未完

聖剣伝説 『女神の騎士』 番外編 未完 【追憶の時】

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注意
『女神の騎士』本編より数千年も昔の話です。
シーク・ファウナッハ前提です。

この時代のナバール王家と『女神の騎士』本編のナバール王家には、血の繋がりはありません。















肩上で切り揃えた淡翠の髪を軽やかに靡かせ、鋭い光を放つ翡翠の瞳は何処か嬉しそうな、穏やかな色合いで。
上品で洒落た包みを抱えながら、意気揚々と足早に歩いていた。
掌中に収められた包みを見遣る。
本国から取り寄せたそれは、氷結玉というロリマーのみで算出される希少性の高い宝石で作らせた指輪だ。
何を勘違いしたのか”永遠の愛を誓う”などという裏面の刻印を見た瞬間、目が飛び出た。
すぐさま潰して消したが、もし気づかないままだったら、世にも恐ろしい事態が引き起こされただろう。
―……まぁ、誤解されても仕方ない。
女への贈り物だとしか伝えていなかったのだ。
特定の女との浮ついた噂のないロリマーの将軍の次男が、氷結玉の贈り物を贈るのだから、様々な憶測を立てられても仕方がない。
だが、そのような相手はいない。
指輪を贈るのは女は女でも、漸く五歳になったばかりの少女だ。
ナバール王子とアルテナの大魔女の一人娘への、贈り物。

ロリマーでは子供の三歳の誕生日に、特別な贈り物をする風習がある。
男なら刀剣を。女なら宝飾品を。
極寒の大地という苛酷な環境ゆえに長く生きられない子供達が贈り物に相応しい”大人”に成長するまで生きられるように、という親類縁者の切なる願いが篭められていた。
最も文明の発達と共に乳幼児の死亡は減少したが、いつの時代でも子供の成長を願い親心に変わりなく、この風習が廃れる事はなかった。

ナバールとアルテナという大国の王族と魔女の婚姻は、両国の関係上厳重に隠し通されている。
特に子供がいることなど、限られた人間しか知らない極秘中の極秘事項だった。

絶世の美貌だった祖母によく似た娘は、父母とはまた異なった魅力があり、ゲシュタールも好ましく思っていた。


「これは……」
「氷結玉で作らせた指輪だ」
感嘆の息を吐く娘の両親の姿に、贈り主たる人物は満足げに笑った。
「ゲシュタール」
背後から刺々しい声をかけてきたのは、シークの側仕えの男。
名前は知らないが、奴も蔑む”他国人”に名前を知られる事を良かれと思っていないからさほど気にしていない。
「この方に、氷結玉の指輪を渡すと?」
「不満か? 大国の王女に相応しい贈り物だろう」
よほどの不満があるのか、こめかみを引き攣らせる男の顔に、嗤った。
殆ど表情を出さぬ奴が、此処まで感情を露わにしている姿は、普段味合わされている胸糞悪い思いを考えれば清々するものだ。
しかし男の怒りは、シークの嗜めるような眼差しと共に跡形もなく霧散していった。

「ゲシュタール」
花が咲き綻ぶような笑顔を浮かべて、少女が年相応の細かい所作で数少ない友人に向かって走り寄った。
「ありがとう!」
太陽の光が似合う笑顔に、ゲシュタールの目が奪われた。


光の加減や角度に応じて輝きを変える妙なる氷結玉を目を輝かせて見とれる娘を、苦虫を潰したような顔で見つめるシークに、ゲシュタールの眉間に皺が寄った。
良かれと思った贈り物も、親がいい顔をしないのは面白くない。
―もしかして、私の事をロリコンとでも思っているんじゃないだろうな?
冗談ではない。
確かに将来が楽しみなほどの美貌だが、親子ほど年の離れた幼子は対象外だ。

「おい、ナバール王子。 娘への贈り物を歓迎しないのがナバールの礼儀か?」
「まさか。 ただ私は……」
何故か言い淀んだ後に、角度を変えて指輪を眺めている娘の姿を見た後に大きく息を吐いた。
「あの子の将来が心配なだけだ」
「は?」
「いくら何でもアルテナ式では……。
いや、お前にとっては取るに足らぬ些細な事だから、忘れろ」


「そういえば、お前の兄の息子。 あいつとよく似ているんだろう?」
「二人とも顔立ちは母上譲りだからな。 ただ、私の子の方が綺麗だ」
「…フン」
素で発した親馬鹿発言を認めるのも何だか癪で、鼻を鳴らした。
確かに以前TVで見た庶子のナバール王子は少女とよく似た顔立ちだったが、魅了されるような美しさは感じられなかった。
娘とは違い、数日も立たぬうちに顔を忘れてしまうような、印象の薄い存在。


言い訳
シークや側仕えが気に病んだり、怒っているのはまた別の事です。(少なくともゲシュタール云々についてではありません)
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