「火星物語」
火星物語 小説

火星物語 小説 『最後の晩餐』

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注意
アショカの首都近辺に捏造が入っています。
オリジナル要素があります。












荒野の最果てに存在する、無数の巨石や岩石が幾重にも折り重なる地帯。東に広がる大砂漠と荒野との境界線に彼らはいた。
フォボスが巨石の上に登り、それまで辿ってきた道筋を感慨深く眺める。
遥か地平線まで続く広大な荒野は、紅蓮に燃える夕日を受けて、昼間の顔から夜の顔へと少しずつ変貌を遂げていた。
自分の時代では絶対に見ることの出来ぬ、その雄大な光景に思わず感嘆して見惚れる。
涼しく、爽やかな風が駆け抜けていく。
フォボスが風を全身に受けるべく、大きく両手を広げた。
自分の時代より汚染されていない心地よい風に、我知らずと口元を綻ばせた。
「おーい、フォボス。そろそろ準備を始めるから、手伝ってくれないか?」
仲間に呼ばれて、フォボスがそちらを見下ろした。
「わかった!」
声と同時に、十メートル近くある巨石の上から軽々と飛び降りた。
それなりの高さから飛び降りたにも関わらず、少年は痛がる素振りはなく、軽やかな足取りで仲間達の元に向かっていった。

フォボス達が煌々と燃え盛る焚き火を囲み、食事をとる。
ここにいる全員は全く料理が出来ないのでフォボスが現代から持ってきた保存食と、ソドムで買った携帯食が彼らの食事だ。
フォボスが缶詰の中身を機械的に口に運びながら、そっとクエスとサスケに気付かれぬように彼らを盗み見る。
アショカが近付くにつれて、二人からは笑顔が消えて何をするにしても重々しい空気が拭えなかった。
―……仕方ないよね。 たった三人で一国相手にゲリラ戦をして、リュートを倒そうっていうんだから……。
不安に思わないほうが、どうかしている、と。心の中で弱音を漏らした。
失敗すれば拷問の末に処刑されるだろうし、クエスはもっと酷い目に遭わされる。
以前ハーネスの国境近くでブラパン党の協力を得て非合法に手に入れた文献によると、リュートはクエスを女として手に入れようとしたことがあったらしい。
その馬鹿げた内容の文献は手に入れた直後に焼き払った。
とても信じられずに今回この時代に来た際、失礼だと分かっていてもその事を確認すると―サスケは掴みかからんばかりに怒っていたが―それは未遂に終わった。それ以後のリュートの手による者の接触といえば、暗殺者ぐらいだというクエスの答えが返ってきた。
本当は思い出すだけでも辛いのに、クエスは最後まで平静を装っていた。けれど微かに震えた声が、今でも深い傷になっていることを証明していた。
……だから深く考えずに、彼女の傷を抉り出した事は、僕にとっても生涯忘れられない傷だ。
そこまで考えてきつく瞼を閉じて、頭を振るった。
思考を切り替えるために、夜空を見上げる。
しかし頭の中を駆け巡るのは、これからの戦いのことと、仲間達のことばかりだった。
強国アショカに乗り込むにしても、頼れるのは自分達の力のみという小細工なしの真っ向勝負だ。多少鍛えただけの普通の人間ならば確実に死ぬ無謀な手段だが、風使いである自分達はそうではない。
風使いが―僕は風の技も碌に知らない未熟者だが―三人もいれば、何とかなるだろうという楽観的な考えも僕にはあった。
―けれど、クエス達はどうだろう……?
それだけではすまないと知っていたから……。
考えれば考えるほど、マイナスループの深みに嵌っていってしまう。
これ以上深みに嵌れば飲み込まれてしまいそうで、慌てて振り払った。

