未完

聖剣伝説 『女神の騎士』 未完 番外編 【古き国の物語】

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注意
『女神の騎士』本編より数千年も昔の話です。
シークがヴァンドールに行く前の話です。

この時代のナバール王家と『女神の騎士』本編のナバール王家には、血の繋がりはありません。

















短く切り揃えた瑠璃の髪と、切れ長の瑠璃の瞳。雪と見紛う白皙の肌。細身の身体はしなやかに鍛え抜かれた戦士の体。
誰もが見惚れるであろう、力強く端整な顔立ちの玲瓏な美貌の少年。
それが、ナバール第二王子シークの姿だった。

シークの気配を感じ取り、天蓋つきの大きなベッドに身を横たえていた女性がゆっくりと進退を起こして、すぐ側で頭を下げる息子を見つめた。
女性は中年に差し掛かる年齢で、病床にありながらも類稀な美貌を有していた。
その人こそナバール王妃であり、シークの母。
「シーク。面を上げなさい」
母の許しを得て、彼が顔を上げる。
雪の如く透き通った肌と賛美を受ける白皙の肌は常とは異なり、血色がいい。
気で母の具合がよいことはわかっているも、元気そうな顔を見て安堵して顔を綻ばせた。
「母上。今日はお加減もよろしいようで、安心致しました」
「具合の悪いまま、そなたを見送るようでは親失格ですからね」
軽やかに笑いながら紡がれた言葉に、シークが静かに微笑む。
その瞳には何処か陰りが宿っていた。

シークは母親とは全く似ていないほど父親に瓜二つだった。母子の共通点は、雪の如くと賛美を受ける白皙の肌のみ。
王妃はシークを産んでから体を壊して、寝たきりで過ごす日々が多かった。
今では想像も出来ないが、元気だった頃は将軍まで上り詰めた優れた戦士で「白銀の戦姫」と敬われていた。
実力と頭脳と美貌を王に見初められ、ナバール王妃となったのはもう20年以上昔だ。
結婚後間もなく世襲王子が生まれ、時を置いて第二王子のシークが生まれた。
だがそれ以来王妃は病弱になり、嘗ての力強さは失われて、滅多に外を出歩けない体になった。
世継ぎの兄がシークを執拗なまでに嫌い、邪険に扱うのは彼の誕生が母を弱らせたことが原因だろうと、彼は考えていた。

高く結わえた瑠璃の髪と同色の瞳を持ち、凛々しく精悍な整いすぎた美貌を持つ壮年の男。年を経ても衰えを知らない筋骨隆々とした均整の取れた逞しい身体には、一切の無駄がない。
それが強国ナバールを統べ、数多の戦いを勝利に導いてきた王の姿。
シークと王は非常に酷似した顔立ちだが雰囲気は全く異なり、冷徹な空気を醸し出すシークとは正反対だった。
顔や身体の線も、シークの方が全体的に細い。

「この度のこと、お前は不服か?」
「はい。 幾ら勢力を伸ばそうとも、ヴァンドールは新興国です。 強国と同列に考えるなど……」
ナバール、グランス、ロリマー、アルテナ。イルージャ、マンダーラ、ディオール。
これらの国々はマナ帝国時代と同時期に存在していた国々だ。その中でも強国と謳われ、世界の覇権を巡るのは4カ国のみ。それ以外の国はただ無駄に年月を重ねているだけの国だった。
太古から存在する国にとって、建国から数百年のヴァンドールやタスマニカは”新興国”だった。
常にない素直な息子の答えに王が苦笑する。
「群雄割拠の戦乱の世では、歴史よりも実力が大きく左右するものだ。 ヴァンドールは新しいが故に勢いがあり、それを支えるだけの国力も備えている」
王が窓を見遣り、遥か遠く…西の地を見つめる。それはヴァンドールのある方向。
シークがそちらに視線を向ける中、王が遠くを射抜くように見据える。
「いずれ……あの国は世界の覇権を握るやも知れぬ」
王が苦々しげに吐き捨てた。
シークが唖然として王を見つめる。
王の観察眼や分析能力には一目を置いていたが、今の父の言葉はあまりにも現実味の薄いものだった。
だが、それと同時に心の奥底でそれに賛同している自分がいて、眉を顰める。
ヴァンドールはこの数十年の間に、突如世界中に鋭い牙を向けて、手当たり次第に猛威を振るい始めた。
その勢いに飲まれ、近隣諸国は食い尽くされ領土の一部となって、ヴァンドールに更なる国力を増強させていた。
初めは強国は相手にしていなかったが、今では振り向かざるを得ないほどヴァンドールは強大になった。
だから、強国の中でも上位に位置するナバールがヴァンドールを警戒するのは当たり前のことだ。
ただ、ヴァンドールが世界の覇権を握るというのは行き過ぎた考えだと思ったが。

父子揃って窓に映る彼方を見つめていると、王が振り返って、毅然とシークを見つめた。
「だからこそ、シーク。 そなたにヴァンドールに行ってもらいたいのだ」
王子を外交官として送り込むことでヴァンドールの心象をよくするだけでなく、スパイとしてかの国の中核まで食い込み内部情報をナバールに流す。
ヴァンドールもそれを承知で、他国から優秀な人間を取り込もうと必死になっていた。
「様々な国があの国に人員を送り込んでいるが、ナバールの王子ならば丁重に扱われるだろう」
マナ帝国以前から存在する強大国ナバールの王子。
歴史の浅いヴァンドールにとって、それだけでも心惹かれる人材だった。

目を伏せたまま沈黙を保つシークに、王妃が鈴を鳴らすように軽やかに笑う。
「今からホークシックですか?」
「違います!」
からかいを含ませた母の言葉に、シークが強く言い返した。

「では、今思い悩んでいる事を全てここで吐き出していきなさい」
王妃に相応しい威厳を漂わせて、息子を真っ直ぐ見つめる。
その金の瞳に宿るのは思いやりのある優しい色。
シークは目を伏せて、母の視線から逃れる。
「ヴァンドールに行く以上、全てを彼の国に捧げるつもりです。 ですが……ヴァンドールが仕えるに値する国であるのか、それが気がかりなだけです」
王が聞けば憤慨する台詞だが、シークの目下の悩みはそれだった。
母国であるナバールを深く愛している。しかし、ヴァンドールに送り込むというのは表向きで、実質的にヴァンドールに引き抜かれたも同然だ。
だから契約期限は意味を成さずに、ヴァンドールに骨を埋める可能性が高かった。
生涯を過ごすかも知れぬ国だからこそ、本来なら気にする必要のない様々な事を、思い病んでいた。


言い訳
シークが16の時の話です。
『女神の騎士』ではシークは混血でなく、純血です。
コンプレックスがない代わりに、兄弟間の確執や母親に纏わる負い目があります。
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