未完

聖剣伝説3 未完 『かの国の料理』

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「……ホークアイ、フォルセナ料理ってあの……」
「言うな、リース。 ……思い出したくない記憶なんだ」
「それは皆、同じですよ」
忌まわしい記憶に柳眉を寄せて、深く息を吐いた。


フォルセナ料理は大昔から常識外れに不味く、味覚を破壊した挙句体を壊す劇薬料理として広く知られていた。
――フォルセナ料理は”料理”ではなく、味覚を殺す毒物だ。
とか。
――殺人料理を意味する『ヴァルセイナ』は「フォルセナ」という音が訛ったものだとか。
その他諸々の単語や諺の語源になるほど、フォルセナ料理は激不味料理だということは、フォルセナ人以外なら誰もが知っていることだった。

旅を初めた当初は、皆フォルセナ料理に纏わる事柄を”大袈裟”だと笑い、大したことないだろうと甘く見ていた。
それが、悲劇の始まりだった。
初めて料理当番になったデュランが作った料理は、見た目からしても吐き気を催すほど陰惨なものだった。
料理を作れるというのは嘘か?と恫喝したホークアイに、デュランはそれが料理だと真顔で言ってのけた。
絶句する皆を尻目に、傭兵仲間からも美味しいと太鼓判を押されているから安心しろと力強く語ったのだ。
とても嘘をついているとは思えぬ彼の様子に、ホークアイが目を閉ざし、鼻を塞ぎながらも一口口の中に入れた。
その瞬間、味に煩い民族柄幾万年を超える美食の歴史を誇るナバールの中枢育ちの舌が肥えているホークアイは、味覚を破壊されるような衝撃を受けて失神してしまった。
それは他の皆も同じであったらしく、アンジェラやシャルロットは一口食べた途端吐き気を催し、リースは食材を無駄にしないという使命に耐えるべく、鬼のような形相で半分を食べるという偉業を成した。
ケヴィンに至ってはこんなの料理じゃない!!と叫びながらデュランめがけて鍋を投げ捨て、泣き崩れていたそうだ。
後々まで仲間達の間で語られる事になる惨事の後、俺は料理を作れる!とかお前達の味覚がおかしいだけだ!というデュランの抗議を完全無視して、料理当番から外した。

正直な話、デュランの作る料理は不味い。いや、不味いなどという言葉では言い表せない程だ。
あれは毒物であり、劇薬だ。
女三人は料理のいろはすらもわかっていないど素人だが、デュランはそのような問題ではなかった。
しかも本人の言葉では、あれが一般的なフォルセナ料理だという。

自分達の料理が不味いと全く認識していないデュランに、正しい調理方法をホークアイが懇切丁寧に教えた。
しかし、当の本人は「これがフォルセナ流だ」と頑として譲らないばかりか、ホークアイにまで劇薬製作を強要したのだ。
拷問用ならば毒の一種として作れる。しかし料理としては受け入れがたいその要求にホークアイは辛辣な言葉と共に拒絶した。


紅蓮の魔導師を筆頭としたアルテナ軍の侵略を食い止めたとして、彼らを持て成すためのパーティが王宮で開かれる事となったのだ。
一国の王主催のパーティに、主役が登場しないわけにはいかず。

幾らなんでも王宮料理が味覚デストロイな代物なんてありえないと、アンジェラとシャルロットは期待を寄せているようだが、”あの”料理を受け入れるフォルセナ人の王宮なのだ。
その一点で他の三人は絶望的な思いを抱いていた。


「……ドタキャンするってのは、駄目か?」
「駄目です。 そんな事をしたら英雄王様の顔を潰す事になりますよ」
爽やかな怖い笑顔のまま、一蓮托生と言わんばかりにホークアイの手を握り締めて離さないリースに肩を竦めた。
「ハハハ、冗談さ。 言ってみただけだ」
9.5割は本気だったけれど。
それほどまでに逃げ出したいのだ、フォルセナ料理から。



差し出された料理に、笑顔で美味しそうに食べているのは仲間達の中でデュランだけ。
他の皆は顔を顰め、涙目になりながらも食べられる範疇だったが、ホークアイには無理だった。
視覚からの情報の時点で体が受け付けないのか、全く動かないのだ。
顔面が蒼白になってゆき、冷や汗が止め処もなく流れ出す。
胃酸が喉にこみ上げてくる。
見ているだけで、”これ”だ。実際に食べれば失神は免れない。

スプーン一杯分。
それだけを口に運んだ瞬間、脳天に突き上げてくる衝撃にホークアイの意識が成す術もなく遠のいていく。

砂漠地方はナバールの影響で味に煩く、美味しいものが数多くある。
その中でも、ナバールの中枢ともなれば日々の食事は数万年という経験から生み出された美食の数々だ。
料理の味だけでなく、香りや見た目や料理の並べ方など。
五感の全てにおいて極上のものを楽しむものだというのが、ナバール料理の常識だ。
そんな環境で育ったホークアイにとって、他国の料理は決して口や表情には出さないが不味すぎて食欲など湧かず、ナバールにいた頃からは信じられないほど小食になっていた。
そのような繊細な一面を持つ彼の体が、劇薬と称されるほど不味いフォルセナ料理を受け付けるはずもなく。
幼少期からあらゆる毒物に慣らされていたナバール忍者は、フォルセナ料理を前に二度倒れた。

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