未完

バジリスク 未完 『違和感』

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注意
子供ネタ?があります。



駿府より帰ったばかりの恋人に寄り添うように隣を歩く。

雨に打たれながら帰らぬ待ち人を想い、幾度悪い予感に囚われたことか。
しかし、それも全てただの杞憂に過ぎなかったのだ。
今はこうして無事に帰ってきてくれたことが、堪らなく嬉しかった。
「夜叉丸どの」
うっとりと甘く蠱惑に満ちた声で、愛しい人の名を呼ぶ。
何だと問い返す彼の手を優しく包み込んだ。
「どうしても…………話したいことがございます」
頬を薔薇色に染め、恥じらいながらも幸福にけぶる笑みを湛えて、彼の顔を見つめた。
彼が旅立ってから数日で確信した吉報を口にしようと肺に息を送り込んだが、それは声として空気を震わさずに溶けていった。

「蛍火?」
気遣うように尋ねられても、黙り込んだまま俯く蛍火の顔が上げられる事はなかった。

何故躊躇いが起きたのか、わからない。けれど、何かがそれを咎めたのだ。
―この度の事が終わってからでもいい。

一族千年の永禄と、彼女の懐妊。
里の者達の間では甲賀との勝利の栄光の中にあっては、後者は霞むような出来事だろう。
けれど、蛍火は夜叉丸にさえ喜んでもらえたら、それだけでいい。

第一、まだ消すべき甲賀者は残っているのだ。
そう、後回しにする。
「…………何でもございませぬ」
「本当にそうか?」
「はい。 そのようなことよりも、甲賀者を捕らえている塩倉へ参るのでしょう?」
それは本当に僅かな違いだった。
本人ですらも気づかない程、微かでありながら冷淡に突き放すような声音だった。
何故か、夜叉丸の顔を見ていられずに顔を逸らして手を離すと、振り返ることなく塩倉へと向かう。

名前を呼ばれ、隣を歩くその姿は、髪が短い事を除けばいつもの夜叉丸だ。
けれど、胸の奥で何かが膨れ上がっていた。


言い訳
連作の二話目です。
潜在的に気づいていたらいいなという思いで考えました。
例え違うと無意識にわかっても、それを認める=夜叉丸の死だから、それを受け入れまいとする心の自衛作用で、違和感とかも纏めて見逃していたのかな。
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