未完

聖剣伝説 『女神の騎士』 未完 番外編 【ある二人の国語り】

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注意
本編と同時期で、ランディとプリムの話です。

















一切の機械や魔法、化学合成物のない暮らし。添加物のない自然そのままの食事。
それらは故郷では絶対に出来ない、最高の贅沢。

「……そんなことが贅沢なの?」
「うん」
信じ難そうに眉を潜める仲間の問いに、躊躇いなく頷く。
ランディの育った上級最上位国タスマニカは高度に文明化された国で、生活の全ても機械化されていた。それ故に全く機械化や魔法化されていないパンドーラ人の生活は想像のつかない驚きの連続だった。
しかしその驚きや感動は、パンドーラ人のプリムには全く理解できないものだった。

タスマニカはヴァンドールに次いで機械文明の発達している国で、それ故に自然と呼べるものがなかった。
国土の殆どは天を貫き、覆い尽くすほどの建造物に覆われて、公園や施設に申し訳程度の植物がある程度だった。
いや、最も機械技術の発達しているロリマーですら一歩都市ドームから外に出れば極寒と雪に覆われた自然があるのだから、それは理由にはならないのかもしれない。
それに対してパンドーラは全国の中でも有数の自然豊かな国だ。
効率的に資金を獲得する術として、自然という名の”資源”を最大限利用する政策を、建国間もない時期から開始した。
過剰なまでに自然を保護しつつ、材木工芸を極めて、観光国として上級や中級国に”自然豊かなパンドーラ”として売り出した。そのおかげで下級国でありながら財政は潤い、国民の福利厚生は上級国に並ぶ程だった。
”資源”を生かしつつ、観光客達のイメージを大事にするために、国民の生活を文明化しないという国の方針が貫かれていた。

「はぁ……物事の価値なんてものは、判断する人によって変わるものね」
プリムが大きく息を吐いた。
「うん、それはあるよね」
「でしょう?」


「ねぇ、ランディ。 タスマニカって……どんな所なの?」
プリムが知るタスマニカの情報はあまりにも少ない。
上級国の中でも最上位で、生活の全てが機械によって賄われる海洋国家。そしてランディが幼い頃から暮らしていた国。
同じ等級の国ならもっと詳しい事もわかるのだろうが、下級国であるプリムにはこの程度の情報しか得られなかった。
「どんなって言われても……」
困惑したように、目を周囲に泳がせる。

タスマニカを一言で表すならば、動植物を一切排除した人間だけの国だった。
上級国は総じて高度な文明社会だが、同じ等級の他国は自然との住み分けや共栄を行っているにも関わらず。
国柄や国民性も関係しているが、理由の一つとして上げられるのは歴史の長さだろう。
神話に伝えられるマナ帝国時代から存在している国々と、ヴァンドールが世界を牛耳る数百年前に建国した国。
当時から悠久の歴史を持つ国々にとって、タスマニカは”成り上がった新興国”に過ぎなかった。
タスマニカも同じ等級の国々に舐められないように、上位に値すると言わしめるために只管邁進してきた。その結果が、今のタスマニカだ。
しかし現代も上級の国々は最上位国のタスマニカを”成り上がり”と蔑み、またタスマニカも歴史ある国々に対して根強いコンプレックスを抱いている。
そのコンプレックスが同じ上級国に向いているのならばまだいい。同じ等級で、国力も大きく差が開いているわけではないのだから。
しかし上級国タスマニカの、中級国イルージャや下級国マンダーラへの風当たりも強かった。


「……なんか、あんたの話を聞いているとタスマニカって碌でもないところに思えるわ」
便利や技術を求めて突き進んだ挙句、大切な何かを置き去りにした国。
それがランディから語られたタスマニカの印象だ。
少なくとも、パンドーラでは”当たり前”なことがタスマニカでは”贅沢”な事自体、プリムにはおかしく思えた。
「いや、あそこはあそこでいい所もあるんだよ」
流石に故郷が貶されたら黙ってられないのか、ランディが反論する。
しかし、その口調や声には力強さはなかった。
その姿にプリムの胸に悲しみに似た感情が湧き上がってくる。
「………ランディ。ここはパンドーラで、タスマニカじゃないのよ。 だから別に本当の事を言ったって誰も責めやしないわよ」
彼がタスマニカでどのような暮らしをしていたのかはよくわからない。けれど、あまりいい思い出はなさそうだ。
今までランディの口から語られたのはジェマという育ての親の事だけ。友達の話は聞いたことがなかった。
大体、初めて会った時から自信がなさそうにしていたのだから。
上級と遜色ないとは言え中級国イルージャの人間が、上級の最上位国であるタスマニカで暮らすとなれば、根強い差別も当然あるだろう。



言い訳
歴史ある上級の国々(ナバール、アルテナ、ロリマー、グランス)であっても、流石に世界の統治国であるヴァンドールを”成り上がり”と蔑めませんから。
ヴァンドールに直接ぶつけられない分、タスマニカにぶつけているという節もあります。
(タスマニカが最上位国になれたのも強引に勢力図に割り込んでからの、棚から牡丹餅でしたから余計に気に食わないんでしょうね)
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