未完

聖剣伝説 『女神の騎士』 未完 番外編 【箱庭の少年】3

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注意
『女神の騎士』本編より数十年前の、ナバールの話です。
この話はファルコン→←サンドアロー←フレイムカーンが前提です。

















本の頁を操っていると、待ち人の気配を感じてぱっと顔を上げて扉に駆け寄ると、勢いよく開いた。
「ファルコン!」
緩やかな癖を持つ薄紫の髪が揺れ、嬉しさを湛えた穏やかな笑みが少女に向けられた。

あれからファルコンは時間を見つけてはこの塔に通い、二人だけの密やかな逢瀬を楽しんだ。
日常の事、訓練の話、読んだ本について、昔の思い出。
時が過ぎるのを忘れて様々な事を語り合った。
この時間がナバール王に知られれば二度と会えないというのは両者の間では暗黙の事実だったので、王に知られぬように密会を繰り返していた。
それが、まるで絶対に知られてはならぬ秘密を共有しあう仲のようで、更に親密になった。

「え?ここはゼラリス大陸じゃないのか?」
それはふとした会話の流れでのこと。
驚きを露わに目を見張ったサンドアローに、ファルコンが訝しげに彼を見る。
「何を言ってるんだ。ゼラリス大陸なんて五千年も昔に死の大地になっているじゃないか。
今あそこに残っているのは、古代ナバール時代の遺跡だけだ」
「それじゃあ、ここは何処なんだ?」
ファルコンの言葉に暫し絶句していたが、身を乗り出して尋ねた。
常の穏やかな態度とは異なる姿に彼女は目を丸くするも、その真剣な眼差しに彼の望む答えを返す。
「グレークス大陸だ」
「グレークス…? 灼熱の砂漠の?メノスとカッカラ皇国は?」
「メノスという国名は知らないが、カッカラは共和制だぞ」
彼の質問に答えながら、歴史を思い出していく。
嘗て古代ナバールは極東のゼラリス大陸で比類なき繁栄を築いていた。しかし五千年前の世界全土を巻き込んだ大戦争中に、タナトスが彼の大陸で魔界との接続を行ったのだ。
その結果、魔界の瘴気が大陸全土を覆い尽くした。
タナトスの術の影響もあるのだろう。ゼラリス大陸は生物は愚か妖魔すら生きられぬ死の大地へと変貌し、ナバールの民は灼熱の大砂漠地帯へと逃げ延びた。そして、気を用いて水脈と地脈、風脈を操り、大砂漠を自然豊かな大地へと環境改造を行ったのだ。
不幸中の幸いなのが、当時世界の覇権を争っていた国々はヴァンドールによって国家存続が危ぶまれるほどの痛手を受けていたことだ。
どの国もが自国の復興を最優先し、他国に攻め入る余裕などなかったという。
それぞれの国が漸く国力を取り戻した頃には、実質的な支配国家だったヴァンドールによって国の階級付けが行われて、現在の「上級国家」という分類に区分された。

ナバールがグレークス大陸に逃げ延びた際、灼熱の砂漠はどの国の領土でもなかった。
そこは火のマナストーンの影響で、生物が住めぬ過酷極まりない大地だったのだ。
だからこそ当時疲弊しきったナバールはこの地に入植し、弱りきった獅子の喉元を食らいその身を食い尽くさんとする他国への警戒に神経をすり減らすことなく国家を再建できた。
再建と共に領土を拡大したナバールに、当時砂漠を支配していたカッカラは抵抗した。しかし何千年もの間、幾多もの強豪国と世界の覇権を争っていた国と、滅多に戦争を経験しなかった国とでは初めから勝負にならなかった。
容易くねじ伏せ、圧勝するとカッカラの領土を根こそぎ奪ったのだ。
嘗て砂漠を支配したカッカラは、今では砂漠の片隅にある貧しい下級国家だ。
するとサンドアローは顔を曇らせて、目を伏せて正座をしなおした。


塔の上から王宮へと帰る少女の姿を見送りながら、深く溜息を漏らす。
―……わかっていたことじゃないか。なのに、何を今更……
今彼の胸を曇らせる事案は、”あの時”から既に覚悟していたものだ。
思い悩んでも仕方ないとわかってはいるが、それでも胸に渦巻く思いを取り除くことは出来なかった。

よく知った気配を感じて、振り返る。
それは先程帰った少女のものではなく――
「……フレイムカーン様、」
このナバールに君臨する堂々たる王の姿。
少年が途中で言葉を止めたのは、男の目に宿る感情ゆえ。
今まで見たことのない嫉妬と”何か”を滲ませた瞳に射抜かれて、慕っていた王を初めて恐ろしいと感じた。



言い訳
当時のタスマニカは他の上級国に比べて、ヴァンドールに痛めつけられてなかったんです。(当時ヴァンドールは世界の覇権を争っていた国々を徹底的に叩きのめしましたから。ナバールを筆頭とした国々も、潰されなかったのが奇跡なくらいです)

それにしても……こんな調子じゃ結婚となったら実の娘に並ならぬ嫉妬をするんじゃないでしょうか、ナバール王…。
ファルコン。しっかりフレイムカーンを説得してからじゃないと、行動に移すことすら許されないよ。
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