない類稀な美貌を前に、デュランが言葉を忘れて青年の姿を見つめる。
青年は人好きのする明るい笑顔を浮かべながら、デュランに近付く。
「よかった。気がついたみたいだな」
聞く者を虜にする、低く美しい声。
デュランが少しの間を置いてから我に返り、周囲を見回した後、青年に視線を戻す。
「…ここは何処だ? お前は?」
強い警戒の色を宿した目で青年を睨みつけながら、問う。
「ここは宿屋で、俺が借りている部屋だよ」
不躾な態度にも、青年は気分を害することなく愛想よく答える。
その声は先程より幾分か高く、意識して声を買えているようだった。
「……お前が運んだのか?」
「あぁ。 町の連中は君を路上に放置したままだったんだ。 ……本当に薄情な連中だぜ」
最後の言葉吐き捨てる口調だった。
今のジャドで獣人に逆らった奴と関わりたくないと考えるのは当然。むしろデュランを助けた青年の行動が異常だった。
あのまま放置されていたらどうなっていたか…。
そこまで考えて、全身の血の気が引く思いだった。
「……そうか、ありがとうよ。 礼を言うぜ」
珍しく頭を下げて、目の前の青年に感謝と謝罪の意図を伝える。
「どういたしまして」
青年が朗らかに笑う。
明るい笑顔に、ささくれていたデュランの心がほぐされる。

デュランがゆっくりと起き上がり、青年の目を真っ直ぐ見つめる。
「なぁ、お前。……なんでわざわざ俺を助けたんだ?
この街にいる間は厄介ごとを極力避けるもんだろ」
冒険者達が長期間押し込められ、いつ略奪の徒に変わるか分らぬ殺伐とした状況だ。下手に目立つ行為をすれば、自分の首を絞めかねない。
「大した理由はないさ。
今のジャドで獣人の少年を助けた勇気と心意気への敬意だよ」
「は?」
間抜け面を晒すが、すぐに気を取り直して顔を引き締めた。
「さっき食堂でヤバイ連中に絡まれた獣人の少年を助けただろう?
あの空気の中、我が身を省みずに少年を助けに入り、窓から駆け落ちするなんて普通は出来ないよ」
「駆け落ちじゃねぇ!!」
芝居がかった声音と大仰な動作で語られた言葉に、デュランが眦を吊り上げ、語気を荒げて勢いよく噛み付く。
「物の例えだよ。 冗談も通じないのか、君は?」
青年がクツクツと笑い、脱力感がデュランの身体を包んでいく。
本来から顔面に一発食らわせるが、その気力も湧かない。何をしても効果がないというか、意味のないような…そんな感じだ。
ただ何も言わずに引き下がることなど彼には出来なかった。
「………言い方ってもんがあるだろ」
それだけはしっかりと釘を刺す。
―それにしても……
まるで見てきたかのような話し振りにデュランが青年の顔を観察する。
―こんな奴いたか?
これほどの美男子ならば嫌でも記憶に残るはずだが、青年に関する記憶は欠片もなかった。
混雑した店の中では死角など幾らでもあるので、デュランが見なかっただけで彼はあの場にいたのかもしれない。
しかし……
「……お前、本当はあの場にいなかっただろ」
力強く、断言する。
理由などない。ただの野生の勘だが、デュランは確信していた。
同僚達からは根拠のない野生の勘を持ち出すくらいなら証拠を出せと言われていたものの、デュランは己の勘を何よりも信じていた。
「何でお前……」
それ以上言葉を紡げなかった。
彼の纏っていた軽い空気が霧散して、周囲の気温が下がるような氷の眼差しを向けた。
それは闇の世界に生きる者が持ちうるもの。
今まで経験した事のない、凍えるほどの冷酷な空気にデュランの全身が総毛立ち、今すぐこの場から逃げ出したくなるも、恐れおののいて指一本すら動かせなかった。
冷や汗が顎に流れ落ち、唾を飲む。
一秒一秒が異様に流れる中、何処からか電子音が響いた。
電子音は青年の纏う空気を払拭し、部屋の時間を動かした。
―なんだ?
恐怖から解放されたデュランが、何処から聞こえてくるのかと息を殺しながら周囲を見回した後、音の源である青年に向き直る。
青年が懐から古い懐中時計を手に取っていた。
大切に扱っているのだろう。年月の重みを感じさせる割には傷一つなく、よく磨かれており、綺麗だった。
青年が懐中時計の側面を少し弄ると、音はすぐに鳴り止んだ。
時間を見て青年の柳眉が寄り、手早く部屋の隅に置かれていた荷物を纏め始める。
「おい、お前。何処に行くんだ?」
ドアノブに手をかけていた青年が振り返って、笑う。
「俺はもう行くから。明日までこの部屋を使っていってよ」
「お前はどうするんだ?」
青年はデュランの問いに答えることなく、扉の向こうに消えた。
軽やかに階段を駆け下りる音が聞こえてくる。
それを見送り、唖然と閉ざされた扉を見つめる。
「……なんなんだ、あいつは?」
呆然と呟いた声が、虚しく狭い室内に響いた。





2011/8/26 小説へ移行
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