未完

聖剣伝説 『女神の騎士』 未完 番外編 【箱庭の少年】2

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注意
『女神の騎士』本編より数十年前の、ナバールの話です。

















チラリと横目で少年の顔を窺い、思わずため息が漏れるほどに整った顔を見る。
どういう理由か分からないが、自分と年の変わらない少年は此処で父王に極秘裏に養われている。
父王は何の目的もなく年端も行かない少年を監禁する真似はしない。そこまで父王…ナバール王フレイムカーンは愚かではない。
だからこそ何かしらの理由がある筈なのだが、サンドアローは何も教えてくれなかった。
稚児疑惑は真っ向から否定したが、それ以外の理由は何か?
そんな事を頭の片隅で考えながらも、少年との会話を楽しんだ。

少年が優しい微笑を湛えながら、少女の話に耳を貸していた。
話の度にコロコロと変わる彼女の顔に見惚れる。
ナバールに来る以前から大人ばかりに囲まれて育ち、同年代と共に過ごした事は皆無に近かった。
寂しくなかったといえば嘘になるが、それでも家族と共に暮らせたあの頃が一番幸せだった。

フレイムカーンに王宮に連れて来られてからは、完全に外界から閉ざされた。
そんな生活には慣れていたが、孤独を癒せるものがない生活には正直参っていた。
唯一の訪問客である王は度々会いに来てくれるも、人恋しい思いが募っていた。
無聊を慰めるなら本を読めばいい。けれど、本は知識を得られるが温もりは与えてくれなかった。

漠然とした思いを抱えながら、塔から外を眺めていた時に目に留まったのがファルコンだった。
眼下に広がる修練場の一角で、日に焼け小麦色の肌をした少女が一心不乱に忍びとしての修行に励む。その生命力に富んだ姿を、気がつけば瞳で追っていた。
何故かは分からない。けれど、彼の中でファルコンの存在は日を増すごとに大きくなっていった。

会えなくても、ただ見つめているだけで満足だった。
だから今こうして一緒にいることが、夢のようにとても嬉しかった。


和気藹々とした会話の途中で機械音が小さくなり、ファルコンが耳に貼り付けられている小型通信機に触れる。
「何だ?」
やや憮然とした少女の声。
彼女をよく知る者ならそれは大きく機嫌を損ねたものだとわかる。
「ファルコン様! フレイムカーン様がお探しでございます」
「父上が?」
一瞬慌てるも、すぐに平静を取り戻した。
「……わかった。今すぐ行く」
若干低い声で答えると、舌打ちと共に装置の電源を切る。

「また来てくれる?」
何処か不安そうに尋ねられて、ファルコンがサンドアローの手を優しく包み込んだ。
「勿論、また忍び込んでくる」
にっこりと笑うと少年は安堵したように微笑み返した。
不覚にもその笑顔に見とれたことが照れくさくて、気づかれない内に慌てて踵を返した。

王の執務室に向かう足が、ふと止まった。
父王の姿と共に、非常に整った少年の顔を脳裏に浮かべる。
一目見た瞬間、サンドアローの気から彼が混血だとわかった。
数千年に渡り厳格な階級社会が根付いているこの世界では、混血は根強い差別を受ける。
特に超古代から残っている国々ではその考えが顕著だ。
古くからの血統を他国人に汚された象徴として混血を忌み嫌う。その考えが根深く浸透していた。
けれどファルコンには若干の蟠りはあるものの、混血だからという理由でサンドアローの存在を否定することは出来なかった。

何故混血がナバールの中枢である王宮にいるのか?何故父王は少年を監禁して、極秘裏に養っているのか?
例え少年が否定しても、父王のやっていることは監禁以外の何物でもなかった。
父王には何かしらの目的がある筈だが、それが全く見当つかない。
―何故、だろうな。
頭の中で様々な考えが廻るも、どれもこれも答えとは呼べないものばかり。
腹立たしい思いが渦巻いて舌打ちを零すと、思考を切り替えようとする。
だが、頭の中を巡るのはサンドアローの事ばかり。
―しっかりしろ、ファルコン。
頬を叩いて、自分に言い聞かせた。

古代ナバール風の内装や装飾に彩られた彼の自室は高価な調度品で溢れており、華美さはないものの王侯貴族の自室と遜色のない価値のものばかりだった。
何故父王がそこまでするのかが、わからない。
ふと、隠し事言う考えが過ぎるも、それを振り払った。
サンドアローは親を亡くしたと言っていたし、それに異母兄弟だとすれば色々と都合が悪い。
―……大丈夫、これは絶対にない。
他国人が死の砂漠と結界を越えてナバール本土に踏み入る事は絶対にありえない。
そして王族は17歳を過ぎるまで、本土から外出する事は堅く禁じられている。
父王とサンドアローの年齢を考えれば、隠し子疑惑は払拭できた。
―ならば、何故だ……?
一向に答えの見えない問題に、憂鬱な気分を抱えて天を仰ぐ。
空は彼女の心とは正反対に広く晴れ渡り、日の光を燦々と降り注いでいた。

言い訳
古代ナバールが純和風なら、『女神の騎士』時代のナバールは和風をベースに中東要素などが重なり合った文化です。

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