「聖剣伝説」
聖剣伝説3(HOM)

聖剣伝説3 小説 『Insane empress』

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注意
ホークリが悲恋に終わった形での、十数年後でホークアイ・ジェシカの息子と、引き裂かれて豹変した黒い女帝(予定)リースの話です。
















警告
リースが著しく別人なので、嫌な予感がした方は引き返してください。















「顔を上げなさい」
冷徹な声に従う形で面を上げて、矜持の高く鋭い眼光で声の主を睨み据える。
少年の視線の先にある玉座には、冷酷非道な美貌の女王が傲然と顔を上げて君臨していた。
死臭に塗れた恐怖政治を敷く女王であっても、人々を虜にするほどの見目麗しさを前に信奉する者もいるが、少年は騙されなかった。
例え女神のような外見であっても、その内面は残酷狡猾で冷酷極まりない魔女だ。
少年の故郷を滅ぼし、目の前で母を惨たらしく殺した憎い仇だった。
何が面白いのか、女王は口元を歪ませて、初めて少年の顔を”見た”。
「ナバール首領、イーグル殿」
女王の目に鋭い光が走る。
「残党や捕虜達の命を助けて欲しければ、何をするべきか、ご存知ですか?」
優しい声音だが、その奥底には凍えるほどの冷ややかさを孕んでいた。
「……承知しております」
敗国の主なれど、歴史深い国の王として昂然と顔を上げて答えた。
少年が矜持を優先して自らの命を絶てば、女王はナバールの民を皆殺しにする。
それは女王の目と、これまでの行動が物語っていた。
生き残った幾万の民のために、これから先どのような屈辱と恥辱を与えられても生き続けなければならない。
それが少年に与えられた、未来だった。
「よろしい」
女王という名の魔女が嫣然と微笑んだ。
「イーグル殿。 その醜い外見同様、中身も母親と同じく愚かでない事を信じましょう」
母を侮辱する言葉に少年の頭に血が上り、女王を殴り倒したい衝動に駆られたが、理性を総動員して押さえ込む。
ナバールは敗れ、ローラントが勝った。
その揺ぎ無き事実と、人質の存在がある以上、耐え続けなければならない。
そう懸命に言い聞かせた。

もう用はないとばかりに少年の両脇に控えていたマゾネスが少年の首に巻かれた荒縄を引っ張り上げ、苦悶に少し顔を歪めた少年を連行しようとした。
その時だった。
「待ちなさい」
冷厳たる声と共に女王が玉座から立ち上がった。
反射的に膝を着く者達を尻目に女王は漆黒のドレスの裾を揺らし、悠然と少年の元まで歩み寄った。
「イーグル殿。膝をつきなさい」
「…………」
ほんの一瞬、凄まじい形相で女王を睨んだが、すぐに目を伏せて静かに膝をついた。
しかしその指先は震え、力を篭められたあまり、床を掻き削っていた。
恥辱に震える少年の体に目を落とした女王は冷淡な笑みを貼り付けて、少年のうなじに手を伸ばした。
身体を強張らせた少年の髪を結わえていた若緑の古びたリボンが外され、藍玉の髪が背を波打つ。
唯一残された父親の形見を奪われた途端唇を戦慄かせて、目の前で母を殺されて以来忘れていた涙が止め処もなく溢れ出し、とうとう咽び泣いた。
そんな少年の姿に女王は酷薄な笑みを見せるも何も語らずに、少年の側に控えるアマゾネスに目配せをした。
女王の命を受けた忠実なる部下は、少年に手を伸ばそうとするが、彼はあっと驚くような早業でアマゾネス達を昏倒させた。
反旗を翻したナバールの主に場は騒然となり、一即触発の空気が流れるも、女王はただ鼻白んだだけだ。
「イーグル殿、貴殿は己が立場を全く理解していないと見える」
一歩、一歩。少年の元に歩み寄るが、少年はその場で身構えたまま毅然と女王を見据えた。
「そのリボンを返していただきたい。 さすれば大人しく獄に繋がれよう」
「敗者の分際で交渉とは、片腹痛い」
女王が手を上げると玉座の奥にある隠し扉から、両腕を切断され猿轡を嵌めさせられた幾人ものナバール人と、完全武装をしたアマゾネスが姿を現した。
幼い頃からよく見知った者達。ローラントに囚われてから消息不明になっていたが、まさかこのような目に合わされていたとは。
だが少年の頭には同胞に対する仕打ちへの憤怒も、生きていたことへの安堵もなく。
これから行われる事への恐怖と、女王への殺意と憎悪だった。
「殺しなさい」
淡々とした女王の命に応じて、人質一人の首が躊躇なく切り落とされた。
夥しい血を流しながら死体が床に崩れ落ちた瞬間、少年が喉を裂きかねないほどの絶叫を上げた。
やがて喉が限界を向かえて声が出なくなっても、泣き崩れている少年に女王は冷ややかに言葉を紡いでゆく。
「貴殿が反旗を翻すたび、この者達の首を切り落としてゆく……。
フフフ、一体いつ頃まで残っている事でしょうね」
冷然と言った女王に、少年はただ涙を流した。
槍で酷く痛めつけられながらも取り押さえられ、今度は太い鎖で縛られながらも、少年の目からは光は消えていなかった。
いくら膝をつき、頭を下げたとしても、少年の心は決して屈しない。矜持は折れない。
地に堕しても、その心は気高く誇り高い。
それは、女王にとってのナバールの象徴そのものだった。

