未完

聖剣伝説HOM 未完 『出会い』5

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注意
オリジナル設定があります。
こちらの設定を使っているので、まず一読してください。
サンドアローの両親という、オリキャラのみの話になります。
















あれからシルフが幾ら彼の故郷について尋ねてもゼファーは頑なに口を閉ざして何も語ろうとしなかった。
最早彼の故郷は既になく、生き残りもいないと聞かされても、それを素直に受け入れられない。ましてや目の前にいるゼファーという人物がいる限り、他にも生き残りがいると考えるのはむしろ当然だった。
一向に埒の明かないやり取りにシルフが一度引き下がり、ベッドに深く腰掛けると大きく息を吐いた。
苛々と内心毒づいて、ゼファーを見る。
ふと目が合い、シルフが慌てて顔を逸らした後に横目でゼファーを見つめた。
見る者の心を奪い、忽ち虜にする程の、この世のものとは思えぬ美貌。
その姿を視線から外しても、気づかないうちに見ていた。
どうあがいても無意識に見てしまうのならばと開き直って、改めてゼファーを観察する。
一見すれば優男だが、見るものが見ればその身体が鍛え抜かれており戦い慣れた戦士のものだとわかる。
全体的に細身ですらりとしており、手足が長く引き締まった体は十分賛美の対象になるものだ。
そういえば、肌の色もアルテナ人よりも色素が薄い。
―彫りが深い顔立ちで、手足が長く、白く透き通った肌…。
彼の民族の特徴と思しきものを思い止めながら、他に何か手がかりはないかと探した。
ふと、彼の指先に目を向ける。
剣を扱い慣れた戦士の手。それでいて、細くしなやかさを失っていなかった。
その左手の薬指に輝く白金の指輪に目が留まった。
装飾品と呼ぶには質素な代物だったが、それ以外に宝飾品の類を一切身につけていないので余計に目立ったのだ。
「シルフ」
低く美しい声で呼ばれて、彼女が我に返る。
先程まで思案にふけていたゼファーが、今はまっすぐ彼女を見つめていた。
自然と頬に血が上っていく。
「何?」
「………血統者は」
そこで口を噤むように言葉を区切り、何処か躊躇うように続けた。
「ナバールはクォーターの血すら求めているのか?」
―クォーター!?
衝撃的な言葉にシルフが絶句して、ゼファーを凝視する。
―……そんなこと、ありえない!
純血が滅びて数千年が経た今、それは存在し得ない血の濃度。今の世では維持など出来ぬ不可侵領域。
だが目の前にいる男はそれを堂々と越えて、この場にいる。
グッと堪えて、冷静を装う。
「………クォーターって……本当に?」
動揺を押し隠したものの、微かに声を震わせて訊いた。
とても信じられないことだが、彼女の中に流れる血が、彼の言葉が真実だと伝えていた。
けれど、そんな事はありえない。ありえない、筈だった。
「こんな事で嘘をついてどうするんだ?」
呆れたような面持ちは、ゼファーがその事実を重視しない事を物語っていた。
ナバールの血統社会で暮らしてきたシルフには、それがどうしても理解できない。
顔を曇らせて俯いたシルフを、ゼファーが見つめていた。

退廃的な空気に満たされ、酒と麻薬の臭いが染み付いた一室。
窓がないため日の光は一切入ってこない。
部屋の中を照らすのは僅かな照明のみ。
薄暗い室内は、近くの人間の顔を認識する程度の光源しかなかった。

一人の男が裸同然の女を侍らせ、度数の高い酒を呷っていた。

犯人と思しき人物に心当たりはある。だが、いくら探せどもその人物の痕跡すらも見つからなかった。
―ああ…クソッ。 忌々しいことだ。
ここまでコケにされたのだ。必ず見つけ出して殺してやる。
その時、薄暗い部屋に鋭い明かりが差し込み、男がそちらを見遣る。
鋭い目つきの片目の男が、立っていた。
「伝言だ。 お望みの品物を入手した」
幹部の目に、怪しい光が宿る。

