「聖剣伝説」
聖剣伝説 お題

聖剣伝説3 お題 小説 『delicate affection』2

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注意
オリジナル要素があります。
3は2の遠い未来という設定です。














重厚な扉が音を立てて開いてゆく。
完全に開き終えた後、美獣が昂然と顎を上げて前を見据えた。
常ならば幾人もの上級妖魔が控えているが、今この場にいるのは最奥の玉座に深々と腰を下ろす魔王と美獣のみ。
ヒールの音を規則正しく鳴らしながら、玉座に歩み寄っていく。
玉座に君臨する妖魔は魔王と崇められているが、元から”魔王”として誕生したのではない。
”魔王”が玉座に着いたのは、美獣が誕生した頃。
元々は、古の呪術師タナトスに殺された魔王の後を継いだだけの上級妖魔だった。
―そして、私と同格の妖魔。
それ故に美獣は必要以上に魔王に謙る真似はせず、それでいて”魔王”の顔も立てていた。

魔王が傲然と美獣を見下ろし、その目を射抜くように見据えた。
双方の視線が激しくぶつかり合い、火花を散らす。
しかしそれは一色触発という緊迫した空気になる前に、打ち切られた。
魔王が愉快そうに喉を震わせると肘掛に腕を乗せ、顎を手の甲に乗せた。
傲慢だが、それに値するだけの堂々たる空気を放つ魔王にはその所作が憎らしいほど似合っていた。
「終わってから来るとはいい身分だな。 美獣」
嬲るような眼差しに、美獣が毅然と見返す。
生まれ着いての女王の如く、強い意志を宿した鮮烈な瞳が王の視線を跳ね返した。
しかしそれは束の間。
美獣がゆっくりと膝を折り、慇懃に傅いた。
「魔王も人が悪い。 連絡もよこさずに合議を早められては来られませぬ」
「ふん…。 ”手違い”があって、お前への連絡が怠ってしまったようでな」
白々しい魔王の台詞を笑みと共に受け流す。
その様に魔王は鼻白むが、すぐに意識を切り替えて美獣を睥睨した。
「美獣。 我等は人間界に進出する事にした」
突然の宣言に美獣が大きく目を瞠り、思わず小さな声が漏れ出た。
魔王の視線に鋭さが増し、眉を顰める。
深々と頭を下げて無礼を謝罪した後に、戸惑いを宿した眼差しで魔王を見つめた。
魔王の宣言はそれ程意外なことだった。
妖魔は滅多な事では魔界から出ない。
人間界へと足を向ける物好きもいるが、それらの殆どは下級妖魔。上級は誇り高さ故に死ぬまで魔界から出なかった。
なので魔王が率先して人間界へと侵攻するなど、悠久に等しい妖魔の歴史の中でも存在しなかった。
―よく他の者が許したものだ。
魔王の命令に逆らう妖魔などいないが、元が上級妖魔だったことから反発も少なからず存在している。
特に魔界の中核深くに座する”永遠をゆくもの”達は、現魔王を”魔王”と呼んだことは一度もなかった。
「その先駆けとして」
魔王の視線が美獣に注がれる。
「美獣。 お前に新たな命を与えよう」
一旦言葉を区切り、間を置く。
彼女の関心を十分に集めてから、口を開いた。
「最後の闇の血族を監視せよ」
衝撃的な言葉に美獣が驚愕するも、今度は感情を表に出さずに余裕のある笑みを浮かべた。
遠い昔闇の血族である古の呪術師タナトスによって、多くの闇の血族達が取り殺されていった
残された者達も長い時の果てに死に絶えて、血脈は途絶えた。
もう、生き残りはいなかった。いや、いないとされていた。
しかし魔王は長きに渡って闇の血族を捜し求めていたらしく、その執念が漸く実ったようだ。
恐らくその者が事実上最後の闇の血族だろう。

「タナトス……」
その名が意味する存在は魔王にとっても意味深い。
前魔王を殺した憎い仇であると同時に、彼に玉座を与えた遠因。
そして、今では……。
「あやつのせいで闇の血族は滅びたも同然だったが、偶然にもその気配を見つけ出せたのだ。
これは闇の血を我が身に取り込む、最後の機会だ」
「……それで、私にその者を守れと?」
表情を押し殺しているが、その目は戸惑いと困惑が入り混じっていた。
美獣の反応は魔王の予想したとおりだった。
「”呪いの王子”である子供の周りは何かと物騒なものでな。
どのような輩が相手でも、確実に王子を守り通せる者にしか安心して託すことは出来ぬ」
―我らに敵う術は人間共の間では最早失われている。 ならば、別の勢力によるものか。
美獣が気づかれぬように魔王を窺う。
魔王が玉座に着いてから既に一万年以上の月日が流れている。
しかし永遠に等しい寿命を持つ上級妖魔にとって、それは決して悠久の時ではない。
今の魔王を快く思わぬ者も多くはないが、それなりに存在していた。

突如魔王の姿が玉座から掻き消えると、美獣の目の前に姿を現した。
上級妖魔が持ちうる空間転移の能力だ。
魔王は優雅ともいえる所作で美獣の顎に手を伸ばし、自らに向かせる。
「美獣」
魔王が耳元で囁く。
蠱惑的な声。
だが、美獣には耳障りな声。
「闇の血族のタナトスは、”人間”でありながら純粋な魔王を殺した。
ただの人間にすらそれ程の力を与える闇の血。 私は、その力が欲しい」
そう嘯くが、その声には憧憬と羨望が滲んでいた。
―妖魔を君臨する魔王が、人間に憧れている!?
憤怒と憎悪と殺意が激しく渦巻く筈、だったのだが彼女の予想とは異なり、頭の奥が冷え切ったような白けた気持ちになった。
魔王の長い指が髪を梳き、耳にかけた。
耳朶の縁に指先が触れ、ピアスをなぞる。
全身が氷に漬けられたように、耐え難い悪寒が駆け巡った。




言い訳
1話で邪眼の伯爵の言った”僻地送り”とは人間界行きのことです。

2012/6/3 小説へ移行
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