未完

聖剣伝説 『女神の騎士』 未完 【Forcena】2

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副題 『フォルセナの騎士』2















走る。
幾ら尊敬する英雄王の言葉だからと言って、これでは自ら死にに行くようなものだ。
俺が成すべき事はフォルセナに戻って、報告する事なのに。
切羽詰った少女の悲鳴と、大地を削る音が聞こえた。だが、その音に恐れをなして立ち止まることなく、更に速さが増した。
――そんなことはわかっているんだ。
これが命を捨てる行為に他ならないということなど。
だが……。
少女の悲鳴と妹のウェンディが重なった。

大岩を横切り視界が大きく開けたとき、それが飛び込んできた。
灰色の尖った鱗を持つモールベアの変種に、追われる少女。
本能的な恐怖で足が竦む。
このまま引き返したい。だが……。
妹と同じ年頃であろう、少女を見殺しには出来なかった。
気合を込め、腹の底から獣じみた雄叫びを上げた。
その越えに少女と魔物の注意が自分のほうに向いた隙に、勢いよく小高い崖から飛び降り、少女を庇う形で魔物と対峙する。

圧倒的な実力差を前にして、怯まずに剣を構えたままで射られたのは、我ながら奇跡と呼ぶに値した。
こめかみからは冷や汗が流れ、剣を握る手に汗が滲む。

「おい、娘。 こいつは俺が引き受ける。その隙に逃げろ」
魔物を睨みつけたまま、自らの後ろに留まったままの少女に声をかける。
自分の実力では到底敵わぬ。だからこそ、足止めしている僅かな時間すらも無駄にして欲しくなかった。
しかし走り去る音は聞こえないばかりか、呆れたような溜息が漏らされただけだった。
「あなた、馬鹿ねぇ」
「何をっ!?」
我が身を呈して助けてやろうというのに、聞き捨てならぬ台詞にデュランの頭にカッと血が上り、怒声と共に振り返るのと、鼓膜を破壊しかねないほどの高音が背後から聞こえたのは同時だった。
耳を押さえながら何がおきたのか分からぬまま魔物を見ると、三級に属する化け物の体は地に伏せられ、所々焦げて小さな雷の筋が走っていた。
漸く先程の音が魔物の悲鳴だと呆然とする頭で理解したとき、少女がデュランの前に行く。
何らかの手段を用いて魔物を倒した少女の後姿に、ぞわっと全身の毛が逆立つような言い知れぬ恐怖が走った。
「流石、三級の魔物だわ。 これぐらいじゃ仕留められないようね」
息の根は止められずとも、動きを封じられたことは大きかった。
眼を閉ざし、呪文に必要な分量のマナを取り込み、魔物めがけて白魚のような細い指を向けた。
瞬間、少女の指先から炎の龍が現れて、巨大な口を開き魔物を丸呑みするかのように食らい、取り込んでいく。
本来魔法を用いる際には力ある歌である呪文を唱えなければならない。それは長い交配の末、魔法に特化した民族アルテナ人でも同じだ。
その法則を無視できるのは、広い世界でもたった一つ。中級国イルージャ人・樹の民だけだった。
天に届かんばかりに渦巻き柱を作っていた炎が消え去った頃には、焼け焦げた大地に炭化した死骸らしきものが残されているだけだった。

我が目を疑いたくなるような光景に、デュランが言葉をなくして唖然と見つめる。
―何が、起きたんだ?
長年勇敢なフォルセナ騎士達を悩ませてきた魔物が、あっという間に死んだ。しかも年端も行かないような少女によって。
典型的なフォルセナ人であるデュランは、他国の事に関しては無知に等しい。
”魔法”という概念すらなく、初めて目にした魔法をまるで神の所業と等しく見えた。

少女が振り返り、デュランを見つめる。
――どくん。
デュランの心臓が、高らかな鼓動を打った。

今まではそんな余裕など微塵もなかったが、改めて見れば少女は美しい顔立ちをしていた。
それだけでなく、雪のように白い髪と肌、血の色がそのまま浮き出た虹彩といった非常に人の目を惹く異端の容貌。
花を模したであろう透き通る青色のワンピースは、可憐な少女を妖精に見せた。

