未完

聖剣伝説HOM 未完 『黒い兎』

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注意
オリジナル設定があります。
ロジェが可哀想な目に会ってます。

HOMの5年後で、ロジェ、ユリエル、テケリの三人旅です。















鬱蒼とした森の中、一人の少年が軽やかな鼻歌を歌いながら草木の生い茂る獣道を歩いていた。
少年はおよそ十代半ば頃か。森の中にあっては見失いそうなほど、生い茂る葉と同色の髪と瞳をしている。
小柄な体に相応しい小振りな籠を背負っており、中には道中でとったであろう野草や果物の類が潰れないよう丁寧にいれられていた。
収穫に顔を綻ばせながら、軽快な足取りで家路へと向かう。
ここまでならば何処にでもあるような光景だが、その場所がこの光景を異様なものに駆り立てていた。
なぜならば、”ここ”は人知を逸脱した恐るべき魔物達が犇く森なのだ。
そんな中、少年は今まで一切怯える様子もなく、楽しみながら食料集めに勤しんでいる。
魔物達も縄張りを侵す侵入者を襲うことも、捕食対象として食らうこともなく、静かにその姿を見守っていた。
奇怪でありえない事だが、魔物達は少年の存在を受け入れているのだ。

茂みから物音が聞こえてテケリが振り返ると、”それ”と目が合った。
目を潤ませる小振りな”それ”に彼は悲鳴を上げたり、走馬灯や最後の祈りを捧げることもなく。ごく自然に笑った。
受け入れられた笑顔に引き寄せられるように”それ”が彼の足元まで近づいて…。

艦体の整備が一段落着くと同時に足早で甲板へと向かっていたロジェに、ユリエルが呆れたように肩を竦めた。
魔物の巣窟へ一人で食料集めに出たテケリのことが心配なのだろうが、彼に限ってそれは余計な気遣いだ。
ありとあらゆる魔物を操れる異能を有する森の民にとって、魔物の巣窟ほど安全な場所はない。逆にナイトソウルズに残されたロジェとユリエルの身が危険なほど、テケリの身の安全は誰よりも保障されている。
例え何があっても魔物はテケリを守り、助ける。そしてテケリ本人もしっかりしている。
だからユリエルは安心と信頼を置いて、テケリを送り出すことが出来た。
けれど、ロジェにとってテケリは未だ保護されるべき子供で、異能も完璧ではないと思っているようで。
危険だからと一緒に着いていこうとしたが、そんな事をすれば悪戯に魔物を苛立たせる足手纏いなので、適当な用事を言いつけて阻止した。

―テケリにとっては住みやすい場所なんでしょうけれどね、ここは。
最強の盾と矛に守られた生活を過ごせるだろう。
けれどテケリの旅は彼らの旅が終わるまで続くと本人は言っており、ロジェ達の旅は異世界に散らばったアニスの破片を消し去るまで続く。

大魔女アニスの力で満たされた世界。
ここは、常識を逸脱した魔物達の、楽園だった。


「テケリ……。頭のそれは…!?」
腰が抜けて動かないまでも何とか後ずさりながら、震える声で”それ”を指差した。
テケリの帽子の上に鎮座する”それ”は玉座に君臨する王のように堂々と居座っている。
「この子は新しい子の、ラビエルで……」
「今すぐ捨ててきなさいっ!!」
嬉々と話すテケリを途中で遮るように叫んだ。
数年前の戦いの時からテケリが魔物を連れ込むことは何度かあった。
連れてきた魔物は即戦力になるのである程度は好きにさせていたが、今回だけはとても見過ごせない。
―だって、”あれ”だぞ。あの黒い毛玉は間違いないだろう!!

「テケリ、その頭のはもしかして……」
「ユリエルさん! この子ラビエルっていう、とっても可愛い子なんでありますっ!!
だから捨てるなんて非情なことを言うロジェさんを説得してください!!」
「隊長!!幾らテケリが連れて来る魔物は強いといっても、限度ってものがありますよ!!
大体、”これ”はブラックラビですよ!!」
ビシッ!と空気を切り裂く勢いで”それ”を指差す。
光を吸い込む暗黒の艶やかな毛並み。
アメジストにオパールを溶かし込んだような神秘的な瞳。
古今東西、人々を魅了してきた愛くるしい姿。
それは、ラビ。
…黒いラビ、現代では史上最凶の名の元に君臨する化け物だ。
ロジェが錯乱するのも、ユリエルが言葉を失うのも無理もない。愛らしくも恐ろしい魔物だった。

「ロジェさんは大袈裟すぎであります!」
そんなに怖くありませんよとブラックラビの鼻頭をかくと、ラビは目を閉ざし陶酔した面持ちで甘えた。
悪夢としか思えない光景にロジェの意識が遠のきかけるが、グッと堪える。
こんな時にキュカがいてくれれば、と切に願う。でも、結局テケリの勢いに負けるんだろうなぁと思ったら哀しくなった。

ユリエルがブラックラビの艶やかな毛並みを撫でる。
ラビはテケリの時のような甘えは一切見せることなく、じっとユリエルの顔を見上げているだけだ。
それがどうにも恐ろしいものに見えてしまい、ロジェの全身に悪寒が走る。

「隊長からも何か言ってやってくださいよ!! このままじゃブラックラビがナイトソウルズに居つくことになるんですよ!?」
「私は一向に構いませんが」
「………………え?」
平然と言われたユリエルの言葉が理解できずに固まるロジェとは対照的に、ラビを抱きしめて喜ぶテケリが場の悲哀を盛り上げた。
「テケリ。ちゃんと責任以って世話をするんですよ」
「はい!」
「あと、ロジェはラビを恐れているので絶対に近づかせないこと。 いいですね?」
「大丈夫でありますよ!! ラビエルは僕の側から絶対に離れませんから!」
ロジェが立ったまま気絶している間、そんなやり取りがなされていた。
*
「……隊長、怖くないんですか?」
「まぁ、ブラックラビですからね。 全くとは言えませんよ」
「だったらどうして!?」
「危害を加えないと分かっていれば、普通のラビと同じように可愛いじゃないですか
それに十分強いですからね、いい戦力になりますよ」
―そういう問題でしょうか……?
どうしてもユリエルのような考え方が出来ないロジェだった。



言い訳
ブラックラビにとって縄張り=テケリですので絶対に離れません。(用を足すときと、テケリに頼まれた時くらいでしょうね、離れるとしたら)
ロジェのストレスフルな生活がこうして始まったわけです。
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