未完

聖剣伝説HOM 未完 『作戦の前日談』1

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注意
ロジェ達がユリエルの部下になった話です。
オリジナル設定や要素があります。













薄暗く所々塗装の剥がれている廊下は、果てなく暗闇へ続いているようで余計に気が滅入る。
―何故、よりにもよって…。
ハァ…。
絶妙なタイミングで重い溜息が聞こえて、ちらりと隣を見てギョッと目を瞠った。
一切の生気がない面持ちで肩を落とし、いつもの陽気な雰囲気は欠片もなく、あるのは近くにいるだけで陰気になるようなオーラを放つ友人の姿。
死を目前にしているといわんばかりの友人に若干引くが、それも無理はなかった。
これから彼らの上司になるのは、あの”笑い鮫”のユリエルなのだから。

「……キュカ、元気出せよ」
「無理言うな。
……これから俺達の上司になるのは、”あの”ユリエル隊長だぜ。 最早死んだも同然だ」
悪夢に苛まれ逃れるように頭を抱え込んだキュカを見ていたら、そこまで気に病むことはないと思えた。

目的達成のためなら手段を選ばず、犠牲を伴う非道な命令も笑顔で下す。
それが”笑い鮫”の異名となった理由だ。
けれど彼の作戦の殆どは後からみれば最も犠牲の少ない方法であったのは間違いない。
その辺りも上官の受けを悪くしていたようで、二年前の一度だけの失敗を理由に頂点から底辺へと一気に引き摺り落とされてしまった。
そんな経緯を思い出せば、まぁ大丈夫だろうと思えてきた。
何かと、誤解されやすい人なのだろう。
けれどどうやらキュカは誇張された噂しか知らないようで、決定されてから数日は自暴自棄になって食中りを起こしていた。
そして迎えた今日は、顔面蒼白を通り越して今にも土色になってもおかしくないような状態だった。
このキュカの反応は同情を通り越して…怖い。
幾らなんでも大袈裟すぎる。

「大袈裟でありますねえ」
背後から聞こえたのは呆れたような子供の声。
聞き覚えのない声に振り返ろうとしたのと、キュカがロジェの胸倉を掴み、ドスの利いた形相で顔を引き寄せるのは同時だった。
「ロジェ!お前、俺がどんな気持ちなのか知ってるだろ!!なのに……」
「知りませんよ、そんなこと」
誤解を解こうとロジェが口を開く前に放たれた子供の声は、更にキュカの神経を逆撫でした。
幾ら頭に血が上っていえるとはいえ、成人と子供の声を聞き間違えるなんてどうかしている。
本格的にキュカが追い詰められていることが漸くわかって、大袈裟だの怖いだのと思った事を胸中で謝罪して、声を張り上げる。
「ちがーう!俺じゃない!!」
叫ぶと同時にキュカの手を解き、半身を返して子供の腕を掴もうとしたが、直前に魔物に腕を噛まれそうになり慌てて手を引っ込めた。
子供の腕に巻きつき、牙を剥き出しにして威嚇する小さな蛇のような魔物。
一般的には殆ど知られていないが、ロジェはそれを知っていた。
超危険種で、一噛みで竜族すらも死に至らしめる猛毒を有している事を。
思い出すと同時に恐怖で体がすくんで動けなくなる。
まさに蛇に睨まれたかえるだったが、子供がそれを嗜めてポーチを開くと、それは大人しくポーチの中に飛び入った。
ポーチの口が閉ざされ、それの視線が遮られた事で、初めて安堵して呼吸が出来た。
ドッと疲労感が押し寄せて、何でこんな目に遭ってるんだろうと思うと、子供が申し訳なさそうにロジェを見上げていた。
「怖がらせてごめんなさい。
最近は物騒だから連れ歩いていたんでありますが、あの子、人見知りで気性が荒いから僕以外には懐かないんです」
魔物だから人に懐く時点でありえないと思いつつも、冷や汗を拭い、漸く生まれた余裕で子供の姿を改めて見た。
頬は丸く手足も短めで一見すると7歳くらいなのだが、年齢を感じさせるような印象を与える。それでも13歳よりは上でないと断言できた。
多分、10歳前後だろう。

散々振り回した相手が子供だと知って、キュカの毒気が抜かれたのか。
漸く頼れる兄貴分を取り戻したキュカが、子供と同じ目線になると、軽く帽子に手を置いた。
咄嗟にやめさせようとしたが、先程の魔物はポーチの中から出る気配はない。
「おい、坊主。お前迷子か?」
乱雑ではあるが優しさを滲ませる声だ。
何だかんだ言いつつもキュカは子供好きで、一人でいる子供を放っておけないのだろう。
基地内にいる子供など、軍関係者の身内しかいない。普通はそうだ。
けれど、ロジェの中には先程の魔物と、それを知っていながら平然としている子供の異様さだけが渦巻いていた。
「迷子? とんでもありません」
子供が掲げて見せたのは軍の認識票で、俺達三等兵よりも位が上の一等兵のものだ。
「キュカとロジェでありますね。
今日から君達の上官になるテケリであります」
一瞬何を言われたのか分からなかったが、それはキュカも同じであったらしく絶句している。
―上官、だって?
「おい待て、坊主。お前が、俺達の上官だと?」
「はい。 ユリエル隊長の部下になる三等兵なら、僕の部下も同然でありますから」
一等兵と三等兵じゃペダンでは色々と違うから、その言葉は間違ってはいない。
けれど、それ以前にこの子供は何者なんだ?
「……テケリと言ったね。 君は一体…?」
よくぞ聞いてくれたとばかりに彼が誇らしげに胸を張った。
「一等兵であり、MOBの指揮及び管理兵であります!」
一等兵のところを強調しているように聞こえたのは、俺の勘違いだと思いたい。
それよりもさっき聞き捨てならない言葉があったぞ。
「MOBの指揮だと? 馬鹿言え、あれはお前みたいなガキには出来ねえよ」
キュカの言うとおり魔物を操るというのは並大抵の作業ではない。
国によって方法は異なれど、とても一人で行えるものではないのだ。
特殊な処理を施した魔物を数年かけて調整したうえで、戦場に連れ出す。その際にも数十人の術師達によって辛うじて制御下に置かれる。
少しでも力が足りなければ猛り狂った魔物によって味方にまで被害を齎しかねない。危険な諸刃の剣でもある。
だからMOBシステムが広まった今でも、兵士や傭兵という職業が存在していられるのだ。
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