「ねえ」
シルフの呼びかけに、壁に背を預けていたゼファーが彼女を見遣る。
シルフが彼の前まで歩み寄り、深紅の瞳をまっすぐ見つめて、金の瞳をすっと細めた。
「ゼファー。 ………もしかして、蛇王団の壊滅に関わっているの?」
「私が? 何故だ?」
突然の言葉にゼファーが目を丸くする。
「…私の勘」
根拠と呼べる明確なものは何一つとしてない。それでも…
「あんた程の実力なら、連中を血祭りに上げることも可能でしょ? 何より”蛇王団”に反応していたからね」
「それだけで私が犯人だと?」
ゼファーの目が鋭さを増す。
双方の間を厳然と隔てる圧倒的な実力差、それによる緊張と圧迫感がシルフを襲う。
それを表に出さぬように、深く息を吐いて苦笑した。
「…勘などと言うあやふやなもので犯人扱いされて、怒るのも当然だ」
一旦言葉を区切り、鷹を髣髴させる鋭い眼差しで、ゼファーを射抜く。
「それでも、私はお前が無関係だとは思わない」
力強い声に、ゼファーが目を伏せて沈黙を保つ。
「…ゼファー? まさか…本当に、あんたが…?」
近づこうとした一瞬。
殺気と呼べぬほど微弱な変化を読み取り、咄嗟にダガーを頭上に交差させたのと、ゼファーが腰に提げている二本の剣の内、脇差を抜いてシルフの頭上めがけて振り下ろしたのは同時だった。
金属同士が弾き合う甲高い音が、狭い部屋に響き渡った。
シルフが後ろに飛んで、ゼファーから距離をとり彼を睨む。
「お前…!!」
僅か数秒の間に起きた突然の出来事に、今更ながら全身から冷や汗が流れる。
最初に会った時、歩き方や身のこなしから元軍人だと判じたが…。
―そんなものじゃない! これは暗殺者の剣だ!!
一撃必殺。相手の命を確実に奪う事に特化した戦い方。

ゼファーは脇差を鞘にしまうと、壁に背を預け警戒するシルフを見る。
猫のように毛を逆立て威嚇体勢に入っている姿に、ゼファーの心中に後悔が湧き上がる。
「すまなかった。 もう、何もしないよ」
相手を刺激せぬように、優しい声音で話しかけた。
シルフが少し躊躇った後に、ゼファーに勢いよく近づいて拳を振り上げる。しかしそれはゼファーの顔面に届く前に、容易く受け止められた。
「ゼファー!!お前、私を殺すつもりだったのか!?」
「まさか、そんなつもりはない」
激昂して声を荒げるシルフに対して、ゼファーは冷静を保ったままだった。
その姿にシルフが荒ぶる感情を鎮める。
冷静な相手に対して感情を昂ぶらせていては、こちらが圧倒的に不利になるから。
「もし受け止められなくとも、寸前で止めた」
その場合はシルフを気絶させて、部屋から立ち去っただけだ。

「私が蛇王団を滅ぼした」
淡々としたゼファーの告白に、シルフの息が止まった。
まじまじと、目の前にいる男を凝視する。
「……どうやって連中を探し出した?」
ナバールの情報網ですら、この10日間の連中の足取りや、アジトの場所は分からずじまいだった。
それをたった一人で見つけ出したとは到底燃えない。砂漠に影響力の強い、協力者がいなければ不可能だ。
「あなたも血統者なら、相手の気の性質もわかるだろう。 蛇王団の幹部は皆外道ばかりだったから、独特の醜い気の資質を探せばいいことだ。
後は変化の術を用いて近づき、ある方法で情報を引き出した」
気の性質を見ての判断。
血の薄まった今のナバールでは、絶対不可能なやり方だ。
しかもゼファーは血統者ならそれが出来て当たり前だと思っている。
それがおかしくて、悲しくて、憎い。
そんなもの、血と共に大昔に失われた能力なのに。
黙り込んだシルフの面持ちに、ゼファーが何処か落胆したように彼女を見る。
「………私を連中に引き渡すか…?」
薄く冷ややかな笑みを貼り付けるが、シルフは静かに首を横に振った。
「いや、そんなつもりはない。
どのみちナバールが連中を滅ぼす予定だったから、手間が省けて助かった。 …………それが、ナバールの忍者としての答えだ」
シルフの目に鋭い光が走り、目にも留まらぬ速さでゼファーの喉元にダガーを突きつける。
その眼光は相手を射抜くほど、激しく力強い。
「………一つ、答えて。 何故、蛇王団を滅ぼした?」
目の前で親友が殺されて以来、蛇王団を滅ぼし、仇討ちをするのは彼女の生涯の目標だった。
それを突然、こんな形で奪われてしまい、気持ちの整理がつかない。
何故?どうして?
最早吐き出す術を失ってしまった強すぎる思いが、彼女の中で激しく渦巻いて、焼き尽くす。
ゼファーが切なそうに柳眉を下げる。
「……蛇王団を滅ぼし、仇を討ってくれと……。そう、恩人に頼まれたからだ」
彼の表情と声音から、その人物が既に死んでいることは察せられた。



言い訳
このサイトでの聖剣3(HOM)では、結婚指輪という文化は超マイナーな風習です。
大昔は世界中の誰もが知っている風習でしたが、今はごく一部の地域で細々と残っている程度です。
ちなみにゼファーは妻帯者でしたが、短い結婚生活で死別しています。

ゼファーのシルフ襲撃事件ですが、あれはシルフが話すに値する人物かどうかを試したんです。
彼が脇差を手に取ったのは、彼女を殺してしまわないための防衛処置です。
もう一本のほうでは、ダガーも紙のように切り裂いてしまいますから。
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