二人に初めて出会ったのは数ヶ月前だというのに、随分と昔に思える。
初めてタイムスリップした時はとても不安で恐ろしかったが、彼らが気遣ってくれたのでわりと早くそれは霧散した。なぜ自分がこんな目に遭うのかという疑問に悩まされていたが、元の時代に戻るときは彼らと別れる事がとても寂しかった。その時には別れを惜しむほどに、打ち解けていたのだ。
クエスとサスケは過去での旅で未熟な僕を守ってくれて、戦う術を、力の制御と戦いの中を生き延びる術を教えてくれた。もし二人に出会わなかったら僕は…いや僕だけでなくセイラやタローボーも何処かで殺されていただろう。
―そうだ。 だからこそ、絶対に死なせたくないんだ。 二人は僕に未来をくれたから…。だから僕は明るい未来をあげたい。
戦いとは無縁の……自由で明るい未来を!
そのために、自分はこの時代に来ているのだとフォボスは根拠もない確信していた。しかし旅が進むに連れて確信は揺らぎ、不安が常に頭の片隅を占領した。
―そんなことはないと否定して欲しい。 そしたら、僕は未来を変えられるのに。
でも、面と向かって聞くのは恐ろしかった。
もし、肯定されてしまったら……僕は……。

顔を隠すように膝を折り曲げて、そっと気づかれぬように二人の顔を盗み見る。
歴史を変えなければ、近いうちに失われてしまう大切な人達。
―全ての決着をつける。
握り締める拳に力を篭めた。
―二人を生き延びさせるためには、アショカを…リュートを倒さなければならない。
血が滲むのではないかと思うほどの痛みを訴える拳に、更に力を篭めた。
―絶対に歴史を変えてみせるんだ。
僕には、それが出来る。
所詮この時代の人間ではないから、歴史の流れに左右されずに行動できる……筈だ。

「ねぇ。だんだんアショカの警備が厳しくなってきたけれど……近いのかな?」
重苦しい空気に耐え切れずにフォボスが顔を上げた。
この数日、必ずアショカ兵と遭遇してその場で戦うこともあった。
アショカ領域内は風封じが施されているため、風の力で纏めて倒せない。そのためか大挙して襲い掛かってくるのだ。
どうもアショカ兵は風使いは風さえ封じれば戦えないと勘違いしている節がある。しかし、効率は非常に悪くなるものの、風使いが風を使えないだけで非戦闘員に落ちぶれることはない。
僕達は、風の力だけに依存しているわけではないのだ。
兵士達は大して強くないので、あまり苦労はない。だが数が多すぎると体力よりも先に気力が落ちてくる。
今日の昼はそれまでの少数とは異なり、幾つもの中隊と遭遇してしまったため、返り血で全身血塗れになるくらい戦うはめになった。
血の臭いで気分が悪くなって、水浴びしたい衝動に駆られても、水のないこの時代ではそれも出来ない。
砂で汚れを落としたものの、陰鬱とした思いを何時間も抱えることになった。
「明日にはアショカに着くだろうぜ」
フォボスの問いかけにサスケが答える。
「明日…アショカに……」
ごくり、と唾液を嚥下する。
フォボスの時代ではもう存在しない宗教都市アショカ。
この時代では”アショカ教布教”の名の下に他国へ侵略を行い、残虐な行いをしている。
今まで文献でしか知らなかったが、この旅を通してアショカ軍の非道を目の当たりにした時には、憤怒と憎悪ではらわたが煮えくり返った。
―あんな事をするアショカを、絶対許せない。 ……絶対に!!
アショカを滅ぼすというのに、何の異論があろうか。

