未完

火星物語 未完 『コンプレックス』

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注意
オリジナル設定があります。
風使いは遺伝という設定です。














西方の一端、アロマ村での年に一度のカーニバル。
その起源は古く、アロマ王朝時代にまで遡る由緒ある催し物、らしい。
最盛期には世界各地から観光客が訪れていたという伝承があるが、今では村人だけの祭りなので規模は小さい。
とはいえ、娯楽が少ない長閑な村のこと。
この日のために一年がかりで準備するものは多く、作品展では中々凝った作品が出品されて、地方紙の記事を飾ったこともある。
そのような作品展だからこそ、優勝するのは難しいが、賞金はその分大きい。
少なくとも少年Aと少年B。二人がカンガリアンでの命名の儀を受けるための資金と移動費諸々に、と考えるほどの金額だ。
人生を左右する命名の儀をカンガリアンで受けるための資金に頭を悩ませていた時に、少年Aの、
「作品展で本物の戦車でも作ったら、インパクト強いよね」
という台詞から戦車作りが始まった。

何度も失敗しながらも、昨夜漸く完成した戦車は爆発してしまった。
部品が屋根を突き破り、村中に飛び散るほどの大きな爆発に巻き込まれながらも、ほぼ無傷だった少年Bは奇跡だ。
その奇跡にあやかったのか、幸いにも飛び散った部品以外の箇所は修理可能の範囲だった。
全てを確認し終えた後、少年Aとランプーは互いに見交わせると、奇跡の数々への感謝を篭めて少年Bに三度平身低頭した。

落ちた先々で甚大な被害をもたらした部品を全て回収し終えて、少年Aの家に帰ろうかというときには既に日も高くなっていた。
予想以上に費やした時間に、少年Bに焦りの色が生まれる。
修理にどれだけの時間を要するか全く分からないし、何より少年Aがまた爆発を起こさないとも限らない。
もしそうなってしまえば、本当に危ない。
カーニバルを楽しむどころか、命名の儀にも響く大事態だ。

意気揚々と戦車の大砲を背負う少年Aの後姿を見る。
本当に何処にでもいるような少年だが、その細身から繰り出される素早さと怪力は同年代と比べても遥か二と出していた。
大の大人とも渡り合えるし、去年のカーニバルのときはあのバジルを相手にいい所まで言った強者だ。
少年Aの優れた身体能力は、爆発技師同様、彼の個性の一つとして村の人々に認知されていた。
だが当の本人はそれを厭うているのか、体を鍛えるような事は一切せずに、機械弄り一本だった。
そのことは少年Bにとっては勿体無いの一言に尽きる。
特に風船豚を全匹割った時に見せた素早さは、磨けば世界選手にでもなれると感じたほどだ。

「少年A。お前、本当に強いんだなぁ。 少し羨ましいぜ」
呆れと感嘆を滲ませた少年Bの素直な感想に、少年Aが半身を返した。
タイヤと戦車の砲筒を器用に縛り、背負っているにも拘らず端整な顔には疲労の色は一切なかった。
幾ら本人が平気だからと言って、本当は少年Aに押し付けるものではない。だが、仮にも小型とはいえ、戦車の部品を子供と非力なタコ族が手伝おうとしても持てる物ではないので、少年Aに任せるしかないのだ。
「……そうでもないよ」
一瞬表情を曇らせたが首を傾げて見せた少年Aに、少年Bが少し疑問に思ったが、すぐに仕方なしと思った。
アロマ村自体少子高齢化が進んでおり、子供の数は多くない。そして意外に人見知りで、無口な少年Aの交友関係は極端に狭い。
常に一緒にいる友人兼家族が頭脳派インテリと体力のないタコ族では、自分のキャパが如何に優れているかなど、中々自覚しづらいだろう。
少年Aのことだから、多分”そんなもの”だと考えていそうだと、少年Bは考えていた。
…まさか、深刻に悩むような繊細な性格だと思ってすらいなかった。
「いや、そうだって! そこんところを猛アピールすれば、もしかしたらスポーツ選手や軍人になれるかもしれないぜ!!」
誇らしげな笑顔で、少年Aの肩に手を置いた。
少年Aの優れた身体能力を最大限活かすためには、それらの職業が最適だと思っての台詞で、他意はない。
しかし少年Aは何が気に入らなかったのか、少年Bの手を払い除けて、背を向けた。
「嫌だよ!」
「何で?」
「嫌なものは、嫌なんだ!!」
感情の昂ぶりと共に普段押さえつけている力が出たのか、少年Aの足元の石畳が音を立ててひび割れる。
ギョッと目を向いた少年Bに、少年Aがくしゃりと顔を歪ませて、俯いた。
「………僕は……こんな力、嫌だよ。
だって……」
「少年A。それ以上は絶対に言っちゃ駄目だ。
君がどう思っていようとも、それは恥じるものではなく、十分誇れるものだよ」
少年Aがキッとランプーを見る。
「何を根拠にそんな事を?」
「アンサー王も、君と同じだったから。
勿論、彼だけじゃない。 アショカと戦い、世界に自由を勝ち取った人達……。彼らは皆、君と同じだったんだ」
目を細めて、遠い記憶を掘り起こすかのようにフォボスを見つめて、語った。
ランプーが謎掛けのように意味深な言葉を言うのは極稀にあったが、今回の葉和にかけて何をイワンとしているのか、よく分からない。
大切だと思える何かを伝えたいのなら、ハッキリと言って欲しかった。

疑問を前面に出している少年Aに、そのまま率直に言った方がいいかも知れないと思った。
――君には、風使いの血が流れているのだ、と。
しかし風使いはその特異な力ゆえに、古今東西で迫害され、利用されてきた。
今でさえ極東のハーネス系列の国々は、風使いの末裔らしき人々を殺しているという噂だ。
そのような危険な情勢の中で、こんな事を言っては少年Aの命にも関わってくる。
いつかは言わなければならない大切な事だが、今は言えない。
いつか、いつか。
そう先延ばしにしてきて、今に至る。

―少年A以外にも、風使いがいれば……。
他に風使いがいれば、無縁であった孤独。少年Aは生涯それと向き合わなければならかった。

このまま少年Aが自分の力を”得体の知れないもの”として、嫌悪と恐怖を持ってしまうのは、不幸以外の何者でもない。

風使いへの正しい知識と理解。
それを彼に教えられるのは、風使いが滅亡して久しい今の世では、ランプー一人だけだった。
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