未完

聖剣伝説3 お題 未完 『Hope Isolation Pray』

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注意
この設定を使っています。
オリジナル設定や要素が強い話です。
イーグルに妻子がいるという前提です。(早熟傾向のあるナバールだから、二十代半ばだったら妻子がいても当然だと思うので)












砂の海と岩石の中、巧妙に隠された要塞からそう離れていない巨大な洞窟。
一つの都市が丸ごと入っても余りある広大な規模の洞窟は明らかに人為的に作られたものだと察せられるが、それがどのようにして作られたのか皆目見当すらつかなかった。
一万年経ても崩れぬ強固な岩盤を途方もない規模で抉り掘って、形を整えられた場所。
ここは遥か昔から使われているナバールの共同墓所だった。
光の入らぬ洞窟の中にあって薄明るいのは、光が洞窟全体に行き届くように計算されつくした場所と角度に無数の鏡とプリズムが設置されているから。
数え切れぬほど整然と並ぶのは、天を見上げるほどの巨大な石棚。その中に骨壷と名前の刻まれた石版が収められていた。
その一角。他とは異なる様相の区画は、ナバールの上流層の墓所。
そこに一人の青年が立ち、ある骨壷と石盤を見つめていた。
「……イーグル……」
低く美しい声で呟かれたのは、そこに眠る人物の名前。
淡い金の瞳を伏せ、静かに眼を閉ざすと兄であり親友の冥福を祈った。

「ホークアイ」
背後から聞こえた穏やかな声に青年が振り返る。
そこにいたのは深緑の瞳と漆黒の髪を持つホークアイよりも幾つか年上の、可憐な面差しの美しい女性だった。
「カナリア」
カナリアと呼ばれた女性が儚げに微笑むと、イーグルの骨壷の前に行き手を合わせた。
旅から帰ってきてから極力顔を合わせないようにしていた義理の姉の登場に、ホークアイが顔を曇らせる。
イーグルが死んでしまったことについて、自分にも責任の一端があるため兄の妻子と合わせる顔がなかったし、何よりも怖かったのだ。
普段なら気で彼女の接近に気づいてすぐさま立ち去るのに、それも出来ないほど瞑想していたのか。それとも彼女自身が極力気を押さえ込んでいたのだろう。
恐らく、その両方だと彼は見当をつけた。
眼を閉ざしていた女性がゆっくりと深緑の瞳を開くのを待ってから、ホークアイが口を開く。
「…一度もイーグルの墓に来たことがないと聞いていた」
「ええ、なかったわ。 ……今までそんな状況ではなかったし、何よりあの人が死んだことを受け入れたくなかったもの」
美獣達、魔界の者によって混乱の極みにあったナバール。
そんな中で子供を抱えた未亡人が、最愛の夫の死と向き合うには酷過ぎた。

ホークアイの面差しの中からイーグルの面影を探そうとして、それも無駄と自嘲した。
父方の祖母と瓜二つだというホークアイと、フレイムカーンの祖母譲りのイーグルとでは、甥と叔父の関係にありながらも似ているところなど皆無に等しい。

―イーグル……。
大きな深緑の瞳が潤むが、涙として流れ落ちることはなかった。
物心着く前から徹底した感情制御の訓練を受けるナバール人は、滅多な事では感情が揺れ動いて泣く事はない。
それでも、感情を自制しているだけであって、決して何も感じていないわけではない。
涙を流したくとも流せぬこんな時は、見苦しいまでに泣き喚ける只人が羨ましく、妬ましかった。

お互い生まれた時からの許婚だった。
大人になったら結婚するのだと両親や周りから聞かされるまでもなく、二人にとって生涯の伴侶はお互いしかありえなかった。
幼い頃から何をするにもいつも一緒で、もう夫婦になったのかとよくからかわれたものだ。
鮮明に蘇ってくる幸せな記憶に、胸が震える。
12歳の成人の儀を迎えると同時に結婚して、三人の子宝に恵まれ、このまま年老いて死ぬまで一緒にいられると信じていた。
しかし最愛の人の命は奪われ、彼女の夢は飛沫の泡となって消え去った。

