未完

聖剣伝説3 お題 未完 『delicate affection』4

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注意
オリジナル要素があります。
3は2の遠い未来という設定です。














―闇が、来る。

彼に名はなかった。
生まれた直後から、『呪われた王子』として、地下深くの日の当たらない場所で過ごしていた。

王が王子を殺さないのは、王子の宿す絶大な魔力ゆえ。
幼子でありながら、妖魔を滅する強さ。
力を超えた”力”に恐れ戦き、生かさず殺さずの姿勢を貫いた。

―もうすぐ闇が……来る。
生まれた直後から彼が見てきた光は、無機質な電灯の明かりのみ。
昼も夜もなく、明かりが消えた時が「眠る時間」なのだと判断していた。
それが王子の時間の感覚を辛うじて繋ぎとめていた。

王子の目が大きく見開かれ、大仰に手を掲げる。
服の隙間から窺える肌は、一度も日の光に晒された事のない病的なまでの白さ。
端から見れば狂人としか思えぬ王子の視線の先にあるのは、王子が恐れる「闇」

――ケケケケケ……闇の血、闇の血だぁ
――最後の一人ぃ
――その身を取り込めば、上級に匹敵する力を得られるぞぉ
けたたましい笑い声は、常人には聞くことの叶わぬ声。
少年と”闇”の目が合う。
にたぁりと嗤った”闇”は少年に近づこうと手を伸ばすが、結界に弾かれて短い悲鳴と共に逃げていく。

―まただ。
人間の刺客など恐れるに足らない。
王子が最も恐れるのは、妖魔。
妖魔は”闇の血族”なる王子の身体を取り込むか、殺そうと夜毎現れる。

王子を現世に留める思いは、生への執着。
何年にも渡り暗闇のみの生活が続けば、絶望して自らの命を絶つ。
それは日の明かりの温もりを知る者の考え。
王子にとってこの何もない無機質な空間は世界の全てであり、暗闇は日常の事。だから絶望する理由にはならない。
それゆえ、生への飽くなき欲求を生み出している大きな「理由」があるのだけれど。

いつもとは比較にならぬ強大な妖魔の気配に、王子の身が強張る。
闇の血族とはいえ、人の手に余る絶大な魔力を使いこなせているわけではない。
生きたいという願いに体が応えて、力を放出しているだけだ。
それでも妖魔と渡り合えたのは、ただそれだけで十分の相手だったから。

上級の妖魔が相手では、闇の血族とはいえ碌に制御の出来ぬ者が敵う相手ではない。
王子の力への自負を粉々に砕き、甚振るように痛めつけた妖魔は今まさに王子の命を絶とうと首を絞めていた。
本来なら瞬く間に首をちぎれる握力の持ち主だが、それをしないのは王子の苦しむ顔を少しでも長く眺めていたいから。
魔の手から逃れようと必死にもがくが、流れ出す血と共に魔力は薄れて行き、肺に残されていた酸素もなくなっていく。
―ああ、もう駄目だ……。
視界が次第に暗くなっていき、意識を保つ事さえ難しくなってきた。
せめて笑いながら首を絞める妖魔に一矢を報いたいが、それも出来ない。
死への恐怖よりも、ただ悔しい。
意識を手放しかけた直後だった。
「がはっ!!」
妖魔が多量の血を吐き、崩れ落ちたのは。

核を抜き取られて、何が起きたのか分からないまま息絶えながらも、その妖魔は幼子の首を絞める手を放さなかった。
それに腹立たしい思いを抱いて、腕を一閃する。すると魔力の刃が放たれて、妖魔の腕を呆気なく切り落とした。
肺が酸素を取り戻そうとしている作用か。幼子が激しく咳き込みながら、麗しい女性の姿を模る美獣を見上げた。
「……あなたは……?」
咳き込み、目に涙を湛えた幼子が尋ねる。
その目に恐怖の色はなかった。
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