「聖剣伝説」
聖剣伝説 お題

聖剣伝説3 お題 小説 『delicate affection』1

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美獣が子供の頃の黒の貴公子に会うまでの話です。















――イザベラ――
頭の奥深くから”例の声”が響き、誘われるように幾度かの瞬きの後に意識を覚醒させた。
――イザベラ――
魅惑的な唇を、歪ませる。
脳裏に響く声の持ち主が誰なのか、わからない。遠い昔に、忘れてしまった。
最古の記憶よりも昔…妖魔として生を受け直す前の記憶であることは、漠然と理解できる程度だった。
―……愚かしいこと
もう万を越える年月を経ているのに、未だに”あの声”を忘れられない己が。
今も尚、その存在を覚えている未練たらしさは見苦しい。その様はあまりにも醜く、いつも自己嫌悪を催した。
だというのに、”名”を捨てられない。
魔王から”美獣”という名を与えられたのに、”イザベラ”に固執してしまっている。

頭の中を巡る思いを振り払うように息を静かに吐いて、冷ややかに嘲笑うと身体を起こした。
今まで覆い隠していた布が滑り落ちて、見る者に欲情を誘う豊満な肢体が露わになる。
男なら誰もが欲しがり、一度は抱いてみたいと思わせる魅力的な女。
だが、毅然と力強い光を放つ眼差しは男性的な印象を与え、人を傅かせる力を備えていた。
形良い唇から呪の言葉が放たれると、何も纏っていなかった見事な肢体が異国風の服装に覆われていく。
思念を物体化させる力。
それは、上級妖魔のみが持ちうる力であり、人間には決して得られぬ力だった。
己が姿を鏡に映し、虚像に宿った”芸術品”に口角を歪める。
美しい繊手を振るうと、女の姿がその場から掻き消えて、痕跡すらもなくなった。
残されたのは、主のいなくなった空虚な部屋のみ。

カツン、カツンー
高いヒール音を規則正しく鳴らしながら、悠然と荘厳極まりない装飾の施された廊下を歩く。
魔族の美的水準に合わせて造られた王宮内は、美獣にとっては悪趣味そのもの。
―いつ見ても、品のないものだ。
洗練されているとはいえない装飾の数々。
豪華絢爛に飾り立てつなど成金のする事だと、美意識においては魔王を見下していた。
突如、美獣の前に立ちはだかる形で一人の男が何の兆候もなく忽然と姿を現した。
白髪紅瞳の青白い肌をした中年の男。
男の姿を認めて、美獣の瞳に蔑みの色が宿る。
邪眼の伯爵と呼ばれる、数千年前に生まれた上級妖魔。
同じ上級妖魔といえど、両者の間には大きな隔たりが生まれるほど格が違っていた。
「邪眼の伯爵」
美獣が眼を眇め、目の前に立ちはだかる不埒物を見下す。
「邪魔だ。 そこを退け」
冷徹で、見る者を凍らせる視線を受けても邪眼の伯爵は顔色一つ変えなかった。
いつもとは異なる反応に、美獣の柳眉が寄せられる。
「美獣。貴様も僻地送りとは、いい身分だな。 クックック…」
嘲笑と共に消えた妖魔に、美獣の眉間に皺が寄る。
他者の顔色ばかりを窺う、上級の誇りなき妖魔。それが美獣の邪眼の伯爵に対する評価。
少なくとも、こんな事をする度胸はない存在だった。
―……僻地送りだと?
瞬時に先ほどの言葉について考えを巡らせるも心当たりはなく、小物風情の戯言と切り捨てた。
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