アショカは嘗てラブリーという芸術都市が栄えた場所だという。
長い歴史の間にラブリーに関する文献は失われていたので、600年前の世界で実際に行くまでは存在していたかどうかわからない幻の都市だった。
様々な商人達が行き通い、活気に溢れ、”芸術の都”と呼ぶに相応しい街並みで、今まで見たどんな都市よりも綺麗だった。
何故この都市がアショカへと変貌を遂げたのか?ラブリーに着いた当初は王女を探しつつも観光を楽しみながら、その疑問が頭の中を駆け回っていた。
しかし、それは意外な形で払拭された。
ラブリーにはアショカ神父なる人物がおり、それに改宗された人間達がいたのだ。
ああ、あの時神父を殺せば、クエスとサスケが死ぬこともなければ―絶対に死なせはしないけれど―アショカの侵略戦争で犠牲になる人だっていなくなっただろう。
あの時、歴史を変えるという大罪をアンサー達に気付かれないように、王女を捜す前にアショカ神父に会いたいと必死に平静を装って頼み込んだ。それまで王女様と連呼していたアンサーが若干顔を引き攣らせながらも、あっさり了承してくれたのは意外だったけれど、二人を従える形で教会へ向かった。
何故か中々教えてくれなかった教徒達から無理矢理情報を吐かせ、何故か必死に止めようとするアンサー達を振り払いながら、アショカ神父なる人物に対する敵意を更に膨らませていった。
様々な妨害を返り討ちにした末に漸く教会に着いたものの、扉は堅く閉ざされており厳重に幾つもの鍵が施されていた。
普通なら此処で諦めるが、風使いである僕にとってはこんなもの大した障害ではなく。
風の力で分厚い扉を吹き飛ばし、怯えて見苦しく逃げようとする神父を捕らえて、その頭目掛けてスパナを振り上げた時、教会前で待っていた筈のアンサーとポチの二人がかりで押さえつけられた。勿論、クエスやサスケを…アショカの犠牲となる人々を救うためにもここで引き下がれなかったが、アンサー達を傷つけるわけにもいかない。だから極力傷つけないように、拘束を振りほどこうと抵抗した。
だけど暴れる僕にポチのおならが炸裂して、意識を失い抵抗も出来なくなったその隙にアンサー達に掻っ攫われてしまった。
それからは僕が用を足しに行くときすらも視界から離れる事を許さないほどの、厳重な監視下に置かれた。
殺気だった目で襲ってくるアショカ教徒や誘拐犯の仲間達を返り討ちにしながらも王女の居場所を捜し当ててからは、あっという間に全てが終わり、神父の事を思い出したときには、もう元の時代に戻った後だった。
……ああ、あのときスパナを振り下ろしていればよかったと、今でも深く後悔している。でも、もう過ぎた事だから幾ら後悔しても手遅れだと、無理矢理開き直ることにしていた。

