未完

聖剣伝説HOM 未完 『出会い』6

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注意
オリジナル設定があります。
こちらの設定を使っているので、まず一読してください。
サンドアローの両親という、オリキャラのみの話になります。



















店主が一枚の紙切れを手に取り、口角を奇妙に歪めた。
蛇王団が探しているのは、妙な発音の癖のある”連中”。
ナバールから逃亡する直前に一人の幹部が、その連中の一人にたらしこまれてナバールから身を隠す場所を引き出されたという間抜けな話だ。
蛇王団はそのうちの一人を捕らえ、他の者達の居所を吐かせる魂胆だ。
―だが共通語の訛りや癖なんて、数少ねぇ。
獣人とエルフを除けばたった5つだ。それ以外の者など、いたとしても多くはない。
そして、これまで店主が独自に集めた情報をかんがみれば、それらは全て一人の人間による犯行だ。
おそらく何かしらの手段を用いて姿を変えているのだろう。
「それも、もうじきわかることだ」

剣呑さを増していく気に、深く目を伏せた。
―見知らぬ相手に仇を横取りされれば、復讐心を持て余してしまうな。
憎悪が深ければ深いほど、恨みの期間が長ければ長いほど。
仇を討つか、復讐を諦めない限り、その人間の時は止まり続けるのだ。
嘗ての自分がそうだったように。

「本当に、それだけで”あの”蛇王団を始末したのか?」
一国の軍事力に匹敵するほどの規模を誇る盗賊集団だった、蛇王団。
とても一個人の力で滅ぼせるものではなかった。
なのに、彼はただ一人でそれを壊滅させたのだ。
恩人の頼みという、理由だけで。
シルフの真意を読み取るように彼女の淡い金の瞳を真っ直ぐ見据えていたゼファーが目を伏せた後に、毅然と彼女を見た。
「いや、恩人の頼みだけではない。
私自身が、連中を許せなくなっていたからだ」
「何だと?」
「蛇王団を追い続けてきた貴女ならよくわかっているだろう。
連中が何をしてきたのかを」
ダガーを握り締める掌に、更に力を込めた。
連中が何をしてきたかなど……よく知っている。

彼の喉元に突きつけているダガーを下ろそうかどうしようかと迷っていると、その惑いを読み取ったのだろう。
「シルフ。 もういいだろう、武器を下ろしてくれ」
その言葉に頭に血が上ったが、すぐに平常心を取り戻した。

人の気配を察してシルフがダガーを構えたまま扉に視線を向けた途端、瞬間的に膨張された気によって体が後ろに吹き飛ばされて壁に背中を強か打ち付けた。
先程までシルフが手にしていたはずのダガーは、ゼファーの手の中に収められていた。
痛みを訴える体を鞭打つ形で身体を起こそうとした時、扉が蹴り破られる形で勢いよく開け放たれた。

その姿を見て、シルフの鼓動が停止した。
数年追い続けた、最も殺したかった仇。
反射的に愛用のダガーを手にしようとしたが、一つはゼファーの手の中にあり、腰に提げていたもう一つは先程の衝撃でシルフとは反対側に飛ばされていた。
恐らく気を使い素早く抜き取って、放り投げたのだろう。クォーターだからこそ出来る離れ業だ。
短く舌打ちを零し、暗器に手を伸ばそうとしたが、影に遮られて顔を上げる。
ゼファーがシルフの姿を隠す形で、立ちはだかった。
「何者だ?」
シルフと相対していた時とは異なる、凍えるような冷徹な声。

男が剣を抜き、ゼファーの顎に刃を当て、顎を上げさせる。
「貴様、俺達を襲撃した連中と何かしらの繋がりがあるようだな?」
蛇王団襲撃前に幹部連中をたらしこんだ女達と、目の前にいる男の言葉には独特の発音の癖と訛りがあった。
店主の情報もあり、高い確率で関係者だと判明した。
「連中? さて、何のことか」
「とぼけるんじゃねえぞ。
早く言わないと、この綺麗過ぎる顔が見られたものじゃなくなるぜ」

「ああ、お前がベラベラと話してくれたおかげだ」
蛇王団がナバールから逃れるために隠れアジトに引き篭もる事も、その手勢も何もかも。
「礼を言う」
整い過ぎた端整な顔が、愚かな男を嘲笑った。

肘が落ちるのを見て斬られたのだと理解した直後、凄まじい痛みが襲った。
「……貴様ぁ……!!」
後ずさりしながら、青年の憎らしいほどに整い過ぎた顔を睨む。
鋭い光が一閃した。
いつの間に抜かれていたのか。
漆黒の刃の東刀を勢いよく振るい、粘着性のある血を水滴を弾くように呆気なく払い落とした。
―血?
シルフの視線が男に向けられる。
呆然と立ち尽くしていたはずの男の首がずり落ちて、巨大な体躯が崩れ落ちた。
鍛え抜かれたシルフですらも目にも留まらぬ早業に、彼女の肌が粟立った。
彼は気で結界を張り巡らせていたのだろう。至近距離で首を落としながらもその体には返り血一つついていなかった。
―ああ、なんて……。
今まで強い連中を見てきたが、ゼファーは”別格”だった。

