未完

聖剣伝説3 未完 『夢夜』 2

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注意
六人分の話を書きますが、全体の繋がりはなく、それぞれ単独の話としてお読み下さい。
共通しているのは「夢」の話というだけです。

紅蓮・アンジェラ。デュラン・アンジェラの話です。(紅蓮・アンジェラ要素がかなり強いです)
紅蓮の魔導師の名前ですが、オフィシャルがないので勝手につけています(ブライアンではありません)











アンジェラ編~『雪降る中で』~

こんな夢を見た

どんよりと暑い雪雲が空を覆い尽くし、見渡す限りの銀世界が広がっていた。
その中を二人の男女が並んで歩く。
一人は特徴的な長い耳と艶やかな紫の髪を持つ麗しい美貌の少女。もう一人は金髪碧眼の秀麗な面立ちの青年だった。
少女はコートを羽織っているだけだが、青年は荷物を背負い、完全防備の装いを質得た。
雪の中、道なき道を歩く二人の吐く息は白かった。

「……本当に行くのね」
静かな空間の中。
落ち着いた少女の声が、小さく紡がれた。
それは本当に小さな声で、雪の静寂に包まれていなければ隣を歩く青年にすら聞こえなかっただろう。
青年が足を止めて、自分より頭一つ分離れた少女の顔を見下ろす。
「ああ。 ……このままでは俺は何も変わらない。
何か行動を起こさないと、何も始まらないだろう」
「……だからって、国を出ることはないでしょう!」
自然と責める口調になるが、再び歩き出した青年は頓着しなかった。
アンジェラが頬を膨らませて抗議するも、それは青年にとっては心地よいそよ風。
軽い笑い声と共に受け流された。

「……何も今日でなくてもいいじゃない」
唇を尖らせて青年を見た後に、空を仰いで、更に厚みを増した雪雲を目にする。
「今にも吹雪が吹きそうよ」
「残念だが」
強い意思の篭められた声に、アンジェラが青年の顔を見上げる。
「今日出なければ船に間に合わなくなる。 ……この船を逃せば、氷が溶けるまで待たねばならなくなる」
本来は雪の猛威が弱い春から秋に旅に出るべきで、冬に出るのは危険なのは承知している。
しかし、今の彼には半年待つ余裕はなかった。

「アンジェラ。もし、魔法が使えるようになって、アルテナに帰って来たら……」
青年が珍しく口を濁らせる。少し躊躇った後、意を決したように彼女の目をまっすぐ見つめた。
突如肩を掴まれたアンジェラが驚いて青年の顔を見上げる。
思いの丈を伝える真摯な眼差しを注がれて、次第に彼女の可愛らしい顔が赤く染まる。
「レン?」
「俺と……」
彼の言葉を覆い被せる形で強風が吹き、粉雪を舞い上がらせて、青年の声を掻き消す。
アンジェラが靡く髪を押さえて、風が吹きぬけた方向を見た後に視線を元に戻す。
「何、聞こえなかったわ」
「…………なんでもない!」
青年が憮然と答えて、マントを翻すと彼女に背を向ける。
突然の事にアンジェラが目を丸くするも、すぐに青年に追いすがった。
「ちょっと待ってよ! さっき何を言おうとしたの!?」
「……なるべく早く戻る。 そう言ったんだ」
青年が足を止め、振り返ることなく優しい声音を紡いだ。

「レン」
穏やかな慈愛の篭められた声に青年が振り返ると、アンジェラが名前に相応しい笑顔を浮かべてる。
「頑張ってね」
恋人を見送るときは泣き顔でなく、笑顔で。
二度と会えぬかも知れぬ相手に、血を吐く思いで渾身の笑顔を貼り付けた。
顔が歪んでいたかもしれないが、今までの中でも最高の笑顔だと確信していた。

大粒の雪が降ってきて、アンジェラが空を仰ぐ。
暗く、暗澹たる空。
男の行く先に、低く暗雲が垂れているような錯覚を覚えた。
それがまるで自分達の将来を象徴しているようで、全身に耐え難い悪寒が走った。

暖かい腕に抱かれる中、薄く目を開く。
真っ先に、鍛え抜かれた厚い胸板が目に入った。
それは愛しい夫のもの。アンジェラの騎士、デュラン。
力強い夫の温もりが、アンジェラの意識を夢の中から現実に引き戻す。
―……夢、か…。
もう十年以上昔の出来事。
あれから数年を経てアルテナに帰ってきた彼は、竜帝の手下になっていた。
―なんで今頃あんな夢を……?
寝ぼけた頭でぼんやりと考えを巡らせる。
当時は夢枕で度々泣いていたが、紅蓮の魔導師がアルテナに帰還して以来思い出すことはなかった。
今では懐かしい思い出として完全に吹っ切ていた、筈だ。
―未練? まさか!
ふと湧き出た考えを一蹴する。
今の彼女には愛する夫がいる。第一、彼が竜帝の下で行ったことは到底許せるものでない。

夢の内容を思い返していく。
――もし魔法が使えるようになったら、俺と……
その後の台詞はあの当時分からなかった。しかし今ではその続きの言葉はわかる。
――結婚してくれ――
そう、言いたかったのだろう。
彼の家柄はアルテナの由緒正しい上流貴族で、彼はその唯一の跡取りだった。
魔法を使えるようになれば、王女のアンジェラと結婚できる資格を得られる立場だったこその言葉。


部屋の隅に置かれている大人が入れるほどの古びた大きな時計の針は、既に日付を越していた。
「……そういうことね……」
今日は、彼の命日。

「……全く、相変わらず素直じゃないんだから」
フフフと懐かしそうに笑って、そっと下腹に手を当てる。
「三人一緒にアンタの墓参りに行ってあげるから、幸せな私を首を長くして待ってなさいよ」

言い訳
ED後から5年後の話です。
実はアンジェラの夢ネタにはもう一つの候補がありましたが(デュラン・アンジェラを英雄王が妨害しようとしてヴァルダから世にも恐ろしい制裁を受ける)『夢夜』にギャグは似合わないので、この話にしました。

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