未完

聖剣伝説HOM 未完 『黒心』2

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苛立ちをぶつけるかのように荒々しく扉を叩く音が、突如部屋の中に響き渡った。
思いも寄らぬ大きな音にキュカが勢いよく飛び起きて、何事かと周囲を見回した後に扉に目を向ける。

ユリエルやテケリのノックには特徴がある。
第一、扉の向こうにいるのがユリエルならば、度重なる隊長のドSに特化してしまった隊長察知センサーに反応するので、断じてユリエルではない。
間違いないというより、間違えては心身…いや、命の危機に晒される重要な問題だからだ。
ジェレミアは昼間の事があるから、まず除外してもいい。
ではアルマかと思うが、彼女はこんな時刻には決して来ない。以前一度だけ誘ってみたのだが、言い方が悪かったのか強烈な往復ビンタを返されたきりだ。
ペダン組や昔馴染み以外で夜に部屋に訪れるものといえば、フォルセナの騎士であるロキくらいだ。
彼とは時々酒を飲み交わすのだが、その場合昼間のうちに予定を尋ねて了承を得てから、という律儀ぶりだ。それは人を散々振り回すどこかのごく潰し王子Rに徹底的に教え込ませたいと常々皆で話し合っている。
―ロジェかなんかだろう。 だったら別に大した用事じゃねえな。
なら、無視しても構わないか。
大きな欠伸を一つ漏らして、ベッドに潜り込む。
しかし布団を被って横になっても、ノックの音は止む事を知らなかった。
―ったく、ロジェの奴しつけぇな……。
いつもならノックをして反応がなければ、すごすごと退散していく同僚だが、今日は殊更粘るようだ。

ノックの音は次第に強くなり、とうとう扉を破壊しかねない勢いにまでなった。
キュカが慌てて扉を開けると、そこには何処となく不機嫌そうなガウザーが仁王立ちしていた。
「……珍しいじゃねえか。 お前が俺のところに来るなんて」
あまり人と馴れ合わないのかいつも一人でいるガウザーだが、ユリエルやロキの部屋に行っているのを何度か目撃されていた。
隊長の部屋に訪れるのは戦術についての打ち合わせだとわかるのだが、ロキの部屋によく出入りする理由は他のメンバー達の中で『ナイトソウルズ七不思議』の一つに数えられている。

改めて観察すれば、ガウザーは怒っていた。
ただ不機嫌などというレベルではない。全身で怒りを表している。
その証拠に奴の毛先は動物の毛が逆立つように宙に逆立ち、普段より鋭い爪が長く伸びていた。
何より、仲間内で綺麗だと評される琥珀色の目は戦闘時よりも血走っており、肉食獣の王そのものだった。
「よ、よぉ。ガウザーじゃねえか……。 こんな時刻に何の用だ?」
ジェレミアに睨まれたテケリのようにビクつきながら恐る恐る声をかける。
どもっていないだけマシだと思うが、端から見れば情けない事極まりない姿なんだろうなぁと現実逃避を起こした頭で考えた。

「キュカ」
鼓膜が震えるような低音。
いつも以上に凄みのある声に、意図せずに肩が振るえて及び腰になった。
絶対敵わぬレベル違いなラスボスを前にして、全身が総毛立ち、冷や汗が際限なく流れ出す。
やましい事など何もない。
なのに天敵に狙われた弱小生物のように、命の危機すらも覚えた。

「大事な話がある。 着いて来い」
有無言わさぬ絶対的な威圧の空気を醸し出す最強種族たる獣人の王を前にして、逆らえる人間などいるのだろうか?
だが、部屋から出れば命の危機に晒されるかも知れぬ恐怖に屈して、首を横に振った。
今は最後の砦たる自室からは一歩も離れたくなかった。
「………俺の部屋じゃ駄目か?」
渾身の力を振り絞った提案に、ガウザーが一瞬顔を赤く染めた。
―ちょっと待て!! 何でそこで顔を赤らめる!?
想像だにしなかった反応にキュカが動揺し慌てるが、ガウザーは咳払いをした後にキュカを鋭く射抜く。
「駄目だ!」

「いいから黙って来い!!」
強靭な力で腕を引っ張られ、抵抗を許されぬまま引きずられるような形で廊下を突き進んでいく。

遠のいていく砦を名残惜しそうに振り返った。
真っ先に目に飛び込んできたのは、大きくひび割れてひしゃげた自室の扉。最早本来の用途では使えない状況だった。
それが今のガウザーの不機嫌を何よりも表しているようで、キュカの全身から血の気が引いていく。
脳裏に蘇るのは、今朝のヴァルダの占い。
今日一日大凶ですので、くれぐれも身の振り方に気をつけてくださいと真剣そのものの面差しで述べた麗しき雪の国の王女。
今日が終われば、大凶からは解放されるという。
だが……。
―……俺、無事に今日を終われるんだろうか?
それが何よりも気懸かりだった。
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