「ありがとう、助かったわ」
まるで歌うような美しい声。
それは共通語だというのに、他国の人間から聞き難い野蛮な発音、響きと蔑視されるフォルセナ人の言葉とは全く異なっていた。
イルージャの言語は、麗しの歌。
そのような評価などデュランは知る由もなかったが、誇らしいはずの自分達の言語が急に居た堪れなく感じた。

「………どの国の人間かは知らねえが、俺達の国に何の用だ? ”上民”様よ」
幾分かの警戒心を宿した鋭い眼で、少女を見据えた。
上民、下民。それは各国ごとに定められた等級よりも上や下の国の民を呼ぶ言葉でもある。
デュランには樹の民に纏わる知識は皆無だったが、少なくとも最下級国の人間ではない事は分かっていた。
少女の鎖骨の中心に刻まれている国紋は見たことがなかったからだ。

「私はイルージャのフェアリーよ」
「……イルージャ……?」
聞き覚えのない国名にデュランが首を傾げた。
「……まさかとは思うけれど、知らないなんて事はないわよね?」
暫くの沈黙を置いて、デュランがあっと声を上げた。
「ほら、あれだろ。 東南の中級国」
限りなく上級国に近い中級国のイルージャ。
最下級国であるフォルセナとは全くの繋がりがないため、思い出すのに時間がかかっただけだ。

中級国の人間。だとすれば、ますますおかしい。
連中は最下級国の者を同じ人間と見なす事はなく、同じ空間を共有する事すらも毛嫌いする。
しかし目の前の少女はそんな事を気にしていないとばかりに、デュランと話している。
身分の分け隔てのないフェアリーの態度が、不気味に思えた。
「あなたは?」
「……俺か。 俺はデュランだ」

「樹の民は皆生まれながらにして魔法が使えるのよ」
それはアルテナ人でも同じだったが、全てではない。
別名マナの一族とも呼ばれるほどマナの恩寵深い樹の民は、アルテナ人が数十年以上かけて到達できる領域に達していた。
ましてや他国の者など、一生を費やしても樹の民の領域に踏み入る事は出来ない。
ナバール人も同じようなものであるが、あれはマナを用いる魔法ではないからまた別だ。

「俺が命を捨てる覚悟で身を挺したのは、無意味だったって事か?」
「そんなことはないわよ。 幾ら私達でも集中できなければ魔法なんて使えないもの」
必要だったのは、僅かな時間。
それを与えてくれた彼は、命の恩人だった。

少女がデュランを観察するように見つめる。
深紅の瞳に見入られ、デュランが頬を赤らめて顔を逸らしたが、今度は顎を掴まれた。
そのやり方がまるで奴隷の値踏みをしているようで嫌悪感が走り、少女の手を跳ね除けた。

「………デュランか。 よし、あなたに決めた!」
「何が?」
「ねぇ、私をウェンデルに連れて行ってくれないかしら」
それは提案ではない。
断定した物言いだった。






言い訳
レベルで現すなら、この時点のデュランはLv1でフェアリーはLv70越えです。
炎の竜云々は聖剣2のLv8のファイアーボールからきており、フェアリーはLv8の炎魔法が使えるということになります。
Lv1とLv70越えじゃ、超えられない実力差があるって話です。

『女神の騎士』本編ではどの国も生まれたばかりの子供にその国の紋章と戸籍番号を刻むことが、ヴァンドールによって義務化されています。
刺青の方法は国によって異なりますが(上級国だったら、体の負担にならないように肌に色素を定着させるという方法かな?)
これはヴァンドールが世界を牛耳ってから嗜好されたものなんで、本編時代では5千年にも渡る慣習です。
(但し上級国では反発もあって、4千年前からですけれど…)

上民や下民という呼び方ですが、5千年にも渡る国の階級や等級差別が行われているような世界ですから、こうした言い方も不自然ではないと思います。
彼らの認識からしたらあくまでも区別的な呼び方であって、差別的なそれとはまた違うんでしょうね。

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