未完

聖剣伝説3 未完 『約束』2

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注意
ケヴィシャル前提ですが、二人とも別の人間と結婚しているという前提です。
















――ケヴィンしゃん。
忘れもしない声を切欠に、暗闇に覆われた世界が光と色に彩られ、形作られていく。
眼前に現れた風景と人物に、鼓動が止まりかねないくらい驚愕したが、すぐに昂ぶる衝動を抑え込む。
激情家の面を持つ彼がそれを成し得たのは、十年近い年月を王の補佐として、共同統治者として費やしてきた賜物だった。
これは夢だ、と。記憶の再現に過ぎないと言い聞かせた。
この風景は、”あの時”の――……。

朦朧とする意識の中、微かに音が聞こえる。
規則正しい音に何の音かと疑問に思ったが、それが飛行艦イーグルシップの駆動音であることに気づき、僅かの間を置いてカッと眼を開いた。
眼前に飛び込んできたのは、自室の天井ではなく、特別製の大型イーグルシップの休憩室の天井だった。
「…な、ん……!?」
何故か舌が縺れ、体が満足に動かない。
半ば混乱しながらも、周囲に眼球を巡らせると、見知った人物の姿を見つけた。
「……エリ…ザ…!」
彼の妻であり、姉と慕っていた女性が、ベッドの側に座っていた。
「あら、ケヴィン。 もう起きたの」
予定よりも早い目覚めに若干驚きながらも、読んでいた本を側に置いた。
動かぬ体と、側にいるエリザ。そしてイーグルシップ。
全ての状況がケヴィンをウェンデルに連れて行くために薬をもった事を証明していて、カッと頭に血が上った。
「嵌めたのか!?」
「ええ。こうでもしない限り、貴方はウェンデルに行かないでしょ」
悪びれる様子もなく、それがどうしたといわんばかりの態度に、却って続ける言葉をなくした。

「獣人王様の許可も得ているわ」
薬を盛る事も、ケヴィンの意思を完全に無視したウェンデルへの強制連行も全て獣人王の了承済みだと思うと、はらわたが煮えくり返った。
獣人王は何故ケヴィンが頑なにウェンデルにいく事を拒むのか、その理由を知る唯一の”他人”だったのに。
分かった上で、ケヴィンを裏切ったのだ。
「獣人王様は王として適切な判断をなされたのだから、恨むのはお門違いよ」
長年の付き合いゆえか、ケヴィンの思考を鋭く読み取ったエリザが釘を刺す。

「ケヴィン、一昨日も話したとおり、もう貴方が欠席することが許されないところまできているの。
――腹を括れ、と獣人王様も仰せよ」
腹を括れ。”理由”を知る獣人王が口にした言葉は、ケヴィンには違った意味に聞き取れた。

只人よりも優れた嗅覚と味覚を騙し、薬物への全般的な体制を持つ獣人族にすら強力な効能を齎すのは、ナバールの秘薬のみ。
例え一国の特権階級者であろうとも、他国人がいかなる手段を用いようと秘薬を手に入れるのは不可能だ。
門外不出の秘薬を作らせ、それを自在に持ち出せる人間など、ケヴィンの知る限り、ただ一人だ。
「…ホークアイ、か」
「国を統べる者としての貴方の立場を考えての事よ」

―このままではウェンデルに連れて行かれる。
焦燥は恐怖へと変わり、ケヴィンに襲い掛かった。
思わず立ち上がろうとするが、薬で縛られた体はそれを許さず、呻く事しかできなかった。
一向に懲りる様子のないケヴィンに、エリザがピシャリと彼の頬を叩いた。
軽く叩かれた為、大した痛みはなかったが、幼い頃から今まで一度も手を上げなかったエリザに叩かれたという事実は、ケヴィンを呆然とさせるには十分だった。
「いい加減になさい、ケヴィン。
あなたも人の上に立つ者ならば、公の場に私情を持ち出すなど以ての外だと分かっているでしょう。
ましては己を優先するあまり、国や民を危険に晒す事など愚の骨頂です。
そんなこともわからぬのならば、今すぐに権力の座から退きなさい!」
「……エリザ……」
最もな言い分に返す言葉もなく、押し黙るしかなかった。
普段は公のことに着いて語ることが少ないエリザだが、よほどケヴィンの振る舞いは彼女の目に余ったのだろう。
王族や公人としての立場を積極的に押し出す語り口なのは、重い責任を自覚させるため。

このままだと後半日後にはウェンデルに着く。
その事を心の何処かで喜んでいる自分自身に、吐き気を覚えた。

言い訳
当事者しか知らぬ理由を知る唯一の部外者だった獣人王は、これまでケヴィンのウェンデル拒否を大目に見てきたけれど、今回ばかりはそれを無視するほど切羽詰っていたんでしょう。
それこそ、腹を括れと言うくらいに。
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