未完

バジリスク 未完 『待ち人、帰る妖』 Aパート

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副題
『逃亡』1

注意
バジリスクとモノノ怪のクロスオーバ中篇のエンディングAパートです。(ここにあらすじを少し書いてます)

シリーズものですが、時系列不順で書いていきます。















敷布に横たわるのは、骨と皮ばかりの余命幾許ない老婆。
昏々と深い眠りの中にいる老婆のすぐ側で、正座のまま仄暗い眼差しで見下ろす一人の娘がいる。
美しい娘だ。しかしその眼には生気が宿っておらず何処か死人のようでもあった。
眠る老婆と、見下ろす娘。
いつまでも続くかと思われた時間は、老婆がうっすらと目を開いた事によって霧散した。
老婆の視線が四方へと向けられた後、顔を近づけた娘に焦点が結ぶ。
「夜叉丸どのは…夜叉丸どのはいつお戻りに?」
不安げに力ないうわ言を漏らす祖母の手を取り、娘が作り慣れた笑みを貼り付けた。
「ご安心なさいませ、蛍火殿。 夜叉丸殿ならば今頃は東海道にでもおられる頃でしょう」
いつも通りの言葉をすらすらと述べる。
最後まで言い終えた頃には、老婆は微笑んでいた。
「左様ですか……。
旦那様が戻ってくるころには、やや子も産まれるでしょうね」
枯れ枝のような細く骨ばった手が、平らな腹を撫でる。
いつも通りのやり取りとはいえ、知らず顔を曇らせた。
――母の弟は産まれて間もなく死んだよ。
母のことすら覚えていない祖母を罵倒して、罵りたい。けれど、そんな事をしても無駄だとわかっている。
正気を失った挙句、耄碌している祖母には、何も分からない。

「……この子の…」
平らな腹をゆっくりと力なくさすりながら、祖母は言う。
「首が据わる頃には、桜が満開になりましょう。
家族四人で花見に行くのが、今から楽しみでなりませぬ」
皺にまみれた顔を綻ばせて、母であり女の顔で語った祖母に、娘が耐え切れずに立ち上がった。

戸に手をかけて、開ける寸前。先程の祖母の顔が蘇った。
現実を忘れ、幸福な未来を描く。娘の大嫌いな顔を。
知らず知らず、指先に力がこもる。

――母上を、お願い。
最期の母の言葉が、娘を縛り付けて離さない。
娘の事ではなく、正気を失った祖母を案じて死んだ母。

「……早く、来ればいいのに」
亡霊でも幻影でも、何でもいい。
祖父に祖母を現世から、幽世へと連れ去って欲しい。
―そして、私を……。
思考を振り払ううように頭振るい、戸を開けようとした。
しかし幾ら力を篭めても戸はビクともせずに、娘の前に立ち塞がった。

忍びの里という特殊な環境で閉鎖的な社会で、村八分にされている祖母と娘。
これも嫌がらせの一つかと思うと、腸が煮えくりかえる。
非道い、酷い。
幼い頃に擦り切れたはずの、嘆きや憤りが湧き水のように溢れ出して行く。
恨みを、憎しみを、憤りを篭めて。
戸を、打ち破った。

突然眼前の光景が土間へと変わっていて。
少し驚いたが、諦めの溜息が漏れ出た。
―また…。
母が亡くなってから、時折記憶が飛ぶことがあった。
今はまだいい方だ。
先日までは頻繁に起きており、早朝に目覚めて間もなく、夕方からの記憶しかなかった時もある。
そんな状態では恐ろしくて家の外から出られないが、そんな事を言っていられない。
心が現実から逃避して、忘れているのならば。祖母と過ごしている間の記憶を消した方が遥かにいいのに。

耳を澄ませば、祖母の寝息が聞こえて、安堵した。

裾に微かにこびりついた血痕には、最後まで気づかなかった。
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