茫然自失と切り落とされた幹部の首を無機質な目で見つめる。
夢にまで見た仇は、十年以上の時を経ても変わっていなかった。
親友を……姐と慕った女性を目の前で殺した張本人。
憎悪などという言葉では、計り知れない存在だった。

シルフの気の乱れを感じ取り、彼女を見る。
「シルフ?」
ゼファーが声をかけるのと、シルフが手にしたダガーで切り落とした首の脳天を深々と突き刺すのとは同じだった。
感情を極限まで押し殺した無表情でダガーを抜き取ると、その顔を滅多刺しにしようとダガーを構え直して振り上げた。
『Sylph!!』
聞きなれぬ言葉と共に、手にしていた筈のダガーが抜き取られた。

『こんな馬鹿な真似は止めろ!!』
言葉はわからなかったが、何を言っているのかは不思議と分かった。
「ゼファー……」
「シルフ、貴女は誇り高い戦士だ。 だから遺体を辱める真似はやめるんだ」
――例えそれが憎い仇であっても。

「……こいつは、私の姐さんを……殺した……」
嗚咽交じりで力ない言葉は、常に溌剌と力強い声とは全く異なっていた。
例えシルフをよく知る者が今の彼女の声を聞いても、同一人物のものと分からないほどに。

一度堰を切った涙が滝のように流れ出して、彼の胸に縋りつくように顔を埋める。

背中に手を伸ばして抱きしめようとするが、躊躇うように目を伏せた後に、肩に優しく手を置いて、頭を抱え込んだ。
体を震わせるシルフを安心させるように、頭を労わるように撫でる。
「大丈夫だ」
こうすれば泣き顔も見られない、と。
彼の意図を察して、シルフがそっと目を閉ざした。
痩身な体躯とは裏腹に、胸板はガッシリとして硬かった。
立派な戦士なのだと思うと同時に、男なのだと思った。
けれど不思議と嫌悪感もなく、心安らかでいられた。

荒れ狂う感情を涙に変えて、落ち着いた頃だった。
「……奴等は、姐さんを辱めて、殺した」
暗い目で極限までに感情を押し殺しているのだろう。声音は寒気をも押すほど淡々としていた。
嗚咽交じりの告白に、ゼファーが目を伏せる。
軍人だった彼は、戦場特有の狂気が身に染みており、当時何があったのか容易に察せられた。
仕官であった彼は国の顔たる軍人として、国の名誉と誇りを汚すような真似は決してさせなかったが、他では黙認されていたころだから。

「ゼファー」
彼の紅玉の瞳を真っ直ぐ見つめる。
「…………今は、一人にして欲しい……」
その声にはまだ力はなかったが、先程に比べれば生気は宿っていた。
「………わかった」
彼女の様子時から、大丈夫と判じたゼファーが頷く。

扉の向こう側からは嗚咽混じりにすすり泣く声が聞こえる。
目を伏せたまま扉に背を預けていたが、顔を上げる。
今すべきことをなすため、そして情報を漏らしたであろう者への処置を兼ねて足を踏み出した。

店主への催眠術を終えたゼファーが扉の前に立ち、気からシルフの精神状態を読み取る。
酷く乱れて弱っていた先程とは違い、今の彼女の気は力強く安定していた。
そのことに胸を撫で下ろして、彼女に声をかけてから部屋の中に足を踏み入れた。

先程まで幼い少女のように泣いていたとは思えない、戦士としての顔で毅然と彼を見返す。
泣いていたのは幻かと目を疑いたくなる変わりようだったが、その目は充血して赤く腫れていたことが先程まで泣いていた証だった。
「大丈夫のようだな」
「この程度で参るほど、私は弱くないさ」
安堵と共に紡がれた声に、シルフが勝気に笑った。

言い訳
当初考えていた話の流れを色々と変えました。

ゼファーですが変化の術で美女の姿に成りすまして蛇王団の幹部に近づき、酒と薬を併用した催眠術で情報を聞き出したんです。
女の姿、それも美女なら警戒される事なく容易に近づけて、言葉巧みに誘えば二人きりになれますから。(男であり、尚且つ共通語については日常会話に困らない程度のゼファーがうまくその手の話が出来たかは疑問ですが)
そうして波風立たぬように”処理”していたけれど、予定が変わったのでこのような行動をとりました。
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