未完

聖剣伝説FF外伝 未完 『我が使命』

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注意
オリジナル要素があります。
2→FF外伝→3という時系列が大前提です。
















グランス城の近くには、天高く聳え立つ頂から無尽蔵に水が流れ続ける摩訶不思議な滝が存在していた。
その神秘性から天空に存在するというマナの聖域から流れ出しているとも言われる滝は、水源に乏しい高山地帯であるグランス公国を、強国たらたらしめる生命の恵みだった。
その滝を見渡せる場所に佇み、水の流れを鋭く見据える一人の青年がいた。
年はおおよそ二十代半ば頃。
薄いベージュを帯びた灰色の髪、濃茶色の瞳。彫りが深く目鼻立ちの整った秀麗な顔立ちは、見る者に溜息を齎すほど美しいものだった。
その中でも特徴的なのは、雪と見紛う程に透き通った白皙の肌。
高山地帯ゆえに淡褐色の肌が多いグランス公国において、その肌は一際異彩を放っていた。
魔導師の装いでありながら、機動性を重視した衣装で、僅かに覗かせる部分から魔法のみに頼った非力な人物ではないと判断できる。
彼の名はジュリアス。
グランス公国の主、シャドウナイトの腹心であり、彼の”影”でもある魔導師だ。

マナの聖域に繋がる通路には隠し通路があり、慣れた者ですらも見つけられぬように巧妙に隠し通されていた。
そんな中、幼い頃のシャドウナイトが通路を見つけられたのは、子供ならではの優れた観察眼の賜物によるものだ。
或いは、運命が引き合わせた故か。
この滝は国が滅ぼされてから千年という永い間眠り続けた場所であり、シャドウナイトとの運命の出会いを果たした場所。
そして……。
天を仰ぎ、この世で最も雲に近い頂に存在するものを捕らえんが如く、鋭い眼差しで射抜いた。
マナの樹が眠る、マナの聖域。
―私の……バンドールの悲願を叶える存在。

二千年前、マナの要塞を手中に収められなかったヴァンドールは敗れ、占領という名の”奴隷”に貶められた。その扱いは人間としての尊厳すらも何もかも奪われ、筆舌に尽くしがたい程非道極まるものだったという。
国が滅びて残された民は離散し、流浪の民となったが、過酷な迫害に追われる形で人間の住めぬガラスの砂漠地帯へと逃れ、新たに国を作り直した。
建国してからも、隠れるように細々と生きるしかなかったが、ある契機を境に苦渋の時代は終わった。
世界そのものとも呼べる力、マナの神に最も近しい存在であるマナの樹。
その絶対的な力を、バンドールが手中に収めたのだ。
そこに至る経緯はどの国のあらゆる文献にすらも記されておらず、後世に僅かに残されたバンドール内の文献の中にすら、意図的に隠滅及び抹消された形跡が幾つか残されているだけだった。
ただ確かな事は、バンドールが独占的にマナの樹の力を手に入れ、千年間の雪辱と怨恨の報復とばかりに世界各地を侵略したという事実のみ。

世界屈指の繁栄の只中にあったバンドールだったが、それは千年前に唐突に終わり、文明と民衆は完全に滅ぼされた。
バンドール本土を筆頭に世界各地でジェマの騎士達と便乗した暴徒達による大量虐殺と略奪の嵐が吹き荒れ、バンドール人は皆殺しにされた。
これは歴史から完全に抹消された事実。
しかしジュリアスは消された事実を覚えており、瞼を閉ざせば鮮明に蘇る。
バンドールという”国が滅びた”決定的な日の光景を。
それはジュリアス自身の記憶などではなく、彼に転写された記憶の一部。
筆舌に尽くしがたい差別の歴史を。比類なき繁栄の日々を。そして国の終焉を。
全てジュリアスの頭に焼きつき、国の再興と他国人への憎悪を果てなく駆り立てた。