「でも……」
沈痛な面持ちで顔を伏せ、イーグルの墓に背を向けて、暫しの沈黙の後に漸く口を開いた。
「……再婚が決まった事を、報告しなければいけないもの」
極限まで感情を押し殺した淡々とした女性の声に、ホークアイが大きく目を瞠った後に顔を逸らした。
ナバールでの婚姻はその血を残すために行われるもので、それ以外の要素は基本的に入り込む余地がない。例外はあるが、所詮”異端”に過ぎない。
例えどんなに仲睦まじかったとしても、伴侶が亡くなれば別の相手が宛がわれるのは常識だった。
そして亡き伴侶のために生涯操を立てる事を許すほど、ナバールの血に対する執着は優しくない。
「そう……か……」
本当にそれでいいのか、まだイーグルの事を愛しているんだろう。
そう口にしようとして、やめた。


「ホークアイ、ジェシカを泣かせたら駄目よ。
あなたが只人を好いているのはわかっているわ。 ……でも所詮は只人。私達とは交じり合うべき存在ではないものよ。
ジェシカと結婚してあげて。
一度も好きな人と添い遂げられないまま、好いていない男と肌を合わせ、子を成さなければならないなんて……。あまりにも辛すぎるわ」
これからの自分自身と投影しているのだろう。声を震わせて諭すカナリアを見ていられずに、ホークアイが深く目を伏せた。
そのホークアイの手を、カナリアが握り締める。
かすかに剣だこの名残のある繊細で綺麗な手。
姉として憧れ慕っていた女性の手と、握り締められた自分の手に目線を落とす。

「あなたの義理の姉としての、最後のお願いよ」
「……駄目だ、カナリア。
俺とジェシカは血の繋がった家族だ。 結婚だなんて、出来ない」
幾ら近親婚や血族婚を推奨するナバールであっても、ホークアイはそれを受け入れる事はできなかった。
考えただけでも嫌悪感が先立つ。
いい加減ジェシカと結婚しろと周囲から迫られても、彼女を”妹”以上に見ることが出来ずに頑なに拒絶していた。
ジェシカが好きな事は確かなのに、ここまで結婚を拒絶する自分がおかしいのかと思い悩んだ事も数知れなかったが、血縁関係にあると知ってからは血が拒んでいたのだと納得できた。

「血縁者と言っても、あなたの母上とは母親が違う叔母でしょう。
親兄弟と結婚しろと言っているわけじゃないのに、どうしてそこまで拒むの?」
心底理解できないというその言葉に、ホークアイが深く落胆した。
他国の民ならば容易にわかることでも、自国の人間には全く理解されないことが。


立ち去っていくカナリアの後姿を見送る。
「……例え非道と罵られようとも、俺の伴侶は……リース以外にありえないんだ」
音として出されなかったその声は、誰の耳に届く事もなく消え去った。


言い訳
ナバール視点から見れば、幼い頃からの許婚を振ってリースと添い遂げようとするホークアイは酷い人間になるんだろうな……。(ホークリ的にはよし、そのまま突き進め!!と言いたくなるけど…)

以前からイーグル妻子持ち設定(奥さんは美人)というのは考えていたので、漸く出せました。
ちなみに彼らが14歳の時に、初子です。(…親父より早い…。ファルコンが生まれたのだって、フレイムカーンが16、7歳の時なのに…)

最愛の人を亡くしたカナリアの孤独とか、同郷者に理解者のいないホークアイの孤立とか(血族婚を推奨している社会風土で、それを拒むホークアイを理解しろと言われても無理だと思う)
様々な孤独が合わさっての話をイメージしたんですが……。なってませんね。

徹底した感情制御や泣けない云々は、ゲームでのホークアイに泣く姿がないのと、『raven』設定によるもので、暴走を防ぐための名残です。
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