未完

聖剣伝説2 未完 『持たざるもの』

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注意
オリジナル設定と要素が強い話です。
2は3の遥か遠い昔という設定です。
この設定を使ってます。













しんしんと音もなく雪が降り積もってゆく。
郊外にある整備された墓地に、喪の花を携えた一人の青年の姿が突如として現れた。
雪は気の膜に遮られて、青年の体に落ちることなく滑り落ちてゆく。

今日は帝国に来てから4年間世話になった恩人であり前四天王ダンテの墓参りだった。
しかし墓の下には骸はなく、彼が愛用していた一振りの剣が収められているだけだ。

シークが墓に触れた途端、雪が溶けて水となり、瞬く間に流れ出していった。
新たに降る雪も墓に積もることなく、消えてゆく。
彼が亡くなってから数年が経つ今でも、丁寧に手入れされ、人が訪れている。
それほどまでに人望厚い人物だった。

物花束を置いて、手を合わせる。
気を溜めさせた花は、厳冬の中にあっても枯れることなく一月は瑞々しいままで残り続ける。

よく知る人物の気を近くに感じ取り、立ち上がった。


雪に埋もれた墓の前に豪奢なコートを羽織った一人の女性がっていた。
すらりとした長い手足と、透き通る白い肌は彼女がヴァンドール人である証。しかし悪く言えば凹凸の乏しい、よく言えば中性的な体格が一般的なヴァンドール人にあっては、彼女は異質だった。

手を合わせるでもなく、ただ墓を冷たく見下ろすだけで。
冷ややかな眼差しは、この下に眠る人物への蔑みが色濃く宿っていた。
この下に眠るのは、彼女の母親。
義理のように呼ばれた葬儀以来ここに訪れたことはないが、今日は思うところがあって、数年ぶりに墓前に足を向けた。
最もこうして向き合ったところで、意味はなかったのだけれど。

「ファウナッハ」
後ろから聞こえてきたのは低く美しい声。
四天王の名に恥じぬように戦闘訓練を積み重ねた彼女ですらも気づかぬほどの、気配を完全に消し去れる実力者など数が知れている。
特に、それが癖になっている者など。
ゆったりと振り返ると、そこには予想通りの人物がいた。
背中まで伸ばした瑠璃色の髪と鋭い同色の瞳は、白皙の肌も相俟って雪によく似合っていた。

気の膜が屋根の役割を果たし、雪は彼らの元に落ちる前に消えてゆく。

「誰の墓だ?」
「母親のよ」
硬質に放たれた彼女の言葉に、彼が驚いたように交互に見遣る。
彼女の気から読み取れるものは、とても肉親への譲渡は呼べぬものだった。

彼が雪に埋もれた墓に手を伸ばすとたちまち雪が溶けて、その全貌が露わになる。
長年手入れされておらず、汚れた墓でもシークが撫ぜるように手を沿わせてゆくと見る見るうちに汚れが浮き出して、瞬く間に石の輝きを取り戻していった。

墓に手を合わせて、黙祷を捧げるシークを冷ややかな思いで見つめる。
この下に眠るものはそこまでするほどのご大層な人間ではない。
なのにただ恋人の母親というだけで、ここまで心を篭められる事が理解できないのだ。

「……母はアルテナ人の、欠落物だったわ」
ファウナッハの脳裏に母の姿が蘇る。
長年日の光を浴びず薄くなった淡褐色の肌の美しすぎる女だった。
アルテナの血を引きながら、先天的に魔力がなかった女。
本来ならば即座に殺される筈だったが、世界三代美人種の一つであるカッカラ北部に住むオルマの容貌を引き継いでいる女の価値など、幼子の頃から既に決まっていた。
「欠落物ってのは、マナを魔法に変換して行使するのに必要不可欠な魔力を持たない者の事を呼ぶの。
魔力がないから人間ではない、よって物であるというのがアルテナの考えらしいわ」
北方の大陸ロリマーの一地方にアルテナと呼ばれる自治国家がある。
そこは魔法のみが最大の価値基準で、魔力が人間の価値と位を決める。
代々に渡りマナへの親和度を高めてきたためか、アルテナの民は皆が先天的に魔法を扱える。
しかし、その中でもごく僅かな者は魔力すら持たずに生まれてくる。
先天的に魔法を扱えぬことは、魔法がすべてのアルテナにとっては致命的だ。
欠落物と判明すればその時点で殺される。そうでなくとも、”存在しない”ものとして扱われる。
人間ではないから、何をしても許されるという考えだ。
欠落物の人間は居た堪れなくなり、自らの命と尊厳を守るためにアルテナから立ち去っていく。
それが現実だという。

祖母は最高級奴隷のオルマ人としてアルテナに売られてきたらしい。
ヴァンドールの血は褐色を完全に打ち消したが、体型にはオルマの名残があった。

魔力を持たぬ欠落物の母親から、只人のキャパシティを凌駕した魔女が産まれるのは皮肉な話だ。
それ故に母親は魔力の発現と共にファウナッハに対して殊更厳しくあたった。

「血統者にも、欠落物のようなものはあるの?」
それは些細な疑問だった。
マナの血族、血統者、闇の血族。
自然すらも思うがままに操り、上級妖魔すらも殺せる人種ならば、殊更出来損ないを忌避する意識は強いだろうと。
ファウナッハの問いにシークは軽く眉間に皺を寄せた後に、目を伏せた。
「……似たようなものなら」
底がない水甕に延々と水を注ぎ続けても留まることなく外へと流れ出してしまうように、気を体内に蓄えることが出来ない。
それ故に使用できる術にも制限があり、半分以上の術を使うことが出来ず、150年という種の寿命にも満たぬ80年程度しか生きられない。
五千万人に一人という非常に稀な、重度の先天的障害がある。
親戚であり腐れ縁のクロウが、それだった。
その障害に対する偏見は激しく、特に一族内では恥とすら呼んでいた。それでも混血のように非人道的な過酷過ぎる差別や迫害、傷害はなかったのだ。
彼は人の万倍も努力して、忍びの地位を手に入れたが突如出奔してしまったらしい。
あの姉は血眼になって探しているが、気を溜められない彼の居場所を見つけ出すなど、広大な砂漠から一つの石を見つけるほどの途方もない作業だ。
近くに行けばわかるが、その前にあいつは同族の気配を察せられるのだから逃げてしまえば見つかるわけがない。
今は何処にいるのかわからないが、同族に捕まることなく元気で生きているのなら、それでよかった。
それが腐れ縁としての思いだ。

「……それでも血が力であるという考えだから、純血である限りどんな障害があろうとも、血統者にとっては同族で人間なんだ」
一度でも穢れてしまった血は、信仰の対象である長の血族であっても等しく蔑みの対象だった。

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