―必ずバンドールを再興してみせる。
国家再興のために植えつけられた必要な記憶も、千年の眠りに着いていたのも。
全てはこのためだけに。

遠い昔に滅び去った国を再興するなど、人間の力のみでは不可能だが、ジュリアスには最大の切り札がある。
マナの樹という、世界を支える象徴たる力が。
マナに関する豊富な知識と共に、マナの樹を自在に操る術も、全て彼に継承されていた。
絶対的なマナの力さえあれば、グランス公国という隠れ蓑がなくても世界を牛耳る事など容易い。
世界を支配し、バンドールを再興する。
――だが、それは本当に”バンドール”と呼べるものなのか?――
不意に何処からか聞こえてきた言葉にドキリとして、体を強張らせたまま素早く周囲を見回して声の主を捜し求める。
しかし周囲に人の気配は泣く、また呼格を震わさぬ声が語りかけるようにジュリアスの頭の中に響く。
――確かに、マナの樹を使えば国を作ることなど容易いだろう――
――しかしそれはおさめるもののない、ただの器を作るという虚しい行為に他ならない――
「……黙れ……」
拳を強く握り締め、声を払い除けるように振り上げられた腕は力なく下ろされた。
しかし柳眉は皺を寄り、唇は固く噛み締められ、美貌の顔は同様と拒絶に歪んでいた。
常にない程感情が剥き出しにされた姿は、主たるシャドウナイトすらも滅多に見られぬものだった。
――逃げるな、事実から目を背けるな――
―ああ、まだ声が聞こえてくる。
これ以上耳を傾けてはならない。
しかし己の内から響く声は遮る術もなく、さらにジュリアスの精神を追い詰めていく。
――お前が作るべき国に住まう民は、千年もの昔にジェマの騎士という蛮徒共によって皆殺しにされている――
――シャドウナイト? あれは例外中の例外。 他を期待するだけ無駄だ――
――最後の末裔を殺めない限り、お前自身がマナの樹を得ることは不可能――
――国を作るために最後の民を滅ぼすのだ。 これ以上因果なことはあるまい――
耳を澄ませば影より響く囁き声に、シャドウナイトの姿が鮮明に湧き上がった。
ジュリアスと同じく遥か昔に滅び去った”バンドール”人の面影を宿した、只一人の人間。
思えばシャドウナイトが幼少期からジュリアスに構っていたのは、それが理由なのかもしれない。またジュリアスも主にバンドール人の面影が合ったからこそ公私を共にしても苦ではなかった。

己自身がマナの樹を得るためには、シャドウナイトを殺さなければならない。
二人揃って世界の覇権を握ることなど、最初から不可能な話だった。

「……………そんなことは、初めからわかっている」
”バンドール”と名を冠した国には、本来の民はいない。
幾らマナの力を手にしても滅びたものを蘇らせる事など土台無理な話だ。
空の器を作る虚しい作業だと理解していても、頭の中に馬困れた記憶が、他民族の隷属と国家再建を果たすように駆り立てるのだ。
例え平穏を望んでもジュリアスがバンドール人である限り、”平穏”などという言葉からは無縁なのだと悟っていた。
本来ならば千年前に朽ちている筈のこの身が今あるのは、ただ報復と、国家再建のため。
それだけが自分の人生そのものであり、存在意義だ。
ただ迷いがないかと問われれば、答えは否だ。
シャドウナイトには育ててもらった恩義もあるし、何よりも同じ民族の血を宿すもの同士だ。
だが、迷っている時間などない。
最後のマナの一族である少女が長き眠りから覚めた今、運命の時は刻一刻と迫っている。

突風が吹き荒び、風に乗せられた水しぶきがジュリアスめがけて襲い掛かる。
魔力の障壁も張らずに、マナの聖域へと繋がる水を甘んじて受け止めつつ、グランス城を鋭い眼差しで見遣り、君臨する主に思いを馳せた。
―バンドールの最後の末裔を殺し、私は望みを叶える。
ただ、それだけの話だった。









言い訳
シャドウナイトがヴァンドール人の末裔ってのは、選民思想の強そうなジュリアスが恩人とはいえ数十年も他の民族に仕えるかな?というのと、シャドウナイトと聖剣伝説2のゲシュタールって、似ているよな?というのから考えた設定です。

一度国が滅びて、流浪の果てに新たに建国した時にヴァとバが変わったんです。(2時代はヴァンドールだけど、外伝時代はバンドールというように)
マナの女神云々はFF外伝の時代以降から広まっていくと思想(女神説)。それまでは”マナの神”という存在であって、性別すらなかったということで。

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