未完

聖剣伝説3 お題 未完 『delicate affection』3

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注意
オリジナル要素があります。
3は2の遠い未来という設定です。
















子供特有の高い声が必死に助けを求めている。
逃げる子供を追いかけるのはローブを羽織った人間。
それが男か女か。わからない。思い出せない。
―思い出せない?
湧き出た言葉に疑問が過ぎる。
見覚えのない光景。だが、記憶にすら残っていない潜在意識はこれが”過去”だと叫んでいた。
そこで目線が低すぎる事に漸く気づいた。
女性にしては長身の人型でなく、本性である魔猫の姿よりも小さい。
多分、普通の猫の大きさだろう。
―では、これは……。 妖魔として転生する前の記憶なのか?
遥か昔に消し飛んだはずの記憶。
何故、それが今これほどまで鮮明に蘇っている?
長寿ゆえ忘却と隣り合わせの妖魔にとって、原始の記憶は自己確立に必要であると共に最初に忘れる記憶。
原始の記憶を取り戻せた洋間は力を増幅させるという逸話があるほど、妖魔は過去の記憶を求める。
本来ならばこの光景は歓喜に値するが、美獣の頭の中ではけたたましい警報が鳴り響いていた。

子供が必死に逃げるが、疲れていたのだろう。足が縺れて大きく転んだ。
早く起き上がらねば捕まるのに、子供は肩を震わせて泣きじゃくるばかりで立ち上がる気配はなかった。
―あれは現実逃避を引き起こしているな。
まだ幼い子供だ。剃れも無理はあるまい。
頭の片隅の”美獣”の意識は冷静に判断するが、猫としての彼女の感情はその姿に限界を超えた。
頭の中に過ぎるのは、今までの子供の姿。
物心着く前の子猫の時から一緒にいた私の主。命を救ってもらった恩を、まだ返せていない。

それの腕が怯える少年に伸ばされていく。
直後、自分の体は動いており、その腕に飛びかかっていた。
――イザベラ!!
子供が自分の名を叫ぶ。
――猫風情が、随分と忠義真の厚いことだ。
それが口角を歪めた。

子供を庇うように立ちはだかり、爪を出し、毛並みを逆立てて、怯えを振り払って精一杯威嚇する。
本能的に敵わないとわかっていても、子供を…主を見殺しには出来なかった。
それが傷ついた箇所をなぞると、傷口は瞬く間に治癒した。

それが腕を振り払うと、抵抗も出来ずに体が飛ばされ、空間のゆがみへと吸い込まれた。
最期に見た現世の光景は、子供の姿。

「どうだ、美獣。 原始の記憶というのは心地よかろう」
唐突に側から聞こえてきた言葉に、過去を彷徨っていた意識が鮮明に戻りそちらを見遣る。
豪勢な椅子に腰掛けていた魔王が、美獣を見ることなく本を繰りながら言葉を紡いだ。
秀麗過ぎる魔王の横顔に舌打ちを零す。
どのような術を使ったのか定かではないが、先程の忌まわしい記憶を呼び起こした張本人が無性に腹立たしい。
「……王ともあろう方が、随分と悪趣味な事を」
分厚い本が音を立てて閉ざされると、魔王がちらりと横目で美獣を見た。
「悪趣味、か。 大概の妖魔は原始の記憶を蘇らせてやれば、歓喜のあまり心を震わせるものだぞ」
――これだからお前は面白い。
魔王の目を意訳すれば、このような意味だろう。
「自らの存在を原始の記憶に縋るような愚者と、私を一緒にしないで頂きたい」
「ククク……流石は美獣。 お前に言わせるならば妖魔の殆どは愚者か」
「ええ」
嫣然と微笑む。

「転生した者は純粋な妖魔と異なり階級の高い者は非常に稀だ。 その理由を考えた事があるか?」
「……いいえ」
僅かな逡巡の後に答える。
だが、嘗てはあった。
動植物から転生した妖魔は大概が下級や中級。上級妖魔として転生した者は魔界全土を探しても数えるほどだ。
その内の二体は美獣が転生した頃に失われたらしいが、生憎その頃の記憶は忘却の彼方だ。

「妖気によって体が変異する際に、精神と肉体が分離するゆえだ。
繋ぎと楔があった分、純粋な妖魔より強固な存在を保てるが、それが枷となって体に入り込んだ妖気を拒む」
存在が強固で揺ぎ無いからこそ、転生した妖魔は他生物と”寄生”ではなく、”契約”を結べる。

「美獣。お前の前身は強大な力を受けて変異してゆく体に精神を壊すことなく、貪欲に力を求めた。
体が一から作り直されることに何故耐えられたかは知らぬが、よほど強さに執着していたと見える。
その理由は、”思い出せた”であろう?」
麗しくも耳障りな魔王の言葉と共に蘇るのは、先程取り戻させられた記憶。
――私はあの子供を助けたかった――
力があれば、強ければ。
あの存在から、主人を守れたかもしれない。

「手っ取り早く力を増幅させてやったのだ。
それに見合った成果を見せてくれるのであろうな?」
魔王でなければ当の昔に抗っていた同格の妖魔に、敬意を示すために渋々と跪く。


言い訳
美獣は上級の中でもかなり上の位です。
それこそ1話で同じ上級である邪眼の伯爵を”小物風情”と呼ぶほどに。

次は黒の貴公子か…。
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