短文

『短文集』13

 ←お知らせ+リスト →聖剣伝説3 お題 未完 『Hope Isolation Pray』
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BOF4  1
バジリスク  6
火星物語  2
聖剣伝説3  1











『凍てついた心』
あれ程燃え盛っていた人間への憎しみの業火は、帝都に着くと同時に静まっていた。
―たった、これだけのことだったのか。
着いたと同時にそう思ったのは、覚えている。
帝都に着く。
そのために失われた犠牲は、なんと大きかったことか。
自分と関わったばかりに命を奪われた大切な存在の笑顔と、鈴の音が鮮明に蘇る。
全てを焼き尽くさんとしていた劫火は消え失せたが、今はそれよりも恐ろしい…全てを凍りつかせる何かが彼の胸の中に巣食っていた。
BOF4 フォウル (帝都到着後)2012/10/7

『提案』
「……里の方針に逆らうとでも言うのか?」
「ああ」
夜叉丸の問いに何の衒いもなく左衛門は答えた。
「こんな馬鹿げた掟に従う必要もなければ、その謂れもないからの。
儂は弦之介様を心底尊敬しておったが、今回ばかりは失望した」
鋭く冷ややかな目で語り終えた後、薄く目を開いたまま身を乗り出す。
「お主達も儂らを殺して抜け忍になったところで、安住の地なぞ何処にもないぞ。
それよりは、恋しい者同士ここで暮らした方が遥かにマシというものじゃ」
抜け忍となった者の行く末は忍者ならば誰もが知っている。そんな目に遭いたいか?と目で諭した。
「それに、妊婦を抱えたまま忍者の追撃を逃れられると思うておるのか?」
最大の懸念を口にされ、二人が押し黙った。
引き裂かれるのならば、せめて相手を殺して二人で手を取り合って逃げようと決めた上で甲賀へ来た。
だが、そこで齎された提案は死すらも覚悟した二人の心を揺さぶった。
やや間を置いて蛍火が警戒しながらも口を開く。
「………何ゆえ、私達を選んだのですか?」
「お主達ならば断る理由なぞなかろう」
思わず激昂して立ち上がろうとした夜叉丸を、蛍火が制す。
確かに、この甲賀者の言う事にも一理あった。
バジリスク 左衛門+夜叉丸+蛍火 (あるシリーズの1シーン) 2012/10/7

『共犯者』
「儂らにとっては、新しく弟妹が増えたようなものじゃ」
豹馬の詰問に怖じることなく、飄々と答えた。
当初、四人の共同生活は思い出すだけでも頭が痛くなるほどギスギスしたものだったが、秘密を共有する者同士の連帯感は皮肉にも宿敵同士である伊賀、甲賀という垣根を越えて強い結束を生み出した。
今では和気藹々とまではいかずとも、左衛門を長男とした四人兄弟という体をなし、比較的円滑な共同生活を過ごしていた。
「あの二人は感情が表に出る素直な性質じゃからの。 わかりやすくて助かっておる」
伊賀の恋人…いや、夫婦は年若く、妹よりも幼かった。そのためか最近ではお胡夷にも”姉”としての意識が芽生えているように左衛門には見受けられた。
「……里の方針に逆らっている、とわかっておろう」
重く放たれた言葉に、左衛門の目が薄く、鋭さを伴って開かれた。
バジリスク 左衛門+豹馬 (あるシリーズの1シーン) 2012/10/7

『不可解な男』
並んで立ち去る二人の後姿を見送る形になった丈助が、言葉もなく立ち尽くす。
唖然としていたというのもあるが、何よりも解せなかった。
―左衛門殿は何を考えておるんじゃ?
冷静沈着で滅多な事では感情を表に出さぬ、まさに忍びの鑑のような男だが、今はその性質が厄介だった。
問いただそうとしても飄々と受け流され、何も聞けずじまいに終わっていた中、とうとう実力行使に出たのだ。
直情型らしき伊賀者を挑発して口を割らせようとしたが、いきなり黒縄を用いられて焦った。
刀剣ならば肉で白刃取り出来よう。しかし摩擦力すらも殺傷力に過剰される黒縄は、彼と相性が悪く危険だった。
左衛門やお胡夷以外の甲賀者に未だ心を許さぬ、伊賀者の鋭く殺気に満ちた眼差しは、今思い出しただけでも冷や汗が流れ出してくる。
―本当に、どうしたんじゃろうな?
この世の何よりも妹を溺愛していた左衛門が、その相手を許すことや余所の女に手を出すことも、丈助には到底信じられなかった。
バジリスク 丈助 (あるシリーズの1シーン) 2012/10/7

