未完

聖剣伝説3 未完 『夢夜』 4

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注意
六人分の話を書きますが、全体の繋がりはなく、それぞれ単独の話としてお読み下さい。
共通しているのは「夢」の話というだけです。

死ネタ?があります。
















シャルロット編~『万華鏡』~















こんな夢を見た。

暗闇に包まれた視界が見慣れた天井を形作り、突き刺す眩い光に目を眇めた。
自然の光でもなく、魔法の灯りでもない。人工の、電灯。
”夢”の時代には一般的に広まっていなかったが、”今”では当然のもの。
―ああ、夢だったの。
千年も昔、彼女がまだ幼かった頃の記憶。
殆どは忘却の海の彼方に消え去ったはずだが、案外残っているものなのねと、心の中で笑った。

指一本を動かす力も失われ、声すらも喉を震わせなくなって久しかった。
間もなく寿命が尽きようとしている中での、”最期の夢”が走馬灯ならば、この上ない死出への贈り物だ。
―嬉しいわぁ。
大切な人々と一緒にいられたあの頃を。悠久の時の流れで失っていた大切な宝物を、再び思い出せて。
この記憶さえ、持ったままでいられるならば、
―もう、思い残すことはない。
重い瞼を閉ざし、光が消えてゆくのを実感してゆき。
そして――。

どんな夢を見たのか覚えていないが、幸せな情景だとわかっている。それだけは記憶に残っていた。
幸せというものを全て失った今では、例え夢であっても無性に腹立たしく、またやるせない。
けれども、極限まで抑圧され溜め込まれている感情が胸を振るわせるだけで、幾重にも張り巡らせた氷の鎧を溶かすことはなかった。
鏡に映るのは蕾が綻び始めた頃合の美しい娘。なのに、どうしてか見た目よりも遥かに長い時を生きているように見える。
そんなアンバランスな不思議すらも娘を取り巻く魅力の一つになっていた。
娘は男を蠱惑する妖美溢れる仮面を貼り付け、白く滑らかな手を鏡に映された顔の輪郭に沿わせる。
時の流れに流されぬ己の姿は、娘がこの世の何よりも忌み嫌い、憎むものだ。

あどけなさの残る顔には甚だ不釣合いだが、この娘には不思議とよく似合う化粧を手馴れた様子で施してゆく。
最期に口紅を塗り終え、完成された芸術品に満足していると、娘の輪郭と幼女の姿が重なった。
辛酸はあれど幸福に満たされていた、太陽に愛されし”女”。
全ての光を失い、汚泥の底に落ちた娘が何よりも憎悪をし、羨望を抱くのは過去の自分自身。

太陽は既になく、明けない夜が君臨していた。

「今日、嫌な夢を見たのよ」
壮年の男性の厚い胸板に顔を埋めながらくぐもった声で言うのは、月夜が君臨するこの国にあって異質な、太陽のような美しい娘だった。
少女は男の背に腕を回し、身を摺り寄せている。
年経ても尚筋骨隆々な男と、あまりにも年若い少女の蜜月のような仲睦まじさは、何処か背徳の香りがする光景だった。
それでも彼らは同じ年なのだ。
同じ月日を生きながらも此処まで外見年齢に大きな隔たりが生じたのは、偏に少女の中に流れる長命のエルフの血ゆえだ。

「そうか」
「………うん」
夢の記憶は殆ど残っていないが、嫌な夢だったという記憶は心の奥底にまで深く焼きつき、少女を不安にさせた。
「ねぇ、ケヴィン。 私…………とても、怖い」
「シャルロット。 夢は現実にまで襲ってこないよ」
だから大丈夫だと、彼女の頭を撫でながら優しく言い聞かせた。
子供を通り越して孫のような扱いに不満を抱くが、それでも掌は温かく、悪夢の余韻が薄れていたので、まぁ許してやるかと思った。
心地よくて幸せで、頬が自然と綻んで穏やかな笑みを湛える。

ケヴィンは初めて出会った時からシャルロットに甘かった。それはこれからも変わらないだろう。
そこまで考えて慄然とした。
彼にとっての生涯と、自分の生涯の長さはあまりにも違いすぎる。

鼓動が速くなり、脂汗がこめかみを流れる。
先程までシャルロットを悩ませていた悪夢が、突如牙を襲って襲い掛かってくる錯覚に襲われた。
幾許かの恐怖すら伴って琥珀色に近い金の瞳を見つめる妻に、ケヴィンはシャルロットの不安を払拭するようになるべく穏やかに洗うと、
「シャルロット。夢は、所詮夢であって、現実じゃない」

「ゆ、め」
――ならこれも夢ではないと、誰が証明できる。
胸の内で誰かが声高々にそう叫ぶ。
その声が、自分の声にあまりにもそっくりで、仰天した。

これも、夢?

自らの様々な夢を渡り歩き、いつしか夢か現実の区別すらもつかなくなる。
そして、最後には……。
結末を除けば、まさしく共に旅した忍者が絵本代わりに語ったナバールの童話の如く。

光の都市ウェンデルの娘でありながら、獣人と契ったという罪は英雄であっても決して許されるものではなかった。
それ故に、様々な責め苦の後に死を賜る代わりに、永劫の眠りの封印が施された。

麗しい女性の”罪”が許され、眠りの封印が解かれるのがいつになるのか。


夢は時折姿を変えながらも、覚めるまで続く。
それは、万華鏡のように。


言い訳
考えていた話では、「これも、夢?」で終わっていたのですが、他の話では最後に現実を書いているのに、これだけ書かないのはどうかと思い、最後のを付け加えました。
そうする事でシャルロットが更に可哀想な境遇になってしまいましたが……。

当初は今が現か夢かの区別がつかなくなり、やがて現実でも…という内容でした。
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