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未完

聖剣伝説2 未完 『beast?』1

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注意
2は3の遠い昔という大前提があります。
オリジナル設定や要素があります。

























舞台設定
シーク…21歳。 ファウナッハ…20歳。 ゲシュタール…17歳。 タナトス…不明。
















一度機械と向き合うと集中力が数倍に跳ね上がり、外部からの刺激も素通りする。
まるで機械と一体化したように自由自在に作り、操る時間と感覚が堪らなく好きだ。
戦働きが仕事ならば、機械弄りは数少ない趣味だった。

軍人でありながら職人の手で繊細で複雑なパーツを滑らかに扱いながら、頭の中にある設計図通りに組み立ていく。
その指先は淀みなく、迷いも無駄もない動きだった。
ふと、背筋が凍える感覚がして、ギョッと振り返るとそこには呪術師中腰でゲシュタールの背中越しに機械を見ていた。
思わず短い悲鳴を上げた直後、ハッと我に返るとタナトスから顔を逸らして、聞こえがしに舌打ちを零す。
あまりにも強く手元に意識が引き付けられていたので、タナトス独特の悪寒も素通りしてしまったのだろう。
血色の瞳と視線がかち合うと、ゲシュタールは瞳の奥底に嫌悪を滾らせる。
「……何の用だ? 用がないのならさっさと失せろ」
「ククク……。ただ見学させてもらっているだけだよ」
口元に手を当てて笑ったタナトスに、ゲシュタールが柳眉を寄せる。
「貴様がいるだけで気が散るのだ!」
「おや、それはキミの集中力が足りないだけであって、私のせいではなかろう?」
全く手応えのないその様子にゲシュタールの苛立ちは更に増幅して、スパナを持っている手に力を込める。
―これでこいつの顔面を潰せたら、スッキリするだろうな。
魅惑的な提案が脳裏を過ぎるも、それをするには彼はタナトスの実力を知りすぎていた。
不本意ながら、スパナを握り締める力を緩める。

「ああ、そうだ」
前触れもなく声を出すと、振り返ってゲシュタールを見遣った。
「君はファウナッハの見舞いには行かないのか?」
「……あいつは病気ではないだろ」
同僚の魔導師は現在療養生活を過ごしていた。
シークは忙しい中時間を作っては度々見舞いに訪れているが、ゲシュタールは一度しか行ったことがない。
そもそも怪我や病気の類ではないのだし、複雑な気分になるだけならラボに籠もっている方がよかった。
ふと、タナトスと目が合ってしまった。
人の心を見透かすようなその視線に耐え切れずに、顔を逸らした。
その動作から彼の心中を察したのか、タナトスが愉快そうに嗤う。
普段の事とはいえ、それはいつも以上にゲシュタールの癪に障る。

「君は瑠璃が好きだと思っていたが、実は紅玉が好きだったのかね?」
その言葉の意味を一瞬遅れて理解留守と同時に、頭に血が上った。
スパナを握り締め、振り上げようと筋肉を躍動させる。
しかし振り下ろされたスパナはタナトスに触れることなく、瞬時に作られた魔力の障壁によって弾かれた。
すべての衝撃が跳ね返される形になったゲシュタールがたたら踏むのを見て、タナトスがふむと唸った。
「何だ。瑠璃と紅玉の両方か……。 いや、当初はあれ程反発していたというのに、今ではこの有様か。
刷り込みというのは本当に恐ろしいものだ」
聞き捨てのならない言葉に文句という名の罵りをぶつける。
”あの事件”は傍から見ればそう見えるのだろうが、他者から指摘されるのは不愉快極まりない。特に相手がタナトスならば。

タナトスの視線が部屋の一角に注がれる。
そこにはゲシュタールの目に叶った機械工学に関する専門書が分類別に、整理整頓された状態で並べられていた。
「そう、タスマニカといえば……」
唐突に変わった話題に、ゲシュタールが眉間に皺を寄せる。
いちいち話題の変わる奴だと思う。
タナトスの中でどんな繋がりがあるのか分からないが、突拍子もなく話題がコロコロ変わるその様はまるで女だ。
乗っ取りを繰り返しているタナトスに性別など関係ないが、本来の性別は女だったのではないかとゲシュタールは勘繰っていた。
「今朝のニュースを見たかね?」
「今朝?」
ゲシュタールがラボに入り浸ったのは早朝からだ。ラボにはラジオが置かれているものの、集中するために一切の雑音を遮断していた。
「何かあったのか?」
わざわざタナトスがこんな事を言い出したのには何か裏があるに決まっている。
おのずとゲシュタールの眼差しに警戒の色が増していく。