『疑念』
おかしい、ありえない。
念鬼の頭に巡るのは、それしかなかった。
自分の知る夜叉丸と蛍火ならば、恋しい者の伴侶となった者を生かしておくわけがない。
そもそも二人が甲賀者を殺して抜け忍になる時は、出来る以上の手助けをしようと待っていたが、何年もその気配すらなかった。
ありえぬ事態に謎を解き明かそうと、こうしてこっそりと彼らの住居に忍び込んだのだ。
己が気配を完全に消して、せいぜい明り取り程度にしか役に立たぬ小さい格子窓から部屋の中を覗き込む。
そこにあった光景に我が目を疑った。
それは本来あるべき光景だが、今はあってはならぬ光景だった。
外に漏れ聞こえぬように声は押し殺されていたが、その分激しい息遣いと肉体同士がぶつかる音。顔を覆いたくなるような卑猥な音が室内を満たしていた。
互いに離さぬとばかりに絡み合い、深く繋がる二人の男女。
――夜叉丸と蛍火が、睦み合っていた。
思わず声を上げた瞬間、両者の鋭い眼光に射竦められた。
バジリスク 念鬼 (あるシリーズの1シーン) 2012/10/7

『化粧』
白粉を塗り、紅をさす。
鏡に映し出された姿に、可憐な少女の頬がほのかな薔薇色に染まった。
白無垢を纏った花嫁は、これから恋焦がれた許婚の元に嫁ぐ。
バジリスク 蛍火 (夜叉蛍で結婚直前) 2012/10/18

『遺伝子の不思議』
信じられない、ありえない。
皆の顔に書かれていたのは、その一言のみ。
その中でもフォボスの驚愕は凄まじく、思わず相違点を探して玉座に座る者を凝視してしまった程だった。
しかし幾らガン見しようが、目の前の事実は変わることなく、当然の如くその場にあり続けていた。
思わず天を仰ぎ、溜息を漏らしては幾許かの現実逃避を行う。
時を渡る旅でフォボスが出会ってきた歴代キウィ王家の王達と、目の前にいるカンガリアン王キウィ103世。
皆、細かな違いはあれど、”同じ顔”だった。
―…キウィ王家って、一体……?
2世、25世、64世。そして103世……。
歴代王族達を並べて比較しながら、底知れぬ不気味さを覚えた。
火星物語 フォボス (補完話。遺伝子の究極の謎) 2012/10/29

『遥かなる楽の音色』
未来の世界では僅かに文献に名を残すだけの伝説の楽器から奏でられるのは、神秘に満ちた幻想的なメロディ。
湿度が高ければ芯が破損して、二度と音を奏でられなくなる程の繊細な楽器だという。
それは水のない時代でしか存在できない、過去の遺物だった。
もう二度と聞けない、失われた旋律に耳を澄ませて、心から聞き惚れる。
火星物語 フォボス (アンサーの時代にて) 2012/10/29

『発露の一端』
漆黒のドレスを纏った冷酷無慈悲な麗しき女王は供を連れずに、闇に覆われた牢獄に囚われたナバール首領の前に姿を現した。
国と親の仇を前にしても、亡国の民の命運を担う彼に逆らう事は許されず。
矜持の高い眼光を憎悪と怨恨に漲らせながらも、頭を下げることしか出来なかった。
「ナバール首領、イーグル」
冷淡で艶やかな笑みを伴って、感情の宿らぬ無機質な声で少年を呼ぶ。
しかし少年は女王の望みのままに、”醜い顔”を上げる事はなかった。
魔女の顔など見たくもないと言わんばかりに、顔を伏せたまま拒絶する姿に、女王の胸に去来した想いは――何か。
我に返った時には逃亡を防ぐために手足の腱を切られた少年の顎に白魚の指をあて、薄い唇を啄ばんでいた。
驚愕した少年は渾身の力を篭め、女王の舌に噛みつき、嫌悪も露わに血を吐き捨てて、蔑視の眼差しで女を睨む。
口元に流れ出す血を拭い去った女王は、少年の姿など目に入らぬとばかりに、足早に立ち去った。
階段を駆け上りながら、そっと唇を指でなぞる。
――少年の唇は、ホークアイと同じだった。
聖剣伝説3 リース (『Insane empress』の1シーン) 2012/11/3

『終わりなき怨念』
骸のない父の墓前で、母は可憐な顔を鬼のように歪めて最愛の人を奪った甲賀への憎悪を延々と説いた。
それは無知という純白を、怨念に満ちた黒に染め上げるように。
毎日繰り返し刷り込まれて、いつしか幼い娘の心にも「甲賀者」への怨恨と殺意が根深く刻まれてゆく。
バジリスク 蛍火+α (もし争忍が途中で終わっていたら。断ち切れぬ負の連鎖) 2012/11/10
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