―クエスとサスケが生き延びられる時代を作る。それは全て明日に掛かっている。
―歴史上はリュートと相打ちになって死んでしまうが、そんなことは決してさせない。絶対に、助けてみせる!!
そのために今まで準備をしてきた。確実に二人を生き延びさせるために、自分が足手纏いにならないように。この時代にいる時は勿論、自分の時代にいる時だって、強くなるために血を吐くような特訓を行ってきた。
―……大丈夫。歴史では僕の存在はなかった。 だから、確実に助けられる。
異分子である自分の存在が、歴史を変える。
その可能性に、賭けたかった。
―……やれる。 僕が、二人を助けるんだ!
強固な決意を、更に堅く誓った。
フォボスから立ち込める押し殺された気配を、忍者としての鋭敏な感覚で読み取ったサスケが目を丸くして彼を見た。
「フォボス? どうしたんだ?」
「え?」
突然かけられた声に、フォボスが顔を上げた。
いつもと換わらないように見えるフォボスを観察していたサスケが少し黙った後に、口を開いた。
「……お前から、闘気に似た気迫を感じたんだが」
訝しむ声音にフォボスが驚きと共に、困惑する。
―もしかして、気づかれた?
額に冷や汗が流れて慣れて、緊張のあまり手に汗が滲んだ。
彼らのことだ。自分達のために歴史を変えようという大罪を犯すフォボスを許さないだろう。
「えーと……ほら、もう少しでアショカじゃないか。 だから、つい……」
上手く誤魔化さなければならないと焦って、動揺で空回らないように最後は言葉を濁した。
何処か釈然としなさそうにフォボスを見る視線に、目を逸らしたくなったがグッと堪えた。
やがてサスケは軽く笑って、フォボスの肩に手を置いた。
「今から気負っていちゃあ、体が保たねえぜ」
「……うん、そうだね」
笑って見せるも、それは何処か強張り無理に笑っている事を滲ませる笑みだった。
クエスが真剣な面持ちでフォボスを見つめる。
心の奥底に封じ込められた真意を炙り出そうとするまなざしに、フォボスが耐え切れずに視線を逸らした。
「フォボス……何か気がかりな事があるならば、僕達に話してくれないか?」
「え?」
「最近君は僕達の顔をろくに見ようとしないだろう」
「そんなことは……」
目を伏せて、顔を逸らす。
それが却ってクエス達を不審に思わせているのだと分かっていても、何事もなく平静を装うなんて器用な真似は出来なかった。
―……こんなに苦しむのなら、いっその事言ってしまおうか。
恐怖と期待を織り交ぜて、上目遣いで彼女達を見つめた。
「ねぇ。クエス、サスケ。 ……本当はどうしても聞きたいことがあるんだけど……いいかな?」
鼓動が激しく脈打ち、自分の心臓ではないようだった。
今すぐ何でもないと言って引き返したかったが、一度口に出した以上、それは出来ない。
どの道遅かれ早かれ、彼らの真意を知らなければならないのだ。
「何だ? 何でも聞いてみろよ」
サスケの自信に満ちた声に背中を押される形で、フォボスが重い口を開いた。
「アショカを倒した後はどうするんだ? 世界中を旅するといっても、それだけじゃ何も決まっていないようなものじゃないか……」
言い終えると同時にフォボスが暗い面持ちで顔を伏せた。
そのために、二人の瞳が陰りを帯びた事に気付かなかった。
「………もう”アロマ”はないんだから、帰ることもできないんだよ」
クエスとサスケが素早く視線を交し合った後に、サスケが困ったように頭を掻いた。
「そうだなぁ……。アショカを倒したら、まずソドムに行って宴会をするだろ。その後は……」
「何も……ないの?」
サスケの答えに納得できず、フォボスが恐る恐る尋ね返した。
「自由気ままに世界を巡ってみたいんだ。 目的も、その時々に決めればいい。そんな生活をしたい……と言う答えでは駄目か?」
「……そういうわけじゃないけど……」
クエスの答えにフォボスがゆっくりと頭振る。
言葉を濁らせながら、何かを言いたそうに二人を見るフォボスに、サスケが怪訝そうに尋ねる
「じゃ、何をそこまで悩んでるんだ?フォボス」
「……………」
「フォボス」
「……僕の気のせいかもしれないんだけれど……」
単刀直入に言うには恐ろしくて、前置きと共に覚悟を決めてから真っ直ぐ二人を見つめた。
「二人の行動を見ていると……まるでもうすぐ死ぬことがわかっていて、その覚悟を決めて行動しているように思えるんだ」
「なに、バカな事を言っているんだ。フォボス、そんなことを言うなんて君らしくないぞ!」
「そうだぜ、そんな冗談は言うもんじゃねえぞ!」
「………気を悪くしたなら謝るよ。でも、身辺整理するところなんか……どうしてもそう思えるんだ」
風の谷やアロマの今後の事を考えての処遇。
退路を断ち、自らの居場所をなくしてまで、多くの人々を危険から回避させる。
リビドーやカンガリアン、ソドムなどの都市をアショカから解放する。
侵略されているすべての国々のために、打倒アショカのために。今までの守りの戦いではなく、攻めの戦いに乗り出したと言っていた。
国を捨てる覚悟をして、戦いに身を投じた。
今回の旅は、まるで……。
「……怖いんだ。 クエスとサスケが……」
死ぬのが、と続けられるはずだった言葉を喉元で封じ込めた。
実際に言葉として出してしまえば、それが事実になってしまう恐怖があった。

クエスとサスケに未来を与える。身分も関係なく、自由に世界を巡れる、そんな夢のような未来を。
未来を知る自分にはそれが出来るとフォボスは信じている。いや、信じ込もうとしている。
しかし、どうしても不安要素は心の中に酷くこびりつき剥がれなかった。
クエスとサスケは本当に生きようとしているのか?
例えフォボスが一生懸命奔走しても、肝心の二人に生き抜こうという意思がなけれそれはば叶わないのだ。
「ねぇ、クエス、サスケ。 ……本当に、生きようとしている?
……………アショカと心中するつもりじゃないよね?」
フォボスの問いに答えるのは、強く吹き荒ぶ風のみだった。



言い訳
…フォボスって二人の行動を見て、一度くらいはあれ?と思っただろうから(何も気づかずにいたとは、絶対に言わせないし、そんなにフォボスは鈍くないと信じている)その疑問をぶつけさせたらこういう感じだろう。
多分ゲーム中では疑問に思いながらも、気のせいだ、と封じ込めていたんだと思う。(23話の最初で希望を持たせて、一気に奈落の底に落とされるけれど……)


フォボスがアンサー達にとめられたのは、かなりヤバイ目をして、ただならぬオーラを漂わせていたからです。ちなみに彼らはアショカ教に纏わる事情は何も知りませんでした。
ラブリーではきっと真面目に王女を探していたのはアンサーだけで、他の二人は観光も楽しんでいたんじゃないかな?(何たって芸術の都ですし)

2012/7/16 小説へ移行
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