「タスマニカが”人間”奴隷の全面廃止と共に、獣人エルフなどの亜人種を畜生宣言して奴隷に推奨すると国際協定で宣言したのだよ」
「ほぅ、それは随分と思い切った事をするものだな」
大した関心もなく、棒読みで返す。
タスマニカは人間至上主義の国で、他の種族を”人間”と見なさない。他国でも差別されている獣人は言うまでもなく、エルフや血統者もその差別と迫害の対象だった。
彼の国は長い歴史の中で、自分達と異なる姿や能力を持つ人種を徹底的に滅ぼそうと、討伐という名の虐殺を幾度も繰り返していた。
それを行われなかったのは、人間を遥かに凌駕する力を持つマナの一族と血統者のみ。
獣人やエルフ、ドワーフなどは数え切れないほど行われた大量虐殺を乗り越えられたが、多くの人種がタスマニカ系列の国によって滅ぼされた。
他国の思想に着いてさほど関心はないが、こればかりはゲシュタールも愚かだと思う。
ヴァンドールでは一般的な人族と異なる者達については、”種族”でなく”人種”という考えだから、特に。
「おや、大して驚かないのだね」
「何故驚く必要がある? あの国は人間至上主義のいかれた国だぞ。
遅かれ早かれ馬鹿な真似をするのは決まっていたではないか」

「……それだけか?」
「それだけとは? 何か別のものを期待していたのかね?」
仮面の奥にある目に得体の知れない光が輝くのを見て取ったゲシュタールが右手の中指を立てた後に、追い払うように手で払った。
他者の気分を著しく害するその態度にタナトスは気にする素振りを見せずに、素早く動きでゲシュタールの手首を掴んだ。
「何をするっ!?」
「実に酷いではないか、ゲシュタール」
聞こえ貸しに溜息を漏らすと、ゆっくりと彼の腕をなぞっていく。
「他者への礼儀のなっていない君をどうしてあげようかね……?」
呪術師から逃れようとぐっと身体を後ろに下げるも、朽ちかけの体の何処からこのような力が出ているのか。常日頃鍛えているゲシュタールの抵抗を全て封じるほどの力強さだった。
タナトスの指先が肩へと到達し、胸部へと下るのを感じて更に顔色が悪くなっていく。
ゲシュタールが忌々しげに自分と変わらぬ身長の男を睨み据えて、唾を吐きつける。
「糞が」
タナトスは何事もなかったように懐から布を取り出して仮面についた唾を拭った後に、ゲシュタールの心臓部を鷲掴みにした。
そこから流れ込むオーラに彼の身体から力が抜けてゆく。
只人の動きをも奪う強烈なオーラ。それは世界広しと言えどタナトスしか持ちえない力。
精一杯の抵抗をするも体は意思の命令を受け付けず、膝をついて呪術師を睨み上げる形になる。
服従の形でありながら、タナトスを睨みあげる鋭い眼光は力を失うことなく、更に強い光を放っていた。
「き、さま……」
「ほぅ、まだ喋れるとは大した精神力だ。
しかし、君のこの私に対する態度は些か度が過ぎていると思うのだよ」

「おや、シーク。 遅かったね」
呪術師の声に恐る恐る振り返ると、そこには瑠璃色の髪の同僚が立っていた。
その姿を認めた瞬間、ゲシュタールの血の気が完全に引いた。

「……取り込み中のところ悪かった。 今すぐ失礼する」
「待て!誤解だ!!」
ここがラボで、相手がタナトスという時点でそのような事態は決してありえない。
第一彼ならば、気で全てわかっているはずだ。

「おや、君が何かを連れ込むなんて珍しいね」
呪術師の言葉にシークの背後で動く気配がして、ゲシュタールが彼の背後を見遣った。
そこにいる存在に気がついて、目を丸めた。




言い訳
年齢ですが、ファウナッハの誕生日が他の二人よりも早いからです(あくまでも公の誕生日であって、実質は違うでしょうが)
瑠璃と紅玉ですが、帝国の宝石という呼び名と瞳の色からきてます。(ゲシュタールは翡翠)
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