女王の目が、少年に容易く昏倒させられたアマゾネス達に向けられた。
「使えない者達ですね」
苛立ちを滲ませて、吐き捨てる。
「殺してしまいなさい」
先程とは違い、まるで些細な用事を言いつけるような。全く重みのない声だった。
同胞殺しの命令に皆一様に躊躇いを見せたが、女王に逆らえば陰惨たる虐殺の矛先が自らに向けられる。
涙と共に許しを請いながら同僚に槍を突き立て返り血に染まってゆく者達の姿を、つまらない歌劇の如く眺めていた女王は眼前の光景に関心をなくして、信じがたい惨状に目を瞠る少年を見下ろした。
「あなたもこれくらい簡単に切り捨てられれば、楽でしょうに」
「外道め!!」
悪魔に等しき女王に、少年が嫌悪も露わに語調を荒げた。
しかし、女王は意味深な笑みを返すのみ。

女王の命を受けたアマゾネス達によって乱雑に連行されてゆく少年の後姿を見送る。
ふふふと楽しそうに笑う女王に、側に控えていた者が嗜めるように声をかけた。
常ならば許されぬ無礼な行いだが、女王はよほど機嫌がよいのか、ふわりと微笑んだ。
「ねぇ、ライザ」
隣に控える謹厳な顔をした最も忠実なアマゾネスに流し目を送る。
「あの子供が心の底から私に忠誠を誓うまで、牢に閉じ込めておきなさい」
「しかし、リース様。 あの者は……」
「自ら膝を突き頭を垂れる誇りない様をナバールの者どもに見せ付ければ、連中も己が立場を理解するでしょう」
ナバールを堕したい。
それが、女王の一念だ。
そして胸中に蘇るものは、今は亡き愛しい人物の姿だった。
「暗闇に閉ざされても尚媚びず、屈しないのならば、あの顔を剥いでしまいなさい」
不穏な笑みと共に放たれた過激な発言に、ライザがゆるりと頭を振るった。
「リース様」
「醜く見苦しい顔ならば、原型が分からぬほど傷つけてしまえばいいのよ」

ライザが主に聞き咎められぬほど、小さな溜息を漏らす。
前ナバール首領が病死して以来すっかり変わり果てた女王。
それまでも前兆があったが、女王を人として留めていた枷が外れたのはその時だった。
城中に響き渡った慟哭の叫び以来、女王の暖かな心臓は凍りつき、高貴だった魂は悪魔へと変じた。
昔から女王の心が蝕まれていたのに何故気づかなかったのか。それが悔やまれて仕方ない。
そして政略結婚とはいえ、それなりに仲睦まじく見えた夫と子供を躊躇いなく自らの手で残虐に殺し、夫の親族の財産を全て奪ってから”復讐”が始まった。
国外には未だ知られていないが、ローラント内部は女王の凶器と憎悪によって作られた、この世のものとは思えぬ地獄が広がっていた。
守護風を以ってしても、濃厚な死臭と血の臭いが国中に漂い、生き残った者達は最早死人に等しい有様だ。
凄惨きわまる地獄を知ることなく、身分を剥奪され追放されたエリオットは、まだ”幸せ”と呼べた。
このような亡国寸前のローラントが、衰弱しても尚世界最強の軍事国家ナバールに勝てたのは女王の側に影から侍る上級妖魔の協力あってのことだ。
妖魔を知る者は女王とライザ以外におらず、知った者は皆が女王によって命を落とした。
女王の変貌は妖魔の手によるものだと、ライザは信じたいが、とてもそうは思えない。
何よりも気がかりなのは、女王にとって長年の敵国ナバール人よりも自国の人間の命の方が軽く、塵芥に等しいものではないかという危惧だ。

女王の笑みと共に背筋のみならず、体中に悪寒が走り、瞬く間に全身蒼白となった。
―ナバールを滅ぼした今、女王の狂気はこれから何処へ向かうのか?
ナバールの象徴たるあの少年か。それとも……。
―まさか、ローラントでは?
これ以上の地獄が繰り広げられるというのか?
嘗てローラントとナバールは結託して、女王と誇り高き美しい鷹を無惨に引き裂いた。
その恨みを女王は未だ忘れず、時を増すごとに強くなっている節がある。
だが……。
―いや、それはありえぬ。 御身を犠牲にしてまで再建した母国を滅ぼす事など……あってはならぬ。
そう、信じたかった。



言い訳
続けば色々な意味で問題作になりそうな話なので、ここで止めます。

少年は基本的に母方譲りなので、父方譲りのホークアイとはあまり似ていません。
少年の顔立ちは可愛い系ですが、リースにとっては恋敵と似ている=醜いってことです。
まぁ、例え父親と瓜二つでも所詮”別人”なので、リースの態度が変わることはありませんが…。

ここで補足程度に。
引き離されたとはいえホークアイが愛したナバールを滅ぼすのは躊躇われたから、散々痛めつけて、彼の唯一の子供であるイーグル少年の身柄さえ手に入れれば、リースにとってナバールはもう用済みです。(復讐と目的を終えた今では再興しようが、滅亡しようが関係ありませんし、正直知ったことじゃないでしょう)
ただ、イーグル少年への人質としての役割があるので、滅亡されても困る…というぐらいです。
それよりも、これからのローラントが……かなり悲惨な道を辿ります。


2012/12/19 小説へ移行
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